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新!特別連載コーナー

2007年08月23日 16:38

第八回 クアーズ(Coors)

コーナーのご紹介:

 2002年5月、シーズは国際交流基金日米センターの助成を受けて米国を訪問し、米国の NPOや財団、そして企業は寄附をどのように捉えているのか、またNPOは募金のためにどのような努力をしているのかを調査してきました。

 この特別コーナーでは、10回にわたってこの調査旅行で出会ったNPOや財団の募金担当者(fundraiser)、また企業の社会貢献担当者のインタビューをご紹介します。米国ならではの考え方もありますが、日本のNPOが参考にできるところもたくさん見つかるはずです。

 この調査発表は、国際交流基金日米センターの助成事業です。


第八回 クアーズ(Coors)

(2002年5月13日訪問)

 連載第8回目は企業へのインタビューです。コロラド州のゴールデンという小さな可愛らしい街にあるクアーズビールの本社を尋ねました。

 クアーズは、1873年創業の米国で3番目に大きい醸造会社です。本社のあるゴールデンは、デンバーから車で約30分ほど走ったところにあります。

 クアーズのマーケットは北米にとどまらず、今では中南米、カリブ諸国、ヨーロッパ、そしてアジアの30カ国以上に広がっているそうです。社会貢献活動に力を入れている企業のひとつでもあります。

 お話を伺ったのは、パートナーシップ事業課長のジーン・ヒロンさんです。

 クアーズ本社に隣接した工場のお土産店にて。工場見学した人たちが、この店をよく訪れる。左から2番目がヒロンさん。


 「クアーズは、70年代からアフリカン・アメリカン・コミュニティや、ヒスパニック・コミュニティの支援をしてきましたが、80年代のはじめからは、私たち企業と関わりのある問題について、企業責任を果たそうと考えるようになりました。すなわち、未成年の飲酒、飲酒運転、そして大学での無謀な飲酒の3つです。今は、税引き前の収益の2%をこうした問題に対して寄附しています。

 NPOはよく、私たちの事業に寄附をして欲しいといってきますが、お金を出すだけでは良い関係づくりはできないと思っています。私たちは、寄附先のNPOをパートナーであるととらえています。

 NPOとパートナーを組むにあたっては、その団体が扱う問題と私たちの課題、つまり先ほどの3つのテーマが一致しているということがまず基本です。

 それから、アルコール飲料を売る私たちとパートナーを組むことを恥だと考えず、快く思ってもらえるNPOであることが条件です。

 米国では、アルコール業界は、強い規制を受けています。そのため、私たちはビールを売るという企業活動を擁護してくれるものが必要なのです。

 ですから、パートナーNPOには、クアーズとの取り組みを誇りに思って、それを積極的に自ら広報してほしいと思っていますし、メディアだけではなく、政策決定者(議員など)に対しても、クアーズが事業を支援していると語って欲しいと希望しています。

 クアーズの社会貢献を紹介する資料パッケージ。社長の挨拶や、これまでの取り組みをパンフレットやCD-ROMで見ることができる。

 実は、私たちは、パートナーを組んで問題に取組んでいるということを宣伝するのがうまくありません。クアーズは、クアーズ家が所有している同族会社ですが、彼らは山頂に上り詰め、一番になったと誇らしげに語ることを好みません。そのために、ずいぶん良い機会を逸してきたかもしれません。でも、今は企業として、これを見直そうとし始めています。

 というのも、米国の消費者は、社会に貢献する企業の製品を購入する傾向があるからです。この国は自由を重んじてきましたから、企業に関する情報も自由に入ってきます。企業がクリーンなだけではなく、何を地域に還元しているかということを消費者は見ているのです。

 この変化のなかで、実際、過去にクアーズといっしょに取組んだといいたがらなかった2つの団体とは、その後、関係を解消しています。

 NPOが企業に寄附依頼にいく時に大切なのは、その寄附・あるいは投資が、その企業にとっても利益のあるものでなければならないということです。この利益というのは、直接的なものでななく、その寄附によって、企業が地域に貢献していることが人の目に見え、尊敬を受けられるか、同じような価値観を共有していて、企業が希望するコミュニティの変化をちゃんと生み出せるかということです。

 NPOは、その団体の活動に関心をもつ企業、あるいはそのことで利益を得ることができる企業はどこなのかを探すことが大事でしょう。」


 お話してくださったヒロンさんは、クアーズに転職する前には10年以上、非営利団体で働いてきたそうです。その立場からも、「NPOが企業から寄附を受けるにあたって、その企業が何を求めているかをきちんと知るべきである」と、とても熱い思いを込めて話してくださいました。最近、外国ビールを飲む時には、クアーズを注文するようになってしまいました。

 クアーズのホームページ・アドレスは、次のとおりです。

 http://www.coors.com/

(2003.07.09)

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