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2006年02月10日 10:00

行政 : 会計士有志、協会に社会貢献を提言

 1月31日、NPO法人を支援している公認会計士13名が、日本公認会計士協会に対して、ボランティアベースでの監査実施の制度化など、積極的な社会貢献を行うことを提言した。この提言は、日本公認会計士協会が、昨年12月8日付で公表した「協会組織ガバナンス改革大綱案」への意見募集(会計士限定)に応えたもの。

 

 1月31日に日本公認会計士協会に対して意見書を提出したのは、NPO法人「NPO会計税務専門家ネットワーク」(赤塚和俊理事長)のメンバーを中心とした13人の公認会計士。

 昨年9月に、日本公認会計士協会が「協会の組織・ガバナンス改革案」に対して意見募集した折には、有志10名で日本公認会計士協会に社会貢献を所掌する組織を新設するなど、公認会計士がより積極的な社会貢献を実施しようとしていることを社会にアピールする内容を盛り込むよう意見を提出していた。

 しかしながら、昨年12月8日に公表・意見募集された「協会組織ガバナンス改革大綱案」には、意見書で主張した会計士の社会貢献については触れられていなかったため、あらためて有志を募り13名の連名で、再度、協会に対して意見提出を行うこととしたもの。

 1月31日付で提出された意見書には、公認会計士及び監査法人によるボランティアベースの監査実施の制度化の検討を開始すべきであるといった社会貢献活動の具体策も盛り込まれている。

 意見書提出メンバーのひとりで、公認会計士の加藤俊也氏は、「公認会計士の不祥事が新聞をにぎわす中で、『公認会計士は、上場会社の社長などの金持ちと組んで悪いことをする奴だ』といったイメージを打ち消すためには、『身近にボランティアとしてNPO活動を手伝ってくれる会計士もいる』という実績を作り、広く知ってもらうしかないと思います。」と語った。

 1月31日付で提出された意見書の内容は下記の通り。


日本公認会計士協会 会長 殿

「協会組織ガバナンス改革大綱案」に対する意見

2006年1月31日

 2005年12月8日に公表された「協会組織ガバナンス改革大綱案」に対する意見を述べます。

1.具体的提案

 日本公認会計士協会に社会貢献を所掌する組織を新設することなど、公認会計士が積極的に社会貢献を実施しようとしていることを社会にアピールする内容を「協会組織ガバナンス改革大綱案」(以下、大綱案という)に取り入れるべきである。

 社会貢献活動の具体策として、公認会計士及び監査法人によるボランティアベースの監査実施の制度化の検討を開始すべきである。

 大綱案では、「社会から信頼される組織、そして社会をリードしていく組織(パブリック・インタレストの擁護)」という目標が筆頭に掲げられているが、社会貢献活動の方向性を明確に打ち出さない限り、経済面ではなく、新聞の社会面に取り上げられるような公認会計士の不祥事の頻発に対して、経済界や証券関係者などだけではない、より幅広い国民からの信頼を得ることははできないと考える。

2.提案の理由

 以下の三つが提案の理由である。

  1. 証券取引法の投資サービス法への改正に当って、その対象が拡大し、それに伴って、公認会計士の果たすべき役割の見直しが必要とされていること

  2. 「パブリック・インタレストの擁護」、「公共の利益に対する貢献」が公認会計士協会の目標などとして明記されるようになったが、「民による公共」に対する理解が十分行われていないこと

  3. 監査法人から定年退職する公認会計士が地域で果たすべきボランティアベースでの社会貢献活動についての問題意識がないこと

1. 投資サービス法の持つ意味

 2005年12月22日、金融審議会金融分科会第一部会は報告書「投資サービス法(仮称)に向けて」を確定し金融担当大臣に提出した。この報告書には、「証券取引法を改組して投資サービス法とすべきである」と記載されており、金融庁は、この報告書を受けて、本年3月には投資サービス法案への改正法案を国会に提出し、本年中の施行を予定している。

 金融審議会での議論においては、投資を行う者が、非常に小口の一般消費者にまで広がっていることを前提として、消費者保護のために投資サービス法の規制の対象を拡大しようとした結果、規制対象には、利潤の獲得を目的とした業者がビジネスとして取り扱う商品だけではなく、非営利団体の実施する出資や、自治的な団体が実施する会員内の出資なども含まれることとなり、その場合の規制にかかる費用、とりわけ、公認会計士監査の実施に関する費用負担の問題から、規制の是非や内容に関する点が問題とされた。

 この問題は、2004年12月の証券取引法の改正により、一定の民法組合や匿名組合の出資持分がみなし有価証券として規制の対象となったことを契機として、NPOバンク関係者から問題提起があり、金融審議会における議論を通じて取り上げられてきた。この結果、NPOバンクなど、「利益配分が禁止され、出資額以上の払戻しの禁止されている出資は金融商品に該当しないこと」が報告書に明記されることとなった。しかし、利益配分を禁止していない非営利団体の実施する出資や、自治的な団体が実施する会員内の出資(以下、市民事業という)についての取扱いについては明確になっていない。営利目的の事業とは異なる市民事業に対応した透明性の確保の法制化や、あるいは、規制の対象外となったNPOバンクなどの自主的な透明性の確保の方策など、これまでの証券取引法監査と異なる方策の模索が開始されており、公認会計士にとっても営利以外での役割、ボランティアベースでの活動が期待されるようになってきているのである。

