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2010年06月14日 18:00

その他 : 「新しい公共」宣言公表、鳩山首相が署名

6月4日、政府は「新しい公共」円卓会議の第8回会合を開催。円卓会議の報告となる「『新しい公共』宣言」をまとめ、関係者が署名、公表した。宣言には、「仮認定」制度導入など認定NPO法人制度改正や寄附税制拡充が盛り込まれた。

「新しい公共」円卓会議は、「『新しい公共』という考え方やその展望を市民、企業、行政などに広く浸透させるとともに、これからの日本社会の目指すべき方向性やそれを実現させる制度・政策の在り方などについて議論を行うこと」を目的に設置、1月27日に初会合を開催した。これまでに7回の会合を行っている。

メンバーは座長の金子郁容氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)をはじめ、経営者や研究者、NPO/NGO関係者など19名。内閣総理大臣や副総理、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(「新しい公共」担当)が出席する。

参考ニュース「政府の『新しい公共』円卓会議が発足」(2010/01/29)
/2010/01/その他-政府の「新しい公共」円卓会議が発足/

参考ニュース「新しい公共円卓会議、NPO・寄付税制を議論」(2010/03/08)
/2010/03/その他-新しい公共円卓会議、npo・寄付税制を議論/

参考ニュース「『新しい公共』円卓会議、資金面の支援を議論」(2010/03/24)
/2010/03/その他-「新しい公共」円卓会議、資金面の支援/

参考ニュース「鳩山首相、寄付金の50%税額控除を提案」(2010/04/21)
/2010/04/その他-鳩山首相、寄付金の50%税額控除を提/

参考ニュース「『新しい公共』宣言、NPO・寄付税制拡充へ」(2010/05/20)
/2010/05/その他-「新しい公共」宣言、npo・寄付税制/

沖縄の「普天間基地移転問題」と、鳩山氏・小沢氏らの「政治とカネ問題」を理由に、6月2日に鳩山首相が辞任を表明。首相の私的懇談会である「新しい公共」円卓会議の行方も不安視されたが、内閣総辞職直前の4日午前8時半から会合を開催。鳩山首相も他の閣僚らと共に宣言への署名を行い、直後の閣議にて総辞職した。

宣言への署名が首相としての最後の仕事となり、鳩山首相の「新しい公共」に対する強い意気込みとこだわりが感じられる結果となった。

●「新しい公共」宣言
宣言の内容は、ほぼ前回示された宣言案と同様。「はじめに」・「『新しい公共』と日本の将来ビジョン」・「『新しい公共』を作るために」が本体で、具体的な事例集として「(別添)『新しい公共』の具体的なイメージ」が添付されている。

「はじめに」では、まず「新しい公共」を「人々の支え合いと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当事者の自発的な協働の場が『新しい公共』である。」と定義。

阪神大震災時のボランティアの活躍や、明治の学制創設時の「番組」による小学校設立、徳島県上勝町の高齢者によるコミュニティ・ビジネス「いろどり」、ホームレス自立を支援する「ビッグイシュー」を、現場の活動として「新しい公共」宣言の源になったと紹介した。

「『新しい公共』と日本の将来ビジョン」では、「結・講・座」や「『稼ぎ』と『つとめ』」など日本に従来からある支え合いの仕組みを紹介。これらが明治以降の中央集権化に伴い、「公共」=「官」という意識が強くなってしまったと指摘した。

「『新しい公共』を作るために」では、国民・企業・政府に対して、役割や期待する点をそれぞれ言及。

国民に対しては、「『新しい公共』の主役は、一人ひとりの国民である。」であるとして、身近な社会貢献活動への自発的な参加を促している。

企業に対しては、本業の社会性を向上させることや寄付による利潤の社会への還流などを促している。

政府に対しては、「新しい公共」の実現には、「公共への『政府』の関わり方、『政府』と『国民』の関係のあり方を大胆に見直すことが必要である。」として、公務員制度改革・情報公開・規制改革・地域主権等の推進、認定NPO法人制度改正や寄付税制拡充など「新しい公共」の基盤を支える制度整備、「特区」制度の活用、政府の事業委託契約の見直しなどを求めている。

「新しい公共」の基盤を支える制度整備では、具体的な内容にまで踏み込む形で「税額控除の導入、認定NPOの『仮認定』とPST基準の見直し、みなし寄附限度額の引き上げ等を可能にする税制改革を速やかに進めることを期待する。」と制度改正に言及。さらに寄附金税額控除については、「特に、円卓会議における総理からの指示(税額控除の割合、実施時期、税額控除の対象法人)を踏まえて検討を進めることを強く期待するものである。」と強く訴えている。

最後に、今回の円卓会議の後継組織設立の必要性にも触れている。

別添の「(別添)『新しい公共』の具体的なイメージ」では、これまでの会合で委員から紹介されたものを中心に、18の事例を掲載。
「非営利セクターの活性化とソーシャルキャピタルの育成」では、以下の5事例が紹介されている。
◇「新しい公共」創造基金と寄付推進機構
◇市民社会創造ファンド
◇SVP(ソーシャルベンチャー・パートナーズ)東京
◇1%クラブ
◇FITチャリティ・ラン (FITとは “Financial Industry in Tokyo”から名づけられたもの)

