トップページに戻る

若者の居場所づくりのノウハウを活かし、働きたい若者の就活をサポートする方法

ビーンズふくしま事務所
ビーンズふくしま事務所

厚生労働省の「地域若者サポートステーション事業」は、「働く意欲はあるが、どうしていいのかわからない」という若者の不安や悩みに応え、新しい環境への一歩を踏み出せるようにするプログラムである。若者支援の実績やノウハウのあるNPO法人、株式会社、社団法人、財団法人、学校法人などが実施しており、平成26年度、全国で160カ所の取り組みが行われている。
2007年から9期にわたり、この制度を利用し、福島市でサポートステーション事業を展開する「ビーンズふくしま」は、不登校やひきこもりの支援を行うNPOで、若者の居場所づくりなどのノウハウもある。居場所が持つ機能やNPOならではの工夫やノウハウを活かした、地域若者サポートステーションの取り組みを紹介する。
(2015/6/16シーズ取材)

ビフォーアフター

ビフォー

ビーンズふくしまでは、これまでフリースクールで不登校やひきこもりの子どもたち若者たちの居場所づくりをしてきたが、不登校やひきこもりでなくても、生きにくさを抱える若者がいて、社会のサポートにつながりにくい状況にあることへの気づきがあった。困った時に一緒に考え、本人の意思を大事にしながら、サポートする取り組みが必要だと感じていた。

アフター

地域若者サポートステーション事業を受託したことで、地域の中で若者支援をする団体として、認められるようになった。行政からの信頼も得られて、行政からの相談を受けることや、やりたいことを提案して一緒に作ることなどもできるようになった。
また、成果目標を求められる事業を受託したことで、他事業でも成果を意識した事業づくりが進んでいくなどの変化にもつながった。

手順

1. 子どもの居場所づくりの立ち上げ

不登校児を持つ親と地域に子どもの学びの場を作りたいという若者たちが出会い、1998年に福島でフリースクールを創る会を設立。その後1999年9月9日に、多くの人々との想いをひとつにしてフリースクールビーンズふくしまを設立した。不登校の子どもの居場所として始まった活動だったが、その後、ひきこもりの子どもの居場所も作ってほしいというニーズから、2004年11月からは若者の居場所「ビーンズプレイス」を立ち上げた。

フリースクールビーンズふくしまの様子(みんなでランチつくり)
フリースクールビーンズふくしまの様子(みんなでランチつくり)

2. 福島県のニート支援ジョブトレーニング事業受託

不登校の子どもの居場所の運営は、学校以外の場所で学んでほしいという親の気持ちもあり、継続することができた。しかし、若者の居場所ついては、事情が違った。自立が求められる年代であることから、居場所運営にあたっての資金的協力について、親に理解を得ることが必ずしも容易ではなかった。そのため居場所を作るべく、場所を借りたものの、フリースクールの運営以上に困難だった。そんな折、2006年福島県から、委託でニート支援ジョブトレーニング事業を実施しないかと、声をかけられた。ビーンズふくしまらしい若者支援プログラムとして実施内容を検討し受託をした。

3. ジョブトレーニングの実践

ビーンズふくしまらしいジョブトレーニングとして、単に仕事をするのではなくて、人と関わることを軸にし、そしてグループで仕事する仕立てにした。グループで仕事することでひとりで参加するよりハードルが低く、安心して参加できるテイストにすることができた。ビーンズふくしまとして、若者向けのプログラムを実践してきたノウハウから、作ることができた。 「自分も出来るんだ」ということを体感することは、家で一人ではできない。大丈夫かもしれない、役立っているかもと思えることが若者の声として聞こえてきた。人との関わりを通じて、自己肯定できる場づくりをし、参加者には、楽しく参加し、自信をつけてもらうことができた。ジョブトレーニングの受け入れ先は、5ー6人を受け入れてもらえる先を開拓するのが大変だったが、農家や地元の選果場など、人手が必要な事業所に依頼して回った。

農家でのジョブトレーニング
農家でのジョブトレーニング

4. 地域若者サポートステーションの受託

福島県受託事業のノウハウも活かし、2007年4月、厚生労働省の地域若者サポートステーション事業を受託。6月にふくしま若者サポートステーションを開所。「働きたいけど、どうしたらよいのかわからない」「働きたいけど、自信が持てず一歩を踏み出せない」「働きたいけどコミュニケーションが苦手で不安」「働きたいけど人間関係のつまずきで退職後、ブランクが長くなってしまった」など、働くことに悩みを抱えている15歳~35歳まで(その後39歳までとなる)の若者に対し、目標にそったプログラムを実施。 キャリア・コンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への職場体験などにより、就労に向けた支援を実施するプログラムを整えた。

