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2004年の報告

2007年08月29日 14:45

「議論の中間整理」を読む

4月19日(月)、東京都中野区の中野サンプラザにて、緊急集会「公益法人制度改革『議論の中間整理』を読む」が開催された。

日本NPOセンターとシーズの共催で、協力は、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会。

この集会は、「公益法人制度改革に関する有識者会議」が3月31日に発表した「議論の中間整理」を読み解き、その概要や問題点、NPO法人への影響などについて議論しようと、緊急に開催されたもの。広報期間があまりなかったにもかかわらず、NPO関係者、公益法人関係者、マスコミなどから80名の参加があり、政府の動きを注視していこうとする機運の高まりを感じさせた。

報告者は日本NPOセンター常務理事の山岡義典氏と、シーズ事務局長の松原明。

最初にシーズ事務局長の松原が、公益法人制度改革がはじまったその背景や経緯について説明した後、日本NPOセンターの山岡義典氏が、「議論の中間整理」を解説した。

報告が長引いたため、質疑応答には多くの時間がさけなかったが、回収したアンケートによると、「今まで関係ないと思っていたが、NPO法人にもすぐ影響がでることがわかった」、「この方向性では、そもそもの天下りや官のコントロールを削減しようという目的が達成されない」、「改革が民間非営利部門の活動の促進につながるか疑問」といった意見が寄せられた。

以下、概要を報告する。


まず、シーズ事務局長の松原が、公益法人制度改革がはじまったそもそものきっかけである、民法の構造的欠陥や、それを補うように制定されてきた数々の特別法やNPO法の立法背景について、また、公益法人制度改革の経緯などについて、以下のように解説した。

 日本の法人制度は、明治31年に施行された民法に基づいている。民法では、公益に関する法人を設立する場合は主務官庁の許可を得て設立できることになっている。

その根拠法は民法34条。主務官庁による許可制をとっていることから、公益性を行政の価値によって判断したり、行政と意見が違う団体が法人化できなかったり、行政に都合のよい団体の法人化が容易であるという結果を生んでいる。そのため、市民団体が法人化できないという問題があったが、これはNPO法で一定の解決を見ることになった。しかし、まだ、天下りや委託による事業独占、そこからくる民業圧迫、公益性のなくなった団体が存続し続ける、といった問題が残っている。

また、営利目的の団体を設立する場合は民法35条において、商法で設立できることとなっている。34条と35条の間には法律のすき間があり、非営利であるにもかかわらず、公益性のない団体の設立根拠規定がないことも、民法の構造的欠陥として指摘されてきた。

このようなことから、民法の想定していなかった営利を目的としない共益的な団体が、その事業ごとに次々と特別法というかたちで設立されてきた。たとえば、農協や漁協、消費生活協同組合、共済組合などである。加えて、公益性のある非営利法人についても、行政が必要とする事業(行政課題)ごとに特別法がつくられていく。宗教法人や社会福祉法人、学校法人制度などがこれにあたる。1998年に創設されたNPO法もこの民法34条の特別法という位置づけである。

2002年には、同窓会や業界団体といった非営利共益団体が法人化する制度がなかったため、中間法人制度が創設された。それまでは、このような性質をもつ団体は、社団法人や財団法人といった公益法人制度のなかに入り込んで設立されてきており公益法人のなかに、公益性の低い団体があることも問題として指摘されてきた。

このように、事業ごとに法を後から作っていく状況が続いてきており、その数は180以上。複雑極まりない状況にあることをいったんは確認する必要があるだろう。

注意しなくてはならないのは、NPO法が創設されたのは、行政の考える公益性の基準に合致しないボランティア団体や市民活動団体が簡易に法人格をとれないという問題が80年代以降特に大きくなってきたことがある。

NPO法だけは、行政課題別ではない、一般法に近い「活動法」という性質をもっている。今回の公益法人制度改革にNPOが巻き込まれかねないのは、この法の性質によるものであることを行政当局は指摘している。

このような法制度そのものの持つ欠陥が長く批判されてきたことを背景に、KSD事件など社会的反響の大きい事件が続発したことから、公益法人制度改革がはじまった。財団法人と政界・行政との癒着に起因するKSD事件が発覚したのは2000年11月で、2000年12月に政府は「行政改革大綱」を閣議決定、公益法人制度の抜本的改革に着手した。

