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2004年の報告

2007年08月29日 14:37

NPOの会計と税務 <NPO法人の税制に関する課題と展望>

(日本NPO学会第6回年次大会)

 2004年3月19日、20日、21日の3日間、横浜市開港記念会館において「日本NPO学会第6回年次大会」が開催された。

 大会3日目の午後2時から3時半には、NPOWEB「なんでも質問箱」回答者の赤塚和俊氏とシーズの松原明が参加して、「NPOの会計と税務 <NPO法人の税制に関する課題と展望>」と題するパネルディスカッションがおこなわれた。

 このパネルディスカッションは、大会運営委員会の企画した10のパネルディスカッションのひとつ。政府が進めている公益法人改革の中で、いったんは対象から外された形になっているが、いずれ俎上に上がるであろうNPO法人の税制について、現行税制の問題点を整理して、改正への提言につなげることを企図して開催された。

 パネリストは次の5氏(あいうえお順)。モデレーターは赤塚和俊氏が務めた。

  • 赤塚和俊氏(公認会計士、NPO会計税務専門家ネットワーク理事長)
  • 雨宮孝子氏(松蔭女子大学教授、日本NPO学会副会長)
  • 岩永清滋氏(公認会計士、大阪ボランティア協会監事)
  • 早坂毅氏(税理士、ヘリテイジ・トラスト理事)
  • 松原明(シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長)

第一部 公益法人改革の経緯

 はじめに、雨宮孝子氏が公益法人改革のこれまでの経緯と現状について解説した。

 現在の公益法人制度は、今から100年以上も前、明治31年に施行された民法34条に規定がある。公益法人になるには国際交流なら外務省、教育なら文部科学省というように、その団体の事業を所管する役所の許可が必要。民間の公益活動は国の許可と監督の下でせよというもの。中央集権国家を作ろうという明治の近代国家樹立の方針によって出来上がった制度といえる。

 このような主務官庁による許可・監督制からなる公益法人制度は、多様なニーズに柔軟に対応しながら活動する市民団体にとっては使いにくい制度。95年の阪神淡路大震災で活躍した市民団体の多くが法人格を持っていなかったことが問題提起となって、98年には、小規模市民団体が準則主義で簡易に法人化できるNPO法ができた。さらに、01年には、同窓会などの共益的な非営利団体の法人化も準則主義で認める中間法人法ができた。

 一方、公益法人と主務官庁の癒着による天下りや補助金の無駄遣い、KSD事件などの不祥事によって、公益法人自体の問題も露呈して、改革の必要性が求められるようになった。02年3月に政府は、「公益法人制度の抜本的改革」について、03年3月までに改革の大綱を出し、05年度末までに法改正をおこなうことを閣議決定した。そして、02年11月には、内閣官房行政改革推進事務局に「公益法人制度の抜本的改革に関する懇談会」が設置され、法人制度部分の検討を開始。他方、政府税制調査会は、「非営利法人課税ワーキンググループ」を設置して、税制部分の検討を開始した。

 こうして、二つの機関で、別々に公益法人改革が議論されることになり、03年3月末を目途に、「公益法人制度等改革大綱(仮称)」の準備がすすめられた。

 両機関の議論が進み、03年2月下旬に、「公益法人・中間法人・NPO法人を一本化して、『非営利法人』という新しい法人をつくり、原則課税にする」という素案が明らかになると、この素案はNPO側の猛反発を受けた。

 また、公益法人側も、非公益で、解散後に残余財産を分配できるとする中間法人と公益法人をいっしょにすること自体問題であると反発を強めた。

 こうした反発を受け、行政改革推進事務局は03年に予定していた大綱を発表できず、ひとまず2万6千ある公益法人だけを対象とする「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」が03年6月に閣議決定された。この「基本方針」では、法人格を一定の優遇措置と分離し、公益性の有無に関わらず、新たに「非営利法人制度」を創設し、準則主義により簡便に設立できるものとするとされた。その上で、公益性を有する場合の優遇措置の在り方については、引き続き検討するとされた。また、NPO法人については、いったん改革の対象から外されたものの、「基本方針」の文中、「非営利法人制度の設計に当たっては、現行の公益法人制度の問題点を踏まえた検討を行い、現行の中間法人制度・NPO法人制度との法制上の関係を整理することとする」といったあいまいな表現で先送りされた形になった。