●「新しい公共」円卓会議における提案と制度化等に向けた政府の対応
また、宣言と併せて、「『新しい公共』円卓会議における提案と制度化等に向けた政府の対応」も公表された。NPO・寄付税制に関しては市民公益税制PT中間報告に基づいた同様の内容が記載されている。

他の項目で、主なものについては、以下の通り。
【提案】
1.「新しい公共」の基盤を支える制度整備
(2)非営利の法人が「市場」で活動しやすくするための制度の見直し
・社会事業法人制度の検討
・公益法人等の公益認定プロセスの迅速化・透明化
・労働協同組合の制度整備

【政府の対応】
・社会的企業を支える環境整備を含め、諸外国における制度の研究も踏まえ、非営利の法人が活動しやすくするための制度の見直し・検討を制度全体の整合性に配慮しつつ進める。
・公益法人の認定等については、事後チェックを適正に機能させ、柔軟でメリハリのある審査へと転換することにより、平成22年度以降の申請について、原則として、認定等までの期間は4 ヶ月以内とし移行期間内にすべての認定作業が完了することを目指す。また、外部の有識者・経験者を活用した法人向け相談会、業態別説明会への講師派遣、公益認定等の典型的な論点についての応答集の充実などにより、公益認定等に関する情報発信を推進する。
・議員立法で協同労働の協同組合法案が検討されているところ。

「新しい公共」円卓会議事務局から提案があった社会事業法人制度については、制度全体の整合性に配慮しつつ検討を進めるとした。
公益法人の公益認定(移行・新規)については、審査期間を原則4ヶ月以内とし、移行期間内での移行を目指すとした。また、相談体制や情報発信も強化するようだ。

【提案】
(3)NPOバンクなどNPO等を支える小規模金融制度にかかわる見直し
・NPOバンクに対する貸金業法にかかる規制の緩和
・多重債務者等に対する貸付事業を行う地域生協の県域規制及び純資産要件の緩和

【政府の対応】
・「新しい公共」を支える金融スキームの拡充に向け、規制改革の一環としてとりまとめ、行政刷新会議に6 月を目途に報告する。特に、いわゆるNPOバンクについて貸金業法にかかる一定の規制緩和につき6 月18 日の改正貸金業法施行と同時の措置を検討中。また、多重債務者等に対する貸付事業を行う一定の地域生協について県域規制の緩和を行った(5月21 日施行)。

NPOバンクについては、既に改正貸金業法の適用除外が実現の方向。これに加え、6月を目途に報告されるという「『新しい公共』を支える金融スキームの拡充」の内容が注目される。

参考ニュース「改正貸金業法適用除外、NPOバンク存続へ!」(2010/05/26)
/2010/05/その他-改正貸金業法適用除外、npoバンク存/

【提案】
2.基金の設置などによるソーシャルキャピタル育成に対する投資や支援
・NPO等への少額金融制度の拡充(つなぎ融資を含む)
・NPOへの融資(労金、信金、NPOバンク等)の際のNPOの評価を実施する機関との連携促進
・社会貢献活動事業への融資や市民等からの寄附を新しい公共の活動につなげる取組の促進
・地域コミュニティのソーシャルキャピタルを高める先進的な活動の促進・支援
・NPOや非営利団体等の有する美術館・ホール等公共的な文化施設への固定資産税の減免や容積率の緩和の検討

【政府の対応】
・NPO等の新しい公共の担い手を、企業による社会的取組と連携し、資金供給や活動基盤の面から一体的に支援する方策を年内を目途に検討する (寄附事業推進のための協働、融資の円滑化、財務・会計基盤整備、NPO等の評価等)。
・ソーシャルビジネス事業者に対する金融支援の促進に向けた取組を実施する。併せて、社会貢献型事業を支援するため、日本政策金融公庫に平成21 年度に創設した融資制度の普及を図る。
・NPO、社会的企業の人材・寄附などのマッチング機能の検討を含めた、地域SB/CB推進協議会(地域におけるソーシャルビジネス事業者及び支援者のネットワーク)の活動を促進する。
・地域金融を活用したファンド等を通じて、地域コミュニティ振興に資する「地域の志ある投資」を促進することを年内を目途に検討する。
・多様な主体が地域づくりを担っていけるよう、平成23 年度から、自発的な地域づくり活動の支援の他、中間支援組織の育成支援に取り組む。
・平成22 年度から、ソーシャルキャピタルの形成につながる文化に対する投資を充実するとともに、「文化力」(文化芸術の創造性や魅力)を活用した都市戦略を支援する。
・劇場・音楽堂等の地域の核となる文化芸術拠点において、舞台芸術が創造・発信され、地域住民がそれらを享受できるよう、平成22 年度からその充実を図る。
・NPOや非営利団体の有する美術館・ホール等公共的な文化施設への固定資産税の減免について、その必要性を含め、税制調査会において検討する。

