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1998年05月13日 10:00

行政 : 鎌倉市の市税の減免の根拠法について

 

 

 5月1日に鎌倉市長が発表した、NPO法人への市民税の減免措置の根拠法は、以
下の通りである。

1)市町村民税の減免に関しては

地方税法 第323条(市町村民税の減免)市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別な事
情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。

鎌倉市市税条例 第36条(市民税の減免)市長は、市民税の納税者が次の各号の一に該当すると認めた場合は、その申請により市民税を減免することができる。ただし、特別徴収義務者については、この
限りでない。


  1. 災害を受けた場合で減免を必要とするとき。

  2. 貧困により生活のため公私の保護を受ける者。

  3. 前各号のほか、特別の事由がある者。

 上記の市税条例第36条の3.に、NPO法人は「公共性がある法人」として
「特別の事由がある者」に該当するとし、減免するというもの。

 

2)固定資産税に関しては

地方税法 第367条(固定資産税の減免)市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要
とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別な事
情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免
することができる。

鎌倉市市税条例 第56条(固定資産税の減免)市長は、次の各号の一に該当する固定資産税であって、特に必要があると認めた
場合は、納税者の申請によりその固定資産税を減免することができる。


  1. 災害若しくは天候不順のため収穫が著しく減じた田、畑

  2. 生活保護法の規定により生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税に係る土地又は家屋

  3. 公益のため直接専用する固定資産(有料で使用させるものを除く。)

  4. 前各号のほか、特別の事由のため減免を必要とする固定資産

 上記の市税条例第56条の4.に、NPO法人は「公共性がある法人」として「特別の事由のため減免を必要とする固定資産」に該当するとし、減免するというもの。

 

3)軽自動車税に関しては

地方税法 第454条(軽自動車税の減免)
市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において軽自動車税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別な事
情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、軽自動車税を減免することができる。

鎌倉市市税条例 第74条(軽自動車税の減免)市長は、軽自動車税の納税者が次の各号のいずれかに該当すると認めた場合は、
その申請により、軽自動車税を減免することができる。


  1. 公益のため直接使用する軽自動車税

  2. 生活保護法の規定による、生活扶助を受けるとき

  3. 前各号のほか、特別の事由のため減免を必要とするもの

 

 上記の市税条例第74条の5.に、NPO法人は「公共性がある法人」として
「特別の事由のため減免を必要とするもの」に該当するとし、減免するというもの。

 




※ 解説 ※

「都道府県、市町村の条例・判断によってNPO法人の地方税には格差が出る?」




 NPO法人については、法人化した場合、収益事業を行っていない場合でも、地方税における法人住民税の均等割分が課税されることとなる。(実際には、法人化していない場合でも、人格なき社団として法人住民税の均等割分は課税されることと法律上はなっている。ただし、現実的には把握が困難なこともありあまり課税されていない)

 この地方法人住民税の均等割分は、都道府県と市町村がそれぞれ課税することとなっており、都道府県が年2万円、市町村が年5~6万円(市町村によって違う場合がある)となっていて、合計年7~8万円かかることになる。
これは、小規模なNPO法人にとって負担となるため、一部で問題視されてきた。

 現行の地方税法では、市町村民税を非課税にする対象として、次のように定めている。

第296条(個人以外の者の市町村民税の非課税の範囲)1.市町村長は、次に掲げる者に対しては、市町村民税を課することができない。
ただし、第二号に掲げる者が収益事業を行う場合は、この限りでない。

1、略(国、都道府県、市町村など)

2、日本赤十字社、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人、学校法人、私立学
校法第64条第4項の法人、労働組合法による労働組合、国家公務員法第108
条の4の規定に基づく国家公務員の団体、地方公務員法第54条の規定に基づく
地方公務員の団体、職員団体等に対する法人格の付与に関する法律第3条第1項
の規定に基づく団体、漁船保険組合、漁船保険中央会、漁業信用基金協会、漁業
共済組合及び漁業共済組合連合会、信用保証協会、農業共済組合及び農業共済組
合連合会、農業共済基金、都道府県農業会議、全国農業会議所、農業協同組合中
央会、農協協同組合連合会、中小企業団体中央会、国民健康保険組合及び健康保
険組合連合会、国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会、地方公務員
共済組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会、私立学校教職員共済組合、博
物館法第2条第1項の博物館を設置する4条の法人で学術の研究を目的とするも
の並びに国会職員法第18条の2の規定に基づく国会職員の団体

 この中に特定非営利活動法人が入っておらず、またただちに地方税が改正される予定がないことから、市町村民税を非課税とすることは難しいと考えられてき
た。(都道府県民税も同じ扱いである)

 しかし、鎌倉市の方法は、地方税法の323条を使い、「特別の事由のある者」として特定非営利活動法人を扱うとするもので、地方税法の改正がなくとも、市町村長の判断で、特定非営利活動法人に対する法人住民税の減免ができるものとして注目されるものである。

 昨年12月に、神戸市が、同様に、この地方税法の323条を使い、神戸市に事
務所を持つ特定非営利活動法人への法人住民税を減免することとすると発表したが、これは、阪神淡路大震災という「天災」を理由として、震災の復興・救援活動にあたる特定非営利活動法人を対象とするものであり、その適用の範囲は特殊限定されたものであった。

 鎌倉市が、この減免の対象を特定非営利活動法人一般に広げるとすれば、さらに一歩進んだ措置と評価できる。

 しかし、この方法がすべての都道府県、市町村に適用できるとは限らないと考えられる。

 たとえば、都道府県民税に関してであるが、地方税法では、次の規定がある。

地方税法第61条 (法人等の道府県民税の減免)道府県知事は、天災その他特別の事情がある場合において法人等の道府県民税の
減免を必要とすると認める者その他特別な事情がある者に限り、当該道府県の条
例の定めるところにより、法人等の道府県民税を減免することができる。
(都は道府県として読み替えることとなっている)

 しかし、これを受けた都道府県の条例には差がある。
たとえば、埼玉県税条例によれば

埼玉県税条例 第30条の5(法人等の県民税の減免)知事は、左の各号の1に該当するもののうち、必要があると認める者に対し、県民税を減免することができる。


  1. 民法第34条の公益法人

  2. 地方自治法第260条の2第1項の認可を受けた地縁による団体及び政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律第8条に規定する法人である政党又は政治団体

  3. 社会事業又は公益事業を行う法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるもの

 ここでは、「特別に認める者」といった例外規定がなく、条例改正がなければ、
法人県民税の減免は難しいのではないかと考えられる。

 一方、東京都においては、東京都都税条例で次のように定められている。

 東京都都税条例 第117条の2 (均等割の免除)均等割は、民法第34条の公益法人その他規則で定める法人(収益事業を行うものを除く。)及び法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものであって、知事において必要があると認めるものに対しては、これを免除する。

とされており、規則での定め方次第となっている。

 このことから、地方住民税の減免に関しては、都道府県や市町村の条例の現状、
首長の判断により、課税内容が変わる可能性が大きい。

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