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2003年の報告

2007年08月29日 13:33

公益法人制度改革を検証する(東京)

 2003年3月5日(水)午後7時から、東京都文京区の文京シビックセンターにて、シーズ主催の緊急報告会「公益法人制度改革を検証する」が開催された。

 100名の定員で参加を呼びかけていたところ、200名を超える参加があり、立錐の余地もない程の盛況となり、公益法人改革への関心の高さと、危機感の高まりをうかがわせた。

 着席できなかった方々や、急遽、資料を追加印刷したため配布が遅れ、ご迷惑をおかけした方々には、この場を借りてお詫びしたい。

【第一部】

 まず、シーズ事務局長 松原明から、公益法人制度改革の進捗状況、概要、問題点についての報告と解説があった。

 報告に先立ち、松原から、「今日の報告内容は、ニュースソースのある情報、財務省、および行革推進事務局との意見交換の結果などからまとめたものだが、かならずしも『これが政府の案』と断言できるものではないことを了解してもらいたい。また、改革案は徐々に変更されているので、現時点で、すでに変更されている点があるかもしれないこともご了承いただきたい。」とのコメントがあった。

 詳細は下記のとおり。

1) 公益法人制度改革の進捗状況について

 1990年代から、天下り、補助金のむだ遣いといった、公益法人の様々な問題が社会問題になってきた。

 2001年4月に行政改革推進事務局が「行政委託型公益法人等改革の視点と課題」を発表して、公益法人制度の抜本改革の必要性を提言し、同年7月、行政改革推進本部が「公益法人制度についての問題意識~抜本的改革に向けて」を報告した。

 2002年3月に「公益法人制度の抜本的改革に向けた取り組みについて」が閣議決定され、同年8月に、行政改革推進事務局は、「公益法人制度の抜本的改革に向けて(論点整理)」を発表して、パブリックコメントを実施。同年11月には、行政改革推進事務局に「公益法人制度の抜本的改革に関する懇談会」が設置され、法人制度部分の検討を開始。他方、政府税制調査会は、「非営利法人課税ワーキンググループ」を設置して、税制部分の検討を開始した。こうして、二つの機関で、公益法人改革が議論されてきて、今後、2003年3月末を目途に、両方の検討を基に、「公益法人制度等改革大綱(仮称)」を閣議決定するとされているが、内容は調整中で流動的だ。

 最終的には2006年3月末を目途に、法制度上の措置を完了する予定となっている。

2) 公益法人制度改革の概要について

 現在、行政改革推進事務局の「公益法人制度の抜本的改革に関する懇談会」と政府税制調査会の「非営利法人課税ワーキンググループ」は、ともに、検討を非公開で進めている。そのため、正確にどのような案が検討されているのか、十分把握できないのが現状だが、そのような状況にあることを踏まえた上で、シーズ事務局が、さまざまな情報を総合して、まとめた改革案の概要は次のようなものである。

◎法人制度の骨格

  • 公益法人(社団法人、財団法人)とNPO法人、中間法人を一本化し、「非営利法人」という新しい法人制度を設ける。
  • 非営利法人のうち一定の要件を満たすものを、登録制により「登録非営利法人(仮称)」として、課税上の優遇措置の対象とする。
  • 「登録非営利法人」のうち、さらに一定の要件を満たすものを寄附税制の対象法人とする。

◎非営利法人の概要

 <非営利法人の設立>

  • 非営利法人の設立は、準則主義(登記)によることとする。
  • 非営利法人の設立は、公益性の有無を問わない。
  • 中間法人制度にある基金制度を導入する方向で検討中。

 <非営利法人の組織について>

  • 非営利法人の組織形態については、中間法人制度の規律を基本とし、会社法(商法)の規律も取り入れる。
  • 事業における利益の分配はできないが、解散時の残余財産の分配は可能とする。
  • 中間法人並の情報開示(利害関係者に対して、定款・役員名簿、社員名簿等や財務諸表、事業報告書等の開示)を義務づける。

