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企業とNPO

2007年08月23日 17:14

新しい社会貢献活動へのチャレンジ(3)特定非営利活動法人山口女性サポートネットワーク

■コーナーの紹介

npowebでは、新たなコーナーとして「企業とNPO」を企画しました。特に、企業とNPOの新しい取り組みに焦点を当ててご紹介していきます。

連載企画第1弾として、マイクロソフトと市民社会創造ファンドの提携による「Microsoft giving NPO支援プログラム」を取り上げます。2002年度選考には当会事務局長の松原明も委員として関わりました。

2002年度の助成対象に選ばれた7団体を訪問し、このプログラムの助成を受け、新たな一歩を踏み出した活動の様子をご紹介します。


第三回 特定非営利活動法人山口女性サポートネットワーク

(2003年9月5日訪問)

山口女性サポートネットワークは、山口県内で唯一、ドメスティック・バイオレンス(DV=夫や恋人からの暴力)による被害を受けた女性を支援している民間団体である。

今回、Microsoft giving NPO支援プログラムの助成を受けて、新たな活動として、パソコンなどの情報機器になじめない女性に向けてパソコン教室の運営を開始した。社会参加の機会がなかなか得られない女性たちがパソコン技術を身につけることによって、社会的・経済的な自立を促したいという思いからだ。代表の小柴久子さんにお話をうかがった。

1) 素人からの出発

山口女性サポートネットワーク(以下サポートネット)の主な活動は、DVによる被害を受けた女性に対して、電話相談やシェルター提供である。

「シェルターとは、さまざまな事情で家を出たりして、居所がなくなった女性が緊急的に一時避難できる施設のことです。行政が運営するシェルターは滞在期間が10日から2週間と定められていたり、公共施設であるために条件が厳しく、例えば中学生以上の男子の同伴ができないなどの事情や、団体生活を余儀なくされます。民間シェルターでは、滞在期間も被害者の都合に合わせられるし、家庭的な雰囲気で暮らせるメリットがあります」。

サポートネットの活動は、1995年の世界女性会議をきっかけにできたNGOの人たちが、DVに関する勉強会を開いたことから始まった。2000年からは、文部科学省の「女性のエンパワメントための男女共同参画学習促進事業」の助成を受けて、山口県内のDVに関する実態調査、被害者への支援者養成セミナーの実施、24時間ホットラインの開設、国内先進地のシェルター視察などを精力的に実施した。その後「女性への暴力ホットライン山口」を設立し、相談活動を開始した。

こうした活動を経て、2002年1月のシェルター開設を機に現在の団体名に改称し、NPO法人格を取得した。

「調査活動を通して、山口県内の女性たちもDVで悩んでいることや、DVで悩んでいる女性たちが他県の相談機関に相談をしていること、他県のシェルターをずいぶん利用しているという実態が明らかになりました。当初、私たち素人の集まりで何ができるのかと悩んでいた時期もありましたが、素人だからできることをすればいいのだ。とにかく被害女性たちの話を聞いてみよう、というところから始めました」と、団体設立の動機を語る。

代表の小柴久子さん

2) あらゆる可能性を追求する

サポートネットが行う事業には、シェルターの運営や電話相談のほか、DVに関する講座や講演会の開催などがある。また、DV被害者の女性が裁判所、病院、警察などのさまざまな機関に出向く際につきそうことも欠かせない活動だ。

電話相談は週3回行っている。相談件数は、昨年度は50件だったが、今年度はこの半年ですでに50件を数えるまでになっている。

講座や講演会は、一般の人たちにDV問題に対する関心を高めてもらうことを目的に行っている。DV被害者に対する支援者を養成する講座や、フェミニストカウンセラー養成講座などを実施している。

「講座には、受講生たちが自身の状況を語ってもらうような内容も含まれているのですが、それで自分自身を見つめることができるのです。自分の弱点や何に反応しやすいかを知ることが、サポーターとして一つの条件です。それがわからないとサポートしすぎたり、余分な手出しをしかねなく自立の邪魔をしてしまいます」。

DVの問題を解決するということは、単に、電話相談やシェルター運営によって、直接的に被害女性を支援していけば済むというものではない。「実は、家庭内で暴力の被害にあっているのに、それをどう捉えていいのか分からないでいる潜在的な女性被害者がたくさんいる。そういう女性たちが気づき、気軽に相談の場などに出向くことが重要です。それにはあらゆる相談できる場や手法が必要です」。

法人としての活動が2年目を迎えた時、サポートネットは、一つの課題に直面していた。

それは、DV被害者の支援や潜在的な被害者を掘り起こすだけでは、家庭内で孤立してしまっている女性の境遇を改善していくことは難しいのではないかと思えてきたからだ。

もっと多くの女性が社会で自立できるようにしていきたい。どうすればいいのかサポートネットは明確な方向性に出会えないでいた。

ちょうどその時、このMicrosoft giving NPO支援プログラムのことを知った。

パソコンをはじめとするITの技術を身につけてもらえれば、DV被害者だけでなく、家庭に閉じこもりがちな女性たちが社会との接点を広げられるかもしれない、と考えた。

「県民活動支援センターの人が、この助成プログラムの情報を教えてくれました。パソコン教室をしようということについては、実は、それまでまったく考えていなかったのです。でも、申請の手引きを皆で読んだとき、このアイデアがひらめいたのです」。

