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取材に上手にこたえる方法~物語とエピソードが大事です

1.

 取材は、NPOの情報発信のための重要な機会です。それなのに、準備不足でのぞんだり、不用意に応じたりしていませんか?そして、できあがってきた新聞や番組を見て「あれ?こんなふうに答えていないのに…」という結果になってしまう……。
 取材にこたえるにも、コツがあります。準備をしておくのとそうでないのとでは大違いです。せっかくの取材の機会を十二分に生かせるように、記者は何をのぞんでいるのか、どんなふうに話したらいいのかについて知っておきましょう。

ビフォーアフター

ビフォー

メディアの取材に応じたはいいけれど、出来上がってきた新聞や番組を見てびっくり…こんなふうに答えたつもりはなかったのに…
せっかくの情報発信の機会が、間違って伝わってしまって、誤解を招くことにも。

アフター

こんなふうに書いてもらいたいな、と思っていたような、いやそれ以上の記事や番組が出来上がって大満足!

手順

1. 自分たちはどんな団体か、徹底的に考えてみる

自分たちはどんな団体なのでしょうか。現状はどうで、将来はどんな団体をめざしているのでしょうか。そしてそれを客観的に見たら、どう映っているのでしょうか。この際、議論してみましょう。自分がきちんと活動を把握し、そして言語化できなければ人に伝えられるわけがありません。
仲間同士の認識は一致しているでしょうか。確認してみましょう。
取材ではまず「何をしている団体です」と、端的に答えられることが大事です。
このとき、気をつけることは、長々と説明するのではなくて、まずできるだけクリアに、シンプルに、短く答えることを心がけてみましょう。新聞のスペースや番組の時間は限られています。できるだけ簡単な言葉でまず表現してから、肉付けしていくくせをつけましょう。
また、「客観視」してみることも大事です。活動に熱意があればある分、時に独りよがりになってしまうこともあります。相対的にみて自分たちはどんな活動をしているといえるのか、他人の目にどう映っているのか、考えてみましょう。

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2. 考えたら、物語に仕立ててみましょう

自分たちの団体はどんな団体で何をしているかが把握できたら、それを「物語」として整理してみましょう。時間経過をたどって、起承転結も意識しながら、自分たちの歴史と活動の中身をわかりやすく表現します。このとき注意することは、ただ単に歴史的経過をたどるのではなくて、聞いた人がおもしろい、と思うように、「物語性」を意識するのです。
うそを語る必要はありません、でも、きっと活動するうえで、はらはらしたり、手に汗にぎったり、驚いたり、がっかりしたり、逆に歓喜したり……というようなことがあったはずです。
たとえば、
 ・どんなことが一番思い出に残っていますか? ・大失敗は何でしたか? ・大成功は何でしたか? ・ブレークスルーしたポイントはどこでしたか? 

あなたが他のNPOの話を聞くとき、何に興味をひかれるでしょうか。自分たちの言いたいことと、聞いた人がおもしろく感じること、が一致するように整理していくのです。

3. 特に取材してもらいたいことは何か?を考え、取材の準備をする

次に、自分たちが今回特に取材してもらいたいことは何かを考えます。何かプレスリリースを出したのか、それとももっと全体的な話なのか。
先方が何を知りたいのかを事前に把握して、準備しておくことも大事です。取材の申し込みが入ったら、何に対する取材かを聞きましょう。「ちゃんと準備しておきたいので」といえば、記者もこたえてくれることでしょう。
取材が二回目以降の記者であれば、前回は何についての取材で、実際の取材時はどんなふうだったか。出来た記事や番組はどうだったか。意思疎通はちゃんとできたのかどうか。前回の担当者から聞いておいて、準備をしておきます。
先方が誰を取材したいのか、もはっきりさせておきましょう。広報担当者か、事務局長か、あるいは代表か。もし代表であるならば、代表特有の話…なんで活動を始めようと思ったのか、団体をつくったのか、などの話を、記者は聞きたい場合が多いので、そのための準備をしておきましょう。ここでも、前の手順で記したように、代表の「物語」を用意しておくといいでしょう。
だれが取材に応じる場合でも、必ず、団体概要の資料は渡せるように用意しておきましょう。その場で質問が出る可能性が高いですし、そうでなくても、記者が戻って記事を書くときに使います。
記者がネガティブなことを取材したいように感じた場合は、、何が知りたいのか、なぜ知りたいのかについて率直に聞いてみましょう。最初から疑惑の目で見られている、と思っても、けんか腰になるのは得策ではありません。相手も人間です。誠意を持って一生懸命話せば、わかってくれる、はずです。もし結果としてわかってくれなくても、わかってくれるように努力をしてみることは大事です。けんか腰になったり、怒ったりしたら、ネガティブ度が増幅されるだけです。

