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NPOの信頼性

2007年08月23日 17:43

訪米調査の事例から(1)アソシエーション・オブ・ファンドレイジング・プロフェッショナルズ(AFP)

2005年9月5日から17日まで、シーズでは国際交流基金日米センターの助成を受けて、米国のワシントンD.C.、ボルチモア、ニューヨーク、シカゴ、インディアナポリスの5都市を訪問しました。訪問団は、シーズ事務局長・松原明、茨城NPOセンターコモンズ事務局長の横田能洋、グローバル・リンクス・イニシャティブ事務局長の李凡、シーズ・プログラムディレクターの轟木洋子の4名(敬称略)で構成。NPOの信頼性に係る日米の現状、また信頼性向上のための取組みなどについて、23の団体を訪問し、米国側の専門家たちと意見交換をしてきました。

そのなかで、特に印象に残り、日本の皆さんにも参考になると思われる15の記録をご紹介します。

※ご紹介する方々の肩書きや団体の活動などは、訪問当時のものであり、その後、変わっている可能性があります。ご了承ください。また、文責はシーズ事務局にあります。

第一回 アソシエーション・オブ・ファンドレイジング・プロフェッショナルズ(AFP)

CEO ポーレット・マエハラ氏
2005年9月6日(火)訪問

アソシエーション・オブ・ファンドレイジング・プロフェッショナルズ(AFP)は1960年設立で、50年近い歴史を持つ。旧称は、National Society of Fundraising Executives。世界に171もの支部を持ち、27000人もの会員(寄附などの資金調達の専門家=ファンドレイザー)がいる。

募金活動などの資金調達過程で起こる不正を防止し、寄附者の信頼を確保するための基準づくりを促進している。会員であるファンドレイザーは資金調達にあたっては、強制的に倫理規約(Code of Ethical Principles and Standards of Professional Practice)に従わなければならない。寄附者の権利宣言(Donor Bill of Rights)作りにも貢献した。

ファンドレイザーの研修、政策提言などを通して、フィランソロピーを促進しようとしている。その他の事業としては、毎年の国際会議の開催、情報提供、リソースセンターの運営、AFP賞授与など。


訪問団:

 日本にはまだファンドレイザー(NPOの資金調達の専門家)という言葉はなじみがないが、米国では多くのファンドレイザーがプロとして活躍していることを知っている。AFPは、そうしたプロの資金調達の専門家が会員と聞いている。日本では、NPOの信頼性を危うくするような事件も起こっているが、AFPは信頼性確保のためにどのようなことに取組んでいるのか。

マエハラ氏:

 米国の非営利セクターは膨大。100万以上存在する。AFPの会員は、こうした団体で資金調達をしているプロのファンドレイザーたち。現在、会員数は約2万7千人。

米国にも資金調達に関連した問題は存在する。募金に関するスキャンダルではないが、米国最大の共同募金団体であるユナイテッド・ウェイの代表が、かなり高額の報酬を受け、贅沢三昧の暮らしをしているということが問題になったこともある。

AFPにおける、資金調達の際の信頼性を確保するための取組みの中心は、「寄附者の権利章典(ドナー・ビル・オブ・ライツ)」と呼ばれるもの。つまり、寄附を求める団体側自身が「寄附者の権利を私たちはこのように守ります」という誓いのようなもの。AFPの会員は、この「寄附者の権利章典」に毎年署名をしなければならない。会員は、寄附を募る時には、この寄附者の権利章典を示して、寄附者の権利を伝える。募金をする団体の倫理、原理原則を示したものでもある。

こういうものを作れば、全ての不正が起きなくなるという保証はできないが、良い原理原則だと考える。10の項目について書いてあるが、そのうち9つは資金調達に関係している。

過去には、寄附を集めるときに説明されたお金の使途と、実際の使途が異なっていたということがあった。9.11同時多発テロの時、米国赤十字は被害者のために使うといって募金活動をしたが、実際にはそれ以外のことにも使っていて信頼が失墜したことがある。

訪問団:

 日本でも、神戸で起こった震災の時に似たような問題があった。

マエハラ氏:

 こういうことは疑問視されて当然のことだ。私たちが会員のファンドレイザーに言っているのは、使途を明確にして集めた寄附については、そのために使わないといけないし、もし使途を変える必要があるのなら、寄附者の許可を得なければならない、ということ。ファンドレイザーには、少なくとも一年に一回は、どのようにお金を使ったのかという報告を寄附者にするようにと言っている。

しかし、さきほど言ったようなスキャンダルはあったが、これらは例外であり、米国では概ねファンドレイズ(資金調達)はうまくいっていると思う。

訪問団:

 「寄附者の権利章典(ドナー・ビル・オブ・ライツ)」は、具体的にはどのように寄附者に普及させているのか。

マエハラ氏:

 私たちAFPの会員たちは、特定の団体のためにファンドレイズをしているが、そういう団体のホームページにこの権利章典を掲げたり、寄附者へ送る礼状に同封したりしている。さまざまな使われ方がある。

訪問団:

 では、この「寄附者の権利章典(ドナー・ビル・オブ・ライツ)」をもらった寄附者から、「この団体は実際には権利章典にうたわれている寄附者の権利を守っていない」というクレームがくることはないのか。

マエハラ氏:

 ある。もちろん、私たちは権利章典にうたっていることをちゃんと履行するように求めている。しかし、強制力はない。だから、そういうクレームの電話を受けた時には、私自身がその団体に直接電話をして、その苦情内容を伝えている。私から直接電話がいくと、ほとんどの場合には効果がある。団体側は、しばしば自分たちが権利章典を履行していなかったということに気づいていないこともある。