 税制について具体的に明らかにされなかった「基本方針」だが、「基本方針」決定後の記者会見で、当時の石原行革担当大臣は、「非営利法人が登記だけで設立できるのなら、原則課税は当然」と説明している。

 その後、昨年11月には金子行政改革担当大臣の私的諮問機関「公益法人制度改革に関する有識者会議」があらたに設置され、公益法人制度改革の法人制度部分について議論が続けられている。予定では、3月中に「中間整理」が発表され、それを受けた形で政府税制調査会の「非営利法人課税ワーキング・グループ」が、今年末を目標に税制についての議論を進め、最終的には、05年度末に法改正することなっている。

第二部 赤塚氏による提言

 次に、赤塚和俊氏から現行のNPO法人に対する税制の問題点が指摘され、新しい非営利法人制度における税制についての提言がなされた。

 まず、NPO法人の税制に関して、原則非課税であることの根拠について考えなくてはならない。そもそも法人税とは、ある組織を人とみなして、組織に責任や権利をもたせるという法人擬制説にもとづき、法人税は株主の利益の分配の前取りをしているという考え方。この説で考えると、公益法人、NPO法人は利益非分配、残余財産も非分配であるため、非課税が原則となる。よって、公益性の有無以前の問題だと言える。他方、法人擬制説と相対する説として法人実在説というのがある。法人実在説で言えば、法人は一個の経済主体であり、その所得に関して課税するのは当然ということになる。この説に立つと、税負担はその法人のコストと考えられるので、そのコストは商品などの価格に反映され消費者に転嫁されていることになる。公益法人やNPO法人の場合、主たる収入源が会費や寄附であれば、そのコストの転嫁は困難。よって、法人実在説においても、公益法人やNPO法人は原則非課税を根拠付けられる。

 ただし、財務省は、法人格という制度を使い、人格を持つ以上、そこに所得があれば課税対象となると考えている。非営利性をもって非課税とは考えないという見解のようだ。

 次に、原則課税の場合に、法人税法上の収益事業に課税することについても、現行の税制には問題がある。法人税法上の収益事業とされる「政令で定める33業種を継続して事業場を設けて営むもの」という表現が混乱を招いている。まず、33業種については、NPO法人の多様な事業展開のなかで、その事業が33業種に入るのかどうかの判断について混乱が続いている。また、「継続して営む」ことの解釈にもグレーゾーンが広い。こうした収益事業か否かについて、税務署の判断にゆだねられており、担当者によって判断が異なるケースすらあるのは問題だ。

 また、33業種の中の「請負業」について拡大解釈されるケースが出ている。NPOがおこなうサービス提供をことごとく請負業と解釈することになると、33業種を特掲してある意味がない。

 こうした問題点を踏まえて、次の6つの提言をしたい。

  1. 利益の配分及び残余財産の配分を行わない団体は原則非課税とする。

  2. ただし、対価を得る事業には法人税等を課税する。

     その場合、現行の33業種限定列挙方式の問題点、解釈の困難さがもたらす弊害、小規模非営利団体の納税事務に関する負担を救済するために、以下の3.、4.、5.の措置が必要となる。

  3. (非営利法人に対して)非課税事業限定列挙方式とする。

  4. 小規模団体等には課税免除措置を講じる。

     消費税と考え方は同じ。情報公開を前提とした上で、収入基準によって申告を不要とすれば、外形的に課税当局も判別できる。

  5. みなし寄附金制度の拡充

     確定申告を条件として、現在の社会福祉法人や学校法人に適応されている「所得の50%もしくは200万円の大きい方」という基準を適用してはどうか。

  6. 寄附税制は、現在の認定NPO法人制度をベースにして、さらに基準を緩和する。

第三部 パネリストの意見

 赤塚氏の提言を受けて、パネリスト各氏から次のような意見が出た。

岩永清滋氏(公認会計士、大阪ボランティア協会監事):

 基本的に赤塚氏の提言に賛成だ。付け加えれば、公益法人改革の議論の中で、非営利法人に対する原則非課税というのを「税制上の優遇」ととらえる向きがあるが、これは間違った解釈だと言いたい。そもそも非営利法人に対しては課税のしようがないというのが私の考え。

