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子育て支援事業の施策を活用し、地域での子育て交流スペースを開設した方法

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NPO法人Commune with 助産師 外観

地域の中で孤立しがちな母親が、育児を通したよい交流の中で安心と喜びを実感しながら健やかな子育て・子育ちができるよう支援する、子育て交流スペース常設の取り組みである。2009年、福島県の「地域子育て支援活性化推進事業」を受託し、2カ月間で758人が利用。期間限定な中、利用者からは高い満足度を得る。
その後、2010年には地域助産師としての社会的役割を果たすべく、助産師という専門家が集まってNPO法人立の助産院を開設。
出産までは行政の支援制度があるものの子育ての場面になった途端、相談できる場所がなく、核家族で、地域での子育てサポートが少ない中の開設であった。
安心して子どもを産み育てることを可能とする地域社会の実現の取り組みを紹介する。

(2014/10/1シーズ取材)

ビフォーアフター

ビフォー

気軽に立ち寄れる場所、相談できる場所、常設の場所がない。
不安や育児疲れなどのストレスが蓄積し、誰も頼れない孤独な育児となることで、親の活力低下や子どもとの愛着形成および健全な成長を促進できない危惧がある。

アフター

不安や育児疲れ、ストレスが蓄積しない早期に利用することで、産後うつや虐待の予防を図ることができる。
助産師が集まって仕事をすることにより、互いに学ぶことができる
子どもについて他のお母さんと話せ、支えあえる仲間ができる。
専門職を配置することにより、母子保健・育児の相談にも応じられ、家族の健康に寄与できる。

手順

1. 地域助産師として社会的役割を果たしたい

NPO法人Commune with 助産師は、福島県いわき市で母子や家庭、女性の保健・医療・福祉の向上に取り組む。
「いわき市で出産後、育児に不安を持つ方々によく遭遇します。核家族で、地域での子育てサポートが少ないんです。私は4年ほど病院で助産師として務めた後、保健・介護・保育教育を経て、10年前より再度、助産師の仕事を始めました。そこで、出産時、おめでとうと一緒に喜んだ母親が、産後2か月もすると、大変な状況に置かれていることを知ります。お産後の大変な不安・負担を抱え、相談する場所もない実情に触れ、助産師という専門家だからこそ、妊娠中、出産、授乳中を通してサポートできるのではないか。施設の外での本来の助産師業もしていきたいと仲間に呼びかけました。」(草野祐香利理事長)
地域(Community)助産師の存在と親しみ・信頼(Communication)を発信しようと2006年9月に任意団体を設立。いわき市のパイロットオフィスに入居し、健康子育て支援事業のコミュニティビジネスモデルを開始した。

画像:NPO法人Commune with 助産師の団体紹介パンフレット

Npo

2. 福島県委託「地域子育て支援活性化推進事業」に出会う

2007年に、いわき駅前のいわき産業創造館創業者支援室に入居。県内の助成金事業を複数受けて、地域助産師不足による妊産婦保健サービス低下や妊娠期からの健康育児支援、食と母乳などのテーマに取り組み、事業規模を100万円、200万円と拡大させてきた。そして、いつも繰り返し、助産師としての母子支援と子育て支援を組み合わせた事業をしたいと構想を暖めていた。
活動から3年目を迎え、組織の基盤と更なる活動の充実を図ろうと、2009年4月にNPO法人を設立する。「そんな折、県からこのチラシが三つ折りされて郵送されてきたんです」と、「福島県 民間団体企画提案型子育て支援活動活性化推進事業」のチラシを手に取って草野理事長は当時を振り返る。
「行政主体の週3日の子育てスペースはありましたが、私たちが目指したのは、気軽に集まって、相談でき、情報交換ができる。平日は毎日開設し、予約不要。駅前の好アクセスで、図書館も入っている建物なので立ち寄りやすいという広場型の子育てスペース事業でした。真にぴったりやりたいことだと応募しました。」
福島県委託「地域子育て支援活性化推進事業」は、厚生労働省が平成21年度実施した「児童育成事業推進等対策事業」で、児童の健全育成に資する模範的・奨励的な事業の実施により、児童健全事業の普及や次世代育成支援対策等の推進を図ることを目的に実施された事業で、全国で10億円の予算がつけられた。