 <監督>

  • 主務官庁・所轄庁による指導・監督はなし。
  • 準則主義の営利法人や中間法人同様の事後チェックの仕組み(裁判所による法人解散命令制度など)を設ける。

 <税制>

  • 非営利法人は原則課税とし、事業年度ごとに申告納税義務を負う。
  • 課税対象となる利益とは、事業年度における総収入(益金)から総支出(損金)を差し引いたもの。総収入金額には、対価収入のほか、会費、寄付金、助成金、補助金などが含まれる。
  • 税率は、普通法人並みの課税(30%)。

◎登録非営利法人

 <制度の目的>

  • 非営利法人のうち社会貢献活動(もしくは公益性・公共性のある活動)を行うものについては、登録制度を実施することにより、その活動の発展を図る。

 <登録の要件>

  • 登録の要件としては、法律に明確に規定された「社会貢献性」(公益性・公共性)があることとする。
  • 登録は、一定期間ごとに登録を見直す更新制度とする。
  • 要件の判定は、過去数年間の実績により行うことが必要とされている。
  • 「社会貢献性」の基準としては、以下のような要件とする案が出ているが、発表される大綱では、基準値など具体的な数字までは出せないだろう。
  1. 事業の領域

     定款等に掲げられる事業等が、「保健、医療又は福祉」「社会教育の推進、子どもの健全育成」「文化・芸術・スポーツの振興」「国際協力」「環境保全」「人権擁護又は平和の推進」「地域安全」等といった、社会貢献的な目的・領域であること。

  2. 事業活動の基準

     事業活動をすでに行っている法人は、実績や財務状況において以下の要件を満たすこと。

    • 社会貢献事業が法人全体の活動の一定割合を占めていること。
    • 収益を目的として一般の企業と競合関係にある事業を行う場合には、法人全体の活動の一定割合を下回ること。
    • 内部留保の割合を一定割合以下に止めること。
    • 人件費等管理費の支出総額に占める割合が一定水準以下であること。
    • 適正な経理を行っていること。
    • 実質的な利益分配を行わないこと。
    • 租税回避を目的としたものではないこと。
  3. 組織要件等

     法人としての組織は、以下の要件を満たすこと。

    • 解散時残余財産を構成員に分配することを禁止し、残余財産の帰属を国等とすること。
    • 暴力団やその構成員の統制下にある団体ではないこと。
    • 共益目的を主たる目的としないこと。社団においては、社員の加入要件に特別な制限を設けていないこと。
    • 同一の親族が理事に占める割合を制限すること。 等

 <登録先>

  • 一つの都道府県内で事業を行う法人については、都道府県。国においては、単一の行政庁(または第三者機関)。 
  • 登録先が国税庁ではない行政庁となった場合は、登録を受け付ける前に国税庁と登録先行政庁が事前協議して、登録の可否を決める。

 <監督>

  • 国において監督規定を設け、登録主体が要件を満たしているかどうかを事後的にチェック。定期的・継続的な調査・検査の実施を行う。監督は、登録先行政庁と国税庁の両方が行う。
  • 基準を満たしていない場合は、改善命令、その後の登録の取り消し。
  • 情報公開による民間のチェック機能を強化する。
  • 登録取消となった場合は、「社会貢献性」を有すると判断されていた間に増加した財産を法人の解散に準じて公益目的に処分させることはせず、残余財産分配禁止等、必要な措置を講ずる。

 <課税>

  • 登録非営利法人については原則非課税とする。
  • ただし、営利法人と同種・同等の事業から生じる利益は課税対象とする。この場合、課税対象となる事業は、現行の33事業の限定列挙を拡大する方式か、「対価を得て行う事業で一定のもの」というように包括的な規定による方式かで検討。
  • 課税事業から生じる利益に関しては、利益の20%までのみなし寄付金制度を導入る。
  • 金融収益課税のあり方についても今後検討する。