 非課税であるべきだという根拠については、利益の配分がないという法人擬制説とあわせて、法人税の前提に立ち返って考えてみると明確になる。法人税は益金から損金を引いた部分に課す、ただし資本等取引を除いて課税されるとされている。いわば、元本と果実の例えで、元手をかけて実らせた果実の部分に課税するのが前提である。よって、元本となる資本の概念がない公益法人やNPO法人には法人税を課税しようがないではないか。これは、政府や個人に法人税がかからないのと同じこと。

 一方、NPO法人であっても、収益事業に関しては課税すべきだと思う。ただし、法人税法上の収益事業とされる「政令で定める33業種を継続して事業場を設けて営むもの」という限定列挙方式は現場に混乱を招いているから、赤塚氏の提言のような形で整理される必要があると思う。

 よって、「税制優遇」とは寄附税制だけということになる。その場合、寄附する側の税の減免には一定の措置が講じられることになるだろう。今、政府の基本方針とされている「2階建て論」とは異なり、非営利法人は原則非課税で、寄附者への免税については要件が必要となるという意味での「非営利法人の2階建て論」ということになる。

早坂毅氏(税理士、ヘリテイジ・トラスト理事)

 自分は税に関して懐疑的にならざるを得ない。「胴元がルールを決める」といった形で税制が決められていくのではますます懐疑的になってしまう。また、今の法人税が出来たのは昭和40年。現在の社会情勢はかなり違ってきている。たとえば、「経費になるには廃棄せねばならない」とされているが、企業が社会貢献として自社の保有する製品をNPOや公益法人に寄附した場合、経費にならない。環境に配慮した税制などということも、もっと出てきていいはず。税務署と納税者の関係で言えば、税法の解釈権は税務署にだけあるのではなく、納税者側の解釈というものも出てきて当然。33業種の混乱もそういう中で生じている。申告納税制度なのでまずは自分で判断すべきと言いたい。税務署と見解が異なれば裁判も覚悟で戦うことも出来る。納得して納税できるかが大事だと思う。

松原明(シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長)

 現在進められている公益法人改革については、現場に根ざさず、中空に浮いた状態で議論されているように思えてならない。非営利法人が準則主義で設立されると、原則課税、または寄付金課税にも課税だと言われるが、なぜかがはっきりしていない。課税という場合に、なぜ、何に、どのようにして、どのくらい課税するのかが明確でなければならないし、きちんと政府はその説明責任を果たす義務がある。公益法人改革について、その法人制度についても、税制についても、国民的な議論が全くなされていないのが一番大きな問題。政策決定の中では国民的議論が欠かせないのに、コンセンサスをつくる努力が政府に全く見られない。これは市民側にも言えること。うやむやな中で決めるのではなく、何にどういう根拠で課税するかをはっきりさせて欲しいしと主張しなくてはならない。

 公益法人改革については、もっと長期的な視点で議論をしていくべきではないか。法人格の作り方、課税の対象という短期的な議論だけでなく、民間非営利セクターの価値とは何か、何を担っていくのか、それを社会はどう支えていくべきなのか、支えていくためのお金の流れはどうあるべきなのかといった視点で考える必要があろう。

 非営利法人一本化という流れが支配的だが、ひとくちに「非営利法人」といっても、共益的なもの、残余財産は分配したいものなど、色々な形態が考えられる。そういう議論があってもいい。私は、非営利法人が一本になることがいいとは思わない。団体を作る人の意思を認めて、団体に人格を与えて活動しやすくするための制度を考えるべきなのに、議論が逆転しているのではないか。市民側でもっと原点に返った議論をして、それを政府に投げかけて、民間非営利セクターの発展に資する公益法人改革にしていかねばならない。

雨宮孝子氏(松蔭女子大学教授、日本NPO学会副会長)

 制度改革について、法人制度は利用者の立場にたてば多くの選択肢があるほうがよいのだが、法律家は同じものなら同じ制度でシンプルに規定することを好むようだ。

 公益法人については、民法で、「非営利で公益があり主務官庁の許可が必要」と言うことから様々な矛盾が生じ、その結果、特別法によって、180以上の法人形態が生まれている。今後、こうした矛盾と混乱を防ぐためには、非営利法人を通則法できちんと規定する必要があると思う。

 税については「準則主義なら原則課税」ということが当然のように言われているが、現行の制度でも準則主義で非課税のものはたくさんある。政党もそう。マンション管理組合しかり。準則主義だから課税と言うのがまかり通っているのは間違いだ。