写真:「福島県 民間団体企画提案型子育て支援活動活性化推進事業」のチラシ

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3. 「オハナルーム」オープン

「いつでも誰でも、笑顔があふれる子育て交流スペース常設事業」(通称「オハナルーム」)は無事採択され、2010年1月から3月までの3か月間受託となった。
2010年2月3日から3月30日までの38日間、午前10時から午後3時まで、予約なしに立ち寄れる子育て交流スペースを開設した。今まではイベントがある日だけ活動していたが、この事業をきっかけに毎日の活動になった。地域のオアシス・家族のような心もちで12人の助産師・看護師・子育てサポーターの体制で臨んだ。
交流スペースには、子どもに良いおもちゃ、絵本、乳幼児体重計、乳幼児身長計、血圧計、胎児心音計などを整備。交流、遊び、休憩、授乳、相談ができるほか、ほっと一息カフェサービスも提供した。また、イベント企画として、<行事を楽しむLucky Day>として節分、ひな祭りを祝ったり、<お誕生を祝うHappy Day>として2月生まれ、3月生まれの赤ちゃんの足形をとるイベントも開催。また、父親参加の機会を設けたパパ広場を日曜日に2回、春休み期間には高校生の参加を促す高校生プラザを2回開催した。
開設期間での延べ利用者数は758人(大人388人、子ども380人)、初産婦の利用が84.3%。また、利用した子どもの年齢は0歳児が44%、1歳児が28%となり、地域の中で孤立しがちな母親が、育児を通したよい交流の中で安心と喜びを実感しながら健やかな子育て・子育ちができるよう支援する当初の目標が達成された。

写真:2月3日オハナルームオープン♪予想以上に沢山の方にきていただいて感謝!

4. 振り返り

「3か月で委託料は約50万でしたが、身の丈に合った事業でした。行政からの委託事業という経験は書類のやりとりも学びました。」(草野祐香利理事長)
 子育て交流スペースの取り組みは、市からの事業委託に繋がればいいと期待もあったが、社会福祉協議会が受託し、2010年4月にオープン。利用できる選択肢が増える中で、助産師という専門家だからこそできる活動へと改めて事業を整理する。
そして、2010年6月、今の場所(いわき市平谷川瀬)に移転すると同時に入院定員4人の「こみゅーん助産院」を開設する。産前産後の支援、卒乳時期までの母乳育児支援を主に行う助産院である。3階建ての建物は、設立当初からの相談役で「助産院が地域からなくならないように」との思いを共有する助産師1人が、いずれは助産院を開きたいとして建築したもので、インキュベート・オフィス当時の家賃で借りることができている。

写真:オハナルーム開設当時の新聞記事(いわき民報 平成22年2月4日)

5. 発展

Commune with 助産師では、毎月9回のテーマ別の集い「こみゅーんクラブ」が催されている。助産師がいるサロン、ママ&ベビー体操、ベビーマッサージ、ハンドメイド、アレルギーっ子ごはん、ママ&ベビーフラと、目的を持ちながら集まり、一緒に話すことができる場である。
「こみゅーんクラブの前身は「オハナルーム」のイベントです。乳幼児が他の子と触れ合え、乳児を持つ母親の集まれる場所の必要性の再確認しています。0歳児対象が珍しいのか、すぐに定員いっぱいになってしまうので、この事業をもっと増やすといいのか、今後の展開を考えています。」(草野祐香利理事長)
2009年の福島県委託「地域子育て支援活性化推進事業」の終了後、活動拠点となる助産院を開設し、妊産婦健康教育や妊婦検診、妊娠・出産・育児相談に乗る。そして、「こみゅーんクラブ」は、0歳児がお母さんと一緒に通え、育ちあえるような保育園のような場所である。また、2011年5月に取りかかり、2012年2月より運営実施している「ホームスタートこみゅーん」がある。外に出てくるのが困難な子育て家庭に、研修を受けたボランティアさんが訪問し、傾聴と協働をする。市内で生活する全ての子ども・子育て家庭を視野に、Happy Birth全てのいのちが愛しい。ママがいきいき!家族が元気!!妊娠中からの健康な子育てを応援し、地域での子育て、環境づくりに寄与している。 

写真:こみゅーんクラブ~子育て交流HappyTime♪

コツ

・助成金、補助金事業は、新規性を求められることも多いので、無理をし過ぎないようにしています。
・当市は、単独のNPO法人には委託を出し難いという現状もあり、参画するネットワークとして助成金事業を受託したこともあります。(草野祐香利理事長)

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NPO法人Commune with 助産師 理事長 草野祐香利

1987年筑波大学医療技術短期大学部看護学科卒業。看護学科の実習で生命の誕生(お産)と出会い、衛生看護学専攻。1988年天使女子短期大学専攻科衛生看護学修了。職業として第一に選択したのは助産師。新卒から4年間の病院勤務の後、助産への想い・関連分野への興味等から、学校保健、介護福祉、保育の教育にも関わる。その後、1998年、自身の第2子出産を助産院で体験できたことを契機に、助産師への復職を決意。「主体的なマタニティライフと出産」「妊娠と家族」についてが学生時代からのテーマ。助産師として行えることはすべて使命であると考え、現代の母子や家族のニーズに応えていけるよう研鑽している。

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本記事は、2015年01月07日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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