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2003年の報告

2007年08月29日 14:08

NPO施行5周年記念シンポジウム「NPOの過去・現在・未来」

~NPO法施行後の課題を整理し、NPOの今後を展望する~

 去る12月1日、NPO法(特定非営利活動促進法)が施行されて5周年を迎えた。各地が記念イベントなどで賑わう中、1日の午後7時より、東京都新宿区の研究社英語センター大会議室にて、標記のシンポジウムが開催された。

 このシンポジウムは、シーズが世話団体として参加している「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」が主催。あいにくの大雨にもかかわらず、会場には約180名の参加者が集い、関心の高さをうかがわせた。

 シンポジウムは現状報告とパネルディスカッションの二部構成。司会を務めたのはNPO事業サポートセンターの宇都木法男氏。

第一部 現状報告

 NPOの過去、現在、未来という視点から、それぞれ3名の報告者から現状説明と論点整理があった。

 「過去の部」を担当したのは、日本NPOセンターの常務理事山岡義典氏。「改めてNPO法の意義を考える」をテーマに、

  1. 市民団体が簡便に法人格を取得できた直接的意義
  2. 市民が行う社会貢献活動を制度として確認できた社会的意義
  3. 公益法人制度などの見直しの動きに先鞭をつけた制度的意義
  4. 市民と国会議員との連携で創られた社会制度としての立法的意義

と、NPO法誕生の意味合いを四つのカテゴリーにまとめ、それらの意義を風化させないよう呼びかけた。

 引き続き、市民福祉団体全国協議会の田中尚輝氏より、福祉NPOの現状について次のような報告があった。

 「ここ数年、福祉系NPOの数が大きく増え、介護保険を実施しているNPO法人は1000団体、年商400億円にまで達している。ただ、ボランティアベースの互助活動がまったくなく、収益につながる介護サービスしかやらないNPOなら、企業との違いが見えなくなり、NPOとしての存在意味もなくなる。

 行政や企業と一味違うサービスを提供できるのはNPOの強みであり、そのための制度整備、特に移動サービスに関連する法の見直し、NPO法人と社会福祉法人との差別化などの課題が残っている。」

 最後に、シーズの事務局長松原明より、NPO法人制度の現状から見た将来の展望について次のような発言があった。

 「NPO法がスタートした当初は法人がどのぐらい増えるのか不安もあったが、2003年10月末の時点で法人数はすでに1万3千を超え、毎月約450から500ぐらいのペースで増えつつある。法人化した団体の3分の2は、NPO法施行後に設立された団体。また、認証率が99.6%という数字も、簡易な法人化という目的は達成されたことの裏づけとなっている。

 しかし、NPOの財政状況は未だにきびしい。年収が1千万円未満の団体が全体の約3分の2、認定NPO法人の数もたったの18団体。今年4月に認定要件が緩和された効果はほとんどなかった。

 行政がNPOを下請化したり、企業が販売促進のためにNPOを作ったりする中で、NPOもビジネスに積極的に取り組むようになると、営利組織との境界線がますます見えにくくなる。

 NPOの発展方向として、非営利性に重点を置くのか、あるいは市民活動に重点を置くのか改めて問う必要がある。認定NPO法人制度の改正、市民に対するアカウンタビリティの仕組みの制度改善など、制度改革も第二段階に入ろうとしている。NPO、市民活動、非営利の概念を今一度整理する必要がある。」

第二部 パネルディスカッション NPO法施行による地域および各分野での変化

 第二部の司会を担当したのは、大阪ボランティア協会の早瀬昇氏。

 まず4名のパネリストからそれぞれの団体の活動および法人化された経緯についての報告があった。

 パネリストと発言内容は次の通り。(発言順)

秦 静枝氏

 NPO法人蔵王のブナと水を守る会理事

 1985年宮城県白神山地の青秋林道建設の反対運動で発足した団体。植林実験をするため野営場を実験区として行政から取得し、99年に日本ナショナル・トラスト協会にも加入。

 99年3月宮城県の第1号NPO法人となった。それによって、土地取得にかかわる法的問題をクリアしただけでなく、社会的信用を得る手段にもなっている。しかし、組織自体がまだ法人化した意識が低く、専従スタッフが一人もいない状況が続いている。

児玉 宏氏

 コーチズ代表理事

 コーチズは広島市にあるスポーツNPO法人。われわれはボランティアではなく、ビジネススタイルで始まった組織なので、法人化してからNPO法を勉強し始めた。

 活動分野は非常に広いが、現在市から高齢者の健康教室と子どものスポーツ指導事業を受託している。これらの健康・スポーツ教室に出向くのは、コーチズが養成した元暴走族の若者たちだ。暴走族の問題が深刻化している中の成功例であり、NPOだからできる取り組みである。

龍田 成人氏

 アジア日本相互交流センター(ICAN)代表理事・事務局長

 ICANは、94年フィリピンの貧しい地区の子ども達との交流を目的としてスタートした。現在ごみ拾い生活者の医療・職業訓練支援や少数民族の小学校での給食支給などに取組んでいる。