3) 「読み、書き、パソコン」が自立の助けに

サポートネットは、この助成を受け、今年1月からインターネットによる相談事業をスタートさせた。また、女性の自立を促すためのパソコン教室も開設の準備を進めていった。

そして、パソコン教室はこの6月にオープン。

日当たりの良い8畳の和室に、パソコン5台と大きなテーブルが置かれ、リラックスした雰囲気の中で、パソコンに触れることができる空間になっている。すべて個人指導で教えている。

教えている内容は、ワードでの文書作成、インターネット検索や、名刺づくり、家計簿のつけかたなどさまざまだ。また、携帯電話のメールの使い方など、受講者の要望にあわせて柔軟に対応している。

女性であればだれでも受講でき、女性のインストラクターが対応する。週3回、2時間のコース、受講料は2時間で1000円という設定で、現在8人の受講生が週に1~2回利用している。

「休憩時間にインストラクターとお茶を飲みながら、会話を楽しむ時間があるというのも、単なるパソコン教室と異なる点です。教室に足を運んでいる時間がないので出張指導してほしいとの要望も寄せられており、その対応も始めたところです。できる限り要望に応えていきたいと考えています」。

ずっと家庭の中で生きてきた女性が経済的に自立することは大変困難だが、パソコンが使えるかどうかは、仕事を見つけるときに条件として出されることも少なくない。どういう技術を身につければ、就職に役立てるまでになるのかどうか、サポートネットのチャレンジは続く。

「Microsoft giving NPO支援プログラムは、単に助成金を出すだけに終わらない点ですばらしいと思います。マイクロソフトの方が実際に活動の現場を見てくださることは、私たちにとって励みになります。また、助成を受けている団体が集まって報告をする機会があったのですが、ITを軸に異分野で活動しているさまざまな団体の活動を知ることができ、たいへんな刺激を受けることもできました。NPOにとってITはもっといろいろ活用できる方法があるのではないかと思います」。

「パッチワーク」をキーワードにしてインターネット検索に挑戦。色とりどりの作品を見ながら、インストラクターとパッチワーク談義を楽しむ。

4) よりアクセスしやすい団体をめざして

シェルター活動の方も着実に成果を上げてきている。

「つい先日、私たちのシェルター利用者の一人が、住み込みの働き口を見つけて一人立ちしていかれました」と、シェルターの世話人は嬉しそうに語る。

そして、このようなサポートネットの取り組みに対して、少しずつ社会からの注目も集まり始めている。

今年度に入って、シェルター活動が評価され、国際ソロプチミスト・アメリカ連盟から「女性のために変化をもたらす」というタイトルの助成金を授与された。

山口県からも、来年度の県民活動協働推進事業の一つにDV関連事業があげられ、サポートネットに対して協力要請があった。来年度予算に向けて、今、事業の企画を山口県といっしょになって考えているところだ。

現在、サポートネットの次の課題は、この事業を来年度以降も引き続き行えるように、事業の採算性をどうはかっていくかということにある。

「パソコン教室の取り組みを、収益的な面から、DV被害者の支援という私たちの本来的な事業を支えるまでに発展させることは難しいことです。しかし、独立した一つの事業部門として成立するように努力していきたいと思っています。それには受講生がもっと増えるように広報したり、継続して利用していただけるようなプログラムを用意したりすることも検討しなければなりません。パソコン指導は現在一人のインストラクターに頼っていますが、他のNPOとの連携を検討していきたいと思っています」。

助成対象となっているインターネットによる相談は、今のところ電話に比べて件数は少ない。

「顔が見えない人に相談しようと思わないでしょう。でも、女性たちがITの知識を身につけ、インターネットの利便性に気づけば、アクセス数も増えてくるはずです。そして、一人でも多くの被害者が力をつけられるようなサポートをめざしたい。彼女たちとともに歩んでいきたいと思っています」。

サポートネットは、よりアクセスしやすいホームページをめざして、近日リニューアルをする予定だ。


プロジェクト名:

地域における熟年・女性の自立に関するインターネットを活用した取り組み

■ 団体概要

設立:

2002年。

主な事業:

電話相談事業、シェルター運営事業、エスコート事業(裁判所・病院・警察などへの付き添い)、研修事業など。電話相談は週3回実施。今年度、シェルター活動が評価され、国際ソロプチミスト・アメリカ連盟から1万ドルの助成金を受けた。

スタッフ:

10名程度(すべて非常勤のボランティアスタッフ)。

会員:

250名。

2002年決算額:

450万円。

ホームページアドレス:

http://www.ne.jp/asahi/yamaguchi/woman/

■ 取材関連情報

取材対象者:

山口女性サポートネットワーク 代表 小柴久子さん

取材日:

9月5日

取材場所:

山口女性サポートネットワーク事務所

(2003.10.23)

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