訪問団:

 AFPの基準を満たしていない場合には、除名をすることもあるのか。

マエハラ氏:

 ある。罰則規定もある。懲戒の手紙を送ることもあれば、除名となることもある。時には、問題を起こした個人名を公開することある。法曹界や医師会と同じような規定である。

訪問団:

 どれくらいの頻度か。

マエハラ氏:

 一年に15~20件のケースがある。除名は過去5年間に7,8人だった。数が少ないと思うかもしれないが、倫理規定やその適用についての問い合わせは何百と受けている。倫理違反の苦情の連絡を受けて、それを当該団体に伝えるのは、なかなか大変である。だから、会員向けにきちんとした研修・啓蒙活動を実施し、それによって対処していこうとしている。

訪問団:

 いくつか、苦情の例を聞かせてもらえないだろうか。

マエハラ氏:

 たとえば、もう30年前に、寄附者の名前を刻むということを約束して図書館を寄贈したが、その図書館が取り壊されることになったという苦情もあった。シカゴ大学では、4、50年前も前に、お金持ちのマコーミック家が連邦政府の職員を育成するための基金を大学に寄附し、その後健全に運営されていたが、大学側は今はもう不要になったと言っており、マコーミック家が寄附金の払い戻しを請求している、というケースもある。他には、目的外の寄附の使用や、利害の対立など。ファンドレイザーの報酬に関する問い合わせもある。

訪問団:

 米国には、ファンドレイザーはどのくらいいるのか。

マエハラ氏:

 推定だが、25万くらいだろう。ただし、小さなNPOでは、ファンドレイズばかりをやっている訳ではなく、総務をやったり、窓拭きをやっているということもあるだろう。こういう人も入れての数字。AFPの会員は2万7千まので、だいたい10分の1。しかし、会員全員が倫理規定や寄附者の権利章典を守れば、かなりの牽引力になる。

訪問団:

 政府の役割についても伺いたい。多くの州では、ファンドレイズに関する規定ができていて、州政府に登録しなければならないと聞いている。政府のこうした規制をどう思うか。

マエハラ氏:

 悪いことではない。政府がファンドレイズや団体の監督をすること自体は悪くない。問題は、米国には50もの州があり、それぞれの州で規制内容や手続きが異なること。日本では反面教師として、規制をつくるなら統一した一つのルールを作るべきだろう。

訪問団:

 日本では、2004年に大きな台風による被害などがあり、それに便乗した偽募金が現れて問題になった。一般市民は「政府は何をやっているのか」「NPOの連合体組織は何をしているのか」という声があがった。こういう時、AFPならどう答えるか。

マエハラ氏:

 米国は民主主義の国で、憲法に言論の自由がうたわれているので、街頭で募金活動をする人が現れて当然と考える。寄附者の責任で、それが偽か本物かをみやぶるべきだという考え方が一般的だ。一般市民が、政府に対して、そうした募金活動を取り締まって欲しいとは考えないだろう。米国人が「これはどうなのか」と疑問を持った時には、私たちAFPや、その他のNPOの連合組織であるインデペンデント・セクターや、ベター・ビジネス・ビューローなどに問い合わせて、情報提供してもらうというのが対応方法だろう。なお、私たちAFPでは、寄附者向けの「ワイズ・ギビング・チップ(賢い寄附のためのヒント)」という資料も発行している。

訪問団:

 しかし、今もハリケーン・カトリーナの災害が起こったばかりだが、市民はどこに寄附をすれば良いのか分からないのではないか。

マエハラ氏:

 寄附というのは、とても個人的な選択である。赤十字のような、よく知られた大きな団体に寄附をしたいと思う人もいるし、そうではないもっと小さな団体で食糧や仮住いの提供などをしているところに寄附したいと思う人もいる。知っている団体とか、より親しみを持っている団体に寄附することが多い。どこに寄附するかは、寄附者がそれぞれ自由に決めるものだ。

小さなあまり知られていない団体の場合は特に、透明性を上げ、ホームページに財務諸表も公開し、どのようにお金を使っているかを明らかにするようにと伝えている。寄附した人が安心し、その安心を背景にまた寄附をしてくれるように。

訪問団:

 米国では、学校をとおした寄附が活発だし、寄附者教育が学校でも行われていると聞いたことがある。

マエハラ氏:

 ただ、2、30年前から比較すると少なくなってきている。以前は、小児麻痺のためのマーチ・オブ・ダイムと呼ばれる大きな募金キャンペーンが学校でもあった。子どもたちが家から10セントコイン(ダイム)を集めてきて寄附するものだった。しかし、募金活動のために勉強の時間が少なくなっているのではないかとして、これを制限する動きがある。ユニセフ募金や、ガールスカウトがクッキーを売ったり、学校で使うもののための募金活動などはまだあるが、以前よりは少ない。しかし、私たちは若い人たちがフィランソロピー教育を受ける重要性を認識している。若い時からこうした活動をしていると、大人になっても寄附をする習慣を身につけるものだ。だから、一方ではこういう子ども向けのフィランソロピー教育を実施しようとする新しい動きもある。


AFPは、50年近い歴史あるしっかりとした団体と聞いて緊張して伺ったが、マエハラ氏は笑顔のステキな女性だった。日本姓を継承されていることもあり、日本への親近感も持たれているようだった。ファンドレイザーは、日本にはまだ馴染みが薄い専門職だが、今後NPOが発展するにつれて、日本でも知識と経験、技術を持ったプロが生まれてくることだろう。日本にもAFPの支部ができる日が近いか?

2006.11.07

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