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2002年の報告

2007年08月29日 11:07

松戸市職員研修会「ボランティア・NPOと自治体の協働のしくみ」

 2002年2月15日(金)午後3時より、シーズ事務局長松原明による松戸市職員研修会「ボランティア・NPOと自治体の協働のしくみ」が行われた。

 対象は松戸市幹部職員およびボランティア・NPO活動と関わりの深い職員約100名。

 冒頭に、川井松戸市長より「新たな時代の担い手となるボランティアやNPO等の住民活動と行政が、直面する課題の解決に向けて協働して取り組む「市民参加の制度や仕組み」を整備することが不可欠であり、職員はこうした社会環境の変化を柔軟な発想で受け止め、市民と同じ目線で市政運営していく必要がある。」との挨拶があった。

 松戸市では、今後、市民参加による市政運営や、ボランティアやNPO等の住民活動が、地域社会でより盛んになるための支援に積極的に取り組むことが検討されており、そういった考えに基づいた職員の意識変革を推進するため、今回の研修を企画したという。

 研修は質疑応答を含め約2時間。

 松原が、最も強調していたのは、以下の点であった。

 NPOは行政の補完的な存在ではない。多様な市民ニーズがでてきたとき、行政が担えない民間ならでは担えるサービス・活動があり、それを市民が自ら担うのがNPOである。NPOへの行政の関わり方は限定的でよい。協働も重要だが、自治体の区内に、このような民間の団体をたくさんもつことが、これからの時代において、真に地域を豊かにすることを理解し、その数を増やし、活動が活発に行われる環境を整えることこそが、今の行政の役割なのだ。

 以下に松原による講演の要旨を報告する。


 最近は、政策として「NPOとの協働」を掲げる自治体が続出しており、流行とさえいってもいい状態である。一方で、いろいろな問題やトラブルもおこっている。これは自治体側のみならずNPO側からも聞こえてくる。

 これらの問題やトラブルにおける自治体側の最大の原因は、NPOとはどういうものか、また、NPOとボランティアとはどう違うものかを理解していないことにある。そのためにやってはいけないことをしたり、NPOの意欲に水をさしたりする。今回は、NPOとはどういうものか、その仕組みや活動と、なぜ、NPOの支援や協働が自治体にとって大切なのかを、お話する。

1.なぜNPO(Non-profit Organizations)が注目を集めているのか

 日本で、NPOが注目されてきたのは、1980年代からである。

 それまで日本では、サービスを公益と私益に二分し、公益・社会サービスは官(行政)が提供し、私益は民(企業)が追求すればよいとの考え方であった。

 社会サービスについては、行政が事業の内容を法律化し、その担い手となる法人をつくり、財源も法律によって確保してきた。

 医療法人や社会福祉法人、学校法人などがこの仕組みで動いている法人である。

 これらもNPO(非営利組織)ではある。しかし、今日テーマとなっているNPOではない。

 これらのNPOは、中央省庁の規制の下、行政を補完する仕組みとして作られてきた。

 このような制度は一定程度機能はしたが、70年代後半から、市民ニーズが多様化し、行政が対応しきれないニーズがたくさんでてきた。

 例えば、障害者が在宅で暮らしていきたいというニーズ。もらった薬がどういうものか知りたいというニーズ。医療ミスも表面化してきた。子どもの不登校という事態の出現は学校教育法の想定外であったし、国際協力や自然保護の重要性も叫ばれてきた。これらは、行政がノウハウをもっていない分野であるし、担当が細分化された縦割り行政では対処できない問題であった。

 これらのニーズに対応してきたのが、市民が自発的に作ったNPOだった。利益を目的とせず、行政の制約にとらわれずさまざまなサービスを提供することを始めた。

 ボランティア団体とか市民活動団体とか呼ばれている団体である。

 医療ミスにあった人の相談や訴訟支援。不登校の子どものためのフリースクール、障害者の自立生活を支援する活動などである。これらの活動は公益を目的としたものである。しかし、官から民に向けて行われるサービスではなく、民から民へのサービスといえる。これの担い手が今日注目されているNPOなのだ。

2.NPOとボランティアのちがい

 行政側は、ボランティアとNPOを同じものと誤解しがちである。ボランティアが無報酬であるからNPOにもお金がかかならないと考えてしまう。NPOが注目されているのは、その価格優位性(=低価格)にあるとさえ思っている人もいる。

 ボランティアは個人であり、NPOは組織である。組織が活動するにはコストがかかると認識する必要がある。ボランティア=無報酬=非営利ではない。非営利団体は企業と異なり、利益を株主(非営利団体では会員)に分配しない。非営利団体は、そのサービスを安定的、継続的に供給していくための資金を稼ぐ必要があり、利益がでたとしたら、それを次の活動に投資するのである。

