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2002年の報告

2007年08月29日 11:46

世田谷区NPO講座第4回「NPOの事業開発と資金開発」報告

 2002年7月3日、世田谷区生活文化部市民活動促進課主催のNPO講座第4回が、世田谷区文化生活情報センターセミナールームにて開催された。

 この講座は、世田谷区内の、NPO法人設立を検討している人や、実際にNPOの活動に携わっている人を対象にした連続セミナーで、世田谷区のNPOの立ち上げ支援事業の一環として行われている。NPOについての基礎から運営ノウハウまでを学ぶ全6回の講座の、今回は第4回目。

 「NPOの事業開発と資金開発」というテーマで、主にNPOの事業とファンドレイズの方法を、2つの先進的な取り組みをしている団体の事例から検討した。

 事前の予想に反して、会場は65名の参加者で、ほぼいっぱいとなり、事業と資金の問題に対する関心の高さをうかがわせた。

 司会の世田谷区生活文化部市民活動推進課の竹内明彦氏より、今回の講座の目的と、成果への期待が説明されたのち、非営利活動と事業、資金の関係について、全体のコーディネーターをつとめるシーズ事務局の轟木洋子が短く説明した。その後、新宿区のNPO法人「難民支援協会」事務局長の筒井志保氏と、横浜市の特NPO法人「さなぎ達」事務局長岡野明子氏を交えたシンポジウム形式で、活動事例の分析を行った。

 以下、進行に沿って報告する。

1)NPOの事業の特徴(講義:シーズ・轟木洋子)

 企業は、株主からの投資を運用して事業を行い、サービスや商品を利用者(消費者)に提供することで利益を得、それを配当として株主に返すことで営利活動を行っています。NPOが行う非営利活動も、支援者や会員からの会費や寄附金を運用して事業を行い、利用者(受益者)を生み出すという構造は同じです。しかし、生み出された利益を会員や支援者に返さないで、次の事業を行うための資金にするというサイクルが、営利を目的とする企業とは異なっています。つまり、お金を出す側(株主、会員・寄附者)からみて、営利か非営利かということなのです。

 NPOが対象とする受益者は、利用料や代金として対価を払ってくれる場合もありますが、例えばクジラの保護活動では、一生懸命クジラを守っても、クジラからお金は取れません。NPOの事業では、商品やサービスを提供しても、必ずしも対価を得られるとは限らない対象を相手に、いかに資金を集め、上手に運用して問題解決を図るかが、事業開発の重要なポイントになります。例えば、クジラが見たい、と思っている人にホエールウォッチングのツアーを提供し、参加費を得ながらクジラの問題を啓発する、という事業を考え出すことで、利益を得ながら目的を達成することができるでしょう。

 NPOの事業開発では、この例のように、いかに多様な関心を引き込んで収益につなげるか、という視点が欠かせません。

 また、NPOが使える資金について良く知り、その特徴を活かしたファンドレイズを行うことも重要です。NPOが使える8つの資金(会費、寄附金、対価収入、助成金、補助金、金利、借入金)のうち、会費、寄附金、対価収入は、比較的安定的で自由度も高い収入です。それに対して、財団や企業からの助成金、行政からの補助金は、一時的、かつ使途が定められた資金であり、この資金に依存しすぎると、資金を得られなくなったときに団体の継続ができなくなってしまうリスクもあります。しかし、上手に使えば、団体のステップアップのための効果的な資金ともなります。

2)先進的なNPOの事例を参考に(シンポジウム:シーズ・轟木洋子、難民支援協会・筒井志保、さなぎ達・岡野明子)

事例発表:難民支援協会 筒井志保氏

 難民支援協会は、様々な人権問題に取り組んできた人たちの中に、日本国内の難民問題に取り組む団体が全くないという問題意識があり、日本国内の難民の救援を行う目的で結成されました。この問題に意識の高い人たちを中心に準備会を発足させ、議論を進める段階から、資金をどうするのかという問題が常に心配されていました。海外の難民問題を扱うNGOには、外務省の草の根援助金やボランティア貯金の配分金などが得られますが、国内の難民問題には支援が得られないからです。

 当初は、日本に来ている難民の法的支援、つまり、入国管理局との交渉や、難民認定申請中の人たちの相談業務などを目的としていました。その後、難民申請中の人や、難民に認定され、日本国内に住むことを許されても、就労や生活面で支援が得られないという人からのニーズが大きくなり、法的な支援から生活支援まで、事業が広がってきて現在に至っています。

 こうした事業を行う他団体がなかったことや、中心メンバーにそれまで人権活動に取り組んできた人が多く、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などに人脈があったことから、UNHCRの調査事業などの委託を受けたり、様々な助成金を得ることがだんだんできるようになり、少しずつ活動が広がりはじめています。

