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マドレ式テレワークの始め方【1.準備編】

場所や時間の制約を受けない働きかたを実現する方法です

NPO法人マドレボニータには「事務所」がありません。理事・スタッフ・インストラクター全員が在宅勤務をしています。事務・企画・営業を担当する事務局スタッフの居住地も、東京近郊に限らず、関西、九州、アメリカとさまざまです。パートナーの転勤などでの居住地移動もありますが、業務を継続できています。
その実現を支えているのは、クラウドコンピューティングを活用したテレワークの仕組みです。

マドレボニータは「第14回テレワーク推進賞」において「雇用の創出と継続」の点で評価をいただき、「奨励賞」を受賞しました。

場所や時間の制約の問題はNPOにはつきもの。その解決策の一つとなる「マドレ式テレワーク」の始め方をご紹介します。
※今回はテレワーク導入の基礎ということで、無料で利用できるクラウドコンピューティングサービスの活用までをご紹介します

★1.準備編(このページです)
…働くルールと環境づくり
★2.情報共有編
…ドキュメントの共有、ミーティング、SNS活用

ビフォーアフター

ビフォー

活動にかけられる時間やタイミングがまちまちなスタッフやボランティアメンバー。
例えばこんな悩みはありませんか?
・うまく情報共有ができない
・コミュニケーションが円滑に進まない
・パートナーの転居や家族のライフステージの変化で活動が続けられなくなる

アフター

対面でコミュニケーションできる機会や、やりとりできる時間が限られていても、クラウドコンピューティングを活用したテレワークを行うことで…
・「情報」「状況」が共有できるようになる
・円滑かつ楽しく活動が続けられる
・転居など生活環境の変化にも柔軟に対応できる
・効率もよくなるので活動の質もアップ

手順

1. 【事前準備(1)】メンバー間でイメージを共有する

「テレワーク」や「クラウドコンピューティングを使った事務局運営」についてのイメージをメンバー間で共有します。

参考資料
・「自宅でのテレワーク」という働き方(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/pamphlet.pdf

・マドレ式クラウド事務局の事例紹介(マドレボニータ)外部セミナーのプレゼン資料です
http://www.slideshare.net/madrebonita/7-1-3?qid=b3e6faf1-b873-473a-9c2f-f47aba2c6eae&v=qf1&b=&from_search=5

2. 【事前準備(2)】環境を整える

【制度面】
就業規則をテレワークによる就業を想定したものに改訂します。
詳しくは以下の資料をご参照いただきたいのですが、従来の就業規則の改正や、附属の規定として「テレワーク勤務規定」の作成などが必要となります。

参考資料
・テレワーク勤務規定 作成の手引き 改訂版(一般社団法人日本テレワーク協会)
http://www.1s-of.com/useful/pdf/hou213.pdf



【設備面】
テレワークに必要な設備を準備します。
・パソコン、モバイル端末など
・ネット環境(自宅/またはモバイル通信端末)
・カメラ/マイク(必要に応じて。パソコン内蔵のもので対応可能な場合も)

機器を貸与するのか、個人のパソコンや通信機器を使うのか(その場合機器使用料として一定額の手当や通信費実費を支払うのか、個人負担とするのか)は予め取り決め、上記の就業規則や附属規定に盛り込みましょう。

マドレボニータでは、月1日以上モバイル通信を業務で使用した月は、一律額の「モバイル手当」を支給しています。

3. 【メーリングリスト(1)】テーマごとにメーリングリストを作成し、情報を共有する

【なぜメーリングリストを使うの?】
現在、さまざまな報告・連絡・相談はメールを介して行われることが多いですが、個人間でのやり取りとなり、メンバー内でも内容や経緯が見えにくいもの。そこでテーマに応じていくつかのメーリングリスト(以下ML)を設定します。そのテーマに関する内容は「全共有」を前提に、原則メンバー間は個人宛ではなく、テーマに合うML宛に投稿。やり取りと内容を可視化します。


(1)全メンバーが使用するMLサービスのアカウントを取得する
まず利用するサービスを決め、各メンバーにMLを受信するメールアドレスと、MLサービスのアカウントを取得してもらいます。

