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2004年の報告

2007年08月29日 14:54

釧路市民活動センターオープン記念講演

 釧路市が市民団体の協議会に運営を委託する、いわゆる「官設民営」型のサポートセンター「釧路市民活動センター」が、8月29日にオープンした。

 同センターは、「くしろ市民活動センター運営協議会『わっと』」が運営。センターの愛称も「わっと」とした。センターは、釧路市内の繁華街の一角に設置され、観光客や買い物客も気軽に立ち寄れる雰囲気。開館時間も午前10時から午後11時まで(日曜日は午後7時まで)と、市民の利便性が重視されている。

 オープンを記念して開かれたセレモニーでは、午前にはテープカットと記念式典を、午後には、シーズの松原明事務局長による、記念講演会が開催された。

 オープンに際して普久原センター長は、「市民のニーズに応え、市民とともにつくっていくセンターを目指す」と抱負を語った。

 記念講演会では、シーズの松原が、「市民活動とは何か~誰でもできるまちづくり」と題して、市民活動の意義や具体的なNPOの取組などを紹介した。以下、その概要を報告する。


記念講演

 今日は、市民活動とは何か、というお話をさせていただく。

 市民活動とは何か、というと、よく教科書などでは「行政にもできない、企業にもできないところを埋める活動」であると書かれている。「行政の手の届かないところを埋め、こまめに対応していく活動」であるというのも、よく聞く話である。

 本当にそうだろうか。実際の市民活動というのは、もっとユニークで新しく、事業性のある活動なのだ。

■ 多様化するニーズに応えるNPO

 たとえば、大阪の医療関係のNPO。

 ある人が、1980年代頃から問題になってきた医療ミスの問題に対して、どうにかしたいと考えたことからこのNPOの活動は始まった。

 もちろん、医療ミスがそれまでなかったかというとそうではなく、それが顕在化しなかっただけ。裁判を起こすにしても、なかなか勝てない現実があった。

 その団体はいろいろ調査をしていくなかで、医者にも患者にも問題があることが分かってきた。そこで、弁護士や医者、病院の事務長や看護士のネットワークをつくり、医療ミスの相談にのる事業を始めた。また、相談だけでなく、医者と一般の人が一緒になってディスカッションをするような「患者塾」という事業も開始した。そうすると、患者側はどうやって病院や医者とつきあっていったらいいかわかってくるし、医者も患者が何を考えているのかが分かっていく。

 また、その発展形態として「病院探検隊」という事業も開始した。これは、病院のことを知りたい人が病院に出向き、患者の目からみた病院の対応の悪いところなどをチェックしていくもの。これにより、探検隊からの意見をといりれた病院のサービスが向上していく、という成果が生まれている。

 今までの日本社会のあり方というのは、福祉や教育といった社会サービスは、基本的には行政が提供するものだった。

 しかし、今、社会のなかで起こってきている問題は、行政がしっかりしていたら起こらなかった問題か、というと必ずしもそうではない。医療ミスにしても、これは病院と個人の間の問題であり、市民がどう医者とつきあっていくか、という問題なのである。

 今、社会サービスのあり方は大きく変わってきている。様々に起こってきている問題は、市民間で起こっている。そして、民間と民間の間で公的な領域がでてきたことが大きな特徴なのである。

 たとえば、障害者が街にでていこうとしても、駅には階段ばかり。そうすると、エレベーターを設置すればすべてが解決するかというとそうではない。電車にのるときは、周りに助けを求めることも必要になる。そんなとき、周りの人が手伝ってくれない、といった体験が重なると、どうしても障害を持っている人はひきこもりがちになってしまう。果たして、手伝わない人に「手伝え」と強制することができるだろうか。

 NPOでは、このような場合、どんな風に頼みなおしたらいいのか、また、どう、自分がその状況を乗り越えていくのか、といった一種の技術を勉強会などで学びあって、障害を持つ人が街にでていくことを後押ししている。

 行政のサービスにも問題があるが、多くは市民間でおきている問題なのだ。行政が関与できる領域はむしろ減ってきているのである。ゴミの問題、医療過誤の問題、まちづくりの問題など、市民間で様々な問題が起こってきていて、これらに対して、行政は強権的に何かできる関係ではない。