ふくしま若者サポートステーション パソコン講座の様子
ふくしま若者サポートステーション パソコン講座の様子

5. 国の受託事業に求められる成果指標

しかし、すぐに課題も持ち上がった。
ビーンズふくしまでは、若者たちの安心できる居場所であるビーンズプレイスやジョブトレーニングの実績があり、安心できる場で、安心できる人たちと、自分らしく居られる取り組みをつくってきた。 しかし、サポートステーション事業は、就職や進学という明確な成果を求められた。また、キャリア・コンサルタントという新たなスタッフを雇用することになり、元からいたスタッフとの連携の取り方も課題となった。 これまでの、思いを集めて積み重ねてきた活動に加え、国からの委託の要求に応えるために、新しい文化との出会いもありながら、組織としての成長も求められることとなった。

6. NPOのこだわり

福島市内にはハローワーク、他の相談窓口もあるために、就職に対する準備性の高い若者はそちらで就職先を決めていく。ふくしま若者サポートステーションに相談に来る若者は、働き始めるにあたっての準備が必要な人が多い。そして、一歩を踏み出すことに不安を感じている。そんな中で、短時間で進路決定という成果を上げることは容易ではない。しかし、一歩を踏み出すことに不安を抱えている若者とこれまで関わってきたからこそ、大事にしていることがある。
それは、若者が本来持っている力を信じて、その力を若者が出していけるように関わっていくことである。若者が人といることに安心を感じ、自分に自信をもって生きていくためには、本来ビーンズが大事にしてきた丁寧に若者と関わる中で、若者をエンパワメントしていくことが、何より大事である。
また、地域の中での若者支援が面となっていくよう、地域の関係機関との連携を構築しながら、そして、必用な仕組みは地域の中に創っていきたいと考えている。国の制度には毎年変遷があり、求められる成果は少しずつ変化しているが、ビーンズふくしまでは、若者への支援が制度と制度のはざまで途切れてしまわないよう、 “のりしろ”をつくりながら関係機関との連携を構築している。
平成27年度、ビーンズふくしまは、福島市で地域若者サポートステーション事業を展開してから、9年目を迎える。

フリーマーケットに出店
フリーマーケットに出店

7. 振り返り、次の展開へ

学校に行きにくさを感じる子どもたちだけではなく、社会で生きにくさを抱える若者たちもいる。川の流れのようになんとなく流れていくより、立ち止まって考えられる機会になるなら、それは良い機会であるし、あっていいことである。親御さんが、子どもとの関わりに迷い悩むこともあり、若者支援は親支援でもある。
福島市を含む県北地域には2000人を超えるニートがいるとされている。困っているけど、孤立している若者がいて、まだ支援の手が届けきれていない。介護のヘルパーが家に行ったら、ひきこもっている若者がいたという話も聞く。
若者支援の仕組みだけを見ることに固定するのではなく、地域との連携を通じて、様々な社会資源とつながっていく必要も感じている。目の前の若者をどの人とどうつなげたらいいのか、柔軟な思考が求められる。
そして、若者が自ら望む姿で社会に繋がっていけることを願って、ビーンズふくしまの取り組みは続いている。

コツ

・国が実施する研修会などに参加し、事業の求める成果を達成できる組織となるよう、スタッフのスキルアップを図りながら、NPOのミッションとの両立が図れるよう、組織の基盤整備も進める。
・NPOとしてのこだわりポイントは大切に、若者に寄り添うこと

事務局長 七海圭子、理事長 若月ちよ

【事務局長 七海圭子】
2004年に淑徳大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程心理臨床コースを修了。女性相談員、スクールカウンセラー、専門学校講師などの経験を経て、2007年にNPO法人ビーンズふくしまに委託職員として関わり始める。2008年に同団体常勤職員となり、2009年には同団体理事を務める(2年間)。2012年より同団体事務局長の役に就く。

【理事長 若月ちよ】
1977年福島県立保育専門学院卒業後、市内の保育所にて保育士として10年間勤務。1991年保育所を退職。1993年育児サークルを仲間と共に立ち上げ、1995年性教育を学びひろげる会「かたくりの会」、1998年子どもへの暴力防止の活動「こどもCAPふくしま」を立ち上げた。子どもの不登校をきっかけに、フリースクールビーンズ設立から関わり、2003年の法人化に伴い、理事長に就任。

スポンサー


本記事は、2015年08月03日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
ChangeRecipeではあなたのNPO活動における知識や体験談を必要としています
あなたが活動するなかで苦労したことやそれを乗り越えるために行ったノウハウは、他の地域で活動している方がとっても必要としてます。
あなたの投稿で日本の社会変革のスピードを加速してみませんか?