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2003年02月17日 10:00

行政 : 堀田氏が反原則課税に「支援求む」

 政府の税制調査会のメンバーである堀田力氏は、14日、「非営利法人制度改革に対し意見を」と異例の呼びかけ文を発表した。財務省の「非営利法人は原則課税」の方針に対して、公益法人・NPO関係者からの意見を受けて反論したいとしている。ぜひ、意見や支援のメールをお送りいただきたい。

 

 政府の税制調査会のメンバーである堀田力氏は、14日、「非営利法人制度改革に対し意見を」と異例の呼びかけ文を発表した。財務省の「非営利法人は原則課税」の方針に対して、公益法人・NPO関係者からの意見を受けて反論したいとしている。ぜひ、意見や支援のメールをお送りいただきたい。  政府の行政改革推進事務局と財務省・政府税制調査会は、昨年から、公益法人制度の抜本的見直しについて検討を進めてきている。

 この検討では、行政改革推進事務局が法人制度に関して、財務省・政府税制調査会がその法人に関する税制に関して議論している。

 堀田力氏(さわやか福祉財団理事長)は、この政府税制調査会の下に設けられた非営利法人課税ワーキングチームのメンバー。

 ワーキングチームでは、2月7日から、新しい非営利法人に関する課税に関しての議論を本格化させたが、財務省から示された基本方針は、「非営利法人は原則課税」というものだった。この方針に堀田氏は強く反発。12日に独自の対案を作成して財務省に提出、13日、財務省と協議したが、物別れに終わった。

 次回のワーキンググループ会合は21日。

 堀田氏は、このままでは「非営利法人原則課税」という結論が早々に出かねないことを懸念した結果、財務省の了解を得た上で、現状報告と対案および意見募集の呼びかけ文を公表することに踏み切ったものだ。

 呼びかけ文は「非営利法人制度改革に関し、ご意見をお寄せください」というもの。

 対案を補強するために、多くのNPO・公益法人関係者から「緊急だが意見を募集したい」としている。

 また、この呼びかけ文とは別に、さわやか福祉財団の事務局では、「ぜひ堀田応援のメールもいただきたい」と呼びかけている。

 意見や応援のメールは、シーズ事務局の以下のアドレスまで。
 npoweb@abelia.ocn.ne.jp

 意見については、次のワーキンググループの会合が21日なので、20日夕方5時くらいまでなら、21日の夜の会合に反映することが可能。

 堀田氏が14日に発表した呼びかけ文は以下の通り。

  2003年2月14日
財団法人さわやか福祉財団
理事長 堀田  力
  非営利法人制度改革に関し、ご意見をお寄せください

●特にNPO関係者の意見が早急に必要な事情

 政府は、昨年3月の閣議決定により、本年3月中に、公益法人制度改革大綱を定め、基本的枠組みを定めることになっている。
 法人制度改革を担当する行革本部は、早くより、公益法人(社団法人と財団法人)、NPO法人、中間法人の三者を統合する制度をつくることは決めていたが、未だに結論を得ず、本年2月7日にはじめて、行革本部事務局が、非公開で、政府税制調査会非営利法人課税WG(ワーキンググループ)に案の骨子を示し、この案に対応して、財務省が、非営利法人課税案の骨子を示した。
 これらの案をもとにWGは、2月21日、3月4日の2回の審議を行い、おおよその結論を出すこととしており、それをもとに3月中に大綱が決まって閣議決定される運びとなる。
 拙速を責めるのはやすいが、可能な限り NPOの視点も取り入れた改革案(対案)をWGに示さなければ、このままでは、行革本部事務局・財務省案の骨子が大綱として固まると思われる。
 ところが、WG委員10名中NPOの視点があるのは堀田だけの状況なので、堀田は、とりあえず、後記のような対案を作成し、12日に財務省に交付、水野忠恒座長の了解を得て、速やかにこの案と、これに対する財務省の見解を、各委員に配布することとなった。
 しかし、対案はあくまで堀田私案であるので、多くのNPO関係者の意見を得て、修正すべきは修正し、補強したいと考える。骨格についての論議は、2月21日で終わる可能性もあるため、ご意見を賜る場合には早めにお願いしたい。

●政府税調で議論されることとなる素案とその理由を、堀田が聴いた範囲で推測すれば、次の通り

    1. 公益法人、NPO法人、中間法人をとりまとめて「非営利法人」とし、準則主義による届け出で設立を認める。
    2. 非営利法人は、原則課税とする。
      理由は、中間法人は原則課税とされているところ、新非営利法人は、中間法人並みの緩やかな規制しか受けず、また残余財団は社員等に分配されるから、我が国法人制度の原則にのっとり、事業年度ごとに利益に課税すべきであるというもの。

