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その他ニュース

2009年05月29日 15:00

その他 : 公共サービス基本法成立、国民の権利を明記

 5月13日、参議院本会議で公共サービス基本法案が全会一致で可決、成立した。公共サービスの定義や基本理念、国民の権利、国・地方自治体の責務、公共サービス委託時の責任明確化などが定められている。

 

 公共サービス基本法案は、衆議院へ議員提出法案として4月28日に提出された。与野党が超党派で取り組み、衆参院とも全会一致で可決された。法案の作成・提出・成立には、公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)と日本労働組合総連合会(連合)が協力して取り組み、大きく貢献した。

公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)は、全日本自治団体労働組合(自治労)や日本教職員組合(日教組)ら、公務員を中心とした9つの労働組合により構成される組織。公務労協は2004年から「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」を開始。
公共サービスのあり方を考え、提言をまとめるために「良い社会をつくる公共サービスを考える研究会」を発足。研究会は、東京大学大学院教授の神野直彦氏が主査、北海道大学公共政策大学院教授の宮本太郎氏が幹事で、学識経験者ら計12名が参加。2006年2月には中間報告をまとめ、2006年10月には最終報告として、下記10項目からなる「良い社会の公共サービスを考える10の提言~財政再建主義を超え、有効に機能する『ほどよい政府』を~」を発表した。

提言1 脱「格差社会」への公共サービス
提言2 ライフラインとしての教育の保障と未来投資としての教育の挑戦
提言3 構造改革批判の上に立つ都市空間の創造
提言4 「誰でも普通に生きられる」社会と 安心・安定した個人・家族生活をつくる 新しい社会保障へのパラダイム転換
提言5 公共サービスを支える市民社会――市民社会を強くする方法
提言6 「良い社会」をつくる公共サービスの提供主体
提言7 公共サービスをめぐる透明性の向上と 参加のシステム化
提言8 価格偏重を改め、公共サービスの質の重視を ―民間委託・市場化テスト等への対応
提言9 公共サービスに携わる人々にディーセントワークを
提言10 良い社会をつくるための公務労働

「提言5 公共サービスを支える市民社会――市民社会を強くする方法」などでは、市民活動やNPO、市民社会の重要性にも触れている。

最終報告後は、全国各地で公共サービス基本法の制定を求める集会を開催、請願署名活動も行って約340万筆を集め、民主党を中心に立法への働きかけを積極的に行っていた。

公共サービス基本法は、全11条からなり、第1条では「公共サービスが国民生活の基盤となるものであることにかんがみ、公共サービスに関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」を目的としている。第2条では、公共サービスを「国又は地方公共団体」が行う「事務又は事業」であって「特定の者に対して行われる金銭その他の物の給付又は役務の提供」などで、「国民が日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な基本的な需要を満たすもの」と定義した。

第3条では、公共サービスの実施に当たって、下記5点が国民の権利であるとした。
一 安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること。
二 社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要に的確に対応するものであること。
三 公共サービスについて国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること。
四 公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること。
五 公共サービスの実施により苦情又は紛争が生じた場合には、適切かつ迅速に処理され、又は解決されること。

第4条以下、国・地方公共団体・公共サービス従事者の責務や公共サービス委託時の役割分担・責任明確化、国民の意見反映、公共サービス従事者の労働環境整備などが盛り込まれている。「国民の立場」や公共サービスにおける国や地方自治体の責務を重視した内容となっている。

5月20日には公布され、6か月以内に施行される予定。

公務労協は法案成立後に発表した見解で「(法案成立は)これまでの公務労協そして連合の取組みの到達点として大きな意義を有するものである」と述べ、「効率と競争最優先から公正と連帯を重んじる社会の実現へと転換し、働きがいのある人間的な労働を中心とする『ともに生きる社会』の創造とそれを支える公共サービスの実現をはかるための基盤が形成されたもの」と評価している。

また、連合も事務局長古賀伸明氏による談話にて、全会一致による法案成立を評価すると共に「『新しい公共』による安心・安全な社会の実現に向け、「(公共サービス)基本法」に則った政策運営を求めつつ、国民のニーズに基づく公共サービスを国民の参加により構築するよう、地域・職場から運動を進めていく。」と今後の展望を述べている。

国や地方自治体から委託を受けているNPO法人や市民活動団体にとって、公共サービス基本法の意義は大きいと思われる。基本法制定後の動きも含め、今後の動向に注目したい。

公共サービス基本法案については衆議院内下記ページを参照。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g17101025.htm

公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)のホームページは下記。キャンペーンサイトでは、立法に向けた活動の記録が細かく掲載されている。
http://www.komu-rokyo.jp/

公務労協の「良い社会をつくる公共サービスを考える研究会」による最終報告は下記ページを参照。報告書全文を入手できる。
http://www.jichiro.gr.jp/tsuushin/722/722_1.html

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