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企業とNPO

2007年08月23日 17:18

新しい社会貢献活動へのチャレンジ(7)特定非営利活動法人たかとりコミュニティセンター

■コーナーの紹介

npowebでは、新たなコーナーとして「企業とNPO」を企画しました。特に、企業とNPOの新しい取り組みに焦点を当ててご紹介していきます。

連載企画第1弾として、マイクロソフトと市民社会創造ファンドの提携による「Microsoft giving NPO支援プログラム」を取り上げます。2002年度選考には当会事務局長の松原明も委員として関わりました。

2002年度の助成対象に選ばれた7団体を訪問し、このプログラムの助成を受け、新たな一歩を踏み出した活動の様子をご紹介します。


第七回 特定非営利活動法人たかとりコミュニティセンター

(2003年11月21日訪問)

たかとりコミュニティセンターは、1995年の阪神・淡路大震災の際の火災で焦土と化した神戸市長田区にある。震災時にボランティア活動の拠点として生まれた「鷹取救援基地」がその前身である。

センターのある地域は、外国籍の住民が全体の一割を占める。復興が進むにつれて、救援活動の拠点としての役割は、多文化共生のまちづくりをめざしていくことへと移り変わり、2000年に現在の名称となり、特定非営利活動法人格を取得した。

Microsoft giving NPO支援プログラムの助成を受けて、センターは在日外国人に対する多言語かつ多媒体(マルチメディア)による情報発信に取り組んでいる。

専務理事の日比野純一さんにお話をうかがった。

1) 大震災から生まれたもの

たかとりコミュニティセンター(以下、センター)は神戸市長田区の西の外れに位置する。この地域は、阪神・淡路大震災の際に倒壊と火災によって多くの犠牲者が出て瓦礫の山となった地域。家族を失い、友達を失い、住まいも仕事も、何もかもを失った人たちの中には、在日外国人の人もたくさんいた。

「震災直後に救援ボランティアの活動に来て驚いた。公園に集まってきた被災者の中に、多くのベトナム人や韓国人がいた。日本語がおぼつかない人たちがたくさんいた。水は、食料はどこでもらえるのか、どこへ行けばいいのか、あの人の安否は…、誰もがもっとも必要としたのが情報だった。そして、言葉は生きるための情報を得るために不可欠なものだと痛感した。集まる情報を、皆が力を合わせてそれぞれの母語に翻訳して外国人被災者に伝えていった。」と、日比野さんは当時をふりかえる。

震災時の長田区は、人口13万人の中に28カ国1万人以上の外国人住民の暮らす街だった。そういう土地ならではの救援活動が、カトリック鷹取教会敷地内につくられた「鷹取救援基地」を拠点として展開されていった。張り紙、ニュースレター、ラジオ放送など、様々な手段をつかい、様々な言語によって外国人被災者へ生きるための情報が伝えられた。

復興が進む中で、震災直後の生命に関わる情報の発信は、新しい生活をスタートさせるための情報に変わり、今では多文化が共生するまちを支える社会的基盤としての情報発信に形を変えている。

「震災で地域住民が失ったものの大きさと悲しみの深さは計り知れない。その中で、ことば、文化、国籍などが違っていても、同じ住民として手を携えて新しいまちをつくっていこうという気持ちが生まれた。」

こうして「鷹取救援基地」のミッションは、多文化共生のまちづくりとなり、2000年には特定非営利活動法人「たかとりコミュニティセンター」となった。

「たかとりコミュニティセンター」全景

2) 多文化共生をめざして

センターでは、次の7つの活動団体が、ひとつのネットワーク組織として柔軟に機能している。

  • FMわぃわぃ:8言語で地域生活情報を発信
  • リーフグリーン:高齢者、障害者の暮らしの支援
  • ツール・ド・コミュニケーション:パソコン、ビデオで地域活動支援
  • NGOベトナム in KOBE :在日ベトナム人コミュニティ
  • 多言語センターFACIL:翻訳・通訳事業のコーディネート
  • アジア女性自立プロジェクト:外国人女性の自立生活への支援
  • ワールドキッズコミュニティ:多文化な子どもたちの育成支援

キーワードは「多文化共生」。センターの活動には、地域に住むいろいろな人たちが様々な場面でボランティア参加しており、その数は500人を超えるという。国籍を超え、震災という共通体験で結ばれた地域住民のまちづくりへの思いは深い。

11月30日には、センター主催で「多文化まつり」を開催した。地元の大国公園では、ペルーの民族舞踊、韓国音楽、フラメンコなどが披露され、民族衣装の試着コーナーや屋台もあり、参加者が楽しい一日を過ごした。こうしたイベントには、センター内の各団体が、外部の団体とも協力して取り組み、多文化なまちづくりへの機運の盛り上がりにつなげている。

「ここ鷹取に限らず、国際化が進むなかで、地域社会の多民族化は時代の流れだろう。言葉の壁による情報格差が招いた震災時の混乱を二度と起こさせないためにも、生活の場での多言語化が必要。センター内の各団体のもっている情報と人材を活用して、暮らしに役立つ情報を、様々な言語で、インターネット、ラジオ放送、情報誌といった様々な媒体によって提供していくことができれば、在日外国人の生活基盤の確立につながると思っていた。それがMicrosoft giving NPO支援プログラムの助成によって実現した。」

