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2004年12月04日 10:00

行政 : 角川「NPO」商標問題で意見提出

 大阪NPOセンターなど6つのNPO支援団体(シーズ含む)は、(株)角川ホールディングス(旧角川書店)が雑誌・新聞の分野で「NPO」という語を商標登録し、その後、特許庁が角川に「取消理由通知」を送付した件で、11月17日にNPO側からの意見書として「回答書」を特許庁に提出した。

 

 2002年1月18日に、(株)角川書店(現(株)角川ホールディングス、以下「角川」)は、雑誌・新聞についての商標として「NPO」を出願した。その後、特許庁が審査をした結果、5月27日には商標掲載公報に掲載されて商標権が正式に角川に発生している。

 これに対し、「NPO」という語を含む題号の雑誌や新聞を発行すると商標権侵害にあたる可能性が出てきたとして、NPO関係者が反発。新聞などマスコミでも「角川NPO商標登録問題」として大きく報道された。

 商標法では、商標登録から2ヶ月以内なら、誰もが特許庁に対して異議を申し立てられるとされている。そこで、「NPO」商標登録について、大阪NPOセンター、大阪ボランティア協会、関西国際交流団体協議会、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会、市民活動情報センター、日本NPOセンターの6団体は、2003年7月25日付で異議申立をおこなった。

 今年6月17日、特許庁は角川に対して「取消理由通知」を出した。この「取消理由通知」とは、特許庁が異議申立の審理の結果、商標取消の決定をしようとする際に商標権者に事前に取消理由を通知する制度。これに対して角川は、8月9日に特許庁に取り消しに反駁する「意見書」を提出した。

 こうした動きに対して、異議申立を行った6団体は、角川の「意見書」にたいして反論の機会を得たいとする上申書を9月10日付で特許庁に対して提出。この申し出が認められたため、11月17日にNPO側からの意見として「回答書」を特許庁に提出した。

 6団体は、このような経過をNPO関係者に通知するために、11月26日、下記の経過報告を発表した。


■「NPO」商標登録の取消理由通知への角川側意見書に対する反論の「回答書」提出のご報告

2004年11月26日

特定非営利活動法人日本NPOセンター常務理事 山岡義典

特定非営利活動法人大阪NPOセンター事務局長 山田裕子

社会福祉法人大阪ボランティア協会事務局長 早瀬 昇

特定非営利活動法人関西国際交流団体協議会事務局長 有田典代

特定非営利活動法人市民活動情報センター代表理事 今瀬政司

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長 松原 明

(異議申立書の当事者表示順)

上記代理人 弁護士 三木秀夫

 「NPO」の商標登録に対する異議申立に関する経過報告(2004年9月14日付)を皆様にさせて頂いておりましたが、特許庁の「取消理由通知」に対する角川側の意見書に対して、異議申立人および弁護団は、その反論の機会を得ることができ、11月17日付けで「回答書」を特許庁に提出いたしましたので、ご報告いたします。

 なお、「ボランティア」についても同様の状況です。

<これまでの経過概要>

2003年6月3日

 本件問題についての情報発信

2003年6月5日

 マスコミ等の報道

2003年7月25日

 商標登録異議申立書の提出(特許庁へ)

2003年8月25日

 証拠を添付、補正書並びに口頭審理を求める上申書提出

2004年6月17日

 特許庁が取消理由通知(角川側に意見書提出の機会付与)

2004年8月9日

 角川ホールディングスが特許庁に意見書を提出

2004年11月17日

 角川側の意見書に対する回答書を特許庁に提出


回答書

平成16年11月17日

特許庁審判長  佐藤 正雄 殿

1 審判の番号

 異議2003-90457

 (商標登録第4665822号)

