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2004年の報告

2007年08月29日 15:00

会計税務専門家によるNPO支援と政策提言

~米国の事例からNPOへの会計支援制度のあり方について考える~

 9月10日、午後6時半から午後9時半まで、「NPO会計税務専門家ネットワーク」の主催で(共催:国際交流基金日米センター、後援:シーズ他)、NPO支援と専門家の役割について議論するシンポジウムが、国際交流基金国際会議場にて開催された。参加者は50人。

 ゲストは、米国から招かれた公認会計士マーシャル・ハント氏。ハント氏は、米国の国税庁であるIRS(内国歳入庁)に長年つとめるかたわら、NPOや低所得者を支援する会計専門家のNPO「Volunteer Accounting Service Team of Michigan(バスト)」でボランティアとして活動し、IRS退職後は、「バスト」のディレクターをつとめている。

 はじめにハント氏から、米国のNPOの会計面から見た現状やバストの活動について短いスピーチがあった。


 アメリカでは、会計の専門家の多くがボランティア活動にかかわっている。まず、低所得者の確定申告のサポートがもっとも一般的で、たくさんの会計専門家と資格はないが実務経験がある多くのボランティアが参加している。アメリカでは申告をしないかぎり還付などの措置はうけられないため、このボランティアは非常に重要な意味をもっている。また、企業内の会計専門家も、企業内に相談サイトを開くなど、低所得者のサポートのためにさまざまな協力をしている。

 また、NPOの決算や税務などにも多くの専門家がかかわっており、NPOセクターにとって、専門家NPOはなくてはならない存在になっている。

 いずれも専門家と非専門家がうまく連携をとって活動しており、そこでは会計支援のための専門家によるNPOが非常に重要な役割を果たしているといえる。


 ハント氏のスピーチをうけて、パネルディスカッションに移った。パネリストはハント氏の他、APIJapanの代表で「NPO会計税務専門家ネットワーク」の事務局長の瀧谷和隆氏、シーズの松原の3氏、コーディネーターは「NPO会計税務専門家ネットワーク」理事長の赤塚和俊氏。

 議論の論点は3つあった。まず最初は「専門家の社会参加とNPOの役割」について。


松原:

 専門家とNPOの間ではなかなか言葉が通じない、互いに異文化の中に生きているので、通訳者が必要になっている。まだまだ専門知識をもつひとたちに参加の機会を提供できているNPOはすくないのが現状。人のもつ能力を会社員なら会社という一カ所でしか発揮してこなかったのがこれまでの日本社会ではないか。もう一つの社会参加・自己実現の場をNPOは用意できるはずだ。

瀧谷:

 デトロイトには、法律家がつくったNPOもたくさんあるなど一つひとつのNPOがそれぞれ高い専門分野をもっている。今の日本のNPO支援組織はデパート・総合商社型、米国では専門店のネットワークになっていて、会計だけではなくIT、法律などそれぞれの専門NPOがうまく連携していた。

ハント:

 実際の現場では、プロの会計士も一番忙しい時期でもあるので、できるだけボランティアに活躍してもらっている。また、企業に働きかけて、企業内の会計士さんに税務の質問をうけるサイトを開設してもらったり、業務時間外にボランティアをしてもらったりしている。

赤塚:

 米国では専門家同士のネットワークに加えて、たくさんの「資格はないが経験はある」というボランティアの参加がある。日本でも少しづつ進んできてはいるが、税に関する相談や税務書類の作成などをたとえ無償であっても税理士以外の者がすることはできない「無償独占」という制度の壁などもあって、なかなかすすまない。うまく工夫していかなくてはいけないのが現状だ。


 次ぎに、「NPOの監督と行政の関与、アカウンタビリティ」をめぐって、それぞれの現場からの意見が出された。


赤塚:

 福岡でもNPOの不正事件が話題になっている。NPO法はもともと役所の権限をできるだけ排除することを目指してつくられた制度ではあるが、では市民がチェックするにはどうすればよいのか、そこには専門家のネットワークがどうかかわるべきか考えたい。

ハント:

 NPOに関するスキャンダルは寄付市場に大きな影響を与える。例えばユナイテッドウェイ(日本でいう共同募金会のような組織)の職員による横領事件のため、かなり寄付が減ることがあった。こうした状況をうけて、アメリカでもIRSは規制を強化しようとしている。現在、2,000ぐらいの組織に接触して、内部の監査をしようとしている。米国でも市民がチェックするというしくみは今のところない。

瀧谷:

 行政権力であるIRSがNPOの税制優遇の認定をしてもいいのかどうかが日本では問題になるが、まず実態として、法人税の免税団体が156万団体ありそのうち寄付控除をうけている団体は86万団体もあることや、年間7万4千の認定申請があり、却下はわずか0.85%しかないことを知って欲しい。認定要件もゆるやかで、日本のように厳しい基準があることのほうが問題ではないか。

松原:

 問題があるNPOと一般にいうが、それが犯罪行為であれば犯罪を取り締まる別の法律があるわけで、その法律にしたがって規制されるのが本来の姿ではないか。NPOの規制といった場合になにを規制するのか、まず問題を明確にする必要がある。

 さらに、誰がチェックするのか、ということを考えたい。資金提供者やボランティアがチェックにかかわることが重要ではないだろうか。

瀧谷:

 ニューヨークでは、2,500万円以上の決算額になると、州で公認会計士をつけることになっている。日本でも、すべてのNPOに一律に監査基準を適用するのではなく、例えば、公的資金の割合や多額の寄付を少数の人からうけているようなNPOは厳しい監査基準にするなど、財務の状況に応じてそれにふさわしい制度が必要なのではないか。事業規模の小さいNPOには申告義務を減免にするというしくみがあってもいいかもしれない。


 最後に、「支持を得るための事業報告とその中での会計情報のあり方」について活発な議論がかわされた。


松原:

 寄付者の多くは、どういう人が難民か、どう助かったのかには関心があっても、スキャンダルでもない限り、団体の会計には関心がない。資金提供者への情報開示という意味では、単なる会計情報ではなく、事業の成果に関するアカウンタビリティとセットでおこなっていかなければ意味がない。

 現在、所轄庁に出されている事業報告は、資金提供者の意図を反映した形になっているといえない。資金提供者側も、意味のある情報開示を求めるという意識をもつことが重要ではないか。情報開示によって寄付が増えるような開示のあり方を考えていかなければならない。

瀧谷:

 バストの年次報告書の中では、大口の寄付については、どこからお金がきたかなどを明記している。こういう報告書を寄付集めのツールとしてつかっていることが読みとれる。

ハント:

 成果に関しての情報を開示することはとても大事なこと。私の団体でも大型の寄付金があると年度末にはその使い道をきちん正確に示す。報告書は寄付者にとって安心できる材料だと思う。

赤塚:

 団体にとって社会にとって必要な情報開示とは何かを含めて、会計情報がどう位置づけられるかを考えることも会計専門家にとっては大事なサポートではないだろうか。


 専門家の役割、専門家と非専門家の連携、情報開示の意義と専門家の支援の在り方など、公益法人改革ともからんで多くの課題が明らかになった2時間半の議論だった。

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