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2004年08月27日 10:00

行政 : 総務省、公益法人に自己評価提言

 総務省は、7月28日、公益法人の効率性や自律性を高めるための研究成果を発表した。財団法人の基本財産の取崩しを弾力的に認めることや、現在30%が適当とされている内部留保水準を超えた場合に情報公開を徹底することで認めていくこと、自律的な法人運営の確立のため「公益法人自己評価モデル」を提示していることが特徴。

 

 公益法人を取り巻く環境は、一部公益法人の不祥事などにより、信頼性の回復が大きな課題となっているほか、景気低迷や超低金利などで会費、寄附金、財産運用収入が減少しており、経済的環境も悪化している。

 このような状況下、公益法人の効率的な運営が求められており、効率的な運営のためには法人自らが業務運営の在り方をチェックできるような仕組みづくりが必要として、2003年11月に「公益法人の効率的・自律的な事業運営の在り方等に関する研究会」が総務省に設置された。

 同研究会の座長は、「公益法人制度改革に関する有識者会議」のメンバーでもある能見善久東京大学教授。

 同研究会では、財団法人の基本財産の在り方や、適性とされる内部留保の水準について検討を加えるとともに、自律的な運営の確立のため、公益法人における評価制度について検討を行った。

 報告書ではこれら3事項について以下のような考えを示している。

 まず、財団法人の基本財産については、これまで「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針(以下、「運用指針」)」(1996年12月19日)などにより、財団法人の「人格の基礎」であると位置づけられ、取り崩しや運用方法に対して厳しい規制がかけられてきた。このため、やむを得ない場合は、将来の積戻しの計画を提出させたうえで取り崩しを許可するケースもあるという。

 このような現状に対して報告書では、「公益活動の実施のために必要であるならば、法人がその自己責任において基本財産を自由に運用することをできる限り認めるべきであろう」との認識を示し、「財務の健全性」、「事業の継続性」、「手続きの妥当性」、「ガバナンスの適正性」の観点から総合的に判断することが必要であるとした。

 内部留保については、運用指針で30%程度以下が妥当であるとされている。これは、多額の収入を得ながらそれに見合った公益事業を実施せず、過大に内部留保を蓄積していた法人が問題となったことから設けられた基準。しかし、法人が安定的、継続的に活動を維持し、財務の健全性を維持していくためには内部留保はむしろ必要なものである。研究会によると、昨今の経済情勢による会費や財産運用収入の減少を踏まえれば、「どの程度の内部留保を保有するかということは、法人の経営判断の問題である」と一定の理解を示したうえで、個々の法人が関係者や国民に対して説明責任を果たすことを求めている。

 また、活動の是非を判断する社会的仕組みを持たず、客観的な評価にさらされてこなかった公益法人に何らかの評価制度を導入することができないかについても、検討している。一般的に公益法人は、主務官庁の指導監督など、他律的な評価のみに依存する傾向があると指摘されており、この研究会では、自己評価の導入について検討、「公益法人自己評価モデル」を提示した。

 このモデルは、「法人の目的と実際の活動の関係」、「活動の活性化」、「適正な運営と透明性の確保」、「財務会計」、「組織管理」の5分類50項目から成るチェックリスト形式のものとなっている。総務省では、この結果を公表するかどうかは法人の任意としながらも、自己評価を実施していることが、法人のアピールの手段ともなるのではないかと奨励している。

 評価の内容は、これまで所管官庁が実施してきた立入検査のチェック項目や、諸外国の制度などを反映したものとなっているが、総務省自身も認めているように、「かなり基本的な項目」が多くなっている。「活動の活性化」の章が設けられてはいるものの、寄付者や会員の増減や、ホームページの開設状況などを聞くだけでは法人の内省を深く促すものとはいえない。総務省では、「行政委託型の法人や業界団体など法人の性格によって、法人の態様や事業内容は大きく異なっており、一律の基準を設けることは難しかった。このモデルは最低限のものとお考えいただき、法人ごとに内容を膨らませ、より充実させたものとしてほしい」と話している。

 このたびの報告と現在進められている公益法人制度改革との関係については、「直接リンクするものではない」(総務省)とはいうものの、特に評価モデルについては、報告書内でも「主務官庁制の廃止を前提とする公益法人制度の抜本的改革の動きを踏まえれば、法人の自律的なチェック機能の充実を図ることは、円滑な公益法人改革の実施につながるのではないか」と言及されており、改革をかなり意識したものであることは明らか。この報告書の考え方が今後の改革に影響を与えることも十分考えられ、注意が必要である。

 総務省では、この報告書を所管官庁における指導監督などで活用することを期待、各種研修会の機会を利用し、周知に努めていく。特に、評価モデルについては、各法人が活用することを奨励していくとのことである。

 報告書の詳細は以下を参照のこと。

 http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040728_4.html

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