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2004年06月23日 10:00

行政 : 景観法成立、計画にNPOが提案権

 6月11日、景観緑三法が参議院を通過し、成立した。景観法は、良好な景観を「国民共通の資産」として位置づけた初の基本法。NPOは、同法で都道府県などが策定する景観計画への提案主体となれるほか、景観重要建造物や樹木を管理したり、利用されない棚田などを耕作する景観整備機構になれることが盛り込まれた。

 

 景観緑三法とは、景観法、同法施行関係整備法、都市緑化保全法等の一部を改正する法律をさす。

 景観法は、今まで条例などで自治体が独自に規制を設けてきた景観条例に、基本理念や規制などの法的根拠を与えるもので、初の包括的な基本法。

 この法律のポイントは、景観行政主体が策定する「景観計画」と、市区町村が策定する「景観地区」。

 景観行政主体には、都道府県や、都道府県との協議と同意を得た市区町村などがなり、景観行政主体が策定した「景観計画」の区域内で建物の新築や工作物の設置、土地変更などを行う場合は事前に届出なければならなくなる。

 景観行政主体は、この届出が計画に適合しないと判断した場合は変更勧告をすることができるようになる。届け出てから30日間は、工事の着工はできない。

 一方、景観形成の重点エリアとする「景観地区」を市区町村が指定した場合は、建築物の色やデザイン、高さなどを規制する認定制度が導入された。この地区内で建築、開発行為をする場合は、市町村長の認定を受けなければならず、認定されるまでは、工事の着工そのものができなくなる。

 「景観計画」での規制が、届出-勧告制を基本とする比較的緩やかな規制誘導制度であるのに対し、「景観地区」での規制はより強い認定制度であることが特徴だ。

 この「景観計画」を策定する過程では、公聴会を開催するなど、住民の意見を反映させなければならないとされている。また、「景観計画」の策定や変更を住民やまちづくりを推進するNPOが、素案を示して提案することも可能とされている。

 ただし、NPOがその提案主体となる場合は、地権者の人数と面積において2/3以上の同意が必要とされており、このハードルが高すぎるのではないかという指摘もある。

 また、景観計画区域内に、景観面から守るべき建物(景観重要建造物)や樹木(景観重要樹木)を指定することが可能になった。これらの増改築や伐採には景観行政団体の長の許可を受けなければならず、その所有者が規制により増改築ができなくなった場合などには、金銭的な補償をすることも明記されている。

 景観重要建造物や景観重要樹木の所有者には適正な管理が求められるが、それができない場合には、管理協定を結んだ景観整備機構が所有者にかわって管理することも可能になった。

 この景観整備機構には、景観行政団体の長から必要な能力があるとして指定された、まちづくり公社など民法34条の公益法人かNPO法人がなれる。

 景観計画区域内で必要な協議を行うため、景観整備機構は、景観協議会を組織することも可能となった。

 農村などの景観計画区域内で、棚田など景観上守るべき重要な地区がある場合は、景観農業振興地域整備計画を作成、その土地の所有者に利用するように勧告することができ、それが無理な場合は、農地法に特例を設け、景観整備機構がその土地を借りたり、取得して耕作ができるようになった。

 景観計画区域内の土地の所有者が自治体や景観整備機構に土地を譲渡した場合は、所得税、法人税の1500万円の特別控除を受けられる措置も導入。「景観重要建造物」の所有者に対する相続税の軽減措置も盛り込まれている。

 このほか、関連法令の改正として、「都市計画法」で美観地区が廃止され景観地区が追加されたり、「屋外広告物法」の改正により、市町村の屋外広告物に関する権限が強化されるなどがなされた。

 精力的に景観法の検証をすすめ、逐次ホームページ上などで情報を提供してきたNPO法人東京ランポは、「今までは明確な法的根拠がなく、敗訴を余儀なくされてきたマンション訴訟などに大きな影響を及ぼすことが予想される。また、違反者に対する罰則も設けられ、その範囲も設計、施行業者のみならず下請け業者まで適用されるなど、ある程度評価できる内容だ。しかし、この法律は、すでに景観が壊されてしまった市街地や、建てられてしまった建造物に対する規制はできず、現在までなんとか残されてきた景観しか救えない。景観協議会の役割と権限が不明確であるし、景観整備機構もどのようなかたちで運用されていくか不明な点も多い。NPOとしては、よりよい景観計画が策定されるよう、積極的に自治体に提案していく必要があるだろう」と語る。

 景観法は、景観計画を策定する主体である自治体が積極的に活用するかどうかで、景観の保全に大きく差がでることが予想される。

 国土交通省では、景観緑三法が成立したことを受け、現在、都道府県と市町村を対象に、景観法活用の意向調査を行っている。「景観行政主体」になる意思があるかどうか、「景観計画」の策定予定時期などを聞いているという。

 国土交通省では、このアンケートを今後の普及・啓発の基礎資料として活用したいとしている。

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