コンテンツ製作風景

3) マルチメディアコンテンツ(多媒体情報)「東西南北」

震災後に外国人被災者へのニュースレターとして発行されていた「東西南北」は、復興が進むとともに休眠状態になっていった。それが、Microsoft giving NPO支援プログラムの助成によって復活して、今年から2ヶ月に一度発行されるようになった。

各号、「交通事故がおきたら」「日本でインターネットを使うには」「日本国籍を有しない人どうしが日本で婚姻をする場合」といった生活情報を、日本語、英語、韓国朝鮮語、ベトナム語、中国語、ポルトガル語、タガログ語、スペイン語、タイ語の9言語と「やさしいにほんご」で掲載している。この情報誌は兵庫県国際政策課にも提供され、同課が増刷して県内各所でも配布している。

「大切なのは情報の内容。県の相談窓口や在日外国人のための生活相談機関などの協力を得ながら、『東西南北』を制作している。震災という修羅場を通して在日外国人の生活を支援してきたセンターの経験を活かして、暮らしに役立つ実用的な情報を提供していきたい。翻訳は、センター内にある多言語センターFACILの協力でおこなっている。この翻訳作業が実績となって、FACILへの引き合いも来るようになった。在日外国人の就労支援にもつながりつつある。」と、日比野さんは語る。

紙媒体の情報誌として作成された「東西南北」の多言語のコンテンツは、IT(情報技術)によって姿を変え、経路を変えて多くの人たちに届けられる。

まず、センターのホームページ上にテキストと音声によって掲載される。蓄積されたコンテンツは必要に応じて引き出すことが出来るので好評だという。さらに、センター内のコミュニティ放送「FMわぃわぃ」でラジオ番組として放送されている。そしてこの音声コンテンツは、日本各地のコミュニティ放送局にも提供されていくという。

Microsoft giving NPO支援プログラムによって、センターは「東西南北」のような、インターネット上に点在している在日外国人向け生活情報を集めたポータルサイト(さまざまな情報の玄関口となるホームページ)の構築もめざしている。在日外国人が母国語で生活情報を得ようと検索すると、世界中の膨大な情報から少しずつ絞り込んで検索していくことになり、必要な情報にたどり着くのが困難なのだそうだ。

こうした不便を解消するために、センターはマイクロソフトとNPO法人「市民コンピュータコミュニケーション研究会 (JCAFE)」の技術支援を得ながら、在日外国人向けのポータルサイトを準備中だ。12月中には、まず、一覧式のサイトを開設し、その後は多言語での検索機能をもつ本格的なポータルサイトの構築をめざす。

さらに、Microsoft giving NPO支援プログラムによって、センターが取り組んできた多文化コミュニティづくりの活動を紹介するビデオも製作中。12月には上映会を開催して、その後は各地で紹介していく予定だ。

日比野さんと「東西南北」

4) 東西南北に広がる多文化共生の輪

マルティメディアコンテンツ「東西南北」の発信によって、センターの取り組みに対して、全国の自治体や団体からの注目も集まり始めている。言葉や心の壁がとりのぞかれた多文化が共生するコミュニティづくりは、文字通り東西南北にひろがりつつある。

「製作中のビデオが各地で上映されていけば、多文化共生のまちづくりに取り組んでいる団体や地域との交流にもつながるだろう。」

180万人を超える在日外国人は、神戸や東京や横浜といった外国人コミュニティ活動が活発な地域にだけ暮らしているのではない。紙媒体(情報誌)、電子媒体(ホームぺ-ジ)、電波媒体(FM放送)といった伝達手段が拡大したことで、これまで情報が届かなかった人たちにも多言語生活情報「東西南北」が届くことになった。ネットを通じて、遠隔地からのコミュニティ活動への参加の可能性も生まれた。

「孤立して暮らしている人たちが、地域を越えて生活情報や生活体験を共有していくために、ITを活用した取り組みは欠かせない。Microsoft giving NPO支援プログラムでは、資金支援だけでなく、技術支援もおこなってくれるので、いい事業ができた。多言語による生活情報の提供が軸となって、在日外国人の生活基盤が整い、各地の多文化コミュニティが活性化していくことを願っている。」と、日比野さんは語った。

多文化なセンター事務所


プロジェクト名:

多言語の生活情報の提供を軸にした多文化コミュニティのネットワークづくり

■ 団体概要

設立:

  • 1995年 鷹取救援基地として
  • 2000年 NPO法人たかとりコミュニティセンターとして

所在地:

兵庫県神戸市長田区海運町

代表者:

神田 裕

目的:

国籍や年齢、障害などによって疎外されることのない、多文化共生のまちづくり

主な事業:

センター内の下記の7つの団体が、ネットワークを組んで事業をおこなっている。

  • FMわぃわぃ:8言語で地域生活情報を発信
  • リーフグリーン:高齢者、障害者の暮らしの支援
  • ツール・ド・コミュニケーション:パソコン、ビデオで地域活動支援
  • NGOベトナム in KOBE :在日ベトナム人コミュニティ
  • 多言語センターFACIL:翻訳・通訳事業のコーディネート
  • アジア女性自立プロジェクト:外国人女性の自立生活への支援
  • ワールドキッズコミュニティ:多文化な子どもたちの育成支援

スタッフ:

正職員10名

会員:

約50名

2002年決算額:

2500万円。

ホームページアドレス:

http://www.tcc117.org/

■ 取材関連情報

取材対象者:

たかとりコミュニティセンター専務理事 日比野純一さん

取材日:

2003年11月21日

取材場所:

たかとりコミュニティセンター事務所

(2003.12.24)

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