 行政の原則は公平中立。行政には原理的にできないことがいっぱいある。

 東京の「ねこだすけ」という団体は、ネコを好きな人はもちろんのこと、ネコを嫌いな人も巻き込んで寄附を集め、そのお金で増え続けるネコに避妊手術を施している。手術のすんだネコを「地域ネコ」に認定して、そのネコを地域で最後まで面倒をみる、という取組みを行っている。

 これを行政が行ったらどうなるか? もし、問題が起こったら、行政の責任を追求するだけに終わってしまうだろう。お互い知っている人が取り組んでいるから、お互い支えあうことができるのである。

 今までは、社会で困ったことがでてきたら、行政になんとかしろ、といってきた。

 しかし、社会のニーズが多様化しており、その多くは、行政がやってはいけないことなのである。

 たとえば、関西で点字図書館を開いているNPOがある。

 この団体はよく言われるそうである。「行政が主催している点字図書館があるじゃないか」と。しかし、この点字図書館では提供しているものがちがう。この団体はまず、利用者からアンケートをとるのだそうだ。そして、ニーズの高かったものを提供する。すると、要望の多いのは、「旅の本」、「NHKテキスト」、「ミステリー、サスペンス」、「いわゆるピンク本」といった順になるのだそうだ。

 このような本の提供は、行政ではできないし、やる必要もない。

 行政は公平中立でなければならないから、それは仕方のないことなのだ。

 これを世間に認識させたのは、1995年1月におこった阪神大震災だった。

 行政はこのとき、炊き出し、安否情報の提供、仮設トイレの設置などを行った。

 しかし、炊き出しの光景をテレビでみたあるNPOは、アトピーの子どもが食べるものがないと行動を起こした。

 外国人のサポートをしていた団体は、生活支援情報を十数ヶ国語に訳して提供し続けた。

 動物愛護の団体は、ペットの保護活動を行った。ペットといえども家族の一員。地震により多くを失った飼い主の元に返すことで、大変喜ばれたという。

 今、市民活動が注目されているのはなぜか。それは、まちのあり方、市民のあり方が多様になってきたことと関係する。行政がペットだけを救出したら、みんな怒りだすだろう。その是非はともかくとして、そういうものである。しかし、そのことで救われた人が大勢いたという事実を見逃してはならない。

 高度成長期はみんな同じものを望んでいたが、今は、それぞれ生き方もちがってきており、少数者の集まりがこの社会といっていい。みんながマイノリティになっているのだ。

 そういう時代に、行政のできることは少なくなってきている。

 まちづくりは箱物をつくればよかったハード重視の時代とはちがう。ソフト、つまり、市民がそれぞれのニーズでつながっていく、ということが大事になってくる。豊かに暮らせるようにするにはどうしたらいいかというと、そんな市民のニーズに対応していくNPOをたくさん持つことが、まちを豊かにし、まちを強くしていくのである。

■ 人を巻き込んでいくのがNPOの醍醐味

 市民活動は、企業とも行政ともちがう。

 例えば企業は、介護が必要な人がいれば、介護サービスを提供する。

 行政はそれをできるように、社会システムを整える。

 企業は、社会を生産する人と消費する人にはっきりと分ける。

 しかし、NPOは、社会的な課題自体をどうしたらいいのか、という点から出発する。

 企業が医療問題に取り組むとしたら、相談を有料でやるだろう。しかし、それだけでは、医療過誤を受ける人は出続けるし、この問題はなくならない。

 NPOは、医療ミスをだすような仕組み、患者自身、医者自身の考え方を変えていく。

 ある団体は、子どもの悩み相談をやっているうちに、親にも問題があることに気づき、親を対象としたセミナーや居場所づくり、といった事業を展開していく。

 これが行政だったらどうなるだろうか。子どもなら子どものことだけ、親の問題は管轄外ではなかっただろうか。

 市民活動とは、サービスを提供するだけでなく、それに関わっている人を巻き込んでいくところに大きな特徴がある。

 市民活動には、サービスを提供する人と受ける人を分けるという考え方はない。どう参加してもらえるかを考えるのがNPO。社会的な課題に関係し、参加させていく仕組みがNPOであるといってもいい。

 まちは、多様な人から構成されている。お互いが関心のあるテーマで少しずつつながっていくのがまちづくりといっていいし、そのつながりが多ければ多いほど、豊かなまちになっていく。