 私たちの事業の特徴は、専門性です。実際に難民からの相談を受けたり、難民達に接する中で得た様々な知識やノウハウを蓄積していることが、他の団体にない独自の強みになっています。

 難民の問題では、広く浅く理解を得て寄附や会費を集めることが難しいと思い、資金としては助成金獲得を重視してきました。助成金獲得は他団体との競争ですから、申請する事業が明確でわかりやすいことが大切ですし、申請書類もわかりやすく、インパクトを持たせる工夫が必要です。難民支援協会では、団体内に助成金申請のためのチームを作り、専門のスタッフが書類を作っていることも、助成金獲得成功の秘訣かもしれません。
また、他団体との連携事業も重視しています。現在、難民問題を扱う8つの団体がネットワークを組んで難民支援事業を行っていますが、ネットワークによって、より効果的な広がりを持った事業を行うことができます。この事業はネットワーク団体として助成を受けていますが、助成する側も事業効果を大きくしたいと考えていますから、連携によってより効果が上がることは、事業のアピールポイントとなります。

 実際に難民と接していることが、難民支援協会の発信に説得力を持たせていることは間違いありません。難民問題は、世界では大きな問題として注目されていますが、日本の難民の現状はあまり知られていません。このことから、日本の難民の現状に対する調査の必要性を訴え、外務省からの調査委託事業を受けることができました。この事業では、単に政府の必要性から調査をするというだけでなく、この調査を活かして一般市民に対して難民問題を発信していく機会にすることができます。このように、一つの事業からいくつかの効果を見いだし、様々な資金にアクセスして、問題解決を導き出していけるのが、NGOの事業の醍醐味ではないかと感じています。

さなぎ達 岡野明子氏

 横浜にある寿町は、寄せ場、いわゆる日雇い労働者の町と言われる場所です。250メートル四方に100件のドヤ(簡易宿泊所)があり、ほとんど男性、もとは日雇い労働者、現在は生活保護を受けながら、約6400人が生活しています。1983年、山下公園に住んでいるホームレスの男性を、当時中学生のグループが殺してしまったという事件が起き、中学生の犯行ということで社会的な反響が大きく、毎週木曜日に山下公園をパトロールしてホームレスを訪問して声をかけたり、中学生の側にも働きかける「木曜パトロールの会」というグループができ、長い間活動を続けてきました。

 こうしたパトロールの中で当事者とボランティアの関わりが深くなり、1999年頃当事者であるホームレスの方がカレーを作って、当事者やボランティアの人に食べてもらう「カレーライスの会」が始まりました。そして、継続的な活動や行政との連携ができる団体になることを目指して、NPO法人化を検討する勉強をみんなではじめ、2001年に「さなぎ達」という名前で法人化しました。現在、正会員約30人、賛助会員や寄附者約100~120人で活動しています。

 事業としてはまず、法人化と相次いで、「さなぎの家」というたまり場的な拠点を持ち、活動に参加している特に熱心なホームレスの方2名にホームヘルパー2級研修を受けてもらい、ヘルパーとして寿地区の生活支援事業や相談を行うようになりました。寿地区で生活している様々な人たちの相談にのったり、日常的に必要なものを提供したりしていますが、こうした事業に、元ホームレスで、現在はホームヘルパーとなっている職員が応対しています。職員は寿地区の事情に精通しているため、持ち込まれる相談やニーズにより親身に、きめこまかく対応することができます。

 また寿には、精神障害や知的障害を持つためにホームレスになってしまった人が多く住んでいますが、これらの人たちは、誰かが指示をしたり、短時間の作業、単純な作業であれば仕事ができることもあります。こうした方にさなぎの家として軽作業をお願いする、福祉的就労を、神奈川県のボランタリー活動支援金を受けて行っています。また、寿地区だけで年間100人以上発生している孤独死をくい止めるため、緊急時の病院への搬送や付き添いなど24時間で対応するSOS事業を、こちらはファイザー製薬の助成を受けて行っています。
こうした助成金の申請時には、理事はもちろん、ボランティアの方にも書面を見てもらい、わかりやすく、訴える文面になるように、かなりの回数書き直しています。

 またさなぎ達では、年4回の活動誌を発行し、マスコミや行政、支援者、ボランティアに無料で配布しています。この活動誌は、活動に興味を持ったマスコミの方に活動を取り上げてもらったり、支援者、ボランティアを増やすのに大きな働きをしています。

