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2007年04月27日 10:00

行政 : JILが、NPOの就労に関する報告書

 4月13日、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JIL)は、「NPO就労発展への道筋 ―人材・財政・法制度から考える―」と題する報告書を発表した。この報告書は、これまで同機構が実施してきた調査の結果をもとに、NPOにおける就労について多角的に考察を行っている。

 

 4月13日に独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下、JIL)が発表した「NPO就労発展への道筋 ―人材・財政・法制度から考える―」では、NPO発展への課題を(1)人材面、(2)財政面、(3)法制度の3つに分けて、全258ページにわたって論じている。

 (1)と(2)では、これまでにJILが実施してきた3つの調査、「NPO法人における能力開発と雇用創出に関する調査」(2001年1月実施)、「企業の連携と有償ボランティアの活用についての調査」(2004年9月実施)、「NPO活動と就業に関する実態調査」(2005年7月実施)のデータを使って分析。それらのデータに加えて、聞き取り調査を行うことで、より詳細な実態の把握に努めている。

 また、(3)では先進諸外国(米、英、仏、独)のボランティアをめぐる法整備についてまとめ、日本への示唆としている。

 この報告書の構成と内容は以下の通り。


■第I部 「人材面での充実をめざして」

 組織で重要な位置を占める有給職員と事務局長について分析。また、団塊世代の大量退職に伴い、高齢者のNPOでの活躍が期待されるなか、その可能性について考察している。

■第II部 「財政面での安定をめざして」

 近年活発となってきている行政との協働に関わる委託事業、指定管理者制度が組織に与える影響を探り、これらがNPOに働く人々にどのような影響を与えているのか考察。また、NPOと企業との連携も新たな財政面や人材面での安定につながると考え、その可能性を考察している。

■第III部 「法制度の整備―諸外国の法制度からの示唆」

 先進諸外国においてNPOで働く人々、特に雇用の枠組みから外れるボランティアがどのような制度によって保護されているのかについての調査報告している。


 そのうち、第I部の第2章「事務局長のキャリア、役割、働き方」では、事務局長のサンプル(483件)を使用し、事務局長の属性、キャリア、業務内容、意識について分析している。

 属性に関していえば、男性が多く、平均年齢も一般のスタッフよりやや高い。

 また、学歴も高いが、世帯収入は他のスタッフと大きな差がない。彼らはほぼ大半が有給職員か無償ボランティアとして活動しており、前者よりも後者のほうが平均年齢が高いとの調査結果を報告している。

 また、過去に他のNPOでの有給職員としての経験がある人は、総人数の多い団体の事務局長を務めている割合が高い。彼らの中には団体の発足当初から活動に参加している人が3割強。活動を始めた動機として、社会貢献への意識や自身の経験・能力を活かそうとする意識は他のスタッフよりも大きい。

 また、報告書では、事務局長の業務内容を、1)組織全体の多様なマネジメント業務に従事するタイプ、2)「会計・経理」を中心とする事務業務に特化したタイプ、3)現場での活動に重きを置いているタイプの3つに分類。

 1)のタイプでは過去の仕事経験として、経営に携わってきた人が多いのに対し、2)では人事・総務などの総合職や事務職、3)では福祉や教育を含む専門職の経験が長い人が相対的に多い。

 しばしば問題視される事務局長の長時間労働に関しては、組織全体のマネジメントを中心的に行っているタイプの事務局長が、長時間労働に陥りやすく、以下、現場中心に行うタイプ、事務業務を中心に行うタイプとなる。このような長時間労働にもかかわらず、それで活動をやめることを考えているわけではなく、むしろ活動継続、並びにより一層の団体の発展を第一に考えているという実態が明らかになった。

 第II部の第5章「行政の事業委託がNPOの雇用・労働環境に及ぼす影響」では、NPOにおける雇用環境安定化の支援という観点から、行政からの「事業委託」に焦点をあてている。

 報告書では、近年、NPOへの事業委託は、単なる「業務の委託」ではなく、NPOへの「支援」として捉えられるという定義の拡大解釈が起こっているとし、事業委託は、NPOへ資源を直接的に提供でき、その事業費金額も相対的に大きいため、NPOの「成長の促進剤」として活用される側面があると指摘。

 しかしながら、こうした関係について、行政の事業委託がNPOの組織基盤の拡大やサービス水準の向上といった影響をもたらす一方、組織ミッションの歪曲や収入の不安定化などの影響をもたらすとも指摘する。

 事業委託によって、団体の活動費、スタッフの人件費等の確保が見込める反面、スタッフの労働時間の増加、業務内容の変更等、団体全体へ大きな影響を及ぼしている可能性があるとしている。

 この報告書の全文は、JILのサイト内、下記からダウンロードできる。また、刊行物としての購入方法も下記に掲載されている。

 http://www.jil.go.jp/institute/reports/2007/082.htm

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