トップページに戻る

地域良し、企業良し、NPO良しの、企業ボランティア企画を作る方法

A2510820b71456aece40bfa66ff50ec0
防潮林苗木づくり企業ボランティアの様子

地域において、「地域良し、企業良し、NPO良し」の企業ボランティアプログラムを作る方法について紹介します。

わたしたちは、わたりグリーンベルトプロジェクトという宮城県亘理町における防潮林再生プロジェクトを立ち上げ、運営しております。この中で、震災後、延べ30社、1300名以上を対象に、企業ボランティアプログラムを実施してきました。

その中では、地域、企業、NPOのどれかが疲弊し、継続しない事例をたくさん見てきました。
その中でわたしたちが学び、大切にしてきたのは、3方(地域、企業、NPO)良しの考え方です。

この記事で、私自身がここ数年間試行錯誤しながら取り組んできことが一人でも多くの方のお役にたてましたら幸いです。

ビフォーアフター

ビフォー

企業ボランティアでよくある失敗。3方良し(地域、企業、NPO)になっておらず、続かない。

【地域住民】
はじめは物珍しくて楽しいが、回数重ねる毎に関わる住民が疲弊。NPOは気づかぬうちに企業ばかりを見てしまい、住民を見なくなってしまう、目的と手段の混合が起きている。

【企業】
純粋なボランティア体験で終わり特に学びはない。伝えたいこと(ミッション)等が伝わっていない。インプット過多。一回限りの関わりで、ボランティア体験後、企業、地域、NPOの関係が続かない。

【NPO】
適切な対価を設定せずボランティアとして運営。やればやるほど赤字になる構図。結果時間かけられなくなる。そして質が低くなる。みな不満がたまる。

この悪循環ループに。

アフター

3方良し(地域、企業、NPO)の皆が喜ぶ企業ボランティアはこちら。

【地域住民】
企業ボランティア受け入れに関わることが、「稼げる」ことか「楽しい」ことになっている。自然とおもてなしをする。漁師が魚を持ってきたり、農家がいちごを持ってきたり、手紙を書いたりキーホルダーを作ってプレゼントする人がいたり。

【企業】
地域との関わりが続く。NPOのミッションを体感し、企業社員が個人的に遊びに来たりボランティアになったりプロボノとして関わってくれたり。また、本業の仕事に繋がる気づきを得たり、生きる上での大切なことを学んだり。

【NPO】
やればやるほど、地域も企業も喜ぶ状態。そして、NPOは自主事業としても実施できるため丁寧なコーディネートができる。結果、プログラムの質もあがり、本来のNPOのミッション実現に近づく。

手順

1. 地元住民との信頼関係を構築する

地域のお祭りに参加したり、何かの作業(農業や漁業)を手伝ったり、日々お酒を飲んだり。
「単なる視察」「単なるボランティア体験」ではない、質の高いプログラムを提供するための基盤はここ。

(写真:企業ボランティアと地元町民との交流会)

 dsc0213

2. 3方(地域、企業、NPO)「良し」をデザインする

考慮すべき軸。
① 時間軸:短期的視点(研修内)と長期的視点(関わり方のデザイン)
② 主体軸:地域、企業、NPO

なお、主体各に私達が重要視しているポイントは下記通り。
(1) 地域住民
・短期:「稼げる」か「楽しい」か
・長期:取引先の獲得(地域企業)、移住者の獲得(行政)等
(2) 企業
・短期:リーダーシップ(人事部)、ボランティアマネジメント(労働組合)、社会貢献(CSR部)
・長期:企業の利益追求、社会的責任を果たすこと、等
(3) NPO
・短期:適切な対価
・長期:長期的なパートナーシップの構築、参加者のプロボノとしての関わり、等

Screenshot 2014 03 20 11.34.23

3. 全体コンセプトを作る

テーマ設定を決めます。
企業が抱えている課題と、地域資源を活かして提供できる価値が合致するようにします。

具体例としては、
・ゼロからイチを創りあげる当事者意識と考動力
・多様な人々との物事の進め方
・企業の社会的責任について考える
 等。

4. 【ステップ3】骨組みを作る

全体コンセプトを意識して、このコンセプトを達成するための日毎のテーマを設定します。
(もちろん、一日限定の場合もあります)。僕達の実例はこちら。
・被災地の「今」を知り、自分が被災地にいたときの行動を考える
・ゼロからイチを生み出すための原動力に触れる
・日常に学びを持ち帰る

