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2009年06月12日 21:30

その他 : 日本NPOセンター、NPOにソフト寄贈開始

 6月3日、NPO法人日本NPOセンター(東京都 代表理事:山岡義典)は、「TechSoup Japan(テックスープ ジャパン)」によるNPOのIT支援事業を開始した。特定非営利活動法人(NPO法人)や社会福祉法人などに、アドビ・シマンテック・マイクロソフト各社のソフトウェア寄贈やオンラインITサポートを行う。

 

 「TechSoup(テックスープ)」は、全世界23ヶ国で、各国のNGO/NPOとパートナーシップを組んで、ソフトウェア寄贈事業を展開している。協力企業から無償提供されたソフトウェアを中心としたIT製品を、それらを必要としているNGO/NPOへ届けている。協力している企業は全世界で35社、現在までにソフトなど約470万本(小売価格換算で1800億円)をNPOに寄贈している実績を有する。
今回、24ヶ国目となる日本での事業展開においては、NPO法人日本NPOセンターが「TechSoup Japan」としてプログラムの運営を行うこととなった。

NPO法人日本NPOセンターは、1996年に設立。民間非営利セクターに関するインフラストラクチャー・オーガニゼーション(基盤的組織)として、NPOの社会的基盤の強化を図り、企業や行政との新しいパートナーシップの確立を目指し、NPO支援センターのネットワーキングや「NPOと行政の対話フォーラム」開催などの活動を活発に行っている。

6月3日開催された記者発表会では、TechSoupの世界的なネットワークであるTechSoup Globalの最高執行責任者ジェリ・ジン・ドウラン氏が来日し、TechSoup Globalの概要を説明。「TechSoupは、『社会のために活動する世界のあらゆる組織が、最大の力を発揮するために必要な、ITの知識やリソースを手にしている』という社会を実現するため、パートナーであるNGO/NPOや企業と協力しながら、各国でソフト寄贈やオンラインのITサポートを行っている。これまでに8万3000もの団体が寄贈を受けている。」と述べた。また、TechSoup Japanについては、「TechSoupを新規展開する国では、初めてサイト上にコンテンツとコミュニティを両方備え、3企業による寄贈プログラムはスタート時点では最多となる。」と高く評価。「日本国内には、多くのIT企業が存在することから、今後の協力企業の開拓にも大きく期待する。」と今後の寄贈プログラムの拡充などに大きな期待を示した。

ちなみに、TechSoup Globalは、1987年の活動開始当初「CompuMentor(コンピュメンタ)」という組織名で、ITボランティアとNPOとのマッチングなどを行っていた。その後、プログラムの一つであった寄贈プログラム「TechSoup Stock」をヒントに、現在のTechSoup Globalという名称に変更したとのこと。

TechSoup Japanにソフトウェアの提供を行う3社からも事業開始に当たっての挨拶があった。
アドビ システムズ株式会社代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏は、「アドビでは、『利益を社会に還元する』という理念の下、社員も参加しながらマッチングギフトプログラムなど社会貢献活動を行っている。昨年度は1万5000を超えるNPOなどに、寄付や寄贈を実施した。TechSoup Japanを通じて、アドビの製品を必要としている団体へ届け、皆さまの創造性発揮や社会変革実現に役立ていただきたい。」と語った。

株式会社シマンテック執行役員社長室担当の足立修氏は、「シマンテックでは、『世界の情報を守る』という考えで、各国での事業展開をおこなっており、ボランティアや寄付・寄贈などコミュニティへの貢献も積極的に行っている。TechSoupへも2002年から参加し、これまでに1万団体へ寄贈を実施した。TechSoup Japanへも全面的に協力し、NPOの方々がITを安心して使えるよう、お手伝いしていきたい。」と述べた。

マイクロソフト株式会社執行役 法務・政策企画統括本部統括本部長 弁護士の伊藤ゆみ子氏は、「マイクロソフトでは、ICT(情報通信技術)の活用やNPOとのパートナーシップを重視し、企業市民活動を活発に行っている。TechSoupでは、昨年度だけで3万団体への寄贈を行った。日本では、NPO向け無償ソフトウェア寄贈プログラム『NPO+Software』として、TechSoup Japanを通じたソフト寄贈を実施していく。昨今の厳しい経済状況だからこそ、NPOの皆さまにはICTを活用して活躍していただきたい。」とNPOのIT活用へ期待を語った。

TechSoup Japanを運営する特定非営利活動法人日本NPOセンター副代表理事の早瀬昇氏は、「日本のNPOの多くは財政的に困難な状況にあり、TechSoup Japanによる寄贈プログラムは、IT活用を進めたいNPOにとって大変効果的だ。また、寄贈に当たっては、NPO側の情報公開が必要なことも重要な意義がある。TechSoup Japanによって、市民社会がより活気を増すよう努力していきたい。」と抱負を語った。


(記者発表会の模様 関係者による記念撮影 6/3)

記者発表会の後、会場ではNPO関係者などが参加し「TechSoup Japan スタートアップディ」が開催された。
アドビ システムズ株式会社マーケティング本部広報部部長の朝比奈真美氏、シマンテックの足立氏、マイクロソフト株式会社 法務・政策企画統括本部 政策企画本部 渉外社会貢献課長の龍治玲奈氏による社会貢献・企業市民活動の紹介があった。

次に、特定非営利活動法人日本NPOセンター TechSoup Japan事業担当の吉田建治氏から、事業内容について具体的な紹介があった。
TechSoup Japanのスタート時点で寄贈されるのは下記の製品となる。
●アドビ製品(6製品)
Adobe Acrobat Pro 9
Adobe InDesign CS 4
Adobe Dreamweaver CS 4
Adobe Creative Suite 4 Design Premium
Adobe Photoshop Elements 6/7
Adobe Premiere Elements 7