NPOと企業の連携による一体的支援策を年内を目途に検討するとしている。この内容も注視が必要となりそうだ。
他には既存制度の活用をはじめ、中間支援組織の育成支援、文化芸術分野の支援などが盛り込まれている。

【提案】
7.今後の取組
・「新しい公共」のルールと役割を定めるという観点から、今後の政府の対応などをフォローアップするとともに、公共を担うことについての、国民・企業・政府等の関係のあり方について引き続き議論をするための場を設ける

【政府の対応】
・「新しい公共」を支える多様な担い手からなる総理主催の会議をこの夏にも設置し、12 月末までに、政府の対応についてフォローアップを行い、その結果を踏まえた提言を行うとともに、政府と市民セクター等との公契約や協約のあり方などについて議論を行う。

1月27日の第1回会合から実質4ヶ月での取りまとめに、かなり無理があったことは否めない。委員の構成も、いわゆる社会起業家とよばれるメンバーに偏っているとの声もあった。宣言の内容も、政策の執行段階への参加が中心となっており、政策の企画・立案段階での市民・NPOの参加があまり触れられていない点も指摘できよう。

「新しい公共」概念について、じっくりと議論する時間が取れなかったのも残念だった。

しかし、一方で会議内容のインターネット公開やTwitter・USTREAMによる実況中継、事務局へのNPO関係者の参加、オープンフォーラムの開催、そして「宣言」形式での報告とりまとめと、先駆的な試みもあった。これらは新しい会議体のあり方として評価したい。

今後の後継組織による議論に向けては、メンバーの構成やより広い国民の参加、政策企画・立案段階での「新しい公共」のあり方などについて留意が必要かと考える。

「新しい公共」宣言の全文は下記(PDFファイル)を参照。
http://www5.cao.go.jp/entaku/shiryou/22n8kai/pdf/100604_01.pdf

「「新しい公共」円卓会議における提案と制度化等に向けた政府の対応」の全文は下記(PDFファイル)を参照。
http://www5.cao.go.jp/entaku/shiryou/22n8kai/pdf/100604_03.pdf

「『新しい公共』円卓会議」については、内閣府サイト内、下記ページを参照。会議資料の入手や会議動画の閲覧が可能。
http://www5.cao.go.jp/entaku/index.html

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「新しい公共」宣言

平成22年6月4日

●はじめに
人々の支え合いと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当事者の自発的な協働の場が「新しい公共」である。これは、必ずしも、鳩山政権や「新しい公共」円卓会議ではじめて提示された考え方ではない。これは、古くからの日本の地域や民間の中にあったが、今や失われつつある「公共」を現代にふさわしい形で再編集し、人や地域の絆を作り直すことにほかならない。

1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災は6 千人以上の命が奪われた国民的な悲劇である。しかし、一筋の光明は、行政も被災し、企業や商店の活動が止まった地震直後の被災地で人々の生活を支えたのが、被災者たち自身が自発的に作った即席の共同体、NGO・NPO、全国から集ったボランティアが作った「協働の場」だったことだ。百万人以上の人たちが、自分がいることで人の役に立てた、そのことが自分の歓びになることを実感した。人は支え合ってしか生きられない。それが「新しい公共」のひとつの原点だ。

明治5年の学制発布の3年前、京都の町衆は「番組」という自治組織ごとに、各家庭が竈(かまど)の数相応の金額を出しあう「竃金(かまどきん)」などによって、64 の「番組小学校」を設立した。番組小学校の構内には、町組の会所、学校火消しや見廻組の部屋があった。その伝統を持つ龍池校の旧校舎や跡地が地元自治会連合会等、関係者の努力により、2006 年秋に京都国際マンガミュージアムとなった。地元自治会で長年こつこつと積み立ててきた資金も生かされている。自分たちの町は自分たちで創る。その心意気でみなが応分の貢献をすることで、支え合いと活気のあるコミュニティができる。

徳島県上勝町の高齢者によるコミュニティ・ビジネス「いろどり」。住民たちが付近の山で葉っぱを採取し、飲食店の料理の“つまもの”として売りに出し、年商2億6千万円をあげている。町内の農家の約半数が事業主として参加している。町の高齢化率は50%であるが寝たきりの高齢者が極端に少ない。一人当たり老人医療費は徳島県内24市町村中最低である。みなが居場所と出番を得た。結果として、コストが低く、活気があり、満足度が高い地域コミュニティが実現した。

人気の雑誌「ビッグイシュー」を高々と手にかざして街角で販売しているのはホームレスの人々だ。現在、全国で約150 人が街角に立っている。定価が300円、うち160円が販売者の収入だ。月に800 部程売れば自立の道が開かれる。愛読者は、「かわいそうだから施す」
ではなく、面白い記事を、また、創意工夫して売っている販売者との会話を楽しむために買って行く。よいものは売れるという「市場」の原理があるからホームレスの人が自信をつけ自立の契機を得る。しかし、そこには、経済だけでなく、買う人の「共感」と「コミットメント」が発動している。市場も、人と人との絆を作る「協働の場」になり得る。