5. プログラムを構成する要素を理解する

骨組みにもとづいて個別プログラムを作成します。
ここでのポイントは、下記要素を散りばめること。

① 五感を総動員するプログラム(実際に手足を動かすとか、自然の中でするとか)
② ミッションを体現している人から学ぶプログラム(概念よりも生き方から学ぶ)
③ 内省するプログラム(ゆっくり考える時間も重要)
④ 熱中できるボランティアプログラム(ボランティアの設計)
⑤ 地域住民との交流プログラム(懇親会や対話、共同作業の時間)
⑥ 地域だからこそ、体験できるプログラム(おすそ分け、伝統、文化、郷土料理とか)

上記要素を散りばめた次に考えるのは、

「input」
「output」
「cooldown」
のバランス。プログラムを設計する側は、ボランティアしっぱなし&企画詰め込み過ぎる傾向があるのでご注意を。

6. プログラムを実施する

「地域と企業の繋がりを生み出す」という視点から重要だと思っていることがあります
当日コーディネートする人が意識すべきことはこちら。

① 安全な場を作る:
  ボランティアを楽しく実施し、作業における安全面に配慮するのはもちろん
  地元達人と企業社員にとって、本音がぽろりとでるような心の「安全」も大切。
② 地元達人のスイッチを入れる:
  「原動力」「想い」に触れるように。いかに深い対話を促すスイッチをいれることができるか。
③ 企業社員の当事者意識のスイッチを入れる:
  これが最も難しいポイント。誰かの話、凄い話、ではなく、自分事として捉えてもらう話の変換を。

(写真:地元苗木屋さんが参加者に想いを語っている瞬間)

Photo 12 04 04 12 49 31

7. アフターフォローを行う

・対 企業担当者:率直なフィードバックをもらい、次回への改善点を話し合い。
・対 企業社員:次のステップを伝えて。今後の繋がりを生み出すきっかけに。
・対 住民:社員からの手紙をお渡し。学んだことのシェア。

上記2者については、たいていの企画では実行されています。
一方、抜けがちなのが「地元住民」とのコミュニケーションです。
地域での視察や研修でおこること、それは、企業側の「学びっぱなし」です。
地域住民には、企業担当者や社員さんが、具体的にどんなことを感じ
持ち帰ったのかが共有されず終わってしまうことが多いのです。

そこで、私達は最後の振り返りのタイミングで、
「地元住民への手紙」を書いてもらいます。
具体的に「何を感じ」「何を学んだのか」率直に。

(写真:地域コーディネーターと地元民との交流風景)

2012 11 27 10.27.11

コツ

コツは上の手順部分に記載しましたが、最後に一点だけ。

あくまで企業ボランティア研修は、「ミッション」を達成するための手段であることを常に意識することが重要です。私自身も、企業ばかりに目が行き、地元住民を見ずに仕事をしてしまったことがあります。結果は本当にひどいものでした。誰も幸せにならない構図です。企業さんも、地元の方が本当に、主体的に、楽しそうに関わっているのをみるとより関わりたくなるものです。

上記記事が皆さんのお役にたったら嬉しいです。

          2013 07 04 0.25.30

松島宏佑

一般社団法人ふらっとーほく代表。
大学卒業後、まちづくり最先端の島、島根県隠岐郡海士町へ移住。まちづくり会社巡の環で働く。企業や大学を対象とした研修事業に関わる。
東日本大震災を機に実家のある宮城県に戻り、災害ボランティアとして活動。震災直後に被災地の温泉宿と提携した企画、「ふらっとーほく-温泉宿に泊まってボランティア-」が述べ800人以上のボランティアを集め、温泉宿へ約300万円の売上をあげることに成功。これをきっかけに、株式会社巡の環東北支部を設立。
2012年1月に一般社団法人ふらっとーほくを設立し、独立。宮城県亘理町沿岸部の防潮林育成プロジェクト:わたりグリーンベルトプロジェクトと、交流体験プログラムによる課題解決型コミュニティー創出事業:まちフェス〜伊達ルネッサンス〜を実施中。

スポンサー


本記事は、2014年03月20日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
ChangeRecipeではあなたのNPO活動における知識や体験談を必要としています
あなたが活動するなかで苦労したことやそれを乗り越えるために行ったノウハウは、他の地域で活動している方がとっても必要としてます。
あなたの投稿で日本の社会変革のスピードを加速してみませんか?