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NPOの信頼性

2007年08月23日 17:56

訪米調査の事例から(14)ドナーズ・フォーラム・オブ・シカゴ

2005年9月5日から17日まで、シーズでは国際交流基金日米センターの助成を受けて、米国のワシントンD.C.、ボルチモア、ニューヨーク、シカゴ、インディアナポリスの5都市を訪問しました。訪問団は、シーズ事務局長・松原明、茨城NPOセンターコモンズ事務局長の横田能洋、グローバル・リンクス・イニシャティブ事務局長の李凡、シーズ・プログラムディレクターの轟木洋子の4名(敬称略)で構成。NPOの信頼性に係る日米の現状、また信頼性向上のための取組みなどについて、23の団体を訪問し、米国側の専門家たちと意見交換をしてきました。

そのなかで、特に印象に残り、日本の皆さんにも参考になると思われる15の記録をご紹介します。

※ご紹介する方々の肩書きや団体の活動などは、訪問当時のものであり、その後、変わっている可能性があります。ご了承ください。また、文責はシーズ事務局にあります。

第十四回 ドナーズ・フォーラム・オブ・シカゴ

公共政策部長 キャサリン・キャラベッタ氏
2005年9月15日(木)訪問

1974年設立。フィランソロピー促進を目的とするシカゴ地域を中心としたイリノイ州の助成財団、NPOの連合体組織。年間100件以上のネットワークイベントやトレーニング、専門能力開発ワークショップなどを開催している。調査や資料センター、イベントなどを通して、NPO、助成財団、メディア、研究者などにフィランソロピーの情報を提供している。また、政策提言活動、その他の特別プロジェクトを通じてNPOとその他のセクターとの情報交換の場も提供している。


訪問団:

 ドナーズ・フォーラム・オブ・シカゴの事業について、ご説明いただきたい。

キャラベッタ氏:

 私たちはイリノイ州ベースの1300の助成財団やNPOなどによって構成されている団体。助成財団を会員、NPOをパートナーと呼んでいる。こうした助成財団やNPOにさまざまな資源を提供することを目的としている。たとえば、NPOに対しては資金調達のためのワークショップ、助成財団向けには目的達成のための効果的な助成のためのワークショップなどを開催している。最近では、マネジメントや事業に関するワークショップも増やしている。というのは、こうしたセクターに対する信頼性がやや薄くなり、厳しい目で見られることもあるため、その運営にも関心が高まっているから。

また、さまざまな調査報告書も発行しており、NPOや助成財団、あるいは主要監督官庁や報道機関、そして一般市民に、重要かつ信頼できる情報を提供している。私自身は、公共政策担当部長ということで、NPOや財団を代表して、州議会や州の司法長官室、また連邦議会に対していろいろな提言活動をしている。

これまで伺った話では、日本が直面しているNPOの信頼性に関する問題が、米国で起きている問題と非常に似ているという感想を持った。

訪問団:

 私たちもそう思っている。

このドナーズ・フォーラム・オブ・シカゴでは、そのための独自の取組みをやってこられたと聞いているが。

キャラベッタ氏:

 米国では、メディアがNPOの不祥事をスキャンダルとして報じたために、連邦議会や一部の州に不必要な規制をかけてこようとする動きが出てきた。そこで昨年、私たち自らで信頼性を高めるための取組みを始めた。これを「Preserving the Public Trust Initiative」と呼んでいる。きっかけは、法律が改正されたりする前に、自ら自分たちで取り組もうという声が会員たちの中から出てきたため。

この取組みは、イリノイ州のフィランソロピー・セクターから29人が集まってタスクフォースを作るところから始めた。このタスクフォースのメンバーは、NPOの代表や助成財団関係者、プロのアドバイザー、会計士や弁護士など。NPOや助成財団は、さまざまな規模のところが入っている。