 現在の公益法人は公益性があると判断されているのだから、新しい制度では、はじめから「2階」に位置して非課税だから安心せよという声を聞くが、公益性の判断、基準によっては、すぐさま「1階」に下がり課税されることになるということを忘れてはならない。赤塚氏の提言の中では、小規模団体への課税免除と言うことが脱税につながらないかが懸念される。

 これに対して赤塚氏から、次のようなコメントがあった。

赤塚氏:

 小規模団体への課税免除は、税の公平さを担保するためのものとして提言した。現場の実感から言えば、現在の任意団体の多くが課税されていないのは、収益事業をしていないからではなく、税務署によって捕捉されていないが為に見逃されているというのがほとんどではないかと思う。小さいところも課税対象として徴税しようとしても、現実には捕捉不可能だと思う。「非営利法人の全てが原則課税」などとなったら、税務署のキャパを超えてしまい、結果的に公平な徴税が出来なくなるだろう。その点を考えて提言した。

第四部 会場との質疑応答

 最後に、会場との質疑応答が行われ、公益性の判断機関、非営利法人の行う事業に対する課税について議論された。

参加者A:

 有識者会議では、「1階で原則課税の非営利法人を作り、公益性のある非営利法人は2階に上がって非課税とする」という、いわゆる「2階建て論」が昨年の「基本方針」で閣議決定されたものとみなされているようだ。この前提は崩せない様子だ。この前提で、公益性を認定するのは、課税庁か否かが論点に上がっている。これについて、どう考えるか。

早坂氏:

 実際、税務当局に公益性についての判断はできないだろう。公益性について門外漢だからだ。そこで、公益性の判断のためにパブリックサポートテストのような客観的な基準を作る必要があるだろう。

雨宮氏:

 公益性の判断については、有識者会議において、法人類型としての判断か、免税についての判断かが整理されていないようだ。類型で考えれば、民法に規定すべきだろう。法律にできるだけ書き込む必要がある。理想なら、そうすることでどこが判断しようと同じ結果になると期待できる。それでも残るグレイゾーンについては、判定機関、あるいは裁判に持ち込まれることになるだろう。ただし、公益性が継続しているかどうかを事後チェックする機関は必要だと思う。税の優遇とは言いたくないが、現実的には税に関する部分は課税庁が判断していくことにはなるだろう。

赤塚氏:

 課税庁が判断するのは間違いだと思う。徴収する側が課税か否かを判定するのはおかしい。

岩永氏:

 現行、特定公益増進法人や認定NPO法人に関しては国税庁が判定しているが、社会福祉法人、学校法人への寄附者に対する税の減免については、法律に基づいてできた法人ということで判断なしに優遇を認めている。新しい非営利法人制度で、「2階建て論」のすべての部分で国税庁に判断する権限を与えるのは、このことから考えても間違いだと思う。

参加者B:

 対価を得るものには課税するという前提だと、対価イコールビジネスという意味になる。有償ボランティアというようなビジネスと呼べないようなものにまで課税するのはいかがなものか。

赤塚氏:

 対価を得るものすべてがビジネスかということに疑問が残らないわけではないが、たとえば、NPOの行っている有償ボランティアのような事業は、収入規模が小さく、利益もほとんど出ないのが実態。そこで小規模団体の申告不要説を提言した。課税する事業について細かい定義を盛り込んで解釈の余地を残すより、実務的な、現実的な切り方をすることで、誰にでもわかりやすい税法が実現すると思うからだ。

参加者C:

 公益性の定義で、アメリカの現状を聞かせて欲しい。

雨宮氏:

 きわめてシンプルな届出で非営利法人で公益性があるとみなされる。細かな基準は判例に基づいて細かく規定されている。判断に不服があれば訴訟で解決する。日本でも、このシステムが可能だと思う。

参加者D:

 非営利法人に対する原則非課税ということを、株式会社が作ったNPO等が節税に乱用する恐れはないのだろうか。

赤塚氏:

 どういう税制度にも悪用される余地がある。悪用するものに対しては、ガバナンス、事後チェックということで対応しなくてはならない。

 公益法人改革について関心が高まる中で、パネルディスカッションに参加した聴衆者は熱心にパネリストの発言に耳を傾け、終了後も会場内で参加者同士が意見交換する姿が見受けられた。

以上

報告・文責:徳永洋子(シーズ)
2004.04.06

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