◎寄付金税制

  • 登録非営利法人のうち、一定の要件を満たすものについては、寄付金税制の対象とする法人となる(名称は不明)。
  • 現行寄附税制では、民間の自主的判断を尊重する方式としてパブリックサポートテストを採用した認定NPO法人制度と、国が特に政策的に支援する必要が高いとした事業活動を優遇対象とする特定公益増進法人制度があるが、新制度の下においても、この2つの基本的枠組みは維持する。ただし、認定等の具体的な要件等については見直す必要がある。
  • 法人の寄付金の損金算入限度枠については拡充を検討するが、一般寄付金制度については、損金算入限度枠の縮小についても検討する。

◎新法人への移行

  • 公益法人・NPO法人のうち、「社会貢献性」を有すると認められた法人は、組織変更を行ったのち、財産を承継して登録非営利法人へと移行する。
  • 「社会貢献性」を認められない非営利法人は、「これまでの非課税措置に対して、課税の公平性の観点から税制上の措置を講ずる」「解散時の残余財産の分配禁止等の規律を設ける」などの条件を付与した上で、財産承継を認め、新法人へ移行する。
  • 営利法人と競合状況にある法人等については、営利法人への転換等を行う。

3) 何が問題なのか

  • そもそも、公益法人制度、NPO法人制度、中間法人制度という制度趣旨の違う3つの法人を一本化することに無理がある。中間法人制度は、事業継続中に利益を分配できないとはいえ、解散時には残余財産を分配できることから、利益や残余財産の分配を禁止すべき「非営利法人」の枠組みに入れることには、大きな疑問がある。
  • しかも、一本化した非営利法人制度を設計するにあたり、中間法人制度の規律を中心にして設計しようということは間違い。日本の法人課税は、非営利公益法人および人格なき社団に対しては、原則非課税とし、企業と競合性のある事業だけを課税してきたが、この大原則を、単に「中間法人が入る」という理由からだけで課税にするのは乱暴すぎる。
  • したがって、原則課税に反対する以前に、三法人一本化の枠組み自体が間違っているという主張をしていかねばならない。そうしないと、中間法人の性質上、原則課税は免れないという論法が通ってしまう。
  • 登録非営利法人制度にも問題がある。登録法人になっても、規制か課税かの選択を迫られることになる。また、登録法人になるまでは、数年間は課税されることになり、活動の立ち上げが困難になる。 登録制度は、自由な市民活動を阻むものになるだろう。
  • 法人制度というものが、団体が社会的活動をする際に乗る「船」だと喩えると、現状では、政府がつくっている非営利法人制度という「船」が、どのような「船」なのかが、政府内での議論が非公開で進行しているため不明。まして、公益法人が2万6千団体、NPO法人が1万団体あるのに対して、中間法人は168団体しかない。この案は中間法人の制度を基本に設計した「船」なのだから、NPO法人側は、「船」を乗り換えることができるわけがない。

【第二部】

 つづいて、参加者と、下記のような質疑応答、意見交換が行われた。

参加者:
 悪しき公益法人を規制し、排除するための公益法人改革に、なぜ、NPO法人が巻き込まれることになったのか?

松原:
 行政の言い分として、学校法人、社会福祉法人などは、「縦割り」で監督官庁の下にあるが、NPO法人は、公益法人同様「横割り」と言えるものだそうで、その意味で同質であるということだろう。

 ここで、シーズのホームページNPOWEBにある「なんでも質問箱」の回答者である赤塚和俊氏(公認会計士・税理士)から次のコメントが出た。

赤塚:
 改革案で使われている「非営利法人」という言葉に惑わされてはいけない。役所は、NPO法人の制度が気にくわないのだと思う。役所の統制下にない団体が増えていっていることを問題としているのではないか。役所は、公益という名のもとの登録制度を設けることで、こうした団体を役所の統制下におこうとしているのではないかと思う。

参加者:
 登録法人になるためには過去数年の実績が必要となるそうだが、非営利法人になる以前の実績は評価されないのか?