マドレボニータでは現在「freeml」を利用しています。
http://www.freeml.com/


(2)MLをテーマごとに作成する
次にMLを作るテーマを書き出し、MLを作成。それぞれのMLの管理人と、そのMLに加入するメンバーを決めます。
例えばマドレボニータでは…
・NPO-ML(日々の運営に関すること全般)
・GYM-ML(運営のうち、組織の事務的な内容)
・WEB-ML(クラウドコンピューティングやWEBまわりの連絡、相談)
・その他各プロジェクトごとに作成
全部で30近いMLを使っています。

その団体の運営全般に関わる人(理事や事務局スタッフ)は基本全てのMLに入ります。特定のプロジェクトに参画するメンバーは必要なMLに入ってもらいます。


(3)ML運用の約束事を決める
特に件名表記に関するルールを決めておくと、たくさんのメールが来ても、件名で概要や自分にとっての重要度がわかるのでオススメです。

一例ですが
「鈴木さん【会報原稿確認のお願い※3/5中】太田」
→「主に伝えたい人【概要】投稿者」とします。

これに鈴木さんが返信を投稿する際は
「確認しました。修正あり(鈴木)>鈴木さん【会報原稿確認のお願い※3/5中】太田」
…とするなどです。

どんな要素を、どの順番、記号でというのは一つの正解はありませんが、
団体内では取り決めをして、極力同じルールで書くようにしておくといいのではと思います。


(4)投稿を始める
投稿したい内容、相手に合うMLを選んで投稿をします。
伝えたい相手がそのMLに加入する1、2名だとしても、MLに投稿することで「こういう動きがある」ことを可視化し、共有することがテレワークでは大切だと私たちは考えています。

また、外部の方へメールを送る際も、BCCにそのテーマに合うMLを入れておくことで、「外部とこんなやりとりをしています」ということが内部で共有できます。外部からの返信が個人宛に来ても、その返信を文末に残した返信をBCCでMLに送ることでやりとりが見えますね。
※個人情報を含むリストなどを含む外部への送信の場合は、BCCではなく、別途送った文面のみをMLに投稿して共有する、などで対応しましょう。

多くのMLに入る人は、たくさんのメールを受信することになります。自身の業務に関係が深いもの、そうでないものと幅もあります。メールに溺れて、重要なものを見逃したり、必要以上に処理の時間をとられたりしないよう、工夫と心がけが必要です。
例えば、利用しているメールサービスの「タグ」機能や「スターマーク」機能などを活用して重要なものは見逃さずにしっかり読む、アクションが必要なものは印をつけるなどして対応を忘れないようにする、それ以外のものは件名などから内容を判断してかいつまんで読み、ある程度把握しておく…といった自分なりの処理方法を身につけましょう。


★参考資料
メールの超プロが教えるGmail仕事術(単行本)樺沢紫苑 著
http://www.amazon.co.jp/gp/product/476313048X/ref=wms_ohs_product?ie=UTF8&psc=1

4. 【メーリングリスト(2)】朝夕にタイムカード代わりのメールを投稿する

【なぜ朝夕にメールを送るの?】
テレワークの場合は、勤怠管理上、オフィス勤務時の出退勤記録(タイムカードなど)の代わりの方法を用意しなければなりません。
その方法の一つが電子メールで上司など勤怠管理者に報告をする、というものですが、マドレボニータでは「朝メール」「夕めーる」を上司だけでなく、MLに投稿することで出退勤の時刻だけでなく、近況、その日に取り組む業務の予定や一日終えての結果などを共有しています。

☆役割
・朝礼/終礼がわり
・タイムカード(勤怠管理)
・15分単位の記載⇒計画的かつ適度な緊張感をもっての勤務
・ロッカールーム、給湯室、ランチタイムの役割

☆メリット
距離・在宅のデメリット解消
近況報告と各人の近況報告へのコメント⇒腹を割って話す関係づくり
雑談から生まれる想い、アイデア、夢の共有

※株式会社ワーク・ライフバランス社の小室淑恵氏が考案された「朝メール」「夜メール」を参考に導入し、テレワークを行う私たちに合うフォーマットを試行錯誤する中で、現在こんな形になっています。私たちは子どものお迎えなどで夕方には終業するので「夕めーる」となります。ちなみに「めーる」とひらがなにしているのは、「夕メール」だと「ためーる」と読めてしまうから…という理由からです(笑)。