 もちろん、これまでの地域団体、地縁団体はなくなることはないし、まちづくりの大きな部分を今もそのような団体が担っているのも事実である。しかし、たとえば虐待の問題は、周りの人に知られたくないといった動機から顕在化しないことも多い。

 地域団体と同時に、市民活動団体とも市民がつながっていくことが、まちを豊かにしていく。市民活動というと敷居が高いかもしれないが、いろんな参加の仕方がある。ボランティアでも、寄附でもいい。自分なりの関わり方で、参加していくと、大変なこともあるが、大きな喜びを得ることもできる。

 これからのまちづくりは、市民活動の存在なしには考えられない時代がきている。最初はどんな活動もひとりの発想から生まれている。みなさんも何かを手がかりにしてそんな活動に参加していっていただければと思っている。

 その後、以下のような質疑応答が行われた。

Q.今の段階でのNPO法と認定NPO法人制度の到達点と今後の課題は。

(松原)

 NPO法人制度というのは、「自分たちでしたいことが自由にできる」制度といっていい。これまでの制度を考えるとその意義がよく分かる。

 これまでは、行政が法人格を与える許認可という仕組みで、行政の考える「公益」を実現する団体にしか法人格を与えられなかった。例えば、行政の考える基準に在宅介護というサービスはなく、そのような取組みをしたい団体には法人格を与えられなかったこともあった。

 NPOのいいところは、新しい社会サービスをどんどん創造していくことにある。たとえば、オリンピック。これも、最初はアマチュアスポーツを振興したいという非営利の団体によるイベントだったわけである。パラリンピックもそうだ。

 いい社会サービスを生み出していくことによって、社会全体を変えていく。そういうことが可能になるわけで、このようなことが自由にできるようになったことが、NPO法の最大の意義であり、到達点であると考える。

 しかし、そのような団体を財源的に支える仕組みができていないのが課題。これは、認定NPO法人制度の意義と課題でもある。市民間での寄附を促す制度としての認定NPO法人制度の意義は大きいが、その認定を受けるためのハードルが高く、多くのNPOはその恩恵を受けられない状況である。このような状況を改善していくことが求められている。

Q.市民活動団体にとって、NP0法をどう活用するといいか、その活用の仕方を。

(松原)

 NPO法は、「無報酬」という概念に対して、「非営利」という概念を導入したことに意味がある。

 よく間違われるのだが、NPOとボランティアはちがう。ボランティアは無報酬が原則だが、NPOは、個人には分配しないシステムのこと。団体を運営するには、事務所を借りたり、電話をひいたり、イベントをするにしても会場を借りたり、海外から当事者を招聘したりと、コストがかかる。活動を発展させていくためには稼いでいかなければならない。団体としては稼ぐが個人には分配しないことは矛盾することではない。

 企業は株主のお金儲けのための道具といえるが、NPOは利益がでたら次の活動に投資する。ここが大きな違いだ。

 NPO法は、「非営利」団体である市民団体が活動を展開していくときに、ビジネスの手法を活用して、目的を達成することに大きな可能性を開いた。

 たとえば、クジラやイルカの保護をする団体は、保護活動をして、イルカからお金をもらえるかというとそういうわけにはいかないが、ホエールウォッチングツアーを開いてそれを見にくる人からお金をもらうことができる。それは一見、旅行業者がやっていてもおかしくない。

 フェアトレードという活動も、貿易業と見えなくもない。

 外から見て似ていても、企業の場合は、受益者と対価を払う人が一致しているが、市民活動の場合は、受益者とお金を払う人が異なっている場合が多くある。

 お金儲けではないけれど一種のビジネスの手法を使うことで、市民活動が1980年代ぐらいから一気にひろがった。

 そういうときに、NPOは様々な主体と契約を結んでいくことになるが、サービスを受ける側からすると、契約の相手方の存在基盤が不安定だと、スムーズにいかない場合もでてくる。制度的に、法人格がないとサービスを提供できない場合もある。

 NPO法は市民活動団体が法人格を簡易に取得できるようにすることで、サービスの提供主体として活動を展開しやすくさせたといえるだろう。

 また、今は、行政とのパートナーシップや企業とのパートナーシップが必要であるといわれていて、それらと契約関係を結んでいくときにも法人格を求められる場合もある。そういう面で、NPO法を活用していってほしいと考えている。

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