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2004年01月20日 10:00

行政 : センター試験で、NPOの問題

 1月18日、大学入試センター試験の「公民」の「現代社会」でNPOとNGOに関する問題が、「倫理」でボランティアに関する問題が出された。

 

 1月18日に実施された大学入試センター試験(2日目)の「公民」の「現代社会」でNPOとNGOに関する問題が、「倫理」ではボランティアに関する問題が出題された。

 NPOに関しては「現代社会」第6問の問2で、NGOに関しては「現代社会」の第5問の問3と第6問の問1と4で出題された。

 ボランティアに関しては「倫理」の第1問の問8。

 なお、昨年1月19日に行われた大学入試センター試験では、「公民」の「政治・経済」と「現代社会」で NPOに関する問題が2問出題されている。

 問題と大学入試センター発表の正解は、下記の通り。

【 現代社会 】

第5問 次の文章を読み、下の問い(問1~4)に答えよ。

 日本のある都市でのこと。宝石店に立ち寄った外国人の女性が、店主から退出を求められた。この女性は、国際条約違反の人種差別によって精神的損害を被ったと主張し、賠償を求めて日本の裁判所に提訴した。これを受けて、裁判所は店主に対し損害賠償の支払いを命じた。1999年のことである。

 国際連合(以下、国連)は、設立以来今日に至るまで、人権問題に積極的に取り組んできた。国連憲章では人権の尊重が目的の一つとして掲げられ、国連総会は、1948年の世界人権宣言、1966年の国際人権規約など、数々の宣言や条約を採択している。これらの条約の締約国は、条約の規定に従って人権を保障しなければならない。多くの人権条約では、履行を確保するための委員会が設けられ、人権保障のための活動を展開している。また、安全保障理事会も、人権問題を扱う国連の機関の一つである。重大な人権侵害に対しては、平和と安全に対する脅威として、経済制裁、武力行使権限の加盟国への付与、臨時の国際刑事法廷の設立など、安全保障理事会は様々な措置をとってきた。2002年には、国連主催の国際会議で採択された条約に基づいて、常設の国際刑事裁判所(ICC)も設立をみた。

 このように、第二次世界大戦後、国連を中心に、人権を国際的に保障する制度が徐々に発展してきた。その結果、今日私たちの人権は、国内法だけでなく、国際法によっても保障されるようになりつつある。

問3 下線部cに関する記述として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

  1. 国際紛争の解決については、総会が主要な責任を負い、そこで解決ができない場合に限り、安全保障理事会に議事が移される。
  2. 国際司法裁判所は国連の司法機関であり、国際紛争の当事国間の合意がなくても、一方の当事国が提訴すれば、裁判が開始される。
  3. 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、非政府組織(NGO)の協力も得るなどして、難民の救援に当たっている。
  4. 国連の平和維持活動(PKO)については、事務総長の下に設けられる常設の機関が実施するものとして、国連憲章に明文で規定されている。

 → 大学入試センター発表の正解:3

第6問 次の文章を読み、下の問い(問1~4)に答えよ。

 国際連合(以下、国連)をはじめとする国際機関や各国政府、自治体、非政府組織(NGO)は、開発途上国の経済開発を援助し、人類共通の課題となっている飢餓や貧困およびそれらに起因する諸問題を克服しようと努めている。

 しかし、開発援助によって開発途上国の国民各層がみな等しく利益を受けているわけではない。その端的な例が女性である。往々にして、開発援助の対象となる社会には女性に不利な条件が存在する。国や地域によっては、女性は男性よりも教育を受ける機会が少ない。また、女性は、土地や財産を所有したり、相続したりすることができず、起業に必要な資金を調達しづらいことが多い。女性に対する差別や男女間の格差があるところで、例えば、近代的な機械が開発援助によって導入されると、それを操作できる教育を受けた男性が職を得る一方で、これと競合する手仕事に就く女性は職を失うかもしれない。このように開発援助が女性の社会的立場や経済的立場を弱めてしまう場合がある。一般に、女性が男性よりも開発のしわ寄せを受けやすいと言われるのは、こうした状況と関連している。

 このため、近年では、女性の人権の確立や自立を促進する支援のあり方、とりわけ、開発のあらゆる場で女性の参加を保障することが重視されるようになってきた。このように、貧困問題を解決するためには、開発途上国の人々のニーズをより的確に把握し、社会的弱者や将来世代の利益に配慮した開発援助が求められているのである。

問1 下線部aに関連して、開発援助分野における国連の活動についての記述として適当でないものを次の1~4のうちから一つ選べ。

  1. 国連は、持続可能な開発という考え方のもと、開発援助事業に対しても環境への配慮を求めている。
  2. 国連は、開発途上国の中でも、一人当たり所得、識字率、工業化率が特に低い国に対しては、開発援助において特別な配慮を払うよう求めている。
  3. 国連は、開発途上国政府の要望を受けて設立された国連貿易開発会議(UNCTAD)等を通じて、開発途上国間の経済協力も支援している。
  4. 国連は、開発援助分野で活動している非政府組織(NGO)への支援を通じて開発途上国を援助しており、対象国政府を直接援助することはない。

 → 大学入試センター発表の正解:4

問2 下線部bに関連して、日本の政府開発援助(ODA)についての記述として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