このような現場の活動や経験が「新しい公共」宣言の源であり、こうした活動が多くの国民の間に広がることを願うものである。

●「新しい公共」と日本の将来ビジョン
「新しい公共」が作り出す社会は「支え合いと活気がある社会」である。すべての人に居場所と出番があり、みなが人に役立つ歓びを大切にする社会であるとともに、その中から、さまざまな新しいサービス市場が興り、活発な経済活動が展開され、その果実が社会に適正に戻ってくる事で、人々の生活が潤うという、よい循環の中で発展する社会である。気候変動の影響が懸念される一方で、少子高齢化が進み、成熟期に入った日本社会では、これまでのように、政府がカネとモノをどんどんつぎ込むことで社会問題を解決することはできないし、われわれも、そのような道を選ばない。これから、「新しい公共」によって「支え合いと活気のある」社会が出現すれば、ソーシャルキャピタルの高い、つまり、相互信頼が高く社会コストが低い、住民の幸せ度が高いコミュニティが形成されるであろう。さらに、つながりの中で新しい発想による社会のイノベーションが起こり、「新しい成長」が可能となるであろう。

日本には、古くから、結・講・座など、さまざまな形で「支え合いと活気のある社会」を作るための知恵と社会技術があった。「公共」は「官」だけが担うものではなかった。各地に藩校が置かれていた一方で、全国に一万五千校あったといわれる寺子屋という、当時としては、世界でももっとも進んだ民の教育システムがあったなど、多様な主体がそれぞれの役割を果たし、協働して「公共」を支え、いい社会を作ってきた。政治(まつりごと)と祭が一体となって町や村の賑わいが生まれた。茶の湯のような文化活動から経済が発生してきた。しかし、明治以降の近代国民国家の形成過程で「公共」=「官」という意識が強まり、中央政府に決定権や財源などの資源が集中した。近代化や高度成長の時期にそれ相応の役割を果たした「官」であるが、いつしか、本来の公共の心意気を失い、地域は、ややもすると自らが公共の主体であるという当事者意識を失いがちだ。社会とのつながりが薄れ、その一方で、グローバリゼーションの進展にともなって、学力も人生の成功もすべてその人次第、自己責任だとみなす風潮が蔓延しつつある。一人ひとりが孤立し、国民も自分のこと、身近なことを中心に考え、社会全体に対しての役割を果たすという気概が希薄になってきている。

日本では「公共」が地域の中、民の中にあったことを思い出し、それぞれが当事者として、自立心をもってすべきことをしつつ、周りの人々と協働することで絆を作り直すという機運を高めたい。日本では昔から、「稼ぎがあって半人前、つとめを果たして半人前、両方合わせて一人前。つとめはひとさま、世間様のためにひと肌脱いで役に立つこと」といった考え方があった。現代の企業も「新しい公共」の重要な担い手である。実際、企業は、社会から受け入れられることで市場を通して利益をあげるとともに、持続可能な社会の構築に貢献することにより、「稼ぎ」と「つとめ」の両方を果たすことが可能なはずだ。しかし、昨今のグローバル経済システムは、利潤をあげることのみが目的化し、短期的利益を過度に求める風潮が強まり、その行き過ぎの結果、「経済的リターン」と「社会的リターン」を同時に生み出すことができない状況も起こっている。「新しい公共」を考えることは、資本主義のあり方を見直す機会でもある。

イギリスでは2000年の年金法改正などによって、年金基金の運用残高のうち社会的・環境的・倫理的な配慮がされている投資に向けられる額が、1997年のゼロから2001年には800億ポンド(約11兆円)へと急増した。ヨーロッパの他の国でも同様の動きがある。実際、イギリスで最初に声をあげたのは年金受給者のグループだった。株主や生活者の意識が変われば資本主義も変わり、それが企業の行動を長期的な視点によるものに変える強い力となりえる。つまり、国民一人ひとりの、そして、社会の意思によって、市場を通じて「経済的リターン」と「社会的リターン」の両方を達成することが企業価値向上につながっていく。個々の企業においても、社会的課題の解決に向けてNPO等に寄附をしたり、社員のボランティアを推進したり、本業の強みを活かして地域プロジェクトに参加するなどの、企業による社会貢献活動が、企業価値の向上や有用な人材を得る経営課題となっている。つまり、企業自身にとっても、「経済的リターン」と「社会的リターン」の両方を追求していくことがより必要になっていく。

NPOや社会的課題を解決するためにビジネスの手法を適用して活動する事業体は、社会
に多様性をもたらしている存在である。医療・介護・保育・教育等をはじめとしたサービス分野で、また、マイクロファイナンスや環境・農業・林業・文化・芸術等の分野における新規性のある方法による事業展開によって、行政や企業ではできない現場に即した細やかなやり方で「新しい公共」作りに貢献している。それらの事業体の多くは、もっぱら社会活動を行っているか、市場で事業を行っていても「経済的リターン」より「社会的リターン」の創出に主眼を置いている。