2 商標登録異議申立人

住所(居所) 〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-1 古河ビル616

電話番号 (03)5220-3911

氏名(名称) 特定非営利活動法人日本NPOセンター

住所(居所) 〒553-0006 大阪府大阪市福島区吉野4-29-20 大阪NPOプラザ201号

電話番号 (06)6460-0268

氏名(名称) 特定非営利活動法人大阪NPOセンター

住所(居所) 〒530-0035 大阪府大阪市北区同心1丁目5番27号

電話番号 (06)6357-5741

氏名(名称) 社会福祉法人大阪ボランティア協会

住所(居所) 〒543-0001 大阪府大阪市天王寺区上本町8丁目2番6号 大阪国際交流センター2階

電話番号 (06)6773-0256

氏名(名称) 特定非営利活動法人関西国際交流団体協議会

住所(居所) 〒552-0021 大阪府大阪市港区築港2丁目8番24号 piaNPO506号

電話番号 (06)4395-1144

氏名(名称) 特定非営利活動法人市民活動情報センター

住所(居所) 〒162-0821 東京都新宿区津久戸町4-7OSビル2F シーズ=市民活動を支える制度をつくる会内

電話番号 (03)5227-2008

氏名(名称) 事務局長 松原 明

3 代理人

住所(居所) 〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号 近藤ビル810 新技術特許事務所

電話番号 (06)6367-8111

ファクシミリ番号 (06)6367-8122

氏名 弁理士(11450) 山本 俊則

住所(居所) 〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号 近藤ビル510 三木秀夫法律事務所

電話番号 (06)6361-7557

ファクシミリ番号 (06)6361-7606

氏名(名所) 弁護士 三木 秀夫

住所(居所) 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号 ニチメンビル2階 平野和宏法律特許事務所

電話番号 (06)6233-1487

ファクシミリ番号 (06)6233-1488

氏名(名称) 弁護士・弁理士(10407) 平野 和宏

住所(居所) 〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号 近藤ビル510 三木秀夫法律事務所

電話番号 (06)6361-7557

ファクシミリ番号 (06)6361-7606

氏名(名称) 弁護士 那須 智美

4 弁駁の趣旨

 商標権者が提出した「意見書」に記載された取消理由通知に対する意見は、「取消理由通知書」に記載された本件商標に関する認定事情を全く無視して単なる一般論を展開したものにすぎず、本件商標に関する個別具体的な事情のもとでは当てはまらない。よって、「取消理由通知書」に記載された取消理由により、本件商標の登録は取り消すべきである。

5 理由

(1)商標登録の可否判断

 商標法は、商標の出所識別及び品質保証の各機能を保護することを通じて、当該商標の使用により築き上げられた商標権者のグツドウイルを保護すると共に、流通秩序を維持し、需要者をして商品の出所の同一性を識別し、購買にあたつて選択を誤ることなく、自己の欲する一定の品質の商品の入手を可能ならしめ、需要者の利益を保護しようとするものである。商標保護の直接の対象は、商標の機能であり、これを保護することによつて窮極的には商標権者の利益のみならず公共の利益をあわせて保護しようとするもので、この点において、商標権は他の工業所有権と比べて極めて社会性、公益性の強い権利であるということができる(甲第53号証)。

 そこで、商標法第3条第1項各号に該当する商標は、出所識別標識機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないため、登録が認められない。

 そして、商標法第3条第1項第6号に該当するか否か、すなわち、出願に係る商標が需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないか否かは、その商標を指定商品に使用したとき、需要者、取引者が如何に認識するか、すなわち、商品の属性等を表示するものとして、識別標識としては認識し得ないか否かを指定商品との関係において、その取引の実情を踏まえて判断すべきものであり、先登録例に拘束されるものではなく、事案に即して個別具体的に認定、判断すべきものである(甲第54号証)。

(2)取消理由の妥当性

1) 「取消理由通知書」には、本件商標を構成する「NPO」の語について社会的な背景を含む個別具体的な事情を認定した上、本件商標は自他商品識別力がなく、本件商標の登録は商標法第3条第1項第6号に違反する旨が記載されている。

 これに対する商標権者提出の「意見書」には、本件商標に関する個別具体的な事情を全く無視した単なる一般論が記載されたにすぎず、本件商標に関する個別具体的な事情のもとでは当てはまらない。

2) 「取消理由通知書」中に認定事実が記載されているよう、「NPO」に関しては、社会的な関心が高い上、NPO法人を含む多くのNPO団体(以下、「NPO法人等」という。)が、「NPO」の文字を含んだ題号のきわめて多数の定期刊行物を継続・反復して発行している(甲第5号証(枝番を含む))。甲第5号証(枝番を含む)は、本件商標登録異議申立のために短期間に寄せられたものであり、現実には、さらに多くの定期刊行物が存在するものと思われる。

 このようにNPO法人等によりきわめて多数の定期刊行物が発行されている等の事情のもとでは、標準文字による「NPO」の文字のみを指定商品「新聞、雑誌」に使用しても、出所識別標識として機能せず、自他商品識別力を有しない。

