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4号条例を自治体に作ってもらう方法

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市民活動団体の相談に乗る市川市職員の様子

 平成23年度税制改正大綱において、市民活動を税制面から支援する法改正が盛り込まれ、地方税については、NPO法人への寄附促進を目的とし、個人住民税の寄附金税額控除の対象となる特定非営利活動法人(以下、「NPO法人」という)を各自治体が個別に「条例で指定する制度」(以下、「条例指定制度」という。)が創設されました。これが4号条例といわれるものです。

 条例で指定したNPO法人に対し寄附をした場合、寄附者は寄附金税額控除を申告することができるため、寄附者が増えNPO法人の資金不足の解消につながると期待されています。

 さらに税制上で優遇される認定NPO法人取得に必要なPST基準(NPO法人が広く支持を受けているか図るための基準)が免除され、認定取得にはずみがつくことも期待された制度です。
 
 この制度を導入するまでのプロセスを市川市の実例を基に紹介します。

ビフォーアフター

ビフォー

活動資金の多くが自分たちの持ち出しで、資金不足の問題を抱えているNPO法人が多い。また、税制優遇が大きい認定NPO法人の取得基準を満たすことが難しい。

アフター

住民が「寄附」という直接的支援、自治体が「税額控除」という間接的支援でNPO法人を財政面で支えます。
また、認定NPO法人の取得基準(PST基準)を満たすことで、認定取得への道を開きます。

手順

1. まずは、ボランティア・NPO団体を所管する部署に相談しよう。

 条例指定制度は、制度導入の要否や導入する際の基準、手続き等が各自治体の裁量に委ねられています。まずは、ボランティア・NPO団体を所管する部署に相談してみましょう。
その際、制度の導入がNPO法人の支援に留まらず、より地域に根ざした活動が展開でき、広く住民からの支持を得ることにつながり、最終的には自治体内に暮らす住民生活に貢献できるという視点が大事です。
 また、この制度はNPO法人が寄附を受けやすくなると同時に、認定NPO法人取得へのステップとなるため、国税や住民税への影響も少なくありません。そのため、自治体は制度導入の要否について、近隣市や様々な自治体との意見交換が必要となり、自治体内においても住民税を担当する課などとプロジェクトチームを立ち上げ、いろいろな視点から検討が必要であることも理解しておきましょう。

2. 地域の実情にあった基準が必要です。

 条例指定制度の導入にあたり、最も悩む点は「どのようなNPO法人を条例に指定するのが妥当であるか」を判断する基準作りです。なぜなら、条例に指定された場合、認定NPO法人の取得に必要なPST基準(NPO法人が広く支持を受けているか図るための基準)が免除されるため、どのくらいの基準を以って「広く支持を受けている」とできるのかという、難しい判断が各自治体に委ねられているからです。
 基準作りで一番大切なことは、自治体内で実際に活動しているNPO法人の実情にあった基準を設定することです。基準が高すぎては、どこも手を挙げられず、逆に低すぎては、何でもありの指定となりかねません。また、基準も、審査会を設置して審査をする必要があるものや、数値基準を用いて客観的に判断ができるものなど、様々考えられます。
 実際に活動しているNPO法人や市民に対しても、制度導入の賛否や基準の妥当性などを聴取し、自治体職員だけでなく、広く声を聞きながら基準を作っていくことが重要です。

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3. 申請書類の様式など細かい手続きを決めます。

 制度の導入が決まり基準もある程度決まってくると、次に必要なことは申請書類の様式など細かい手続きを決めていくことです。
 この手続きを条例や規則、要綱など、何で定めるかは自治体の裁量に委ねられていますが、条例で定める場合は議会の承認が必要です。
ちなみに、市川市では手続き関係を規則で定めましたが、制度導入にむけ「NPO法人を所管する部署」と「市民税を所管する部署」でプロジェクトチームを編成してから、手続きを定めた規則施行までに1年数ヶ月の期間を要しました。その間、法務関係を所管している部署との調整や規則案に対する市民からの意見の聴取なども行いました。

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4. 基準や手続きを確認し申請をします。

 手続き関係が定まるといよいよ申請の受付が始まり、基準を満たしているNPO法人は所定の書類をそろえて手続きをします。また、条例に指定された場合、その後の報告義務なども含めて、この制度の意義や目的等を確認し自治体に申請を出しましょう。

5. 議会で審議が行われます。

 申請は最終的に議会で「そのNPO法人を条例に載せるがどうかの是非」が審議、採択されます。
 条例に指定された場合、そのNPO法人への寄附が税額控除の対象となることは初めに記述しましたが、これは自治体にとって減収となる点を意識しなければなりません。減収といっても自治体運営に影響があるものではありませんが、指定されたNPO法人は、市民が寄附金という直接的支援、そして自治体が税額控除という間接的支援をしていることを忘れず、活動に取り組んでいく必要があります。
 また、自治体もNPO法人を指定した場合、様々な情報発信の媒体を使い、この制度の意義やNPO法人の活動内容を周知していく必要があると思います。
 最後に、条例に指定された後も実績報告を怠るなどの事実があった場合、再度議会で審議され条例から削除される場合もあります。これは、日頃の活動を寄附という形で応援してくれている住民の税額控除にも影響が及びますので、注意が必要です。

6. 継続して基準を満たすようNPO法人自身も努力しましょう。

 基準を満たすことが継続要件となっている自治体もありますので、初年度のみではなく、継続的に基準を満たすようNPO法人自身も努力することが必要です。
 また、初年度は基準を満たしていなくても、翌年度に基準を満たすことで申請できる場合がありますので、自治体が定めた基準を念頭に置きながら日頃の活動を行ってください。。

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コツ

 この制度では、多くが「寄附者の人数、寄附金額」」を満たすべき基準の一つとしていますが、寄附者を数える時に「対価性のある寄附」は算定の対象になりません。
 また、対価性のない純粋な「寄附」であっても、寄附が一律に徴収されるなど、任意に支出したとみなされない寄附についても算定の対象にはなりませんので、ご注意ください。

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千葉県市川市役所 ボランティア・NPO課

千葉県市川市は人口469,341人(平成26年2月28日現在)の都市で、平成11年4月にボランティア支援課(現在はボランティア・NPO課)が設置され、市民の自主的・自発的な地域社会への貢献活動を、公平、中立性を保ちながらサポートに取り組んでいます。

4号条例に係る取り組み
・市川市控除対象特定非営利活動法人に関する基準、手続等を定める規則(平成24年10月3日施行) 平成26年2月現在4法人を市税条例で規定
http://www.city.ichikawa.lg.jp/pla06/1111000028.html

その他市民活動支援等に係る主な取り組み
・ボランティア・NPO活動センターの運営(平成13年度~)
http://ichikawa.genki365.jp/ichikawa_volunteer/center.htm
・市川市市民活動団体支援制度「1%支援制度」(平成17年度~)
http://ichikawa.genki365.jp/ichikawa_volunteer/nouzei.htm
・市川市協働事業提案制度(平成18年度~)
http://ichikawa.genki365.jp/ichikawa_volunteer/kgts.htm
・地域ポイント制度「エコボカード」(平成18年度~)
http://ichikawa.genki365.jp/ichikawa_volunteer/ecovo.htm
・「いちかわ ボランティア・NPO Web」の運営(平成18年度~)
http://ichikawa.genki365.jp/index.html

サンクス

著者のご好意によりボランティアで記事を執筆いただきました。市川市ボランティア・NPO課様に御礼申し上げます。


本記事は、2014年03月12日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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