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2002年の報告

2007年08月29日 11:44

「足立区講演」報告

 2002年6月25日、足立区制70周記念事業NPO入門講座(地域フロンティア講座)「NPOって何だ?~真の市民社会の創造と可能性を考える~」が足立区生涯学習センターにて行われた。主催は、足立区と(財)足立区生涯学習振興公社。生涯学習ボランティアグループ「楽学の会」が運営を行っている。

 全5回の連続講座で、松原明シーズ事務局長が初回の講演を担当した。

 タイトルは「NPOとは何か-その意義と現状、そして可能性-」、NPOの概念やNPOが登場してきた背景、NPOの団体の仕組みなどが講演の中心。

 2時間にわたる講演で、定員40名のところ84名が出席し、会場は一杯になった。

 以下に講演の報告をする。

1.「NPO」という言葉

 「NPO」とは、Non-profit Organizationsの頭文字をとったもので、「非営利組織」や「非営利団体」と訳される。

 「NPO」という略称は、日本で広まっているが、欧州では一般的に使われることは少ない。米国でもこう略すのは一般的でない。また、「NPO」という用語が指す団体も日本と米国では異なる。

 日本では、「NPO」というとき、よく使われるのは2つの意味でである。1つは、市民活動団体やボランティア団体を指すもの。これらは全国に約9万団体ある。もう1つは、1998年に成立した「特定非営利活動促進法(以下NPO法)」によって、「特定非営利活動法人(以下NPO法人)」という法人格を得た団体を指す場合。現在NPO法人は7000団体を超え、月に約300団体増えている。一般的に、前者の市民活動を行う団体と、後者のNPO法人を合わせて「NPO」と呼ぶことが多い。

 一方米国では、大学や病院、教会なども「NPO」として捉えている。アメリカには約70万団体あると言われている。また、協同組合など構成員相互の利益を目的とする共益団体を含める場合もある。

 「NPO」という言葉を、日本のように狭い概念で使う場合や、米国のように広義に捉える場合があるので注意してほしい。「アメリカのGDPの1割近くをNPOが占めている」というときは、広い意味での「NPO」のことだと捉える必要がある。

2.日本社会の変化と「NPO」の登場

 なぜ米国と日本で「NPO」の概念に違いがあるのだろうか。

 「NPO」はもともとアメリカの制度から来る概念で、営利目的の民間の団体、つまり会社と区別するために使われてきた。

 しかし日本では、最近まで「NPO」という言葉は広まってこなかった。その理由は、戦後の日本社会における官と民の役割分担のあり方による。官は教育や医療など社会的なサービスを運営し、公益の担い手という役割を果たしてきた。一方民間の団体は、私益を目的に活動するものとされてきた。国民が普く受けるべき社会的サービスは、行政のコントロールの下で、個々のサービスを法律によって定義し、その担い手として学校法人や医療法人などの法人をつくり、財源を保障するという、一連のセットとして提供されてきた。アメリカのように、民間主導で大学や病院などの公益サービスを生み出すような国づくりの仕方とは異なるものだ。

 こうした国づくりの違いが、「NPO」という言葉や概念の違いを生んできた。日本では、民間の活動の中心は会社の営利活動であり、民間による公益活動は官の補完と位置づけられてきたのである。

 しかし、70年代以降日本の社会サービスのあり方に変化が起きてきた。1つは、1973年のオイルショック以後、経済成長が停滞し、財政面で行政によるサービスに限界がでてきたこと。もう1つは、中立・公正・公平を旨とする行政のサービスでは行き届かない公益サービスのニーズがでてきたことによる。

 例えば、医療過誤。中立・公正・公平の行政では、医療ミスかどうかが分からない段階で、一方的に被害者の支援はできない。あるいは難民支援では、相手国政府の要請がなければ行政は動けない。