 ここで、行政が注意しなければならないのは、ボランティア支援とNPO支援はちがう、ということである。ボランティア支援という場合は、どういう参加先があるか調査・公表し、またその活動に参加しやすくするにはどうすればいいか考えることに重点を置く必要がある。NPO支援の場合には、安定的に社会サービスを提供するために、経営ノウハウや人材の確保など、企業支援と同じような視点が、より一層重要となってくるのである。

3. NPOのもつ多様な価値観が社会を豊かにする

 現在、NPOの活動は多岐にわたっている。障害者がヨットにのることを支援している団体もあるし、地域でネコが安心して暮らせるように活動している団体もある。高齢者を対象にいきいき体操を広めている団体もあれば、目の不自由な人にダーツを広め、競技化していこうという団体もある。このようなことはほとんど行政ではできないことだし、すべてやる必要があることでもない。

 重要なことは、このような活動が増えることから行政もメリットを受けていることを認識することである。高齢者が体操をすることで、元気になり、ひいては医療費が減少することにつながるだろう。

 よく行政側に生じる次のような誤解がある。「行政が担いきれない公益サービスを提供するのだから、NPOは行政の補完である」との考え方だ。

 NPOは行政の補完的な存在ではない。民間の自立的な活動である。その点、企業と同じである。当然、行政の関わり方は限定的でよい。行政がNPOを行政の補完と位置づけ、口出しするのではなく、このような民間の団体をたくさんもつことが地域を豊かにすることを理解し、その数を増やし、活動を活発にする環境をどれだけ整えられるかが大切なのである。

 それが今後の地域経営の大きな柱となるだろう。

 米国で民活といえば、民間の力をいかに大きくするかということをさす。しかし、日本で民活といえば、行政の仕事に、民間の力をどれだけ導入できるかという視点からとらえられる場合が多いのが現状だ。

 これから自治体がすべきことは、民間の活力を行政に取り込むことではなく、民間の自立を促進することだ。民→民の関係で社会サービスがより充実する。そのことをバックアップしていくことが求められている。

4. NPOとの協働

 NPOと協働する際の注意点を述べておきたい。

 NPO界は行政からの事業委託が増えて一種のバブルといえるような状況にある。

 これまで述べたようなことを理解せずに、安易にNPOに事業を委託しようとすると、市民のニーズに合わない事業をすることになってしまいかねない。NPOだからといって、市民ニーズに合致しているかどうかは、保証の限りではない。

 また、委託先がないからといって行政が自分でNPOをつくってしまう場合もあるが、必要とされるニーズを的確につかむことができず、失敗することが大半だ。無駄な公共事業と同じである。

 NPOへの事業委託が第2の公共事業とならないためにも、法人化の有無を問わず、任意の団体も含めてNPOの生まれてきやすい環境を整備し、協働の相手を質・量とも充実させる必要がある。

 そして、協働それ自体を目標とするのではなく、市民のニーズにあった事業を目標とすることである。

 まずは、市民ニーズに立脚した新たな公益サービスができるよう、NPOが活動しやすい資金面・制度面での環境を整備することこそ、行政の果たすべき役割である。

質疑応答

Q.ボランティア/NPO支援センターをつくる際の注意点をうかがいたい。

A.先に述べたNPOとボランティアのちがいを押さえた支援をすることが大切だ。補足としては、とにかく支援したらいいという考えではなく、民間から民間に開かれたサービスを提供するにはどうしたらいいかという視点から支援してほしい。民→民の関係を強化する必要がある。チラシをつくる印刷機や会議室などが重要になるのは、それが民→民を強化するツールだからだ。また、公民館、ホールなどの公共スペースは、今までは趣味の会がそこを占めてきていた。そうではない公益団体が使いやすいような手法を検討すべきである。

Q.行政サイドの認識不足もあるが、ボランティアのなかにもNPOに対するアレルギーがみられる。

A.確かに、対価をとるサービスをしようとすると「ボランティアだからお金のことを云々することは不浄である」という人がいることも事実。ボランティアには、寄付をもらうことに抵抗があるという人も多い。今まではそれが主流でもあった。そのような人たちには、NPOとボランティアを対立として捉えている人もいるようだ。しかし、それは間違った考えだ。ボランティアとNPOはお互いを必要としている。

 今は転換期である。個人のボランティア活動だけでは、噴出する社会問題に対応できない時期にきている。同時に大きな世代交代の時期も来ている。この中で、徐々にNPO版構造改革がおこっていくだろう。

報告:安部嘉江

2002.02.19

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