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2005年05月17日 10:00

行政 : 民間法税調WG、税制に関する提言提出

 政府が進める公益法人制度改革を、民間側から検討するために作られた民間法制・税制調査会のワーキンググループ(座長:堀田力)は、5月9日、政府に対して「建議書」を提出した。米国のNPO税制のように、公益性のある非営利法人の本来事業への非課税などを求めている。

 

 民間法制税制調査会のワーキンググループ(民間法税調WG)は、堀田力氏(さわやか福祉財団理事長・弁護士)、山田二郎氏(租税訴訟学会会長・弁護士)、太田達男氏((財)公益法人協会理事長)の3氏の呼びかけで、16名のメンバーが参加して作られた。

 座長は、堀田力氏。事務局は(財)公益法人協会に置かれている。

 4月18日に第一回の会合が開かれている。

 4月15日から、政府の税制調査会が、新しい非営利法人制度に関する税制を議論するのに合わせて、民間側から、非営利法人に関する税制などの検討を行い、関係各方面に検討結果をアピールしていくのが目的。

 政府税制調査会が、中間とりまとめを行う6月下旬までを当面の活動期間としている。

 ワーキンググループでは、5月9日、委員のうち14名が行ったそれまでの議論をもとに、呼びかけた3氏の起草責任という形で「建議書」を政府税制調査会およびに内閣官房行政改革推進事務局に提出した。

 建議書は、「税制の骨格」と「公益性の認定」の2つのパートからなり、以下のような提言を行っている。

1.税制の骨格

(法人税制)

  • 非営利法人に関しては、収益事業以外には非課税とする。
  • 米法と同じく、本来事業(関連事業を含む。以下同じ)を非課税とする。公益を実現するための事業だからである。
  • 非本来収益事業の収益を本来事業に充てる時は、100%のみなし寄附を認める。
  • 金融資産収益は、非課税とする。

(寄附金税制)

  • 公益法人の認定と同時に寄附金優遇措置を付与すべきである。その効果のゆえに公益性の認定要件を狭めてはならない。
  • 寄附金優遇措置には、有効期間を設けるべきではない。
  • 寄附金優遇要件の適用下限額を廃止する。
  • 公益法人に対する土地その他の資産の贈与又は遺贈については、無条件で相続税・贈与税の非課税又はみなし譲渡課税の適用除外を認める。

(個人住民税の寄附金控除)

  • 個人住民税についても、寄附金控除後の所得を基準とすべきである。

2.公益性の認定

(認定要件)

  • 認定要件は、可能な限り、法令上客観的かつ明確に定めるべきである。

(認定機関)

  • 認定に当たる第三者機関の委員は、民間で公益活動を行ってきた良識ある実務家を主体とべきである。
  • 第三者機関の審議は、原則公開として判断過程を透明にし、適正な手続きによって行う。
  • 基本的に事前規制より事後規制によって不良法人の排除を図ることとする。

 建議書の全文は以下の通り。


平成17年5月9日

民間法制・税制調査会

起草責任

さわやか福祉財団理事長・弁護士 堀田 力

租税訴訟学会会長・弁護士 山田 二郎

(財)公益法人協会理事長 太田 達男

建議書

 私たち民間法制・税制調査会ワーキンググループは、非営利法人の税制の骨格及びこれに関連する法制の整備(公益性の認定)に関し、次のとおり提言します。

I.税制の骨格

1.一般非営利法人について

提言  非営利法人は、利益を分配しない限り、その利益を享受する帰属主体が存在しないのであるから、法人税を課すべきではなく、ただ、非営利法人が営利事業と競合する収益事業によって収益を得た時に限り、営利事業とのイコールフッティングを根拠に課税するのが相当である。

コメント1. 政府税調合同会議(以下「合同会議」という)では、共益を目的とする一般非営利法人に対する会費(対価性を有しないもの。以下同じ)について課税対象としない方向で検討されている由であり、それは前進であると評価しているが、その理論的根拠は、寄附金や補助金、助成金についてもあてはまるのであって、それらについても課税しない措置を講じるのが相当であると考える。実際問題としても、それらに対する課税は、その利益享受者がいないのであるから、拠出者の貢献意欲を阻害する。
2. 合同会議では、一般非営利法人のうち営利法人とまぎらわしい活動をする法人などについては原則課税とする考え方がある由であるが、理論的にも実務的にも区別困難と考える。