 行政がこうした公益活動をするのは困難である。むしろ民間が担い手となる方がよくできる。

 行政がサービスを提供すべき分野もある。しかし官だけでなく、民間の公益セクターが活躍することで、個々人で異なる様々なニーズを充たすことができる。こうした意識の芽生えによって、70年代末から民間に継続的な公益サービスを提供する団体が登場してきた。現在日本で広まってきた「NPO」は、こうした団体のことをいう。

3.「NPO」のしくみ

 これまでマクロな視点で「NPO」を見てきたが、次にミクロな視点で個々の団体のしくみを見ていく。

 「NPO」は、目標達成のために一時的に活動をする市民運動の団体と異なり、継続的にサービスを提供することが求められる。継続的に活動をし、発展させていくには、組織が必要だ。組織をつくれば、活動の維持のためや組織管理のためのコストがかかる。コストをまかなうには財源が必要となる。

 よく「NPO」はお金を稼いではいけないといった話を聞く。これは、非営利という概念を理解していないためにおこる誤解である。「NPO」を理解するには、営利・非営利の違いと有償・無償、報酬・無報酬の違いを区別することが大切だ。営利と非営利は、会社では株主、「NPO」では会員の視点で区別される。組織に活動資金を与える株主や会員に、利益を配当するのが営利団体。利益を次の活動に充て、会員の間で分配しないのが非営利団体、「NPO」である。「NPO」は、お金もうけを目的としていない。しかし、非営利であることと、有償事業(有料のサービス)をし、活動を維持するためのコストをまかなっていくことは両立するのである。

 また「NPO」とボランティアを同一視する誤解もある。ボランティアは個人であり、基本的に無報酬で活動する。「NPO」とは稼いだ資金から利益が出たからといって分配しないこと。個人と組織との違いであることを認識すべきだ。「NPO」のスタッフが報酬を得るのも、人件費というコストに該当して、利益の分配ではない。非営利と無報酬という概念を区別することも、「NPO」の理解にとって重要である。

 「NPO」が活動を維持し、発展させていくには、経済的に回わっていく仕組みをつくっていかなければならない。「NPO」の財源には、会費、寄附金、事業収入、民間の助成財団の助成金、国や自治体の補助金などがある。いろいろな財源をミックスして、団体の目的を達成するような活動を設計していくことが重要である。

4.「NPO」の意義、可能性

 日本社会の変化の中で、「NPO」の役割はますます重要になっている。これまで行政による公共サービスが中心であったが、市民自身が多様なニーズに応える公益活動が盛んになってきた。民間の自発的な活動には、社会的、経済的基盤の整備が必要である。NPO法やNPOの寄附税制の優遇などがその一例である。今後も「NPO」の活動を伸ばしていくための制度づくりが不可欠である。

 「NPO」の世界は、ダイナミズムのある世界だ。市民一人ひとりが「NPO」を道具として使って社会的な活動していくことで、自分も社会の担い手として活躍できる面白さがある。また、その人自身の社会に対する発言力も強めていくエンパワーメントの役割もある。

 「NPO」は社会的サービスを生む新しい経済的主体であり、市民の多様なニーズに応え、社会を豊かにしていく社会的主体である。日本社会の変革の中心的役割を担っていくものとして、「NPO」の可能性に期待がされている。「NPO」の世界に是非参加してみてほしい。

質疑応答

Q.市民活動団体やボランティア団体が、NPO法人にならなければ社会的に認められないような状況になるのか。

A.法人格は道具である。使う必要がある団体が使えばよい。例えば法人格を取れば、団体として契約することができる。これをメリットと考える市民活動団体やボランティア団体が、NPO法人になればよい。NPO法人にならなければ社会的に認められないような状況は、止めなければならないだろう。

Q.同窓会はNPO法人になれないのか。

A.同窓会は、構成員相互の利益が目的の共益団体である。NPO法人の要件には、不特定多数の人々に公益サービスを提供することがある。同窓会や業界団体などの共益団体に対しては、新たに中間法人という法人格がつくられている。

報告 大塚謙輔

2001.06.28

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