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2006年12月12日 10:00

行政 : NPO法人の共済事業、存続の危機

 今年4月1日に施行された改正保険業法により、これまでの根拠法のない自主共済にも保険業法が適応されるようになり、従来、共済事業を行っているNPO法人が存続の危機に瀕している。

 

 共済とは、一定の地域または職域でつながる者が団体を構成し、将来発生するおそれのある病気や負傷などの事故に対して共同の基金を形成し、これら事故の発生に際して一定の給付を行なう仕組み。

 今年4月1日に改正保険業法が施行される前、共済には根拠法を有する共済のほかに、根拠法のない自主共済(いわゆる「無認可共済」)があった。

 根拠法を有する共済の代表的な例は、農業協同組合(JA:農業協同組合法)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)。これらは、保険業法の規制は受けないが、これに代わる法律による規制を受け、各々の主務官庁の監督を受けて事業を行なっている。

 これに対し、NPO法人などが行ってきた根拠法のない共済とは、特定の者を対象としている限りは保険業に該当せず、免許を受けずに事業を行なっても保険業法違反にならないとされてきた。

 しかしながら、監督官庁や法律がない根拠法のない共済については、販売方法や共済金支払いなどをめぐり、消費者センターなどに寄せられる苦情や相談が増加していた。

 そこで、昨年、消費者保護の観点から、保険業法を改正し、根拠法のない共済事業に保険業法の規定を適用することが決まった。改正保険業法では、一定の事業規模の範囲内で少額短期の保険のみの引受けを行う事業者については、登録制の「少額短期保険業」制度を創設。「少額短期保険業」になるためには、相互会社か株式会社でなくてはならないため、NPO法人が新たに「保険業」を行うことはできなくなった。

 ただし、改正保険業法は、今年4月1日時点で根拠法のない共済事業を行っている者を「特定保険業者」と定め、金融庁(財務局)に対して、今年9月30日までに届出を行い、平成20年3月31日までに必要な要件を満たして「少額短期保険業者」の登録を受けることにより、NPO法人格のままでも引き続き「保険業」を行うことが可能だとしている。

 届出を済ませたNPO法人の名簿は公開されていないが、金融庁によれば、9月30日の届出期日までに、10のNPO法人が届出を済ませたとのこと。

 しかしながら、届出は済ませたものの、平成20年3月31日までに必要な要件を満たして「少額短期保険業者」の登録を受けるのは容易ではなく、共済事業の存続が危ぶまれているとのこと。

 存続が危ぶまれる理由として、「少額短期保険業者」の要件がNPOがこれまで行ってきた共済事業の実態からかけ離れていることが指摘されている。具体的には、「少額短期保険業者」登録申請と登録後の決算などに「アクチュアリー」の監査を受けなくてはならないことをあげている。

 「アクチュアリー」とは、「保険経理人」とも訳され、生命保険会社や損害保険会社で保険料や年金の掛け金を算定する専門家。企業の年金運用計画、リスク管理も行い、信託銀行や各省庁などでも活躍できる人材。資格取得には、(社)日本アクチュアリー会が実施する資格試験の全科目合格と、プロフェッショナリズム研修の受講が必須の要件となっており、国内には1000人しかおらず、主に保険会社などに属しているとのこと。

 NPO法人が団体内にアクチュアリーを配置することは難しく、外部のアクチュアリーと契約する場合、当然ながら委託料などは大きな負担となってしまう。

 こうした大きな負担が求められる背景として、保険業法が「少額短期保険業者」について、事業規模(年間収入保険料)の上限を50億円としているからだとの指摘がある。

 また、保険業法の定めるところとNPO法の定めるところが相容れない事項となっている点があり、そのことも共済事業の継続を困難にすると予想されるとのこと。たとえば、保険業法では原則的には兼業が認められないが、NPO法人については、「その他事業」として共済事業が行われていることが多いため、特例として、「支障のない範囲で」の兼業が認められている。

 しかし、NPO法ではその他事業の収益は本来事業で使うものとされているのとは反対に、「収支相当の原則」によって、共済事業によって得た収益を他の事業に使うことは許されない。そのため、保険業法に従うとNPO法に反してしまい、共済事業の継続は困難になってしまう。

 内閣府の「保険業を行う特定非営利活動法人へのお知らせ」は、内閣府NPOホームページ内、下記を参照のこと。

 http://www.npo-homepage.go.jp/law/20060901_hoken.html

 なお、金融庁の「共済会・互助会などを運営されている方へ保険業法改正に伴う金融庁からのお知らせ」は、同庁サイト内、下記に掲載されている。

 http://www.fsa.go.jp/news/18/hoken/20060831-2.html

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