 したがって、標準文字による「NPO」のみからなる本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反する。

3) NPO法人等によりきわめて多数の定期刊行物が発行されている等の事情のもとでは、NPO法人等が発行する定期刊行物が法上の「商品」に該当するか否かにかからわらず、標準文字による「NPO」のみからなる本件商標は、出所識別標識として機能せず、自他商品識別力を有しない。

 そもそも、商標法上の「商品」に該当するか否かは、登録阻却事由や不使用取消審判において、登録商標が「商品」に使用されているかという形での商標権者側の使用態様が問題になる場面と、侵害訴訟において類似商標が類似「商品」に使用されているのかという形で侵害者(と主張される者)の使用態様が問題となる場面で検討される(甲第55号証拠)。乙第4号証及び乙第5号証の1ないし4は、いずれも、このような場面での判例等にすぎず、本件とは事案が異なり、参考になり得ない。さらに、「商品」概念において有償であることは要件でないとする説もある(甲第55号証)。

4) 本件商標に商標法第3条第1項第6号を適用して登録を取り消しても、審査基準の考え方と何ら不合理を生じるところはない。

 商標審査基準(甲第43号証)は、商標法第3条第1項第3号に関して、その7号において、商品区分第16類に属する「書籍」及び「新聞、雑誌等の定期刊行物」について、特に運用基準を定めている。

 本号(1)は、出願商標が特定の「書籍の題号」を表すときは、いわゆる内容表示として、商標法第3条第1項第3号の「品質」表示に該当する旨を定めている。

 本号(2)は、出願商標が「新聞、雑誌等の定期刊行物についての題号」であれば、原則として自他商品の識別力を有する旨を定めている。

 新聞、雑誌等の定期刊行物は、同じ著作物であっても、書籍とはその性格を異にして、その題号と関わりなく様々な内容からなる記事を編集して定期的に発行されるもので、必ずしも題号が定期刊行物の内容を表示するものではなく、新聞、雑誌については自他商品の識別力を有するというものも少なくない(甲第56号証)。

 そこで、「新聞、雑誌等の定期刊行物についての題号」が商標法第3条第1項第3号の「品質」表示等に該当すると解釈できる場合があったとしても、「新聞、雑誌等の定期刊行物についての題号」については、一律に、商標法第3条第1項第3号の「品質」表示等に該当しないものとして取り扱い、商標法第3条第1項第3号を拒絶理由とはしないことを、本号(2)により定めている。本号(2)に「原則として、自他商品の識別力が有るものとする。」とあるのは、このことを明確にしたものである。

 本号(2)に「原則として、自他商品の識別力が有るものとする。」とあるのは、あくまで商標法第3条第1項第3号の拒絶理由について「新聞、雑誌等の定期刊行物についての題号」についての審査の運用基準を定めたものであり、他の拒絶理由についてまで定めたものではない。そうでなければ、例えば「株式会社」のみ、現元号の「平成」のみのように、出所識別機能を有しないものであり、また、これを特定人に独占させることが適切でないものであっても、「新聞、雑誌等の定期刊行物についての題号」であれば登録を認めることになり、不合理な結果となる。

5) 過去の既登録例(乙第7号証(枝番を含む。))は、せいぜい数点の関連する題号の刊行物が発行されているに過ぎない状況で登録を認めたものである。本件商標に関しては、「NPO」の文字を題号に含むきわめて多数の定期刊行物がNPO法人等によって発行されている上、社会的な背景も異なり、判断の前提となる事情が全く異なる。そもそも、本件商標登録異議申立においては、先登録例に拘束されるものではなく、事案に即して個別具体的に認定、判断すべきものである(甲第54号証)

 したがって、本件商標の登録を取り消しても、過去の特許庁における判断と何ら不統一や齟齬を生じることはない。
い商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当し、本件商標の登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきである。

6 証拠方法

(1)甲第53号証

 「パーカー」事件の判決全文(写)

(2)甲第54号証

 商標審決公報(平成11年審判第13577号)(写)

(3)甲第55号証

 商標法概説[第2版](平成12年7月15日弘文堂発行)の表紙、該当ページ、奥付(写)

(4)甲第56号証

 商標審査基準の解説[第3版増補](平成14年10月29日発明協会発行)の表紙、該当ページ、奥付(写)

7 添付書類又は添付物件の目録

(1)回答書 副本2通

(2)甲第53号証乃至甲第56号証 正本1通及び副本2通

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