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後で後悔しない「NPO法人」と「役員」との取引の進め方

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NPO法人は役員(理事・監事)個人や役員が経営する会社などと取引を行う場合が多くあります。認定基準ではこうした取引などを通じて、役員に対して「特別な利益を供与すること」を禁じています。例えば、全く価値のないものを役員から高額で買い取ったり、市場価格より大幅に高額で役員の会社に業務委託を出したり、NPO法人の資産を役員に無償で貸与したりすることが該当します。簡単に言うと、NPO法人側が不当に損をし、役員側が不当に得をすることはダメということです。そもそも認定基準以前にNPO法人としてもこうしたことはダメですよね。多くの団体はこのようなことを行っていないとは思いますが、認定審査では役員との取引が適正なものであることを確認する必要があります。役員との取引はきちんと手順を踏んだ適正なものであれば、問題にはなりません。ここではその流れを確認しましょう。

ビフォーアフター

ビフォー

●役員との取引を注意せずに行ってしまい、認定審査で問題となる。
●理事長との取引について、利益相反行為と知らず行い、後で問題となる。

アフター

●役員との取引を適正な内容・手続きで行い、認定審査もスムーズに進む。
●取引等に対する役員間の注意も高まり、NPO法人のガバナンスも向上する。

手順

1. 注意しなければいけない取引を確認する。

最初に注意しなければいけない取引を確認します。「NPO法人」と「役員個人や役員の経営する会社・法人」と取引をする際は注意が必要です。特に、取引金額が大きい場合や無償提供の場合などは、以下の流れで適正な内容・手続きになるよう気を付けましょう。

2. 役員等との取引が発生する場合は、事前に金額や条件の妥当性を確認する。

役員との取引が発生する場合は、実際に契約する前の段階が重要です。その取引内容が妥当かどうかを確認します。支出金額が大きい場合は相見積もりを取ったり、市場価格を調査するなどして、役員との取引について価格や条件の妥当性を説明できるようにします。

頻繁に発生する役員への講師謝金や原稿謝金等については、その都度調査するのも大変ですので、講師の選定方法や講師謝金の扱い・金額、支払方法などを定めた謝金規程などを理事会で定め、それに基づいて運用するのが合理的です。役員であるという理由だけで不当に高い謝金を支給していると問題になる可能性がありますが、当然のことながら経験や実績、能力に基づいて謝金の支給額に差が生じるのは構いません。こうした謝金規程や助成元の算定基準に従って支給するなどであれば、役員を特別扱いしない限り大きな問題にはならないでしょう。

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3. 金額が大きいなど重要性が高い場合は、理事会で当事者を除いて議決する。

金額や条件の妥当性を確認できたら、団体の定款にもよりますが重要性が高い場合は理事会等で、取引の当事者(特別利害関係者)である役員本人を除いたメンバーでの議決を行います。議事録にもその旨をしっかり記録しておきましょう。

4. 理事長個人と取引する場合は、副理事長などがNPO法人側を代表して契約する。

NPO法人と理事長個人が取引する場合などは利益相反行為となって、理事長にNPO法人側の代表権はありません。こうした場合、定款で代表権をもつ他の理事(共同代表理事など)がいればその理事が、代表権をもつのが理事長だけの場合は、代替的に副理事長などがNPO法人側を代表して契約を交わすこととなります(下記、内閣府Q&Aも参照)。契約書の甲乙には「理事長個人」と「NPO法人副理事長名」で契約書が作られることとなるわけです。

【内閣府 NPOホームページ Q&A】
第17の4条(手続き(契約))
●Q 3-17の4-1
《質問》
法第16条の規定により定款をもって理事長以外の理事の代表権の制限をし、登記にもそれを反映させていても、 定款の規定に「理事長に事故あるとき又は欠けたときは副理事長がその職務を代行する」という規定を設けていれば、 代表理事の利益相反案件に関する代表権者として副理事長等が契約等を締結することは可能ですか。

《回答》
法人の定款において、「理事長に事故あるとき又は欠けたとき~」という規定を設けていれば、「理事長の欠けたとき」には、 理事長が存在しなくなったときだけではなく、存在はするものの事実上又は法律上の原因から職務活動をすることができない場合も含まれますので、 そうした場合には、副理事長が契約を締結することは可能と考えます。

しかし、契約の相手側から見た場合には、契約時において、契約する法人の代表権者となる副理事長に実際の代表権があるか否かが必ずしも明確ではないため、 副理事長の代表権を明確に証するための何らかの手続き(特別代理人の選任を含む。)を要求される可能性はあります。

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5. 取引に関する資料や議事録、契約書などは必ず保管しておく。

こうした手続きを経た上で、契約し、取引を行えば問題はないと思われますが、実際に認定申請書類を作成したり、実地調査に対応する上では証拠となる書類が重要です。相見積もり結果や相場・市場価格を示すチラシなど金額や条件の妥当性を説明する資料、理事会議事録や契約書など手続きの妥当性を説明する資料といった客観的な根拠を集めて保管しておきましょう。

コツ

役員と取引する際は、内容と手続きの妥当性に注意する。証拠となる資料は申請書類の作成や実地調査に備えて、整理し保管しておく。

NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会

1994年11月創設。1998年のNPO法成立、2001年の認定NPO法人制度成立、そして2011年6月の制度大改正を市民側からリード。市民活動を支える制度を勝ち取ってきました。NPOの個別サポートプログラムを4月からスタート。これからのシーズは、「基盤整備の時代」から「NPOの成長と成果の時代」を目指します。

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本記事は、2014年04月11日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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