●シマンテック製品(4製品)
Symantec AntiVirus Corporate Edition 10.2
Symantec Endpoint Protection
Symantec Mail Security 6.0 for Microsoft Exchange
Backup Exec 12.5 for Windows Servers

●マイクロソフト製品(40製品以上)
Windows Vista Business アップグレード版
Office 2003 Standard Edition
Office 2007 Standard
Exchange Server 2007 Enterprise Edition
SQL Server 2008 Standard Edition
Visual Studio 2008 Professional with MSDN Professional
PowerPoint 2007
Publisher 2007
Access 2007
SharePoint Server 2007
Windows Server 2003 R2 Enterprise Edition
Windows Server 2008 など

寄贈を受けるためには、各社が設定してる寄贈条件に合致する必要がある。条件は大きく分けて2つあり、1点目は法人格によるもので、2点目は団体の予算規模や活動内容によるものとなる。法人格については、特定非営利活動法人(NPO法人)・公益法人(公益社団法人・公益財団法人・特例民法法人)・社会福祉法人がプログラムの対象で、各社がさらに対象を限定している場合もある。NPO法人では、日本NPOセンターが運営する、NPO法人データベース「NPOヒロバ」の情報が過去1年以内に更新されていることが条件となる。予算規模や活動内容については、各社のポリシーに基づき、寄贈対象となる団体の活動分野などが指定されている。詳細は、TechSoup Japan内該当ページ( http://www.techsoupjapan.org/eligibility_criteria )を参照。

また、これら製品について、好きなだけ寄贈を受けられるわけではなく、寄贈の申請回数や製品数には各社ごとに制限があるので、注意したい。実際に寄贈を受けるには、まず団体の登録が必要になる。
1.TechSoup Japanのサイト上「団体を登録する( http://www.techsoupjapan.org/user/register/ )」から、必要事項を入力して、団体登録を申請する。
2.TechSoup Japanから届くメールの指示に従って、必要書類(NPO法人の場合:登記簿謄本・認証書のコピーなど、所定の申込書)を送付する。
3.TechSoup Japanによる確認を経て、団体登録が完了し、寄贈の申請が可能になる。

寄贈の申請は、簡単で、TechSoup Japanにログインした後、希望する製品を選択して申請すればよい。TechSoup Japanの運営経費をまかなうため各製品には、定価の4%~8%にあたる手数料が設定されている。団体による手数料の支払いが完了すると、協力企業から製品が送付される(ダウンロード可能になる)仕組みとなっている。

TechSoup Japanのサイトには、他にも「ラーニングセンター」と「コミュニティ」が設けられている。ラーニングセンターにはNPOのIT活用に役立つコンテンツが掲載されている。現在はTechSoup Globalのコンテンツを和訳して掲載しているが、今後は日本オリジナルコンテンツの作成にも取り組んでいくとのこと。コミュニティでは、日本各地のIT支援NPOと協力し、ネットワークを構築しながら、NPOでのIT活用ホットトピックスの紹介や掲示板での質問・相談などを実現していきたいとのことだった。


(スタートアップディの模様 吉田氏による説明 6/3)

続いて、会場では「NPOによるITを活用した事例報告」として、NPO法人チャイルドライン支援センター事務局次長の林大介氏による発表があた。林氏は、子どもの自殺が毎日1.4人に上るなど、現代日本の子ども達を取り巻く現状を説明。こうした現状に対して、36都道府県で65団体が、子どもの立場に立って取り組んでいるチャイルドラインの活動を紹介した。チャイルドラインには昨年度だけで18万件の電話があったとのこと。「チャイルドラインは5月から念願のフリーダイヤル化を実現できた。これに伴い、より支援者を拡大し、会費や寄付、助成金を増やさなければならない。支援者拡大には、活動の分かりやすい説明が不可欠で、アドビ社製品などをぜひ活用したい。また、情報共有とその際のセキュリティも課題なので、マイクロソフト社やシマンテック社の製品を活用したい。」とチャイルドライン活動におけるIT活用についてまとめた。

トークセッション「市民セクターの将来ビジョン~ITの活用でつながるNPOネットワーク~」では、NPO法人アインシュタインプロジェクト代表理事の松浦弘智氏とNPO法人OurPlanet-TV副代表理事の池田佳代氏が、自身の活動に触れながら、NPOのIT活用・IT支援について紹介した。


(スタートアップディの模様 トークセッション 6/3)

ITの活用を希望しながらも、慢性的な活動資金不足に苦しむ多くのNPO法人にとって、今回のTechSoup Japanの活動開始は、大きな意味を持つ。ソフト寄贈により、事務処理を効率化させ、支援者対応を充実させることができれば、会費・寄付の増加につながり、さらに活動を拡大するという好循環を生み出すこともできよう。一方で、NPOスタッフがソフトを使いこなせないことも考えられるため、ソフト寄贈と共にサポートも重要になる。その点でも、ラーニングセンターとコミュニティを有するTechSoup Japanは効果的だ。
TechSoup Globalとアドビ システムズ・シマンテック・マイクロソフト各社、日本NPOセンターに敬意を表すと共に、今後の活動に期待したい。

TechSoup Japanのサイトは下記。プログラムの詳細が紹介されている他、寄贈申請に必要な団体登録など、オンラインで必要な手続きを行うことが可能になっている。
http://www.techsoupjapan.org/

NPO法人日本NPOセンターのホームページは下記。
http://www.jnpoc.ne.jp/

TechSoup Globalのホームページは下記。
http://www.techsoupglobal.org/

事例報告を行ったNPO法人チャイルドライン支援センターのホームページは下記。
http://www.childline.or.jp/

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