  1. 日本政府は、援助対象国が軍事支出の大きな国であっても、一人当たりのGNPが低ければ、積極的にODAを供与する方針を公表している。
  2. 日本政府が開発途上国に提供しているODAはすべて贈与であり、借款は含まれない。
  3. 日本のODAは、金額では世界の中で1位、2位を争う高い水準を維持しているが、対GNP比で見ると、3位までには入っていない。
  4. 日本のODAの中には、政府の開発支援事業に協力する民間企業の直接投資や民間非営利団体(NPO)の寄付も含まれている。

 → 大学入試センター発表の正解:3

問4 下線部dに関連して、貧困問題への取組みを進めている国際組織A~Cと、それに関する下の記述ア~エの組合わせとして最も適当なものを下の1~6のうちから一つ選べ。

国連開発計画(UNDP)
経済協力開発機構(OECD)
オックスファム・インターナショナル
先進国の大都市で社会問題となっているホームレスの人々を支援するNGOで、国際的なネットワークを構築している。
貧困問題の解決を優先課題とし、開発途上国の経済的、社会的発展を、体系的、持続的に援助する政府間機関で、人間開発指標を提示している。
世界各地で、飢餓や貧困、被災に苦しむ人々を救済しているNGOで、衣食住や教育、医療の提供のほか、開発教育などにも携わっている。
加盟国の経済の安定成長と貿易拡大を図ると同時に、開発途上国に対する援助と、援助の調整を目的とする政府間機関で、二国間援助機関の実態調査を行っている。
  1. A-イ B-ウ C-ア
  2. A-イ B-エ C-ウ
  3. A-ウ B-ア C-エ
  4. A-ウ B-エ C-ア
  5. A-エ B-ア C-イ
  6. A-エ B-イ C-ウ

 → 大学入試センター発表の正解:2

【 倫理 】

第1問 次の文章を読み、下の問い(問1~8)に答えよ。

 倫理というものを考える上で、「善とは何か」という問いは根本的である。およそ倫理的な行為は善に関する何らかの判断をもとにするからである。ギリシアの哲学者ソクラテスはただ生きるのではなく、自己の魂の善いものとすることで善く生きることを研究した。「一体、善とは何か」という問いに対して彼の弟子プラトンは魂の善を研究する道を押し進め、「善のイデア」と魂のかかわりによってこれに答えようとした。アリストテレスは善を人間の自然本性に基づく魂の内的働きと捉え、善のイデアに代えて万人の希求する善としての「幸福」の実現を目指した。さらに (1) は、様々な情念から解放され、外部の何ものにも煩わされない魂の状態を善と捉え、理想とした。これらギリシアの思想家を見ると、まず自己の魂という内的視点が善に関する思索の基本にあったことが窺える。

 ところでユダヤ教やイスラームにおいては、神の言葉に従うことが善であると言われる。聖書やクルアーンなどはそれぞれ神の言葉であり、これに背くことが悪とみなされる。ただその従順さは、何か規則にしばられたものというより、神に対する人格的応答であることを見逃してはならない。それゆえイエス・キリストは、ユダヤ教内でこの人格的応答の視点が後退し、いわゆる (2) が台頭したとき、これを徹底的に批判した。彼は人格的応答として神への愛を説き、これをもとに隣人への愛を説いた。イエスの説く隣人への愛を広く利他性と捉えるならば、これは大乗仏教の慈悲にも通じる思想と言える。

 ギリシア哲学で研究された魂の善と、イエスの隣人愛や大乗仏教の慈悲に見られる利他性とは、我々が善を考える上で大切な視点である。では、この両者はどのようにかかわるのだろうか。ギリシア哲学の場合、例えばアリストテレスの友愛の思想に見られるように、魂の善をもとに他者への愛が論じられている。またイエスはバリサイ派を批判するとき「杯や皿の外側はきれいにするが、自分の内側は強欲と悪意に満ちている」と述べ、その外面的虚飾を退けており、まず内面の善を教えた。仏教の場合、利他性は自己の心の在り方、あるいは内面の錬成を基礎としていると言われる。同じことは儒教の「仁」の思想にも当てはまる。

 自己の内面の善と利他性についての思索は、我々が様々な思想から豊かに学ぶことのできるものである。現実の中では、内面の善を求めているように見えて、単に自己の安楽を求めるだけで、他者を蔑ろにしている場合がある。また反対に他者の善を実現しようとしているように見えて、表面的結果のみを追い求め、内面を疎かにしている場合もある。そこで、 (A) 。他者とともに生きる我々は、先哲の思想を学ぶことで、善をめぐる我々自身の理解を深めることができる。

問8 本文の趣旨に照らして、文章中の (A) に入れるのに最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

  1. 内面の善を考慮しつつ、同時に他者への善を求めることが大切である。例えばボランティア活動なども、ただ他者のためにのみあるのではなく、自己の内面の成長にも深くかかわってくるからである
  2. まず、他者に向けた善を行うことが重要である。例えばボランティア活動なども、社会に対する義務の遂行としてやってみなければならない。自己の内面は、社会に対する義務の遂行を通してのみ形成されるからである
  3. もっぱら内面の善を求めることが大切である。例えばボランティア活動など、他者に対する善もそれに基づいているからである。そこで、我々は他者との関係を一切断って、自己の内面に沈潜すべきである
  4. 利他的な善を求め、内面の善などは後回しにすべきである。例えばボランティア活動などは他者のためになればよいのであって、そもそも自己の内面を考える必要はない

 → 大学入試センター発表の正解:1

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