 この点については、2005年9月13日付で、10名の会員の連名により提出した意見(参考資料として添付する)で述べたとおりであるので、詳細はこれを参照されたい。

 なお、NPOバンクについては、金融審議会金融分科会第一部会報告書の別紙1「各金融商品の具体的範囲に関する整理」において、以下のように明記されている。

7.NPOバンク

 NPOバンクとは、NPOその他、主として公益事業に対する出資・融資を目的とした匿名組合などによるファンドである。

 米国では、非営利組織(もっぱら宗教、教育、博愛、友愛、慈善、又は感化を目的とし、金銭的利益(pecuniary profit)を目的とせず、かつ、その収益のいかなる部分もいかなる個人などの利益とならないような組織)の発行する証券は、1933年証券法の規制が適用除外されている(証券法3条(a)項4号)。

 NPOバンクに対しては、現行証券取引法上、投資事業有限責任組合に類する匿名組合として開示規制(18年6月以降適用)、販売・勧誘の業規制・行為規制が適用されるが、特に開示規制の適用となる場合における監査費用などにより活動が困難になるとの意見があり、投資サービス法においては、米国の例も参考に、契約などにおいて出資額を上回る配当・残余財産の分配などを禁止している場合は、金銭的収益としてのリターンを期待していないことから「投資性」がない又は小さいとして、規制対象から除外することが適当と考えられる。

2. 「民による公共」について

 大綱案の「はじめに」の部分では、「パブリック・インタレストの擁護」が協会の目標の筆頭に掲げられ、「協会会長等の選出方法の改革」の部分では、「表1:会長の要件の例示」の中に、「キ.公共の利益に対する献身」が挙げられている。しかし、「パブリック・インタレスト」や、「公共の利益」が何を意味するのかについては明確にされていない。

 金融審議会がNPOバンクを報告書に明記することによって、その社会的な存在を認知したように、我が国における公共を担う新しいセクターとして、NPO(特定非営利活動法人)などを中心とした民間非営利の団体や活動が登場している。こうした新しいセクターは「民による公共」といわれているが、これは自主的なボランティア活動に、その基礎を置いている。

 公認会計士が対象とするステークホルダーを証券業界や経済界などだけに限定し、「民による公共」の部分を認識しなければ、新聞の社会面を読むような、より広い国民から評価を得ることは困難であり、公認会計士が業界を挙げて自主的なボランティア活動を通して「民による公共」に貢献することを明確にアピールする必要がある。

 1.で述べた投資サービス法に関連する市民事業や、NPOバンクだけではなく、災害に対する義捐金や、社会から広く寄付を集めて助成を行う非営利団体など、ボランティアベースでの透明性確保が求められている領域は広い。

 また、今後、公益法人制度改革により登場する新しい非営利法人制度では外部監査は公益性のある大規模法人に限定されるようであるが、それ以外の非営利法人であっても負担能力がないからと言って、透明性とその信頼性の確保をないがしろにしてよいはずがない。

 さらに、寄付税制改革においては、たとえば認定NPO法人におけるパブリック・サポート・テスト等、恣意性を排した客観的な数値基準が重視される方向性が予想されているところである。とすれば、課税庁が一方的に審査するよりも第三者である専門家が審査する方が、より透明性も客観性も高まることは当然であり、協会は積極的にそのような主張をすると同時にそれができる体制を整えるべきである。

 その他にも、外部監査や寄附税制に限らず、透明性確保の前提であり、NPOにもっとも必要とされる市民への説明責任(アカウンタビリティ)の中核である会計書類を適正に作成するための指導など、「民による公共」として公認会計士に求められているニーズは非常に大きいのである。

3. 定年退職する公認会計士の地域での役割

 世間では、団塊の世代の大量の定年退職が2007年問題といわれており、退職者が地域の中でボランティア活動を実践することにより、NPOなどから評価され、生きがいを持った生活を送れるかどうか、が問題とされている。

 退職者は、企業において身につけた専門的能力を有しているため、貴重なリソースとなることが、地域のNPOなどから期待されている。しかし、いかに専門的能力を有していても、NPOなどのボランティア活動の趣旨や文化を十分理解していなければ、その能力を生かすことができず、地域での評価を受けることはできない。このため、大企業などでは、退職後に退職者がスムーズに地域で活動できるようにするための専門の部署を設けているところもある。

 こうした問題は、監査法人においても、まったく同じである。定年後の公認会計士は、2.で述べた、より広い社会からの公認会計士への評価を受けるために、非常に大きな役割を果たすはずであり、協会として積極的にその対策を行うべきである。

以上

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