昨年の2月、政府が進める公益法人制度の素案が明らかになり、その内容が公益法人、中間法人、NPO法人を一本化して「非営利法人」とし、その収入はすべて課税対象とするというものだったため、NPO法人側が猛反発し、大きな運動となったことは記憶に新しい。この運動の結果、昨年の3月に予定されていた閣議決定は6月にもつれこみ、改革の対象は当面、社団法人と財団法人とする「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」が閣議決定された。しかし、そのなかでも、中間法人とNPO法人との関係を整理すると言及されており、NPO法人にとっても予断を許さない状況だ。

政府のスケジュールでは、年内に制度改革の基本的枠組みを具体化させ、2006年3月(平成17年度末)までに法制上の措置を講ずるとしている。

いったん白紙に戻された議論の場を再度組みなおすため、内閣官房行政改革推進事務局の下に「公益法人制度改革に関する有識者会議」が昨年11月に設置された。今回の「議論の中間整理」はこの有識者会議が3月までに議論した内容を整理したものである。

次に日本NPOセンター常務理事の山岡義典氏が、「議論の中間整理」を読み解く中で、具体的にこのたびの「議論の中間整理」の問題点を指摘した。指摘されたポイントは以下のとおり。

 この中間整理では、法人格取得と公益性の判断が一体となっていたこれまでの公益法人制度を改め、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に法人格を取得できる非営利法人制度を創設する内容となっている。そのうえで、公益性を有する非営利法人については、なんらかの優遇措置を与えるという、いわゆる「二階建て方式」の制度が提案されている。

その公益性を誰が判断するかについては、公的な統一的な機関で行うA案と、もっぱら優遇措置を税制上の効果としたうえで課税庁とするB案とが挙げられており、今後検討していくとされている。

新しい非営利法人は、「残余財産分配可能」な法人とされている。

しかし、公益法人制度の抜本的改革によって創設する新しい非営利法人制度は完全な非分配を原則とすべきであり、残余財産の分配が可能な現行の中間法人と一緒にすべきではない。もし、中間法人制度と一体に制度設計する場合は、第1種非営利法人(完全非営利法人)と第2種非営利法人(準非営利法人)に分けるべきである。

非配分を貫徹した非営利法人の会費・寄付・助成金・補助金などの非対価性収入は非課税とすべきであり、非配分の貫徹は法の規定や定款への記載と一定の情報公開で担保することが大切である。

これらが実現されるなら、NPO法人を含め、現行の学校法人、社会福祉法人など広義の公益法人も、新しい非営利法人制度へ合流させることが制度的に整合性がとれて望ましい。

公益性を判断する主体や、その優遇措置の内容については、非営利法人のうち一定の社会的活動を行うことを目的としたものについては、公的な第三者機関が認定することによって税制上そのほかの優遇措置を与えるのが相応しいのではないか。

その優遇措置の内容は、寄付金控除やみなし寄付金の適用、金融収益非課税などが考えられるが、その内容が十分議論されていないことは問題である。

今の日本の現状では、二段階にすることはある程度仕方がないと思う。もし、一段階目からこれらの優遇措置を講じるのなら、非常に限定的な数しか認められない可能性があるからだ。この寄付金控除を受けられる団体が、せめて10万ぐらいは生まれる社会であってほしいと願っている。

改革の始まりが行政改革にあったことも忘れてはならない。行政改革の視点からは、この改革だけでは不十分であり、天下りの防止や公的資金の不透明な循環を抑止するため、別途防止策を講じるべきである。

この報告に続いて、松原は、「議論の中間整理」について以下のように述べた。

 私は、今の段階では、NPO法は断固として守りぬくべきであるという意見だ。非営利法人と一本化すべきではない。

なぜなら、「非営利」の意味をきちんと議論せずに今回の改革が進んでいることに危惧を抱いているからである。「非営利」には、団体の目的が「非営利」であることと、残余財産の分配ができないことによって、実質的に「非営利」であることのふたつの意味があり、これらが混同して議論されてしまっている。

今の公益法人制度改革で進もうとしている方向は、残余財産の分配が可能なものとして類型化されようとしている。しかし、目的がいくら非営利であっても、財産がどこかの段階で分配可能であればそれは、まったく別の制度としなければならない。山岡さんが言うように、第1種、第2種とか、2種の方を「準」とか、どちらでもいいが、そういうやり方で分けることが重要だ。ただし、そのちがいを定款に書き込めば、大丈夫だという人もいるが、それは間違いだ。定款では分類できない。法人類型として、非営利法人には2つの全く別の類型があるということを明確にする必要がある。