このタスクフォースがやった仕事のひとつが、「イリノイ州、非営利団体の原則とベスト・プラクティス(http://www.donorsforum.org/publictrust/principles.html)」を作ること。これを作り利用してもらうことで、NPOがしっかりとしたガバナンスをできるようにしようというもの。特に、議会や報道関係が批判的な目で見ているような分野をしっかりとカバーしている。

この文書の草案ができた段階で、州全体のNPOや助成財団のリーダーたちと会合を開いてフィードバックをもらった。NPOと助成財団とは別々に会合を持った。というのは、NPOからはできるだけ正直に問題について発言して欲しかったため。お金を出す側の助成財団がいっしょの場にいたら言えないこともあるだろうと考えた。この会合では、第一に、非現実的だと思うことは何か、欠落していることは何か、すでにやっていることは何かなどについてのフィードバックをもらった。第二に、どうやったらこれに達成することができるかについて話を聞いた。

こういう風に何百というNPOなどからフィードバックをもらって2004年末に出来上がり、最終的に印刷されたのは2005年のはじめ。最初の数ヶ月だけで1万4千部をイリノイ州で配布した。

訪問団:

 反応はどうか。

キャラベッタ氏:

 よく受け入れられている。最初にNPO側が心配していたのは、タスクフォースがチェックリストのようなものを作って、それで自分たちを評価せよというのではないかということだった。しかし、そういうことをやるのは非現実的。というのは、この「イリノイ州、非営利団体の原則とベスト・プラクティス」の一部であっても、それぞれの団体の目的や事業、能力に応じて全然違う意味をもつから。

「原則」と「ベスト・プラクティス」というのは異なっていて、原則というのはすべての団体がそれを導入するように努力すべきという事柄。ベスト・プラクティスというのは、良い事例であり、原則を実行するためにこういう事例、こういうステップを踏んでもいい、という提案。必ずしも、すべての組織がその事例どおりにやるべきだということではない。不可能な場合もある。

とてもよかったことは、この文書が、州議会、連邦議会、州の司法長官室と話を進める時の良いツールとなったこと。州の司法長官室は、自らのホームページにこの文書を紹介してくれた。新設のNPOには、司法長官室がこの文書を渡してくれている。これがとてもよかった。NPO側は、司法長官室といっしょにやっているという気持ちになれたし、司法長官室も自分たちはNPOを監督しており、そしてNPOを擁護しているという意識になれた。

訪問団:

 しかし、「イリノイ州、非営利団体の原則とベスト・プラクティス」は文書であって、拘束力もないし、読むだけで終わってしまうのでは。

キャラベッタ氏:

 私たちは、その後も州のあちこちでフィードバックをもらったり、調査を行って、これを読むだけではなく、どのように実施していったらいいかというツールをつっている。今年の夏の初めには、NPOと助成財団とで別個に会合をもって、この文書の効果的な使い方に関する話し合いをした。

訪問団:

 しかし、もしこの文書どおりに実施すれば「認定」をもらえるなどの仕組みであれば、しっかりとやろうという動機付けになると思われるが、そういう仕組みではないので、どうやってNPOに動機付けするのか。

キャラベッタ氏:

 難しい問題だが、NPOが寄附者のところに行って「私たちはこういう取組みをやっている。こういった原則を守ろうと努力している」というと、寄附の提供先として一つ格が上がったり、あるいは事業の効率がよくなるだろうという議論をしている。また、助成金を出す側は、NPOに「あなたの団体は、この原則に関してどういう取組みをしているか」と聞くこともできるだろう。

訪問団:

 たとえば、メリーランド・ノンプロフィッツでは「スタンダード・フォー・エクセレンス」というNPOの倫理基準と認定制度を作り、これを他の州にも広げていこうとしている。ベター・ビジネス・ビューロー(BBB)も基準を作って認定の仕組みを持っている。なぜ、そういうものを取り入れずに独自で原則などを作ったのか。

キャラベッタ氏:

 イリノイ州のNPOと議論をしていて分かったことは、イリノイ州で自分たちの手で基準を作った方が、ワシントンDCやメリーランドで作られた基準を取り入れるよりも、NPO側がポジティブに取り組んでくれるだろうということだった。スタンダード・フォー・エクセレンスもBBBの基準も良いものだと思うが、イリノイ州のNPOが意見を出し合って作ったものの方が、州議会に対しても強いメッセージを伝えることができる。

スタンダード・フォー・エクセレンスやBBBと私たちとの大きな違いは、私たちは認定の仕組みを入れていないということ。というのは、全ての組織がきっちりと適用できる基準を設けたり、正確に良い組織か悪い組織かを測定することは不可能だと考えるから。ある一時は良かったとしても、職員も入れ替われば財政状況も変わるので、長い目でみるとそれほど有意義ではないように思える。また、警察機能はないわけなので、モニターできない。だから、私たちの基準は、あくまでのNPOのスタッフと理事が自主的に取り組むものであって、こちらから課すものであってはならないという考え方で作った。

訪問団:

 他にはどのような取組みをしているのか。

キャラベッタ氏:

 現在、NPOがIRS(内国歳入庁、日本の国税庁にあたる)に提出している確定申告書のフォームを変えるべきだという話もしている。現在、各NPOの確定申告書はガイドスターというNPOがIRSと協力してホームページに掲載しているが、一般市民がみてもこれをどう読んだらいいか分からない。一方で、イリノイ州では独自に、NPOの財務諸表を集めたデータベースを作って公開しようとしている。

こういうことを背景に、私たちは1ページくらいの印刷物をつくって、一般市民がそういう書類をどう読んで、どうやったら健全な組織か否かを判断できるかを伝えようと考えている。

訪問団:

 そのガイドスターだが、NPOの確定申告書を公開しても、おっしゃるように一般の人は見ても分からない。実際に現在、一般市民がNPOを判断する材料として役立っているのだろうか。

キャラベッタ氏:

 一般市民は、ガイドスターの存在も知らないと思う。普通は、NPOや財団が見ているのではないか。他のNPOではどのくらい職員が給与をもらっているかなどだ。一般市民で、確定申告書のフォームの読み方を知っている人はいないだろう。しかし、州レベルでそういったデータベースを作って公開したら、一般市民も少しは見るようになると思う。

訪問団:

 では、NPOを格付けしているNPOもあるが、そういうウォッチドッグのような活動はどう思うか。

キャラベッタ氏:

 大事な役割を果たしていると思う。しかし、財政的なこと、たとえば管理部門にどのくらいのコストをかけているかということ以外には、それほど正確には測れないと思っている。ナショナル・カウンシル・オブ・ノンプロフィット・アソシエーションズという団体は、そういう格付け機関を格付けする(Rating the Raters)ということをやっているが、1,2,3と順位をつけるのではなく、格付け機関ごとの特徴や善し悪しが書いている。

格付け機関の問題は、不当に悪い格付けをされたNPOが是正を求めても是正してくれないこと。多くのNPOが不快な思いをしている。それなのに、研究によれば、格付け機関自身も基準を満たしていなくて、自らを採点したら合格点がもらえないところがある。

訪問団:

 しかし、NPOが是正を求めるというのは、一定の影響力を持っている証拠でもあると思うが。

キャラベッタ氏:

 あると思う。カトリーナのような災害が起これば、市民も調べたりするし、政府がそういうものを見て寄附しなさいということもあるから。私は、格付け機関は一定の重要な機能を果たしていると思うが、もう少し運営や格付けの仕方に一貫性を持たせる必要があると思っている。


キャラベッタ氏によれば、ドナーズ・フォーラム・オブ・シカゴのような州レベルのNPOの連合体組織は、だいたい全米に20くらいあるとのこと。活発なのは、イリノイの他は、ミネソタ、ミシガン、カリフォルニア、メリーランド。ペンシルバニアやルイジアナは、メリーランドを参考にしているとの話だった。横の連携の努力もしているとのこと。規模が異なるとはいえ、日本でも、都道府県単位のNPO支援組織はあり、似ている部分もあるなと感じた次第。

2007.02.15

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