    3. 非営利法人のうち、社会貢献性を有する法人を登録法人(仮称)とし、国(特定の省)又は都道府県に登録する。
    4. 社会貢献性を有する事業活動を行う法人で、組織運営の適正などの要件を備え、残余財産を社員等に分配しない法人は、原則非課税とする。
      ただし、収益事業(対価を得る事業)による所得に課税する。
      また、過大な内部留保は制限する。
      収益事業に課税する理由は、営利事業と同様の扱いをするということにある。
      内部留保制限の理由は、過大な留保金は給与やフリンジベネフィットの形による実質的利益分配につながり、また、法人の支配者による任意の経済活動を行うことを可能とするから、課税しなければ営利法人とのバランスを失するというもの。

    5. 登録法人のうち、現行認定NPO法人に相当するものと、現行特増法人に相当するものについては、寄附優遇税制を認める。

●堀田が2月12日に提出した対案は、次の通り

  これは、もはや動かしがたい点(登録法人制度、内部留保金の制限など)は妥協し、非営利法人の原則非課税と社会貢献法人(登録法人)の本来事業非課税に重点を絞った対案である。
<対案の骨子>

    1. 届け出により設立された「非営利法人」は、1)原則非課税、2)収益事業(対価を得て行う事業)は課税、3)一定以上の内部留保金(毎年の増加分)は課税、4)個人に分配する財産には課税。
    2. 国・都道府県に登録し、第三者委員会(イギリスのチャリティ委員会のようなもの)のチェックを受ける「登録法人」は、1)原則非課税とし、2)本来事業(社会貢献事業)は非課税、3)それ以外の収益事業(対価を得て行う事業)は課税、4)非課税事業の収益につき100%みなし寄付制度の導入、5)事業従事者が無償で労力を提供した分も損金算入、6)一定以上の内部留保については課税。
    3. 国税庁が認定し、第三者委員会のチェックを受けた「認定法人」(仮称)には寄附金優遇税制措置。

1.非営利法人制度について
(原則非課税とする理由)

財務省案は、なぜ、原則課税かについて実務的理由を述べるだけで、実質的、本質的な理由付けがない。
精算時の利益配分と営利法人の配当とは、事業の構造に差がある。
実体的にも、会費や寄附金等につき収入として課税するのは、国民感情にそぐわない。
日本法は、人格なき社団につき、原則非課税としており、なぜ、法人になったら原則が変わるのか理由付け不能。
 また、法人成りを妨げるという不当な効果が生まれ、税制の中立性を失う。
先進諸国の流れも、原則非課税。
わが法制では、非営利法人は原則非課税という体系的位置付けで来ており、中間法人を設けた際十分な議論をしないで原則課税にしたが、中間法人はまだほとんど生まれておらず、実務上の影響はほぼ皆無なので、この際、本来の体系に位置付けるべきである。
現行公益法人のかなりが共益目的、あるいは実質営利事業であるため登録法人にするのが難しいと思われるので、現行公益法人を非営利法人・登録法人として受け入れやすくするためにも、原則非課税にしておくほうが移行しやすい。

(収益事業に課税する理由)

非営利法人でありながら積極的に収益を得るための事業を行ってき得た所得は、個人への分配の原資となる可能性が高いから。

(一定以上の内部留保金に課税する理由)

財務省案の理由に同じ
  (事実上の利益分配の防止及び営利法人とのバランス)

2.登録法人について
(前提)

登録法人における「社会貢献性」は、「もっぱら不特定かつ多数の者のために行う活動(及び不特定かつ多数の者が、もっぱら特定又は少数の者のために行う活動)」と定義し、言葉通り運用する。
 
(注) 1. これにより、多額の内部留保金を有する法人の多数がはずれる。
  2. 営利法人と同様の対価を得、報酬を払う事業(例えば介護保険事業)は職員の生活のためでもあるから、「もっぱら…」の要件で、はずれる。
社会貢献性は、当然、事業ごとにみる。

(本来事業による収益を非課税とする理由)

国民の利益となる社会貢献(公益)事業を実施するのであるから、その際負担可能な者に応分の負担を求め、これを同事業の原資として用いる時は、その収入は、国の特別会計事業と同様に、非課税とする。

(内部留保に課税する理由)

財務省案の理由に同じ
  (事実上の利益分配の防止及び営利法人とのバランス)

(みなし寄附制度などを採用する理由)

非本来事業の収益が本来事業に用いられる場合、その性質は寄附と同じであり、また、有償・無償のボランティアの労力提供の価値が市場価値より低い場合、その差額分は寄附と同じであるから。

3.認定法人(仮称)について
(説明)

