トップページに戻る

NPO法人の代表者の労働災害への対策

特別加入制度のしおり(中小事業主用)

NPO法人で仕事をしていて、もしも事故にあったらどうなるのでしょう?

NPO法人で働く人たちは、「労働者災害補償保険」(以下、労災保険)により、業務上または通勤途上のケガや病気について、療養にかかった費用や休業時の支給等を受けることができます。NPO法人の代表者は労働者ではない為対象になりません。しかしながらNPO法人では、代表者が職員と同じように働いていることが多いと思います。そこで代表者も加入できる「特別加入制度」を紹介します。

特別加入制度のしおり(中小事業主用)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-5.html

ビフォーアフター

ビフォー

職員と同じような仕事をしているのに、代表理事だけ労災保険に入れない!

アフター

特別加入制度を利用し、少し安心。

手順

1. 特別加入制度について知る。

労災保険には、「特別加入制度」があります。これは、労働者以外の方のうち、その業務の実情や災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護をすることが適当と認められる方たちについて、特別に任意加入を認めている制度です。特別加入の対象には、「中小事業主等」「一人親方等」「海外派遣者」の3種がありますが、NPO法人の代表者の場合は、「中小事業主等」を対象とする制度の利用を検討することになります。
中小事業主は、この制度に加入することにより、一定の業務災害と通勤災害に関して補償を受けることができます。

2. 加入できるかどうか確認する

加入の対象となる「中小事業主等」とは、以下の①、②に当たる場合をいいます。
 該当するかどうか検討しましょう。
① 下表に定める数の労働者を常時使用する事業主
② 労働者以外で①の事業主の事業に従事する方(事業主の家族、代表者以外の役員等)

3. 代表者に労働災害の危険があるのか検討する

特別加入制度に加入する必要があるかどうか、代表者の勤務の状況等から検討しましょう。

4. 労働保険事務組合を探して、加入する

中小事業主に該当する方が特別加入するためには、次の2つの要件を満たし、所轄の都道府県労働局長(以下、労働局長)の承認を受けることが必要になります。「所轄」とは、「NPO法人の所在地を管轄する」という意味です。実際には労働基準監督署で手続をします。
① 雇用する労働者について保険関係が成立していること
労働者について、本来の保険関係が成立していることを前提とするので、労働者がいない場合には、特別加入はできません。
② 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
特別加入申請書は、労働保険事務組合(以下、事務組合)を通じて労働局長に提出することになりますので、NPO法人は事務組合に加入し、労働保険の事務処理を委託する必要があります。
お近くの事務組合を探してみましょう。わかりにくい場合には、労働基準監督署又はお近くのハローワークに相談しましょう。依頼先の事務組合が決まったら、相談にいきましょう。

5. 給付基礎日額を検討する

 「給付基礎日額」とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるもので、申請に基づいて労働局長が決定します。給付基礎日額は、年間保険料を計算する場合の基礎にもなります。現状では、3,500円から25,000円までの金額が定められていますが、どの給付基礎日額にするのか、検討しましょう。複数の特別加入者がいる場合には、各人について適切な金額を検討、決定します。

6. 特別加入の申請をする

 特別加入申請書を作成します。
 事務組合に、手続の詳細を聞きましょう。特別加入申請書のほか、初めて事務組合に委託する場合には、事務組合への加入手続などが必要になります。必要な書類を確認しながら、処理を進めていきましょう。

7. 毎年の保険料を支払う

加入時の保険料は、保険年度の末日(3月31日)迄の賃金見込額により計算されます。
 その後は、毎年1回、労働保険料の年度更新手続により前年度の保険料の精算と当年度の保険料の概算払いをすることになります。手続については、事務組合から連絡がありますので、適宜対応しましょう。なお、保険料は、納付額に関係なく1年分を3回に分割して納入することができます。納入期限も決まっていますので、事務組合からの通知等に注意し、忘れないように対応しましょう。
保険料のほかに、事務組合に支払う会費など事務手数料等がかかります。

8. 特別加入者の業務災害・通勤災害がおこったら

特別加入者の業務災害・通勤災害に対する保険給付・特別支給金は、以下の通りです。
詳細は、労働基準監督署等に確認してください。

  8

コツ

特別加入により労災保険からの給付が受けられる業務災害には、制限があります。「事業主の立場で行われる業務」(たとえば理事会への出席等)は対象となりません。どのような場合に保険給付があるのか、事務組合から説明を受けておきましょう。
また、通勤災害については、一般の労働者と同様に扱われますが、「通勤」に該当するか否かなどにも詳細なきまりがありますので、確認しておきましょう。

平塚 綾子

民間のボランティア活動推進機関で約20年、経理業務を中心に管理部門の仕事をしていました。たまたま就業規則を見直す機会があり、労務管理の重要性を痛感しました。
退職後、労働や雇用に関する知識を深めるために、社会保険労務士の資格を取得。「社労士によるNPO応援団」に参加しています。
経理の経験を活かして、NPOの経理業務のお手伝いもしています。
埼玉県社会保険労務士会所沢支部所属。特定社会保険労務士。

スポンサー


本記事は、2014年04月02日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
ChangeRecipeではあなたのNPO活動における知識や体験談を必要としています
あなたが活動するなかで苦労したことやそれを乗り越えるために行ったノウハウは、他の地域で活動している方がとっても必要としてます。
あなたの投稿で日本の社会変革のスピードを加速してみませんか?