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2005年の報告

2007年08月29日 15:46

シンポジウム「NPO法人のアカウンタビリティを考える」

【関連イベントのご紹介】
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皆さまのご参加をお待ちしております!

詳細・お申し込みは、
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「NPO法人の会計基準をつくろう!~NPO法人の信頼性向上のために~」
をご覧ください!

2005年4月21日、東京千代田区の東京しごとセンターにて、シンポジウム「NPO法人のアカウンタビリティを考える~NPO法人の会計・税務・事業報告の課題を考える~」(主催:シーズ=市民活動を支える制度をつくる会、助成:(財)笹川平和財団)が開催された。

シーズでは、2005年1月から、アカウンタビリティ研究会(第2期)を立ち上げ、NPO法人の会計・税務・事業報告について検討を行っている。

このシンポジウムは、その研究会での議論を広く一般に公開するために行われたものである。

シーズでは、かつて、アカウンタビリティ研究会(第1期)において、1998年3月17日に「NPO法人の会計指針草案」を発表したが、そのまま作業が中断した格好になっていた。

その後、7年が経ち、2万を超えるNPO法人が誕生する中、NPO法人格を悪用するケースが聞かれるようになってきたことなどを受け、作業を再開したもの。

NPO法では、NPO法人の会計基準は定められていない。事業報告書の基準もない。そのため、市民がどのようなポイントでNPOを見たら信頼できるのか、その判断基準となるものがないのが現状となっている。

シーズでは、このような現状を問題視し、昨年夏、アカウンタビリティ研究会第2期を立ち上げ、研究、提言を行っていくことを進めてきている。

今回のシンポジウムは、その研究の一環として、NPO法人の信頼性を高めるために何が必要なのかを、会計面・税務面・事業報告の面から課題を検討しようというもの。

このシンポジウムのコーディネーターはシーズ事務局長松原明が務め、パネリストには佐藤鐘太氏(内閣府国民生活局市民活動促進課課長補佐)、水口剛氏(高崎経済大学経済学部助教授)、江田寛氏(公認会計士)、茶野順子氏(笹川平和財団主任研究員)を迎えた。

シンポジウムには会場一杯の100人の参加があり、皆、熱心に聞き入っていた。

シンポジウム冒頭に、コーディネーターの松原が、NPO法人の現状や信頼性について問われている現状について解説した。

NPO法人格を悪用する例や企業とのイコールフッティングの問題、課税のグレーゾーンの問題について指摘。そして、現在進められている公益法人制度改革に触れ、この改革は1990年以降に公益法人の不祥事が続いたことにより始まった流れであり、NPO法人の不祥事が続けば同じような規制強化といった「改革」がされるかもしれないと警鐘を鳴らした。

こんな中、NPOがどう信頼性を保っていくのか、NPOの信頼性を高めるために何が必要か、各パネリストが日頃NPOのアカウンタビリティについて思うところを尋ねるところから、議論はスタートした。

佐藤氏:

内閣府国民生活局市民活動促進課でNPO活動の促進のための基盤づくりをテーマとしたセクションで働いている。今までの公益法人の制度では行政が公益性を判断し担保する代わりに、それに税の優遇を与えてきた。NPO法人の場合はこれと異なり、行政の関与をできるだけ少なくし、簡易な方法で法人格を取得でき、活動については自由な活動を行っていただこうというものである。従って税制優遇を受けるには、NPO自らが情報公開によって公益性を証明することが必要である。その意味でNPOのアカウンタビリティの重要性を感じている。

今日は、NPOへの税の優遇を拡大する上で、NPOが市民の中の信頼を勝ち得て行くにはどうしたらいいか、皆さんと一緒に考えたい。

水口氏:

1991年から5,6年ほど環境保護活動団体で事務局をしていた。その時、アメリカの環境保護団体を視察する機会があり、アメリカではスタッフが600人もいるNPOがあるなんてと驚いたことを記憶している。日本でも「仕事」としてNPOに関われるようにしたいというのが、NPO活動の基盤づくりに関心を持ったスタート地点だった。

NPO法制度ができて、すでに多くのNPO法人が誕生していることは大成功だと思う。

今、NPOに起こっている状況は、「産みの苦しみ」だと思う。NPO法人のための会計基準はまだないが、必要性はある。アメリカのFASB(米国財務会計基準審議会)の動きも見つつ、考えて行かなければならないことだ。その際、NPOをひとくくりに考えずに、多様なNPOの実態にあった基準があることが望ましいだろう。専門性があって幅広く活動するNPOと、一方で草の根型で活動するNPOは同じ会計の方法では上手くいかない。そして、何より忘れてはいけないのが、NPOは会計をやるためにあるのではなく、ミッションを達成するためにあることだ。今の時期を乗り越えて、企業、行政と並ぶセクターになってほしい。

江田氏:

家庭の中でも各部屋ごとにテレビがあったり、また携帯電話が便利に使えたりすることで、ますます個人化が進んでいる。しかし、人が仲間と一緒にいたいと思うのは、自然なことだろうと思う。所属することで評価され、不要になったら抜けられる、そういうものをNPOはかなえてくれるのかもしれないと思うことがある。

私も団塊の世代だが、あと2年もすれば社会には大量の定年者がでることになる。そこで、様々なNPOが、どんな活動をしていて、それはどこで活動していて、集まった会費や寄附はどう使われて、また報告されて、そしてどう担保されているのか、そんなことを上手く見せていくことができたら、これから先多くの定年を迎えた団塊の世代は、NPOに参画してくるだろう。そのためにも、NPOのアカウンタビリティを考えていきたいとも思っている。

茶野氏:

アメリカに10年ほど行っており、フォード財団で働いたのち、2年前に帰国した。アメリカの非営利セクターをみてきた経験からお話ししたい。日本ではアメリカのNPOはいつも恵まれた環境にあるように話されることがあるが、必ずしもそうとはいえない。むしろ、政府との関係で言えば、適度な緊張もあるのがアメリカのNPOの現状だ。現在アメリカでもNPOや財団について、特に大手NPOや財団が過度な報酬を役員に払っている実例等をあげ、報告義務等を厳しくしようという動きがある。NPOや財団等の連合組織であるインディペンデント・セクターは、上院予算委員会に対して、NPOのアカウンタビリティを向上させるための法改正についての答申を求められたりしている。パーフェクトな状態はなく、安住していてはいけないし、それがNPOの生きる道だと思う。

一巡した後で、NPO法人が行う説明責任や比較可能性について議論があった。

佐藤氏:

 NPO法人から提出される会計報告の実態についてお話しする。会計書類の問題点は、1点目に単純ミスが多いこと。誤記入も多いし、フロートやストックの理解が曖昧である。2点目は区分経理ができていても各事業の経費がないとか、 正確な書類ではあっても、不十分な内容であることが多いこと。3点目に会計基準がないので様式がまちまちであり、第3者が見ても比較検討するのは難しいことがある。

また、会計報告の提出は遅れているところが多く、内閣府は、所轄する3割のNPOに督促状を出している。内閣府としては、規制を強化するのはよくないし、できるかぎり市民の中で環境整備していってほしいと思うのだが、こんな現状を見るに、そうはいっても所轄庁としての監督責任もある。内閣府としては、NPO法の運用方針を策定したり、市民への説明要請の実施をしている。

水口氏:

 会計基準がない状況では、おのおののNPOが作って提出した会計書類が、偶然、比較可能になるはずがない。比較可能にするためには会計基準が必要である。

内閣府の出している「NPO法の運用方針」の中に、報告徴収の対象となるものとして「管理費の総支出額にしめる割合が、2事業年度連続して3分の2以上である場合。」とあるが、そういうことが外部から見てどうして分かるのか。会計基準がないので、管理費と事業費を分けて報告をすることになっていないし、そのNPOが分けて報告をしていなければ分かるはずがない。逆に言えば、このような運用基準を所轄庁が示すことは、事実上の会計基準をつくることになりかねない。会計基準は必要だと思うが、会計基準をつくるときには、誰かが作るものではなく、社会の議論を経てつくるべきである。

次に、NPOの信頼性とは何か。信頼性は誰が何を担保するのかが話された。

水口氏:

 NPOの信頼性を誰が担保するのかというのは、NPOを誰がチェックするのかということだろう。誰が?と問われれば、それは、そのNPOに資金を出したり、ボランティアをしたりして関わりを持つ人だろうと思う。それが可能になるための情報を整備することが大事。

NPOに特徴的なのは、対価なしにお金を払ってくれる人がいることだ。寄附、会費、助成金、補助金がそれである。NPOはこれらの資金源により支えられている。

お金の出し手の人たちがNPOをよくウォッチしていて、広い意味での市場原理によって、NPOは育てられたり、淘汰されたりするのだろうと思う。

江田氏:

 信頼性を担保するのは、NPO法人の周囲にいる人および関心をもつ人だ。NPOにもいろんなNPOがあって、2万を超えるNPOが誕生していれば、全てが良いNPOであるはずがない。それに対処する方法として2つある。1つは、パブリックセクター、つまり政府や自治体が規制をかけるやり方。しかし、これをやると民法34条法人が制度疲労したのと同じ結果になる可能性がある。もう一つは自分たちで積極的に情報公開をしていくことで、こちらの方が有効である。自分たちの活動に自信があるなら、情報を公開することに抵抗はないだろう。自分たちの会計情報を積極的に出すことで、お金の出し手に対して信頼性を高めてもらえたらいいだろう。

茶野氏:

 ファウンダーとして出来ることは、ある特定のNPOを支援するか否かを決める際に、助成財団の機能として信頼性の判断を行っている。当財団では、助成先団体に、「会計についての質問票」に回答してもらっている。これは、個々のNPO団体に対して、財団から求める会計報告や事務内容を示すとともに、期待する会計実務について示しているものである。