 活動誌を配ることで、ホームレスに関心がない方でもちょっと手伝ってみようか、という気持ちを起こすことができていると思います。昨年のイベントで、スタッフ、ボランティアを含め約5000人の人を集めることができたのも、「ホームレスの問題に興味はあまり無いけれど、ちょっと手伝ってみようか」と思う人が大勢参加してくださったからではないかと思います。

二団体の事業開発の特徴:シーズ 轟木洋子

 難民支援協会、さなぎ達とも、比較的若い団体ですが、それぞれに非常に効果的な事業開発を行っています。

 さなぎ達の事例では、まず、活動誌の作り方が非常にうまく、「読ませる活動誌」になっています。特に、元ホームレスで現在職員である方の連載やボランティアの声など、なるほど、と思う記事づくりができています。また、人の巻き込み方がうまいのも、この団体の特徴です。横浜の土地柄もありますが、キリスト教会やインターナショナルスクールなど、チャリティに熱心な人や組織を上手に巻き込んでいると感じます。若い団体では団体の信用性を作るのが難しいものですが、地域で著名な方が理事になっていたり、ボランティアとして活動されていたりと、団体の信用性を高める工夫も参考になります。

 また、難民支援協会では、難民問題に特化した独自性、専門性を持っていることが、まず団体の大きな強みです。その専門性を力にして、新たな事業を開拓していることはさなぎ達も同じで、寿町という地域に関して、さなぎ達は非常に知識の蓄積があり、専門的であるといえましょう。

今後の課題について:

(筒井)

 NGOのつぶれる一つの方向として、急に資金が入ってきたことにより事業が追いつかなくなり、つぶれてしまうということがありますが、急激に大きくなっている私たちも、この傾向が現れていると思います。会費、寄附金がのびておらず、助成金収入が大きいため、今後はいかに人を巻き込み、会員や寄附者など、活動を支えてくれる恒常的な人たちを増やすかが課題です。その意味で、さなぎ達の発表は大変参考になりました。

 また、現在職員が増えているので、以前よりも職員間の課題共有が難しくなってきているのが悩みです。NPOにとって、資金確保と活動、目的達成は一体のもので、何のための組織活動かを、職員は常に意識していなければなりません。業務をこなす中で、だんだん他のスタッフの仕事が見えなくなり、意識がバラバラにならないよう、気を付けなければと思っています。

(岡野)

 昨年の収支を見ていただければわかりますが、やはり助成金や補助金が大きな収入となっていますので、こうした助成を継続して獲得していけるかが重要です。ファイザーも神奈川県も3年間の助成ですので、これからは寄附金、特に企業や病院からの寄附を集められないかと考えています。また、新しい助成金を獲得するために、新しいプロジェクト、企画を作り、さらなるチャレンジを続けたいと思っています。

 また、「カレーライスの会」から始まったこともあり、ホームレスの方の就労を確保する目的でカレーショップを開こうという話が出ています。こちらはまとまった資金が必要ですから、労働金庫のNPOローンなども視野に入れて計画中です。横浜市中区では、ホームレス対策として、指定された店で使える食券を発行していますので、その食券が使える指定業者になることで、委託事業を受けられないかと現在交渉中です。

質疑応答

質問:NPO法人で事業を運営していく際に、特に非本来事業で何か制限がありますか?

轟木:事業としての制限はありませんが、NPO法人の事業は定款に基づいて行われることになっているので、定款に書かれていない事業を実施することはできません。また、その事業が資格や認可が必要な業務であれば、当然そうした資格や認可は必要にななります。

質問:NPOが立ち上がる過程で、ボランティアベースの活動から法人化に向けて転換する時期があると思いますが、その時どのように立ち上げ資金を集めたのですか?

筒井:最初からNPO法人を目指していたので、特に人権問題の分野で有力な人に、賛同人になってくれるよう説得して回りました。そうした人の名を連ねた準備基金のパンフレットを作って寄附を集め、約300万円の準備基金を募ることができました。

岡野:「木曜パトロール」をボランティアで行っている時、きらら賞という「いきいきとした若者の活動を表彰する」という賞を取っていました。ボランティアによるパトロール活動はさほどお金がかからないため、その賞金60万円を貯金していたので、その賞金と、ホームレスに興味を持っているキリスト教会の寄附で、最初の事務局を立ち上げました。もしきらら賞がなかったとしたら、理事からお金を集めたと思います。

質問:難民支援協会の資料にある、活動委託金とは何ですか?

筒井:国連から調査委託事業として得ているお金をこのように呼んでいます。国連からの委託事業は、補助金とも助成金とも異なるので、難民支援協会の費目では活動委託金と呼んでいますが、各団体で呼び方が違っていることもあると思います。

報告:鮎川葉子

2001.07.08

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