松原:
 今のNPO法人の移行については詳細が決まっていないが、なんらかのかたちで登録法人への移行措置がとられるとは思う。しかし、新しく出来た団体は、非営利法人としての実績を積んでからでないと登録法人になれず、それ以前の任意団体としての実績は評価されない。

参加者:
 NPO法人の離脱という活動方針について、もう少し詳しく教えて欲しい。

松原:
 改革案の基本構造を解体するために、こういう方針をとっている。NPO法人を離脱させたら、この改革は成り立たないということは財務省も十分認識している。そもそも、一部の悪い公益法人は、政府との関係の中で生じた問題を取り締まるためのものなのに、そのとばっちりを民間が被ることになるやり方は間違っていると思う。また、NPO法は、市民間のディスカッション、議員とのディスカッションで出来たという誇りがあるので、自分達の運命は自分達で決めたいという気持ちだ。

参加者:
 85年頃から公益法人の改革は始まっていたと思う。そうしたなかでNPO法も生まれてきたはず。それについて政府はどんな考えをもっているのか?

松原:
 政府にもいろいろな考えがあろうが、とにかく、財務省は自分の網の中にいない法人が多いと、課税の公平性が保たれないという考え。その意味では、公益法人は主務官庁、NPO法人は内閣府、地方自治体と網の外にいるので、なんとか網に入れたいと思ってきたようだ。

参加者:
 NPO離脱案を含めて、閣議決定以前に、反対意見を強く政府にぶつける必要があると思うが、どのような活動戦略なのか?

松原:
 やれることは、やれる時に全てやるつもり。ただ、多くの人たちの声を集めて、それを基に活動するというのが基本方針。その第一段階として、今日の報告会のような、より多くの人への情報提供をしている。意見書提出、ロビー活動など、すでにシーズとしての活動は開始している。

参加者:
 登録制度が一番大きな問題だと思う。特に、取り消しになった場合、法人格が残るからいいだろうでは済まされず、実際には、財政的に打撃を受けて、団体の継続が困難になることを認識する必要があると思う。

松原:
 そのとおりで、「登録制度があるからいいでしょう」というのは間違い。登録のための要件は不明だし、また、制度発足後に要件が厳しくなっていく可能性もある。

参加者:
 宗教法人などには手をつけず、公益性のある団体に対して、国の赤字の付けを回そうとするのはひどいと思う。

松原:
 問題は、公益法人は悪だ、宗教法人は悪だといった発想ではなく、何が問題なのかを見極めて対応すべきなのに、単に規制のための改革になっていることだと思う。

参加者:
 介護のNPO法人を立ち上げた目的のひとつは、介護の現場での問題について明らかにしていくことだった。そういう活動が危機に瀕する事態にあるのであれば、NPOの立場での意見をシーズで集約して欲しい。

松原:
 実情を知っていただいて、広く意見を集めていくために、今日の報告会も開催している。市民団体には多様性があるということ、それぞれに価値のあり方が違うということを政府に認識してもらうために、どうか、積極的に意見を寄せて欲しい。

参加者:
 NPO議員連盟など、NPOの推進に関わってきた議員のスタンスはどうなっているか?

松原:
 情報が出てくるのが遅かったため、現状認識も遅れていたが、少しずつ「この改革はおかしい」という声が出てきている。正確な情報を根拠にして、多くの人たちの声を集めて、議員にも届けていきたい。

参加者:
 地方議会への働きかけは行っていくのか?

松原:
 各地で集会が開かれている。認定NPO法人制度の改正運動と同様に、地元の声を、自治体、地方議会に届けていくことになるだろう。より多くの層を巻き込んで活動展開していくことが大切。

 最後に、シーズ事務局の轟木から、3月25日に開催されるシンポジウム「公益法人制度改革を問う~NPO・市民活動団体はこの改革をどう考えるべきか~」への参加呼びかけがあり、9時に閉会した。

報告:徳永洋子

2003.03.06

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