それらの事業体が、市場を通じた収益以外にも、それぞれの事業体が生み出す社会的価
値に見合った「経済的リターン」を獲得する道を開く体制をとることは、よりよい社会を構築するための多様性を確保することに有効である。そのためには、たとえば、(i) 国民が寄附をしやすくするための税制などの制度改革、(ii) 国や自治体による、従来型の補助金ではない新しい発想による事業活動支援スキームの導入、(iii) ソーシャルキャピタルを育成するための効果的な財政支援や「投資」等の具体的方策をとることが考えられる。このような、「市場」を経ない「経済的リターン」によって成り立っている事業体については、情報公開や適切な評価システムを民間ベースで導入するなどによって、各事業体の透明性を促すことが望ましい。

このようにして、私たち国民、企業やNPOなどの事業体、そして政府が協働することによって、日本社会に失われつつある新鮮な息吹を取り戻すこと、それが私たちの目指す「新しい公共」に他ならない。

●「新しい公共」を作るために
「新しい公共」とは、「支え合いと活気のある社会」を作るための当事者たちの「協働の場」である。そこでは、「国民、市民団体や地域組織」、「企業やその他の事業体」、「政府」等が、一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し、協働する。その成果は、多様な方法によって社会的に、また、市場を通じて経済的に評価されることになる。その舞台を作るためのルールと役割を協働して定めることが「新しい公共」を作る事に他ならない。そのために、「新しい公共」円卓会議は、国民と企業に対して、それぞれ、以下の(1)と(2)のようなことを期待し、また、政府に対して(3)のような方策を講じることを提案するものである。

(1) 国民に対して
「新しい公共」の主役は、一人ひとりの国民である。
お年寄り夫婦が朝の散歩のときに、近くの交差点に立ち寄って、通学する学童が横断歩道を渡るのを見守るようになった。子どもたちのために始めたことが、子どもたちが挨拶してくれるのがうれしくて、毎日の運動を兼ねた日課になった。一人ひとりが、人の役に立ちたいという気持ちで、小さな一歩を踏み出す。そのことこそが「新しい公共」の基本だ。

東京都三鷹市では、小中一貫教育校で年齢差のある子どもたちが交流することで、目に見
える変化があったという。中学生が小学校の運動会を手伝いにくるのを見て小学生が近所の幼稚園に“ボランティア”をしに行くようになった。学校以外の地域の集まりで、中学生たちが自分より小さい子どもたちを気遣い、面倒を見るようになったという。

大きな社会問題も、大きな問題だからこそ、一人ひとりがかかわることが大事だ。

長野県の多くの町や村では、50 歳代を中心としたボランティアがご近所の人に声をかけ、互いに健康を気遣い、保健・健康についてのお知らせを一戸一戸配り、なにかと相談にのっている。長野県は、いまでこそ長寿で一人当たり老人医療費が全国で一番少ない県として知られているが、以前は深刻な健康課題を抱えていた。それが大きく改善されたひとつの主要因は、1950 年代から続いている、地域で「保健補導員」と呼ばれている人たち一人ひとりの地道な活動の積み重ねが面になって広がったことだと言われている。

兵庫県丹波市の県立柏原病院で2007 年に小児科の医師が1人もいなくなるかもしれないという地域医療崩壊の瀬戸際に立たされた地域の母親たちが、自分達にできることをしようと立ち上がった。「受診は必要なときだけにしよう」「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」などの呼びかけをし、それが広がり、結果として、小児科の時間外受診者数が半減した。市も動き、翌年には常勤の医師が5人に増えた。

企業も政府も、それぞれの役割を果たすことが重要であることは、いうまでもない。同時に、われわれ国民自身が、当事者として、自分たちこそが幸福な社会を作る主役であるという気概を新たにしようではないか。

(2) 企業に対して
企業は、市場を通じて社会に受入れられ、社会に貢献することで、その対価として利潤をあげる存在である。しかし、利潤の多寡という経済的評価だけでなく、本業そのものの社会性や、社会貢献活動などに対する多様な評価を積極的に受けることを推進してもらいたい。資本主義の下では資金の移動は非情である。資金は経済的リターンが少しでも多い方に流れる。しかし、企業が長期的に存在するためには、獲得した利益や知恵を社会に還流してゆく必要がある。

企業の社会貢献活動などを通じて、経営者も社員も、さまざまな分野の人と出会い、大きな刺激をうけ、そのことが創造的なモノづくりや新しいサービスの提供に活かされることになるだろう。低成長時代に突入した日本では、企業はこのような絶対価値(“社会的善”)を高める競争でしか生き残れないという考え方もある。企業の「文化化」で社員が社会的・文化的視野を広め、会社全体の社会化と多様化、柔軟な組織構造の獲得に結びつき、結果として企業価値が高まるということに、多くの企業が気づき始めている。