 NPO法人になることは、スタッフの雇用保険や労務関連について勉強するきっかけとなった。

福田 房枝氏

 日本子どもNPOセンター専務理事

 子ども劇場全国センターは37年の歴史と全国53万人の会員を抱える巨大組織。巨大化による組織疲労と芸術団体との馴れ合いから脱皮しようと思い、日本子どもNPOセンターを設立した。

 組織の改革はまず財源の仕組みからスタートした。全国センターとしてどれぐらい地域のためになっているのかを試されることになるが、本当のNPO法人を目指したい。

 パネリストの報告を踏まえ、司会の早瀬氏よりNPO法ができた後の地域活動の変化と、悪質なNPOにどう対応するのかという問題が提起され、パネリストからは次のような意見が出された。

秦: 宮城のNPO法人の第1号となったため、一時的にマスコミから注目され、団体の地元での知名度が一気にアップ。そのおかげで助成金に恵まれた時期もあった。しかし、われわれにとって一番よかったのは同じ活動をしている団体との横のつながりができたこと。最近、地元の破綻したスキー場をNPOに運営委託した話があった。最初はそれでもNPOと言えるのかと理解できなかったが、NPOが必死に頑張っている姿を見て、やはりこれはNPOだと思うようになった。

児玉: NPO法人の組織形態を選択したのは、当時スポーツの分野ではまだNPO法人の参入がなく、行政のリソースをうまく使いたい狙いがあった。ところが、NPOがまだ社会的に認知されていなかったため、法人になって1年半は仕事がゼロ。ボランティアに頼らざるをえない状況であった。そのお陰で若者たちにたくさん参加してもらい、初めてNPO法人としての意味が分かった。若者特に非行経歴のある人たちの就職先が狭くなっている。私たちの活動を通して、彼らにトレーニングと職に就く機会を与えることができた。これは、NPOだからできることだと思う。このように、雇用を生み出すことを団体の目標としている。

龍田: 国際協力の分野においては、法人化する前後では、あまり変わらない感じがするが、最近行政がいろんな意味で立ちゆかなくなり、NGOと対等な立場で仕事せざるを得ない状況になってきた。今こそ市民団体には高い専門性が求められる。悪質なNPOと騒ぎになっているが、株式会社だっていろいろあり、中には悪い会社も当然ある。とにかくNPOが自分たちの活動をしっかりすることで、評価につながるはず。

福田: 全国のこども劇場が600を超えているが、その中の109団体が法人化されている。法人になったことによって、団体のミッションがはっきり見えるようになり、リーダーの意識もかなり変わった。法人になっていないところとの差がはっきりとしてきている。

第三部 参加者との意見交換

 参加者より次のような質問・意見があった。

参加者1: 佐賀県から来ているが、県のほうで7つのNPO支援センターを作ろうとしている。行政とNPOとの関係の中で、中間組織に対する何かアドバイスを頂きたい。

参加者2: コーチズのスタッフの給料水準を教えて欲しい。

参加者3: コーチズが営業に力を入れている話があったが、民間企業にどのようにアプローチしたのか教えて欲しい。

参加者4: NPOが助成金をもらって、急に雰囲気が変わった話を最近よく聞くようになった。

参加者5: 立法経緯の中で現在の「特定非営利活動法人」はもともと「市民活動法人」という名称で議論されていた。もし「市民活動法人」が復活したら、その法人格を取り直すかどうか。NPOの市民活動の側面をどのように考えたら良いのか。

 こうした会場の声に対して、パネリストおよび第1部の報告者から下記の発言があった。

秦: 助成金をもらうことは有難い話だが、その使い道がいろいろ制限されているところが難しい。もっと自由に使える支援があったらいいと思う。

児玉: コーチズでは、高齢者の健康指導をしている若者たちに月16万5千円、スタッフには月16万~20万円程度の給料を出している。私たちの団体は決して行政の下請けではなく、むしろ行政をリードする立場にいる。私たちしかできないことをやっている自負を持っている。また、見える顧客が居るから活動も見えやすい。その点では中間支援組織の方が難しい立場に居ると思う。

山岡: 最近、自称民間組織で、実は役所が作った中間支援組織が結構できている。NPOのないところで、NPOと行政との協働は論外の話。行政がきちんと自分の責任を果たすべき。

松原: 「NPOがだれのための組織なのか」を常に意識することが非常に大切。独立性を保ちながら、行政のリソースをうまく使えば良い。協働は唯一の選択肢ではない。行政主導のNPOなら、お金が切れてしまうと受益者が困るし、結局団体自身も政府の外郭団体のようになってしまう。

 最後に、パネリストからそれぞれ次のような展望を語ってもらい、9時30分にシンポジウムは終了した。

秦: われわれは寄付で成り立っている団体なので、個人や企業がもっと寄付しやすい環境を作っていきたい。白石市ではNPO法人の不動産取得税の減免が実施され、非常に好評だったが、固定資産税がNPO法人にとってまだ大きな負担となっている。

児玉: マーケットは自然淘汰の原理で動いている。NPO法人だけでなく、志を持っている人たちが、いろんな形で活躍すれば良いと思う。

龍田: 寄付をもっと集めやすい法・税制にしていきたい。

福田: NPOで社会を変えてゆくことを日々実感している。NPOで働く人たちの「質」も問われる。法制度の面では、事業型NPOが成り立つための支援税制が必要。本来事業に関しては100%非課税にすべき。

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