財産分配が可能なものをベースにおいて、一つの非営利法人制度をつくるべきではない、というのが私の考えである。非営利法人は2種類あるのだ。

法人税課税に関しては、公益性により優遇されて与えられる非課税措置なのではなく、非分配であることゆえに当然非課税であると考える。

また、NPOは、確かに、今回の改革には含まれていない。だから、あぶなくなるのはずっと先のことと思っている人が多いかもしれないが、間違いである。

民法改正により、すぐにNPOに影響が出てくることが2点あることを指摘したい。

公益法人制度の特別法として作られたNPO法はその3分の1を民法から準用している。とりわけ、ひとつめの影響は、「団体のガバナンス」に現れる。総会や臨時総会の召集や権限、決議事項などといったことを規定している民法の条文をNPO法が準用しているからだ。

「中間整理」では、非営利法人に関しては、ガバナンスを強化する、規律を強化する、ということを延々と書いている。

NPO法のよいところは小さな団体、ガバナンスの未熟な団体でもとにかくスタートしやすくしたところに大きな意義があったはずだ。NPO法が残ったとしても、民法が変わるわけであるから、NPO法が改正されるかもしれない、ということをしっかりと認識しておく必要がある。不必要にガバナンスが強化されてしまうと、NPO法人のガバナンスも不必要に強化される危険がある。

もうひとつは、NPOの税制上の位置づけが、公益法人等という位置付けになっていることだ。

公益法人の税法上の位置づけが変わるのであれば、とりもなおさず、NPOの税制上の位置も変わる、ということになる。

また、今回の公益法人制改革でさかんにでてくる「公益性」にも大きな問題がある。NPO法のいいところは、「公益性を自由化した」ことにあるといわれている。行政が「公益」を規定することはできない、ということでNPO法はできた。中間整理にでてくるA案にしろ、B案にしろ、誰かが公益性を認定するわけで、行政の監督強化につながることを非常に強く危惧している。

この中間整理は読んでいるとそのまま見過ごしてしまう問題点が、非常に多くある。A案、B案にしても行政機構の肥大化を防ぐ観点を強調していることから、おそらくB案が採用されていくのかな、と、割とストーリーの見えるような内容になっている。検討中であると表現はぼかされているが、気をつけておかないと、気がついたときにはとんでもないことになってしまっている可能性がある。それを防ぐためにもみんながきちんとこの改革を注視し、意見を言っていかなければならないだろう。

2人の報告の後、質疑応答となった。参加者との主なやりとりは以下のとおり。

会場: 課税をする主体であるにもかかわらず、課税庁が公益性を判断することになるかもしれないことについては、違和感を感じている。

松原: 公益性をどう考えるか、その公益性を認定することについてどう考えるか、公益性の要件をどう考えるか、ということによっても変わってくるし、優遇措置の内容が税制上のメリットだけなのか、それ以外にも何かあるのか、といったことでもちがってくることだ。さらに、認定要件が誰がみても明らかなものとして法制化されるかによってもちがってくる。もし、優遇措置の内容が税制上の効果だけであり、その要件が極めて客観的基準となるのであれば、一概に課税庁だからだめだとは思っていない。要は、認定要件、認定機関、認定手続きはセットで議論されるべきものである。

会場: 公益性を認めることによって、いったい何を優遇するのか、といったことがはっきりしない。どう読んでも税のことしか書かれていないように感じる。山岡さんは、民間の機関が認定するのはよくないと提言されているがそれは税制上の効果を与えることになるからか?

山岡氏: そうではなく、何らかの公的な権力を民間が持つことになるから、純粋に民間の団体が認定機関となることには反対なのだ。公的資金がその機関に流れたりすることにもなるかもしれない。

最後に山岡氏は、「公益法人制度改革は難しいから必要ないかといったら、そうではなく、このまま主務官庁制が続いてしまったら、日本の民間非営利セクターには何の展望もない。幸いNPO法というセイフティーネットがあるわけだから、あせらず、じっくりといい制度改革にしていこう」と述べた。

松原は、「制度の問題というのは、できてから変えていくのは大変なこと。しっかりと今からわれわれが関与して意見をいっておくことが大切だ。そして、この改革は、NPO制度を見直す機会ともとらえるべきで、自分たちが活動しやすい制度とはどのようなものなのかを我々から提言していかなければならないと考えている。このことで、制度も政治も変わっていく。皆さんもしっかりとこの議論に参加してほしい」と呼びかけた。

※「議論の中間整理」の意見募集は5月10日まで。応募方法については、以下のシーズのHPのニュースで紹介している。
/2004/04/行政-政府、「中間整理」の意見募集/

文責:シーズ事務局
2004.04.25

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