企業には、その持続可能性を高めるためにも、社会貢献活動やメセナ活動を通じた社会と
の関係の重要さを認識していただきたい。また、企業における社員は、同時にコミュニティの一員としての存在でもあることを企業が認識することも必要である。経営理念や経営者の意思として、企業の本業の社会性を高めるとともに、直接的に社会に利潤を還元する寄付行為や、社会がそれを受け入れる仕組みを作るなどを、企業活動の一環として位置づける方策を進めていただきたい。

(3) 政府に対して
「新しい公共」を実現するためには、公共への「政府」の関わり方、「政府」と「国民」の関係のあり方を大胆に見直すことが必要である。

政府は、国民や企業から、「公共」の核になる部分を委任されているという自覚を新たにするとともに、新しい時代、新しい社会に相応しい役割を発揮するために、そのあり方を一新すべく以下の取り組みを行うべきである。

公務員制度改革により、官民や省庁の垣根を越えて、社会全体からもっとも専門性が高く
勤勉かつ有為な人材を登用して、行政の質の向上を図るべきである。税金の無駄遣いを根絶するとともに、事業仕分けなどの新たな予算編成手法も活用して、財源の適切な配分につとめなければならない。政と官が協力して、これまでよりもっと大胆に、情報公開、規制改革、地域主権等の推進を断行することを強く要望したい。

同時に、政府は、国民一人ひとり、そして、各種の市民セクターや企業など、社会のさまざまな構成員が、それぞれの立場で「公共」を担っていることを認識し、それらの公共の担い手の間で、どのような協力関係をもつべきか、委託・受託の関係はいかにあるべきかを考えていただきたい。その上で、対等の立場で対話と協働を進めていくべきだと考える。そうした対話の場も活用し、さらに、思い切った制度改革や運用方法の見直しなどを通じて、これまで政府が独占してきた領域を「新しい公共」に開き、そのことで国民の選択肢を増やすことが必要である。国民がその意思を持つとともに、政府が「国民が決める社会」の構築に向けて具体的な方策をとることを望む。

「新しい公共」の基盤を支える制度整備については、税額控除の導入、認定NPOの「仮認定」とPST基準の見直し、みなし寄附限度額の引き上げ等を可能にする税制改革を速やかに進めることを期待する。特に、円卓会議における総理からの指示(税額控除の割合、実施時期、税額控除の対象法人)を踏まえて検討を進めることを強く期待するものである。以上のような制度整備を行うに際しては、「新しい公共」を国民が担うという観点から、既存の規制を改革し見直すことのなかで、それらと整合性が図られるように進めることが重要であると考える。

また、「特区」などを活用して社会イノベーションを促進し、地域コミュニティのソーシャルキャピタルを高める体制と仕組みを、関係各省庁の壁を乗り越えて、政府一体となって整備・推進することや、政府、企業、NPO等が協働で社会的活動を担う人材育成と教育の充実を進めることが重要であると考える。

さらに、国や自治体等の業務実施にかかわる市民セクター等との関係の再編成について、依存型の補助金や下請け型の業務委託ではなく、新しい発想による民間提案型の業務委託、市民参加型の公共事業等についての新しい仕組みを創設することを進めるべきである。

さらに、公的年金の投資方針の開示の制度化による社会的責任投資を推進することが望まれる。

人間の中にもともと存在する、人の役に立つこと、人に感謝されることが自分の歓びになるという気持ちと、そうした気持ちに基づいて行動する力。それをもっている人間は、公共性の動物だといえるかもしれない。「新しい公共」では、国民は「お上」に依存しない自立性をもった存在であるが、それと同時に人と支え合い、感謝し合うことで歓びを感じる。それが「新しい公共」が成立することの基盤である。

最後に、「新しい公共」のルールと役割を定めるという観点から、今後の政府の対応などをフォローアップするとともに、公共を担うことについての、国民・企業・政府等の関係のあり方について引き続き議論をするための場を設けることが望ましいと考える。

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●(別添)「新しい公共」の具体的なイメージ
□□非営利セクターの活性化とソーシャルキャピタルの育成
◇「新しい公共」創造基金と寄付推進機構
市民立の公益財団法人「京都地域創造基金」をモデルに、全国各地へ展開する「新社会創造基金」をつくる。地域の市民活動への税制優遇や社会的信用の供与を行いつつ、助成、融資、地域資産の公共的管理・活用、また、関連団体と協力し「仮認定」NPOの公開審査による推薦、人材育成、利子補給などを行う。市民が所得の1%を寄付する社会をめざす「寄付推進機構」を創設し、寄付者の支援等を行う。

◇市民社会創造ファンド
NPOの資金源を豊かにし、民間非営利セクターの自立した発展と活発化を図るため、個人・企業・団体等からの多様な寄付や助成の受け皿となる専門的なコンサルテーション機能を備えた資金仲介組織。2009 年度は、7 社1 基金(個人)の助成プログラムを通じ、総額1 億2495 万円、123件を助成した。また、NPOの現場で学生が学ぶインターンシップ事業も行っている。

