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記事No 10176
件名 Re: 定款に記載する事務所
投稿日 : 2011/10/17(Mon) 10:42:39
投稿者 弁護士 浅野晋
参照先
suzuki さん

1、ガイドブックの記載は間違っています。

2、東京都は、【東京都の運用方針】として、定款の「事務所の所在地」の記載につい て、次のように述べています。
【定款の事務所の所在地の記載についての東京都の運用方針】
  「NPO法人が事務所の所在地を明確に記載することは、NPO法人の基本的情報の市民への周知であり、その事業活動拠点を明らかにすることは、市民からの信頼を得るための必要不可欠な情報提供にほかなりません。NPO法人の主たる事務所及びその他の事務の所在地には、最小行政区画のほか、町名地番又は住居表示番号、ビル名、ビルの階層、部屋番号等までを記載する必要があります。」

3、 まず、「事務所の所在地」と「事務所の所在場所」の違いを知る必要があります。  
 ①「事務所の所在地」
     市町村(東京都などの場合は区)などの最小行政区画ま     での記載(例えば、東京都武蔵野市」という記載)
   ②【事務所の所在場所」
     所番地・住居表示までの記載(例えば、「東京都武蔵野     市○町○丁目○番○号」という記載)

3、NPO法人の登記は「組合等登記令」に基づいて行いますが、この政令第2条は「事務所の所在地」という言葉と「事務所の所在場所」という言葉をはっきりと使い分けています。

4、NPO法第11条1項四号は、定款の記載する事項として「主たる事務所の所在地及びその他の事務所の所在地」とのみ定めており、「事務所の所在場所」とは定めていません。

5、また「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」は、定款事項を定める11条1項3号では「主たる事務所の所在地」としてますが、登記事項を定める301条2項3号では「主たる事務所及び従たる事務所の所在場所」として、明確に概念区分をしています。(会社法においても同様です。会社法27条3号、911条3項3号参照)

6、民法の社団法人の場合も、「事務所の所在地」が定款の必要的記載事項となっていましたが、解釈上これは所在地の最小行政区画(東京都の○○区、○○市、○○郡○○町、村)まで記載すればよいとされ、これが確定した行政解釈となっていました。(大正13年12月17日民事1194号司法次官回答)
7、なお、政令指都市の「区」については最小行政区画ではないの
で、政令指定都市の場合「区」まで記載する必要はありません。例えば、横浜市中区に事務所がある場合、定款上の事務所の所在地の表示としては「横浜市」でOKです。(商事法務1343号90頁)

8、東京都は、以前は最小行政区画の記載で良いとし、最小行政区画までしか記載されていない定款による設立認証申請に対し認証をしてました。(最小行政区画の記載で設立認証を受けたNPO法人はたくさんあります。)
(なお、町名、地番まで記載しなければならないということであれば、従来最小行政区画の記載で認証を受けたNPO法人の認証は違法な認証ということになるが、東京都はそこまでいう元気はないようです。)

9、従って、「△丁目△番地」まで記載するように指導さたとしてもそれに従う必要は ありません。もちろん、そのために不認証にされることはありません。

10、なお、定款の事務所の所在地の記載について町名地番(事務
所の所在場所)まで記載しない場合、登記上は事務所の所在場所が必要なため、別途事務所の所在場所をどこにしたか証するための総会議事録とか理事会議事録などの書面を求められます。そこで、認証申請の際の定款の記載としては次のようにしたらいかがかと思います。
①「事務所の所在地」については、「本法人の事務所は東京    都○○市(区)に置く。」と定める。
   ②次に、「事務所の所在場所については、附則で「本法人の    設立当初の事務所の所在場所は、東京都○○区○○町○丁    目○番○号とする。」と定める。
 シーズの定款はこのようにしており、お勧めの方法です。(これだと、東京都も妙な「指導」はしないと思います。)

       弁護士 浅野晋


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