 営利法人とまぎらわしい活動をする法人とは、具体的には、形式的な利益分配をしないものの、役職員に対する過大報酬や過当待遇、不当な経費支弁等として事実上利益分配を行う法人が主たるものと考えられるが、かかる法人は非営利法人の要件に該当しないものとして、解散命令の対象とすることにより排除すべきであって、かかる法人の存在を認める前提で税制を組むのは好ましくないと考える。

2.公益性を有する非営利法人(公益法人)について

提言1. 米法と同じく、本来事業(関連事業を含む。以下同じ)を非課税とする。公益を実現するための事業だからである。
2. 非本来収益事業の収益を本来事業に充てる時は、100%のみなし寄附を認める。
3. 金融資産収益は、非課税とする。

コメント1. 本来事業は、基本的には営利事業と競合しない性質のものであり、時に競合することがあってもなお、その公益性が認められる以上は、公共団体の事業の場合と同様に、優遇措置を採るべきである。
2. 特に、芸術文化、教育、福祉などの分野では、公益法人等が形式的には営利事業と同類型のサービスを提供している場合があるが、実体をみれば、公益法人のサービスは、営利事業としては成り立たない対象に対して提供されている。その事業に従事する者は、公益性を励みとして厳しい労働を意欲的にこなしており、このような努力で生じた剰余金に課税することは、インセンティブを消失させる。
3. 100%みなし寄附を認める理由は、本来事業非課税の理由と同じである。
4. 金融資産収益は、営利企業と競合する事業で得られるものではなく、その使途は公益事業である。

3.寄附金税制のあり方について

提言1. 公益法人の認定と同時に寄附金優遇措置を付与すべきである。その効果のゆえに公益性の認定要件を狭めてはならない。
2. 寄附金優遇措置には、有効期間を設けるべきではない。
3. 寄附金優遇要件の適用下限額を廃止する。
4. 公益法人に対する土地その他の資産の贈与又は遺贈については、無条件で相続税・贈与税の非課税又はみなし譲渡課税の適用除外を認める。

コメント1. 合同会議において、公益性が判断された事業を即寄附金優遇対象とするとの考え方が肯定された由であるが、画期的前進として称賛し、その実現を期待する。なお、公益性の認定を適正に行うべき社会的責任は格段に高まるので、それにふさわしい仕組みを採るべきである(後出II公益性の認定参照)。
2. 公益性認定の要件を満たさなくなった時は認定を取り消すべきであり、取り消されない限り優遇措置を継続すべきである。
3. 低額寄附は、広く寄附を集める趣旨から重要なものであり、生命保険料等の取り扱いからすれば、税務執行上煩雑との理由で優遇措置適用下限額を設けるのは、相当ではないと考える。
4. 資産贈与等に係る相続税等の無条件非課税等の措置を求める理由は、本来事業非課税の理由と同じである。

4.個人住民税の寄附金控除について

提言  個人住民税についても、寄附金控除後の所得を基準とすべきである。

コメント  公益法人が実現する公益は直接又は間接に地域住民に帰するものであるから、これに対する寄附は、地方公共団体に対するそれと同様に扱うべきである。

II.公益性の認定

提言1. 公益性の認定要件は、可能な限り、法令上客観的かつ明確に定めるべきであって、直ちにその起草委員会を民間実務家主体に設置し、詰めの作業に入るべきである。
2. その認定に当たる第三者機関の委員は、民間で公益活動を行ってきた良識ある実務家を主体とし、その下部機関として、公益活動の特定分野に通じた者からなる専門部会を設ける。

 また、事務局職員は、委員の推薦による民間人を登用する。
3. 第三者機関の審議は、原則公開として判断過程を透明にし、適正な手続きによって行う。
4. 事後チェックの手続き及び体制を整え、基本的に事前規制より事後規制によって不良法人の排除を図ることとする。
5. 現在の公益法人の移行に当たっては、新しく詰めた公益性の認定要件を示し、不良法人を排除する。

■民間法制・税制調査会ワーキンググループメンバー

(本建議書は、下記メンバーの議論に基づいて作成された。)

赤塚和俊(公認会計士)

雨宮孝子(明治学院大学大学院教授)

石川睦夫((財)住友財団専務理事・事務局長)

太田達男((財)公益法人協会理事長)

片山正夫((財)セゾン文化財団常務理事)

川端康之(横浜国立大学大学院教授)

田中尚輝(市民福祉団体全国協議会事務局長)

濱口博史(弁護士)

浜辺哲也(公務員)

堀田 力((財)さわやか福祉財団理事長・弁護士)

松原 明(シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長)

三木義一(立命館大学法学部・大学院教授)

山田二郎(租税訴訟学会会長・弁護士)

大和 滋((社)日本芸能実演家団体協議会芸能文化振興部部長)

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