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情報公開請求で市町村ごとの統計データを入手する方法(宮城県)

2014 01 09 12.13.47
宮城県 県政情報センター

 情報公開請求と聞くと、マスコミや市民オンブズマンが、行政の不正や問題を暴くために行うものというイメージがあるかもしれません。しかし、手続き自体はとても簡単で、開示請求できる文書もかなり幅広いです。しかも、原則として公開することになっているのですから、これをNPOの活動に利用しない手はありません。

 一つ例を挙げます。文部科学省の学校基本調査により、宮城県の中学生の不登校率は47都道府県でワーストだという結果が出て、これは震災やその後の避難生活の影響が子どもに出ているのではないかという報道がありました。しかし、宮城県も広いですから、不登校が震災の影響かどうかは市町村ごとのデータを見て判断する必要があります。また、不登校生とへの支援はどの地域でより必要とされているかということも、市町村ごとのデータを元にすれば説得力が増します(他県では、市町村ごとの不登校のデータを最初から公開しているケースもあります)。

 今回は、情報公開請求により市町村ごとの統計データを入手してNPOの活動に役立てるということで紹介しますが、応用例は他にもいろいろあると思いますので、みなさんも有効な使い方をぜひ考えてみてください。

ビフォーアフター

ビフォー

ある課題について、都道府県レベルの統計データしか公表されてなく、市町村レベルのデータがないため、地域の状況については自分が見聞きした情報もとづき活動をしている。

アフター

情報公開で市町村レベルの統計データを入手することで、客観的な根拠に基づき、活動を行う地域の優先順位をつけたり、地域の状況に応じた活動を行うことが可能になる。

手順

1. 情報公開請求したい情報を具体的にする

 NPOの活動をしていく上で、目の前の支援対象者を見ているだけでは見えてこない問題もあります。そういうときに行政が持つ統計データを利用すると、全体的な傾向が見えてくることがあります。県や各市町村も、ホームページや報告書等でそうしたデータを公開していることも多いので、まずはそうしたデータを探してみましょう。

 しかし、「はじめに」で挙げた不登校のデータのように、都道府県レベルでは公開されていても、市町村レベルでは公開されていないものがあります。そのようなときこそ情報公開制度が役に立つときです。どのようなデータを知りたいかをまず自分の中で具体的にしましょう。

2. 情報公開制度の概要を知る

 この制度は誰でも利用可能です。個人だけではなく、法人でも構いません。開示請求できるのは、「県の職員が職務上作成し,又は取得した行政文書(文書,図画,写真やビデオテープ等の電磁的記録で,組織的に用いるものとして,県が保有しているもの)」になります。一方で、法令の規定により公開できない情報や、特定の個人が識別される情報など、開示できない情報もあります。

 開示の方法としては、①閲覧・視聴、②写しの交付・複製物の供与、③1および2の両方の3つがあり、請求の時点でどれかを選ぶことになります。

3. 請求書に必要事項を記入して提出する

 請求する方法はいろいろ用意されており、窓口、郵送、ファクス、メール、電子申請システムのいずれかを選ぶことになります。ここでは比較的利用度合いが高いと思われる、窓口およびメールでの請求方法について紹介します。

〈窓口編〉

 県庁の地下1階にある県政情報センターか、各地方振興事務所にある県政情報コーナーが情報公開請求の窓口になります。県政情報センター・コーナーには県政に関する各種資料があり、担当の職員もいるので、求めようとしている資料がすでに公開されていないかどうかまずは訊ねてみるとよいでしょう。

 やはり請求しないと出てこないという場合には、行政文書開示請求書に氏名、住所、請求する行政文書の内容などを記入して提出することになります。行政文書開示請求書は簡単な様式で、書くのも難しくありません。書き方がよくわからない場合は職員の方が教えてくれます。

 行政文書開示請求書は、宮城県の行政文書の公開のページからダウンロードすることもできます。

〈メール編〉

 メールの場合は、件名を「行政文書開示請求について」として、以下の6つの項目を書いて県政情報公開室のメールアドレスに送信します。

(1) 開示請求の年月日
(2) 開示請求のあて先
(3) 請求者の住所及び氏名
(4) 請求する行政文書の内容
(5) 請求者の連絡先電話番号
(6) 行政文書の開示の方法の区分

 県政情報公開室のアドレスおよび各項目の詳細については、宮城県のホームページの電子メールによる開示請求についてをご覧ください。

 県政情報公開室がメールを確認すると、請求者に電話でメールの到達報告および内容確認の連絡が来ます。

 画像は行政文書開示請求書です。とてもシンプルな書式です。

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4. 開示の決定について通知を受ける

 開示請求のあった行政文書は、請求の日から15日以内に開示するかどうかの決定が行われます。決定の結果と、開示する日時・場所について文書で通知が届きます。これは請求が窓口でもメールでも同じです。

 写真は、筆者が情報公開請求したときの行政文書部分開示決定通知書です。こうした通知が届きます。

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5. 開示文書を閲覧する/写しの交付を受ける

 開示文書の閲覧および写しの交付の場所は県政情報センターか県政情報コーナーになります。開示の日時は通知文書に記されていますが、「開示請求担当者との調整による」となっているケースが多いのではないかと思います。閲覧や写しの交付を受けに行く場合は、日時について事前に連絡しておく方がスムーズです。

 閲覧は無料ですが、写しの交付を受ける場合は、白黒コピー1枚10円、カラーコピー1枚30円の実費がかかります。閲覧せず、写しの交付のみの場合は、郵送も対応してくれるので、希望する場合は事前に問い合わせるとよいでしょう。

 写真は筆者が情報公開請求をして交付を受けた文書です。非開示の部分は黒塗りになっています。

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6. 不服の申し立てをする(非開示の場合)

 情報が非開示となり、その決定に不服がある場合は、行政不服審査法による不服申し立てができます。非開示になる情報は情報公開条例で定められており、それ以外は原則として公開になるはずですが、残念ながら非開示となってしまうケースもあるようです。そうした場合には不服申し立ての制度を利用しましょう。

コツ

・情報公開請求する際には、どのような内容の情報を知りたいのかできるだけ具体的に記入しましょう。件名がわかる場合には件名を記入したり、特定の年度のものについては年度の範囲を記入するなどしないと、適切な情報が入手できなかったり、担当者と何度もやり取りをすることになるかもしれません。
・制度や手続きの詳細、問い合わせ先については、宮城県の行政文書の公開のページをご覧ください。
・地星社では、情報公開制度を利用して宮城県内各市町村ごとの不登校率(小学校・中学校)のデータを入手し、不登校の状況を記事にまとめました。参考までにご覧ください(「震災の影響で不登校が増えた」は本当か?)。

Fuda

布田 剛

 社会をよりよくする活動を行っている人や組織を支援する非営利組織、地星社の代表。

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本記事は、2015年01月16日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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