現行の要件を整理し、広義のパブリック・サポートテストで認定する。
 
(注) 現行法上制限が設けられている補助金・助成金等は、公共性の高さを表すから、すべて分子に算入する。また、本来事業の収益も、行政サービスに対する国民の負担金と同性質だから、分子に算入する等。
民間委員からなる小規模な第三者委を設け、開示情報に基づく国民の告発等を受けて、登録、認定の当否及び事後チェックを行う。

(認定法人・登録法人の要件)

社会貢献性は、「寄附金・会費(対価性のないもの)・補助金・助成金・行政の委託金」の支出に占める割合と、ボランティア性労働の提供量の多さにより図ることができる(事業の受益者の支払う対価で事業が経営できる時は社会貢献性はなく、対価性のない資金でしか行えない事業は、社会貢献性が高い)から、寄附金等が費用の一定部分を占め、一部は受益者が可能な範囲で負担しているような法人(準公共財的法人)を登録法人とし、そのうち受益者の不特定度が高いためその負担がほとんどなく、費用の多くが寄附金等でまかなわれる法人(公共財的法人)を認定法人とする。
以上の要素を主としつつ、
  [1]運営組織、事業活動の適正性
  [2]経理の適正性
  [3]情報公開
  [4]租税回避を目的としないこと
の要件を加えて判定し、かつ、全般について評価制度を導入する。

●堀田案に対する財務省担当官の指摘事項 (2月13日)

  1. 非営利法人の取扱いについて
    新制度における「非営利法人」は、現在の公益法人や NPO法人のような行政庁の許可や認証ではなく、登記により簡単に設立(準則主義)。その行う事業活動の内容に制度上何ら制限はなく、営利法人が行う商行為と実態としては変わらない活動を行うことができる。
     また、同族中小法人は配当を行わないことが通常であり、こうした法人と非営利法人が事業の構造に差がある」とは言えない。
     このような点を踏まえれば、「非営利法人」については、原則課税とすることが適当ではないか。
    我が国の現行法制は、非営利を目的とする法人の中で、公益目的かつ残余財産の帰属に制限がある公益法人・NPO法人を原則非課税、公益目的ではなく、残余財産の帰属に制限のない中間法人を課税としており、「非営利法人は原則非課税という体系的位置付け」ではない。
    「人格なき社団」の課税関係は、法人格を有しておらず法人税の対象ではないものを課税するために、一定のものを法人とみなして整備したものであって、非営利性に着目して積極的に非課税と位置付けている訳ではない。
     「人格なき社団」の課税上の取扱いについては、今後、非営利法人に関する課税のあり方を踏まえ、見直しを検討することが必要。
    先進国においても、原則非課税の要件として、非営利性に加えて公益性を必要とする国もある(英・独)。「先進諸国の流れも、原則非課税」という訳ではない。
    円滑な移行を確保するためには、移行に際しての経過措置を検討すべきであって、現在公益法人のかなりが登録法人にならず移行に支障を来たすとの理由から、非営利法人を原則非課税にすべきという考え方は、本末転倒ではないか。
  2. 登録法人の扱いについて
    社会貢献事業による収益を非課税とすることについては、社会貢献性のある事業とそれ以外の事業が明確に区分できることが前提であるが、こうした明確な区分は現実には不可能ではないか。また、区分が不明確な下では、結局、営利法人が行う事業と同種・同等の事業の多くが、社会貢献事業に含まれることになってしまう。
    社会貢献性の定義を「対象者がもっぱら不特定かつ多数」としているが、例えば、全国のカラオケ愛好家を対象とした事業を、「国民の利益」、「国の特別会計事業と同様」と位置付けることには無理がある。社会貢献性の定義として、これだけでは不十分であるが、他方、これ以上厳密に実質的な価値判断を行うことは、行政庁の裁量を広げる結果となりかねない。
    「事業従事者が無償で労力提供した分は損金算入」という点については、登録法人であっても、営利法人と同種・同等の事業を行って得られる課税所得については営利法人と同様に適正に計算しなければならず、実際に支払っていない給与等を損金扱いすることは適当ではないのではないか。
    「一定以上の内部留保は課税」という点については、社会貢献活動を目的とした法人である以上、本来、収益はそうした活動に充てられるべきであることから、一定以上の内部留保を有するような法人は、課税法人としてその収益全体について課税とすべきではないか。

●皆様へ

寄せられた意見をとりまとめ、WGに提出したいので、内容を引用する際用いる肩書(たとえば「大学教授○○」「NPO代表○○」など)をお書きください。
メール:XLM00370@nifty.ne.jp

 なお、さわやか福祉財団のホームページも併せてご覧ください。
URL: http://www.sawayakazaidan.or.jp

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