佐藤氏:

 NPO活動は基本的に自由にと思うのだが、NPOに関して問い合わせが多いのも事実で、なかでもこの法人は信頼できるか?という問い合わせが多く寄せられる。NPO法人の信頼性について行政に問い合わせられること自体、NPO制度の趣旨が市民に十分浸透していないのではないかと思う。

水口氏:

 もし内閣府にNPO法人の信頼性を問い合わせる人がいたのなら、内閣府はぜひ「自分で考えて」と答えてほしい。行政の役割は情報開示などのフレームワークをつくることであって、個々の評価は一人一人の個人がすべきことだ。

次に、NPOの会計基準のあり方について提案があった。

水口氏:

 NPO法人にとって、どんな会計基準がいいだろうか。NPOといってもいろいろあるので一律には扱えない。規模の大小があり、活動のタイプも異なる。規模の大きなNPOほど、社会的責任や影響力も大きいので、きちんとしたディスクロージャーをすべきだし、草の根のNPOであれば、顔の見える間柄で活動するわけだから、日常活動を通じて信頼が確保できるだろう。また、活動のタイプでは、会員から会費を集めて、ニュースレターを発送するだけの活動、つまり収入と支出しかないNPOであるなら、収支計算書と単式簿記の組み合わせでも問題は少ない。一方、物を売買したり、債権債務があるNPOであれば、企業と同じような損益計算型の会計が必要なのではないか。

ここで、株式会社の会計はどうなっているのかを考えてみたい。中小企業でも会計基準はあるが、公認会計士の監査は求められないなど、規制も少ない。一方、会社が株式を上場するようになれば、証券取引法のもとで詳細な会計基準が適用され、公認会計士の監査も義務付けられる。その分、証券市場で資金も集めることができるし、社会からの信頼も得られる。

このように、一律で厳しい基準を課すのではなく、タイプごとでわけて考えたらどうか。世の中から広くお金を集めるNPOは、ある種の寄附市場に入る代わりに、ある程度きちんとした会計処理をして、詳しい情報開示をする義務を課す。そんな仕組みが考えられないだろうか。

最後に、NPOの信頼性を高めるためには、会計情報の他に、事業報告が重要であるという議論が展開された。

江田氏:

 NPOの信頼性を高めるには、会計情報と併せて大切なのが、文章による事業報告書だ。事業報告書は、会計情報と一体になって、資金が不正に使われていないこと、期待を裏切っていないこと、そして、自分たちのミッションのために何をどれだけ使ったのかを報告することになるだろう。団体がアピールすることで資金やボランティアが集まるのだから、これは組織のプレゼンテーション力が試されるところだと思う。

佐藤氏:

 事業報告書をプレゼンの場として認識するのは大事。所轄庁の事業報告書書式例は、法人に負担にならないような記載例を示したものにすぎない。この例にとらわれず、ぜひ積極的に事業報告してもらえたらいい。

水口氏:

 今日のイベントにきた人にはわかっても、そうでない多くの人は、所轄庁の示した記載例に従うべきものと誤解しているだろう。行政がひな形を出すと、社会的に影響力があることを認識してほしい。所轄庁が示す事業報告書のひな形は例にすぎないのに、例があるとこれが正しいと思う人がいる。

むしろ所轄庁は、事業報告書の原理原則だけを示して、ひな形をうめるものではないことをはっきりさせるべきだ。

例えば、事業報告書にはミッションを書く、具体的な事業とミッションの関係を書く、その事業がどれぐらい成功したのか、成果があったのか、そして、そのNPOの評価を書くというように、書くべき事業報告書の原理原則を挙げておいて、それをどう書くかどうかはそれぞれのNPOにまかせる、というふうにしておくべきだろう。

茶野氏:

 事業報告書の作り方は、これだけは報告書に入れてほしいという最低限のポイントを提示して、あとは自由に書いてもらうというのがわかりやすいだろう。

江田氏:

 誰に一番何を伝えたいのか?わかりやすい言葉でどう伝えるのか?そのことがきちんと書かれることが大切である。

会場からの質疑では、所轄庁における書類の閲覧状況はどの程度利用されているのかといった質問や、昔経企庁が作った会計の手引きは、何のモデルでもないはずなのに影響力を持っているという危惧が出された。

最後にコーディネーターの松原は、以下のように締めくくった。

「今日のシンポジウムでは多くの課題だしをすることができた。第1期のアカウンタビリティ研究会では、会計基準のない中で草案をつくった。NPO法が施行されてから7年がたち、会計基準に関しては、議論が再度必要だ。シーズはアカウンタビリティ研究会を再スタートしていて、今日は再スタートをきるためのシンポジウムを開催した。このアカウンタビリティ研究会では今後も公開のイベントを開催している。ぜひ今後もご注目いただき、意見をもらいながら、 ディスカッションの機会を作っていきたい。」

報告:鈴木歩
2005.06.13

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