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新!特別連載コーナー

2007年08月23日 16:01

第三回 YMCAニューヨーク

コーナーのご紹介:

 2002年5月、シーズは国際交流基金日米センターの助成を受けて米国を訪問し、米国の NPOや財団、そして企業は寄附をどのように捉えているのか、またNPOは募金のためにどのような努力をしているのかを調査してきました。

 この特別コーナーでは、10回にわたってこの調査旅行で出会ったNPOや財団の募金担当者(fundraiser)、また企業の社会貢献担当者のインタビューをご紹介します。米国ならではの考え方もありますが、日本のNPOが参考にできるところもたくさん見つかるはずです。

 この調査発表は、国際交流基金日米センターの助成事業です。


第三回 YMCAニューヨーク

(2002年5月2日訪問)

 連載第三回目は「YMCAオブ・グレーター・ニューヨーク(YMCAニューヨーク)」です。

 YMCAニューヨークは、1852年に設立された米国で2番目に古いYMCAです。設立当時は、ニューヨークに移り住んでくる若者に、安全な住居、レクレーション、社会活動などを提供する活動を行っていましたが、その後、すべての年齢層、人種、宗教、経済的背景をもつ人々に対して、奉仕活動を行うようになりました。

 2001年には、16万5千人の若者を含む35万5千人に対して奉仕活動を実施しました。一方で、YMCAのフィットネスクラブの会員も5万4千人にのぼります。2001年の収入は、約1億2700万ドル(約150億円)で、そのうちの26.6%が寄附、42.9%が会費等、残りは収益事業や政府からの委託収入等となっています。

 お話を伺ったのは、副代表で募金担当者のフレデリック・ロジャーズさん。YMCAの活動に加えて、米国における寄附のトレンドに関しても教えていただきました。

熱心にお話くださるロジャーズさん


 「ご存知のようにYMCAは歴史のある団体で、150年間活動してきました。この歴史が評価や信頼となり、YMCAの募金活動を助けているといえます。しかし、同時にこの歴史からくるイメージとも戦い続けているのです。

 YMCAという名前は知られていますし、『良い団体』だと言ってもらえますが、実際に何をしているかというと、多くの人は知らないのです。せっかく様々な分野で効果あるプログラムをやっていても、それがほとんど知られていません。

 それに、私たちのプログラムは多岐にわたっているため、それを説明すると一般の人は混乱してしまうのです。そこで、私たちはむしろ『単純化』して説明するようにしています。パンフレットを見ていただくと『子どもたちのために活動している』と書いてありますが、実はYMCAは大人向けのプログラムも持っています。しかし、あえてそのことには触れていません。パンフレットを読んだ人には、YMCAは『非営利団体であり、寄附を必要としており、そのお金は子どもたちのために使われる』程度のことを分かってもらえば良いと思っているのです。

 YMCAはキリスト教精神から始まった活動ですが、今ではすっかり宗教からは離れてしまっています。ですから、キリスト教精神にのっとっているから寄附する、という人はあまりいません。今では多様な人々を対象とした活動をしていますし、YMCAの価値観である『誠実』『思いやり』『責任』『尊敬の念』という概念は、普遍的なものです。

 さて、この20年間で慈善活動に関する考え方は急速な変化を遂げています。以前は、NPOが良い評価を得ていれば、寄附者はその団体に寄附するのは良いことだと単純に思ってくれました。そういう人は今でももちろんいますが、一方で、自分のお金がどのように使われているかに関心を持つ人たちも増えているのです。そして、実際に寄附の恩恵を受ける人たち、つまりYMCAであれば子どもたちということですが、そういう人たちと関係を持ちたい、とも考えるようになってきました。

 企業の社会貢献活動にも変化が現れてきています。企業は、私たちの団体に多額の寄附をしてくれていますが、同時に、企業にとってどのようなメリットがあるかを示すよう求めてくるようになりました。つまり、広告などを通して、良い企業であると評価して欲しいということです。こうした企業は、市民に『良い企業市民(corporate citizen)』だと認めて欲しいと願っているのです。このことから、私たちの団体への寄附者は企業が多いのですが、新聞に寄附企業のリストを掲載することもあります。

 ロジャーズさんとYMCAニューヨークのポスター。ポスターには寄附している企業のロゴが載っている。

 それから、このようなニーズに応えるもう一つの方法として『バーチャルY』(YはYMCAの意味)という、放課後に行うプログラムを開発しました。これは、ニューヨーク市の100あまりの学校で放課後に行われるプログラムですが、企業にこのプログラムのスポンサーになってもらうことにしたのです。これには、ニューヨークの大手銀行や、自動車会社が協力してくれていますし、日本の銀行にもアプローチ中です。このプログラムには『一日校長』というイベントが含まれていて、その日にはスポンサー企業も学校に来てもらうのです。そして、企業の旗を立てたり、企業の従業員にもボランティアとして参加してもらいます。つまり、寄附者を巻き込むプログラムにしたのです。寄附をした企業は、社報に『私たちの企業はYMCAニューヨークを支援しています』などと書きますが、これが従業員の労働意欲の向上にもつながるようです。