(1)「朝メール」「夕めーる」を投稿するMLを決める
マドレボニータでは「NPO-ML(日々の運営に関すること全般)」に投稿することにしています。


(2)始業時に「朝メール」を投稿する
【あいさつ、近況】家族の状況や体調、または週末にあったことや気になっているニュース、イベント、お菓子など(?)、雑談です。
【本日の予定】15分単位で本日取り組む予定のタスクと予定時間を書きます。
【タスク】「予定」に書いたタスクについての補足や今日優先して行うことなどを書きます。


(3)終業時に「夕めーる」を投稿する
【あいさつ、近況】仲間が朝メールで話題にしていたことに触れたりもします。
【本日の就業内容】15分単位で、実際に行ったタスクと所要時間、1日の労働時間を明記します。
【振り返り】完了したタスクと未了のタスクを列挙したり(未了の場合は実施予定なども)、行ったタスクについての補足、進捗状況をシェアします。
【本日のK.U.F.U.】一日を振り返って、業務で工夫できたこと、仲間に提案できたことなどを1つシェアします。
→今のやり方をベストと思い込まず、常に改善の余地があるという意識をもつことで業務にいい緊張が生まれます。また、シェアする機会を毎日もつことでためたり忘れたりせずに、団体の共有財産となり、他のメンバーの業務の効率化にもつながります。
【次回のタスク】次回入る日と予定しているタスクを表明します


(4)勤怠を集計する
マドレボニータでは、「夕めーる」に記載した就労時間をもとに、1ヶ月の「勤務表」を作成し、代表と人事担当者、経理が確認して勤怠が確定します。

5. 「情報共有編」へつづく

制度・環境が整ったら、いよいよ実務に使うドキュメントの共有、自宅や出先から音声通話ソフトをつないでのミーティングやコミュニケーションのフェーズに進みましょう!

2.情報共有編はこちら

コツ

テレワークは、機器やネット環境さえあればうまくいくわけではありません。
準備の段階において、私たちの経験から大切と考えるポイントは以下の通りです。


(1)全員が使えること、使う意欲があること
例えば「AさんのパソコンにはSkypeが入っていない」「BさんはMLをあまり確認してくれない」という人が1人でもいると、その人とのコミュニケーションにはその手段は使えず、別途その人へ連絡をしたり、フォローしたりする必要が生じてしまいます。
スタートする時点で全ての方法を習得している必要はありません。でもテレワークをはじめてみようというタイミングで使えるようになる意欲やコンセンサスは必要だと思います。

もちろん得手不得手はありますので、スタートしてからのメンバー間での研修やフォロー、声かけなどもしていきましょう。後から参画する人がスムーズに入っていけるように、マニュアルを作るのもいいですね。


(2)「基本全共有」を意識する
テレワークだから、に加え、入る時間や曜日が人によって違う「ワークシェアリング」だから、という観点からですが、「徹底して情報を共有する」ということが、業務をスムーズに行う上で重要です。
外部とこんなやりとりをしているといった業務の進捗状況や、業務の運営に使うドキュメント類も、必要に応じて確認し、代理対応ができるようにしておくことが大切だと考えます。もちろん、個人情報の入ったリストも何でも共有、ということではありません。

ただその分、流通する情報量が多くなりますので、わかりやすい分類、パッと見て概要がわかるタイトルの付け方、個々人の情報の取捨選択(しっかり読むもの、概要を把握しておけばいいもの、いざというときに見ればいいと心得ておくもの)スキルなどが問われます。

  

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太田智子

NPO法人マドレボニータ 事務局次長。准認定ファンドレイザー。
東京都八王子市出身、慶応義塾大学卒(文学部社会学専攻)。印刷会社で企画スタッフ7年、人材紹介会社でキャリアアドバイザーや企画スタッフを4年半経験。妊娠中に会社都合退職、失意の中マドレボニータを知る。2009年女児を出産、ボランティアスタッフを経てマドレボニータの事務局スタッフに。現在の主な担当は法人営業とファンドレイジングで、最近は活動紹介などの登壇の機会も増えている。2011年度NECワーキングマザーサロンファシリテーター。地元のコミュニティFM「FM西東京」では月2回パーソナリティとしてゲストインタビューなどを担当中。
http://mokoscope.blogspot.jp/

【NPO法人マドレボニータ】
マドレボニータとはスペイン語で"美しい母"の意。
産前・産後のヘルスケアプログラムの開発・研究・普及に尽力しています。
全国約50箇所で「産後のボディケア&フィットネス教室」を開催中です。
http://www.madrebonita.com

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本記事は、2014年03月10日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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