◇SVP(ソーシャルベンチャー・パートナーズ)東京
SVP東京は主に社会人によるひとり10 万円の寄附を原資に、社会的な課題の解決に取り組むソーシャルベンチャーに対する経営アドバイスと「投資」による支援を行っている。例えば、「産後の母体」の精神的・身体的な美と健康の増進を目指すNPO「マドレボニータ」に対して、NPO法人化、インストラクター認定制度の整備、システム支援等の投資事業を行うことで、継続的運営とスケールアウトを可能にした。

◇1%クラブ
日本経団連が1990 年に設立した1%(ワンパーセント)クラブでは、法人会員が経常利益の、個人会員が可処分所得の相当額を、自主的に社会貢献活動に支出するよう支援している。会員数は法人会員234 社、個人会員940 名(2010 年5 月現在)。また、1%クラブならびに経団連会員企業を対象とする「社会貢献推進活動調査」に回答した391 社による2008 年度の社会貢献活動支出(現物給付を含む)は1818 億円になっている。

◇FITチャリティ・ラン (FITとは “Financial Industry in Tokyo”から名づけられたもの)
金融サービスと関連企業で働く社員有志が、ボランティアで企画・運営・実施するチャリティ・イベント。第1 回(2005 年)以来毎年規模を拡大(2009 年には97 社から5180 人が参加)、これまでに集められた寄付金総額2 億1900 万円以上。FITは1)地域に根ざした意義ある活動を行う地域の非営利団体への資金集め、2)イベントを通じた支援先団体の認知度向上、3)より多くの人にボランティアと地域の非営利団体を支援する機会を提供することを目的とする。

□□新しい公共を担う社会的・公共的人材の育成
◇NPOと行政と企業が共に育てる社会的人材:NPOラーニング奨学金制度
多様性を受容し、社会課題に気づいて自ら考え行動する新しい公共の担い手となる若者を育むために、NPO、行政、企業、教育機関等が協働で人材を育成する制度。NPOはインターンシップを受け入れる。行政や企業等は奨学金や情報を提供する。教育機関は若者の選抜や単位認定を行う。こうしたNPOの現場での体験者が広がることにより、誰もが新しい公共の担い手となれる人的基盤をつくる。

◇PTAの活性化によるコミュニティ・スクールへの道
PTAを活性化するため、役員の過重な事務負担をサポートするNPOを設置するか既存の地域組織に委託する。行政が委託事業予算や教育一括給付金から予算を支援し、行政の監査委員会を設置してガバナンスをチェックする。PTAに誰も参加しやすくなり、結果として保護者世代の社会参画が促進され、地域社会の担い手が育成される。また、全国の公立学校をコミュニティ・スクールへと発展させていく。

◇総合型地域スポーツクラブを拠点とした地域住民の主体的な取組
行政による無償の公共サービスから脱却し、地域住民が出し合う会費や寄附により自主的に運営するNPO型のコミュニティスポーツクラブが主体となって地域のスポーツ環境を形成する。学校・廃校施設の活用や学校へのクラブ指導者の派遣など、クラブと学校教育が融合したスポーツ・健康・文化にわたる多様な活動を通じて、世代間交流やコミュニティ・スクールへの発展につなげていく。

□□公共サービスのイノベーション
◇新しい発想による公共サービスと市民セクターの関係構築
政府と市民セクターは自らの責務と姿勢を約束する協定を結び、新しい関係を構築することが求められている。愛知県では、NPOと行政との合意事項をまとめ、知事と657 団体(2006 年10 月)が署名して「協働ルールブック」が作られた。また、我孫子市では、行政サービスを民間の提案で民間に移す「我孫子市提案型公共サービス民営化制度」が誕生した。これらの取り組みは、他自治体にも広がりつつある。

参考:英国では、1990 年以降「福祉多元主義」が推進され、NPOと民間企業との競合が強まった。それに伴い、自治体は「サービス購入者」に、NPOは「サービス提供者」となり、NPOに提供される政府資金は「補助金」から「契約」へと比重が移った。近年、内閣府第三セクター局により、適切に契約の委託・発注を行うためのアクションプランが出され、効果・社会的アウトカム・効率性を高める努力がなされている。

□□新しい発想によって地域の力を引き出す
◇地域の力で50 年ぶりに上方落語の定席を復活し、商店街の集客を3 倍増
大阪・天神橋商店街では、より魅力ある商店街とするため、カルチャーセンターを設けたり、イベント企画や商品開発などにも取り組んできた。大阪天満宮に寄席を復活させようと、商店街連合会と落語協会が中心となり、個人や、企業、団体等からの寄付を集め、「天満天神繁昌亭」が完成。商店街文化と芸能文化で街が再生した、大阪の新名所となっている。