 なお、プログラムを紹介する時は地域性も大事ですから、マンハッタン地区の企業であればマンハッタンのプログラムのスポンサーになるようお願いしますし、クィーン地区の企業ならクィーンのプログラムを紹介しています。

 企業ではない個人の寄附者についても、プログラムが身近に感じるような工夫をしています。YMCAニューヨーク全体への一般寄附ではなく、プログラムを特定して、そこへの寄附を募集しています。例えば、子どものサマーキャンプのために寄附をしてくれた人には、参加した子どもたちが『馬の乗り方を覚えた』とか『アーチェリーをした』とか、いろいろと学んだことを書いたお礼の手紙を送付するようにもしています。

 よく美術館であればよく『美術館友の会』というような会を作りますが、YMCAニューヨークも『フレンズ・クラブ』『ドナー・クラブ』という、支援者の会を作っています。そして、ニューヨーク市長を招いた夕食会に参加できるなどの特典もあります。

 つまり、寄附額が大きいと、その分だけ多くの何かを寄附者に返すような工夫をしているのです。

 それから、寄附者とは日頃からの接触を欠かさないように努力しています。これを『スチュワードシップ』と呼んでいます。一度寄附をもらったら、手間をかけて数ヶ月ごとに手紙を書いたり、電話をしたり、ニュースレターを送って、こういう風にお金は使われました、と知らせるのです。こうした継続した接触のために、職員配置の再構成も行っています。このスチュワードシップがうまくいけば、寄附者は寄附を継続してくれますし、額も増えます。でも、もしうまくいかないと寄附を失うことになります。

 ここ20年間で慈善活動に関する考え方が変わってきたと先に言いましたが、この変化は特にこの10年間で加速されていると思います。そのひとつの理由は、ベビーブーマーが有力な寄附世代となったことがあげられます。彼らが大人になって、経済や人生を別の価値観で見るようになったのです。

 100年前のお金持ちなら、寄附とする時の動機は『奉仕』とか『困っている人をなんとか助けたい』というものだったでしょう。しかし、今は物質的な社会になったからか、寄附にも消費者的な考え方をあてはめるようになってきました。つまり『奉仕』とか『自己犠牲』ではなく、寄附をしたら何か返ってくるものを求めるようになってきたのです。お金を出して何かを手に入れるという、消費意識のようなものです。

 例えば、シリコンバレーで大金持ちになった起業家と比較すると分かりやすいでしょう。彼らは短時間で大金を手にいれようとしていますが、その分リスクも覚悟していますから、きちんと目に見える結果を求めるのです。

 マイクロソフト社のビル・ゲイツは良い例です。彼は、世界の人口問題に関心があって、人口抑制プログラムのために多額の寄附をしました。しかし、彼は『寄附』しているというよりも、人口抑制という結果を『買っている』のです。世界の人口問題の改善というプログラムを買っている訳です。これは慈善活動というよりも消費者的な意識なのです。

 YMCAニューヨークへの寄附者も変わってきています。ある企業は、長年寄附をしてくれていますが、以前は私たちへの寄附はその企業の予算に組み込まれていたものです。そして、そのことに従業員の誰も疑問を持たなかったのです。しかし、今ではどこでどのようなプログラムが行われたのかを明確に知りたがっています。

 ですから、『私たちの団体はこれができる』『私たちの団体はこうして人々を助けている』とはっきり示し、『これだけのことができるから、私たちに寄附をください』と訴える必要がある訳です。消費者的な志向への変革といって良いでしょう。私個人は、少し古いタイプの『良いことだから寄附する』とか、『年に一回の決算報告で満足する』といったフィランソロピーが良いとは思うが、これはもう単なる理想です。それに、現在の変化は必ずしも悪いものではないと思っています。」


 YMCAではヘルスクラブ(フィットネスクラブ)も運営していますが、インタビューで「一般企業と競合するが、問題はないのか」と質問してみました。その時の回答は、次のようなものでした。

 「一般市民は、YMCAがコミュニティに奉仕しており、ヘルスクラブと違うということを知っています。それに、YMCAはヘルスクラブに参入したのではなく、『発明(invent)』してきたのです。バスケットボールも、バレーボールも、ボディビルディングの技術も、YMCAが発明したのです。Yは、より良い生活の一部としてフィットネスを取り入れ、コミュニティの子どもたちを支援しているのです。」

 バスケットボールやバレーボール、そしてボディビルディングが、YMCAから生まれたものとは、この時まで知りませんでした。

 YMCAニューヨークのホームページのアドレスは、http://www.ymcanyc.org/ygny/ です。

(2003.06.04)

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