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認定基準もクリア、寄付者も納得の「特定資産」の活用方法

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認定基準の中で意外な盲点になるのが「実績判定期間中の受入寄付金総額の70%以上を特定非営利活動事業の事業費に充てること(通称:70%基準)」です。この基準はもらった寄付金を本来事業のために使うことを求めているわけです。通常は問題にならない団体が多いのですが、いくつかのパターンでは、そのままだとクリアが困難になります。そこで登場するのが「特定資産」です。特定資産をうまく積み立てて活用すれば、70%基準が楽にクリアできる他、資産に計上されている資金の使途も明確になります。「特定資産」は認定取得を目指していないNPO法人でも活用することは可能ですので、その活用方法を押さえましょう。

ビフォーアフター

ビフォー

●70%基準をクリアすることができず、認定・仮認定が取得できない。
●使い道が明確に決まっている資金があるが、他と紛れて分かりづらい。

アフター

●無理に寄付金を支出せずに70%基準をクリアでき、認定取得できる。
●使途が決まっている資金をしっかり区分でき、透明性が向上する。

手順

1. 70%基準の試算してみる。

まずは、特定資産の積み立てが必要かどうかを確認します。現状で70%基準をクリアできそうか試算してみましょう。70%基準は実績判定期間中の平均値で判定を行いますので、AとBいずれも初回なら直近2年度分、更新の場合なら5年度分の合計額になります。
事業年度の途中で計算する場合は、当初予算や決算見込み金額でも構いません。

【70%基準の計算式】⇒A÷B×100=基準の%(パーセント):70%以上あればクリア
●A:受入寄付金総額
受入寄付金総額はPST上寄付扱いできる収入・収益の合計額です。寄付金だけでなく、条件を満たす賛助会費や助成金も含まれます。

●B:受入寄付金のうち特定非営利活動事業の事業費に充てた金額
この金額は厳密な算出が難しいことから、多くの場合は、以下のような形で概算されています。
特定非営利活動事業の事業費-(行政からの補助金収入や委託事業収入、介護保険等の制度関係収入)
事業費(支出・費用)から補助金や委託事業(収入・収益)を差し引くのはなんだか分かりにくい計算ですが、これは補助金や委託事業費は受取寄付金に含まれない一方で事業費に充てることが求められていることが多いため生じる計算です。すなわち、事業費の中から明らかに寄付金を充てていない分(補助金や委託事業費から支出した分)を差し引いているわけです。腑に落ちないかもしれませんが、とりあえず先に進みましょう。

さて、これらの金額を基に、実際に試算をしてみます。試算したパーセンテージが70%以上であれば基準はクリアとなります。受入寄付金が少ない団体の場合は、100%を超えることもよくあります。
しかし、大口の寄付があった場合や委託事業・介護保険事業等だけしか行っていない場合、事業費管理費の計上が適正でない(管理費過大計上)の場合などにはパーセンテージがかなり低くなってしまう場合もあります。

2. 積み立て手続きを確認します。

試算した結果が70%に達しない場合やギリギリの場合などは、特定資産の活用を検討してみます。

「特定資産」は、積立金の使用目的(その法人の今後の特定非営利活動事業に充当するために法人の内部に積み立てるものであること)や事業計画、目的外取り崩しの禁止等について、理事会又は社員総会で議決するなど適正な手続きを踏んで積み立て、貸借対照表に例えば「特定資産」として計上するなどしているものであれば、いわゆる「総事業費の80%基準」や「受入寄附金の70%基準」の判定において、実際にはまだ支出していないにも関わらず、特定非営利活動事業費及び総事業費に含めることができるものです。

団体の定款にもよりますが、単に事務局や理事長の独断で使えるという方法ではなく、最低でも「理事会」の議決は必要だと思っておきましょう。

3. 積み立てが必要な金額を精査します。

活用の方向が決まったら、今度は積み立てる金額をより正確に算出します。いくらでもいいからとにかく積めばいいというものではなく、特定資産には以下のようなメリット・デメリットが存在しますので、これらを踏まえての検討が必要です。
B:受入寄付金のうち特定非営利活動事業の事業費に充てた金額
特定非営利活動事業の事業費-(行政からの補助金収入や委託事業収入、介護保険等の制度関係収入)+特定資産への積み立て金額

具体的には、1.で試算したBの金額に、特定資産への積み立て金額を加算して、パーセンテージが概ね75%以上になるように積み立て金額を調整してみましょう。

【特定資産のメリット・デメリット】
メリットは上記の70%基準での扱いに加えて、支援者や団体自身にとって寄付した資金の使途が明確になって分かりやすくなる点も挙げられます。デメリットはその裏返しで、「使途拘束」がかかる点です。当然ですが、目的で定めた事業以外への使用や管理費への充当は原則認められません。したがって、必要以上に特定資産を積み立ててしまうと団体の運転資金が不足することもあり得ます。積み立ては70%基準で最低限求められる程度にとどめておいた方が良いでしょう。運用規程等の定め方にもよりますが、取り崩しにも理事会承認が必要となるなど、一定の手続きが求められるのもデメリットと言えます。

4. 理事会や総会などで議決を行います。

特定資産の創設や積み立てについて、理事会や総会などで議決を行います。運用規程や取扱規程の制定は義務ではありませんが、70%基準で活用できるような特定資産としたい場合は最低でも「将来の特定非営利活動事業の事業費」に充てることを議決しておく必要があるでしょう。

【理事会(総会)議事録例】
第○号議案 特定資産(○○基金)創設の件
議長は、特定資産(○○基金)の創設につき詳細を説明し、平成26年3月●日付けで××万円を積み立てることとし、また、その運用のために別添「特定資産(○○基金)運用規程」を定める旨を述べ、承認を求めたところ満場一致をもってこれを承認・可決した。

5. 積み立て資金を別口座などに移動します。

別口座での管理も義務ではありませんが、他の資金との混同を防ぐためにも、できれば別途特定資産専用の口座を開設し、区分して管理した方が適切です。理事会等で議決した積み立て金額を特定資産用の口座へ移動します。運用規程等に管理方法に定めた場合などはそれに従ってください。

6. 決算時には貸借対照表や財産目録で区分して表示します。

積み立てた特定資産は、決算時に貸借対照表や財産目録で「○○基金特定資産」などと明確に区分して表示します。

7. 必要に応じて取り崩しを行います。

運用規程や議決時に定めた特定非営利活動事業で資金が必要になった際には、理事会等の議決を経て、必要金額を取り崩して使用します。この際に取り崩して使用した金額は、70%基準の計算上、既に事業費カウントされていますので、使用した事業年度の事業費として重ねてカウントすることはできません。

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コツ

「特定資産」という方法があることを覚えておく。また、70%基準をクリアしづらい団体は年度末の理事会前などに必ず試算してみて、必要があれば期中に積み立てまで終わらせるように準備しておく。

NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会

1994年11月創設。1998年のNPO法成立、2001年の認定NPO法人制度成立、そして2011年6月の制度大改正を市民側からリード。市民活動を支える制度を勝ち取ってきました。NPOの個別サポートプログラムを4月からスタート。これからのシーズは、「基盤整備の時代」から「NPOの成長と成果の時代」を目指します。

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本記事は、2014年04月10日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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