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2009年05月11日 14:00

その他 : まちぽっと、市民起業法人制度などを提言

 4月28日、NPO法人ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来(NPOまちぽっと)(東京都 理事長:佐々木貴子)は、東京・新宿にてフォーラム「市民起業法人のすすめ」を開催。社会的事業を推進するための新しい法人格「市民起業法人」と、NPOバンクを活用した「社会的投資減税制度」の創設を柱とした総合政策提案が発表された。

 

 NPO法人ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来(NPOまちぽっと)は2007年にNPO法人コミュニティファンド・まち未来とNPO法人東京ランポが合併して誕生したNPO法人。地域を豊かにするために必要な事業をつくり出し、継続した活動を定着させるために必要な「お金」「知恵」「情報」「仲間」についての総合的な支援を活発に行っている。

今回の提言は、NPOまちぽっと内の「非営利金融・アセット研究会(アセット研)」がまとめたもの。非営利金融・アセット研究会(アセット研)は、社会が抱えているさまざまな壁や行き詰まりを市民の力で突破する「社会的ブレイクスルーに必要な非営利セクターの仕組み」を考えることを目的に2007年に結成された。

公認会計士でNPO会計税務専門家ネットワーク専務理事の加藤俊也氏、弁護士でオメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所の木下万暁氏ら会計・税務・法務の専門家や、未来バンク理事長・apbank顧問の田中優氏らNPOバンク関係者、NPOまちぽっと事務局長の辻利夫氏ら市民活動実践者、高崎経済大学・茨城大学非常勤講師の前田拓生氏ら学識経験者など12名で構成。2007年から2年をかけて、計19回の研究会を開催。ゲストやオブザーバーも交えながら、新しい社会的事業の事例検証や海外の政策分析を重ね、これからの社会的事業・市民事業について議論してきた。

当日のフォーラムでは、前半(第1部)「市民起業法人の提案と、社会的事業を活用する総合的な政策提案」で、これまでのアセット研での議論を振り返りも交えながら、非営利/共益事業セクターの現状と課題の説明や「市民起業法人」と「社会的投資減税制度(社会的エンジェル減税)」提案についての解説がなされた。後半(第2部)「パネルディスカッション『市民起業法人のすすめ』」では、アセット研メンバーらによる活発な議論が行われた。


(フォーラムの模様 4/28)

第1部では、非営利/共益事業セクターにおける以下のような現状の法人形態を「配当の制限」と「残余財産の制限」に着目して分析。
・特定非営利活動法人(NPO法人)/認定NPO法人
・一般社団・財団法人/公益社団・財団法人
・各種協同組合
・非営利株式会社
・企業組合
・合同会社(LLC)
・有限責任事業組合(LLP)
・株式会社

辻氏は、「特定非営利活動促進法(NPO法)施行10年が経ったが、NPOの多くは資金問題に悩んでいる。NPOが活動資金を集めるには、寄付と融資・出資がある。市民による非営利事業を持続・発展させるには、後者に関する新しい制度整備が必要ではないか。」と述べた。出資の際には、インセンティブとして、薄い営利性(限定的な利益配当を意味する)を持たせることが、重要と指摘。現状の「非営利=配当なし・残余財産分配なし」という非営利概念を転換し、「非営利=限定的な配当可」とすることを提案した。

前田氏は、「現在の非営利概念の場合、配当は出来ない。インフレが起こると出資した資金の価値が、実質目減りし、出資者は損をする。例えば、国債金利程度の薄い配当は検討しても良いのではないか。また、現在の法人制度では、少しでも配当を行うには、『協同組合』を選択するしかないが、300人以上を集めなければならない。」と問題点を指摘した。
また、事業性を前提とする新しいタイプの非営利事業として、国内5つの事例を紹介。現行制度の課題を述べ、市民による非営利事業に合う法人格の必要性を強調した。

・NPO法人ふるさとの会:路上生活者の住居提供・就労支援を行い、自立を支援している。ランニングコストは事業収入で賄っている。
→事業開始する際の施設改築・補修といったイニシャルコストの資金確保が大変。
http://www.d5.dion.ne.jp/~hurusato/npo_frame.html

・株式会社アモールトーワ:NPO法施行前に設立された非営利株式会社。福祉サービス事業などでの利益は地域のために活用。
→非営利で地域おこしのために活動しているが、損失とリスクが大きい。
http://www.amorutowa.co.jp/

・石徹白(いとしろ)マイクロ水力発電事業:急流を活かした小規模水力発電の事業化を計画中。
http://itoshiro.blog98.fc2.com/blog-category-15.html