◇小布施における株式会社による町づくり
長野県小布施町では、商工会議所と行政が協同で合計1,650 万円の出資金を募り、第三セクターとして「(株)ア・ラ・小布施」を設立。出資者は資金・労力・アイデアを提供し、事業活動の成果は小布施町全体が向上することを恩恵に一住民として楽しむ。コミュニティスペースや宿泊施設の運営、観光冊子等の発行、地域産業振興等の事業活動を通じて、成熟した生活文化を持つ町づくりが行われている。

◇14 歳は、映画がタダ!
14 歳の映画鑑賞料金を、タダにするキャンペーンを提案する。地域コミュニティ、PTA、企業等で趣旨に共感する人々から寄付を募り、映画鑑賞料金を14 歳に限りゼロにするキャンペーンの資金の一部補てんに充てる。学校は、中学2年生に劇場に行くことを勧めることで、映画体験の普及を図る。行政は、映画館のない地域での上演支援や、さらに発展した、映像を通じた自己表現を支援することで、豊かな映画文化を広める。

◇英国と米国で始動した最新の「居場所作り」プロジェクト
英国のNPOパーティシプルは、高齢社会の根本的な問題を「孤独」と考え、市民が登録してボランティア「ヘルパー」になり、「病気になったので犬の散歩をしてほしい」「額を壁にかけて」といった依頼の電話に応える仕組みを提供する。米国の「シニアチュータープログラム」は、養護施設や低所得家庭の子どもの家庭教師をすることでシニアが教育クーポンを得る。クーポンは孫や里子の教育費に使える。

◇ 市民型公共事業・霞ケ浦アサザプロジェクト
霞ヶ浦流域の環境を改善し、生物多様性を育むため、NPO法人アサザ基金をはじめ企業、地域住民、農林水産業、地場産業、教育機関、行政など、様々な主体が協働する「市民型公共事業」。1995 年に始まり、延べ20 万人の市民や200 校以上の小中学校が参加し、3 県24 市町村2,200平方kmの霞ヶ浦流域で展開。小学生の高齢者への聞き取り調査による環境改善プラン、耕作放棄地を活用した無農薬米酒造り、間伐材を活用した護岸などのプロジェクトを実施。

□□「共感とコミットメント」の経済活動による社会のつながり形成
参考:「わらしべ長者」(今昔物語や宇治拾遺物語などに出てくる昔話)貧乏な男が藁でアブを結んだものを子供が欲しがったのでみかんと交換し、のどが渇いた人の求めに応じてそのみかんを渡し、布をもらった。布と交換した駄馬に水を与えると元気になり急ぎの旅に出る人が欲しがった。留守の田圃を守り、耕し、結果として長者になる。この男が与えたのはアブではなく創意、みかんではなく癒しである。アマルティア・センは、自分の利益を最大化する「合理的な経済行動」に疑問を投げかけ、「共感」「コミットメント」という新しい選択肢があることを示唆した。わらしべ長者は、まさに、その物語である。

◇ぱれっととスワンベーカリー
ぱれっとはNPO、スワンは株式会社と形態は違うが、どちらも、障害のある人たちの雇用の場を作り、主にぱれっとはクッキー、スワンはパンを販売する。障害のある人が作るからでなく、おいしいから買ってもらうことを基本に、共感とコミットメントによる出番作りと経済活動の両立を実現している。ぱれっとは地域展開の、スワンはチェーン展開のソーシャルベンチャーの「共感のスケールアウト」の先駆例でもある。

□□民間による組織的な公共的支援活動
◇民間による大規模災害への対応プラットフォーム
阪神淡路大震災がそうであったように大災害はいつ起こるかわからず、行政は対応に時間がかかることから、公益社団法人Civic Force は500 人収容のバルーンシェルターの提供や物資輸送等、迅速で効果的な支援を行う、企業やボランティアをコーディネートする民間主導のプラットフォームを提唱。実施主体は民間であるが自治体のオーソリゼーションを得るなど、行政との連携が今後の課題だという。

◇市民の水源地域保全活動とトラスト法の制定等
21 世紀は石油より貴重な資源になると言われる水。この水を生む奥山水源地域を守るための市民トラスト活動が進められ、すでに1,536ha が買い取られている。これらをさらに促進するため、「譲渡不能原則」(売却や抵当不可、国会議決以外強制収用されない)、「寄贈、遺贈の資産に対する非課税」を定めるトラスト法の制定などを行う。

◇学童通学見守り隊
京都市立第四錦林小学校区の学童の通学見守り運動。商店主が朝の開店時刻を繰り上げ、老夫婦が朝の散歩の時間を繰り下げ、主婦が午後の買い物の時刻を調整し、京大の運動サークルがランニングの時間帯やルートを変えるなど、多様な学区民約400 名がそれぞれの創意工夫で継続的に実施。防犯に加えて多大な地域活性化効果を挙げている。全国に類似事例多数。

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最後に「新しい公共」円卓会議の委員や事務局、政府関係者、中継を担ったNPO関係者の方々に深く感謝申し上げたい。

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