4. 取材してほしいこと、を具体的に示しているエピソードを用意しておく

記者が取材するポイントは、「具体的なこと」です。たとえば、「背が高い」ではなくて「身長187センチ」、「この子猫はかわいい」ではなくて「この子猫は目がくりっとしていて、じっと見つめるしぐさがかわいい」というふうに。光景が目の前に浮かぶように伝えましょう。
同様に「取材してもらいたいこと」を具体的にあらわしているエピソードを考えます。たとえば「お弁当を配る活動が高齢者に喜ばれている」というのなら、「これまではよく風邪をひいていたが、和食中心、おひたしや煮物など野菜とタンパク質がたっぷりで栄養に配慮されて胃にも優しいお弁当を食べることで、医者にまったく行かなくなった。配達する人としゃべることで気がまぎれ、家にひきこもりがちだったのが、外に散歩にでかけるようになった」というふうに。そのエピソードを聞くことで、活動の素晴らしさが自然とわかるように表現するのです。

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5. 活動をあまり知らない人に話してみましょう

準備ができたら、予行演習です。NPOのメンバーではない、第三者にこれまで準備したストーリーやエピソードを聞いてもらいましょう。どんなふうに伝わったか、どう思ったかについて感想を聞いてみましょう。
そうやって、自分たちが考えた内容が独りよがりでないかどうか、具体的になっているのかどうか、伝えられているかどうかについて確認して、練習するのです。

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6. いざ本番!相手が何を聞きたいのか、よく把握してから答えましょう

さて取材本番です。取材のときには、撮影があったり、ICで録音することもあります。

記者が聞いたことに自分がきちんと答えているかどうかは、記者がメモをとっているかどうかである程度わかります。もし、まったくとっていなかったら、記者の聞きたいこととは違うことを答えている可能性があります。
手順1で書いたように、何か聞かれたら、まず短い言葉で答えてから、詳しく説明するといいでしょう。そうしたほうが、記者にとっても答えのイメージがつかみやすくなります。
また、何かの説明をするときには一般的に、いきなり細部に入るのではなくて、まずおおづかみに全体像を示す。それから、おもしろい細部について描写をするといいでしょう。全体像とディテール、両方のバランスが大事です。全体像→ディテール、の順番を間違えないようにしましょう。
取材が終わったとき、もし、自分が伝えたいことをまだ言えていないと思ったら、「すみません、××についてお伝えしたいのですがいいですか」と断って、話してみましょう。
撮影する場合は、緊張しないこと!カメラ目線がいいのか、そうではないのか、まじめな顔がいいのか、笑顔がいいのか、記者あるいはカメラマンが指示してくれますから、それに従いましょう。

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7. 取材後の対応はどうすれば?

取材が終わったら、いつごろ記事や番組になるのかどうか聞いてみましょう。引用するコメントについて事前に確認したい場合は、それが可能かどうか頼んでみましょう。
記事や番組が出たら、必ず確認しましょう。自分の伝えたように出来ているかどうか。出来ていた場合でも、出来ていなかった場合でも、記者に連絡をとってみましょう。前者の場合はお礼を伝え、後者の場合は、率直かつソフトに「自分はこう伝えたつもりだったのだが」ということを伝えてみましょう。ちゃんとした記者なら対応してくれるはずです。
また取材してほしいと思ったら、取材の後もコンタクトし続けましょう、団体の情報やメルマガなどを定期的に送りましょう。特に取材してもらいたいと思ったら、個別にメールするのもいいでしょう。

コツ

自分たちの団体が何なのか、取材をしてもらいたいことは何か、を議論するときには、それを表す「キーワード」を考えてみましょう。キーワードを集めれば、なんとなく自分たちの団体や活動がイメージできるというキーワードをできるだけたくさん考えてみるのです。
一通りキーワードがそろったら、それに優先順位をつけてみましょう。そうすると、ストーリーやエピソードをつくるための手がかりができて、考えやすくなります。

秋山訓子(あきやま のりこ)

朝日新聞記者。政治部、経済部、アエラ編集部などを経て政治部次長。NPO法制定時から、NPO,NGOを取材している。

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本記事は、2014年03月12日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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