・NPO法人ほっとコミュニティえどがわ
http://homepage2.nifty.com/hotcommunity/

・一般社団法人(旧中間法人)天然住宅:国産木材で健康・安全な住宅を提供。林業復興と森林再生を狙う。利益は森林保護に活用。
→配当が無いため資金調達が、やりづらい面がある。

これら市民が行う非営利事業の法人格として、『儲からなくても損はせず、生活できる経済性を持つ』仕組みとして、「市民起業法人」制度の創設が提案された。市民起業法人では、「実質的に損をしない程度の配当は非営利である」とする。概要は非営利型の合同会社(LLC)に近い以下のようなものとなる。

・制限配当は可能だが、出資金を除いた残余財産の分配はできない。
・有限責任で、登記で簡易に設立可能。業種はNPO法の17分野とする。
・税制では協同組合と同等。
・情報公開により、市民によるチェック機能を盛り込む。
・税制優遇は法人格に付随しない。(認定NPO法人制度や新公益法人制度と同様)

続いて、海外の類似政策事例として、イギリスの政策提案「Wealth Beyond
Welfare」が、有限会社SDP代表の宮本愛氏により紹介された。Wealth Beyond
Welfareは貧困地域に対する金融行為/社会的投資による再生を目的に、2000年にイギリスで提案されたもの。

1.コミュニティ開発金融機関(CDFI)を通じたコミュニティ投資減税(CITR)の導入
2.コミュニティ開発ベンチャーキャピタルファンド(CDVC)の創設
3.低投資地域における銀行貸出の情報開示
4.チャリタブル・トラストによるコミュニティ開発プロジェクトへの投資の促進
5.コミュニティ開発金融機関への支援
以上5つを柱とする提案となっており、2005年での進捗報告では社会的投資の促進に寄与していると評価されているとのこと。

引き続き、Wealth Beyond Welfare内「コミュニティ開発金融機関(CDFI)を通じたコミュニティ投資減税(CITR)」を参考に考案された「社会的投資減税制度(社会的エンジェル減税)」創設も提案された。
社会的投資減税制度(社会的エンジェル減税)は、NPOバンクなど間接金融を活用した減税制度。個人が、市民起業法人やNPO法人などに対する融資を行うNPOバンクなどの非営利金融機関へ出資する際に、出資の一定額を所得税から税額控除できるようにする制度。社会的エンジェル税制により、地域内での資金循環が活性化し、社会的事業の発展を支援できるとのこと。仕組みとしては、平成20年度(2008年度)税制改正で導入された現行の「ベンチャー企業投資促進税制(エンジェル税制)」に似た制度となる。

ベンチャー企業投資促進税制(エンジェル税制)については、経済産業省内の下記ページを参照。
http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/structure/index.html

「市民起業法人」と「社会的投資減税制度」の他にも、以下のような施策が提案された。
・市民による非営利金融機関の設置
・認定NPO法人以外にも適応できる寄付税制の検討
・市民による非営利型の直接投資の再検討
・非営利法人による、土地や建物などの公益的な活用制度

第2部では、第1部での発表をベースに、法人格や税制をはじめ、非営利性と営利性、公益性と共益性といった話題を議論。実例も交えながら、活発な議論がなされた。
田中氏は、「非営利事業を支えるNPOバンクなどのインフラがまだまだ未整備で、事業を進めるプレーヤーが活躍しにくい社会になっている。」とし、「金融商品取引法や貸金業法による規制、非営利型の出資に適した法人格の欠如などにより、NPOバンクは活動しにくくなっている。」と指摘した。
相根氏は、自身が取り組んでいる天然住宅事業での法人格使い分けなどを紹介。加藤氏は、出資だけでなく寄付や助成の重要性にも触れ、公益性の判断に市民が寄付やボランティアを通じて参加する意義を述べた。木下氏はこれから非営利法人の変化の可能性に触れた上で、大きな期待を表した。

各氏は、現代の若者を取り巻く状況を考え、若者が社会的課題の解決を目指す非営利事業にチャレンジできる制度が必要とし、「市民起業法人」や「社会的投資減税制度」の実現を改めて訴えた。

今回のフォーラムの内容やアセット研の議論の成果は、2009年7月を目途に、ブックレットとしてまとめられる予定。
問い合わせは、NPOまちぽっと 担当:奥田まで。
TEL: 03-5941-7948 メール: info@machi-pot.org

非営利金融・アセット研究会(アセット研)の活動経緯や成果については、NPOまちぽっと内下記ページを参照。
http://machi-pot.org/modules/financial/

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