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2002年の報告

2007年08月29日 11:39

「NPO法とNPO支援税制の動き」報告

 2002年6月5日、シーズ勉強会「NPO法とNPO支援税制の動き~改正をめぐる最新情報を報告する~」が東京ボランティア・市民活動センター会議室A・Bにて行われた。

 参加者は約50名、2時間にわたる松原明シーズ事務局長の話に熱心に耳を傾けていた。

 勉強会のテーマは、1998年12月に特定非営利活動促進法(以下NPO法)が施行されてから現在まで、NPO活動を支える制度の改革の情勢と、その内容について。

 特に、NPO法改正とNPO支援税制を中心に話が進められた。

 以下に勉強会の報告をする。

1.NPOをめぐる制度改革の最新情勢

 1998年12月1日にNPO法が施行された。

 NPO法には、この制度について3年以内に検討をし、必要な措置を講ずるという附則が定められている。また、これを補完するかたちで、2年以内に検討し、3年以内に結論を得るという内容の付帯決議が国会でされていた。

 これに基づけば、2001年11月末までにNPO法の改正が行われるはずだったが、現在まで改正に至っていない。なぜこのような事態にあるのか。

 NPO関連の制度改革は、共産党を除く約250名の国会議員からなるNPO議員連盟や、各党のNPO委員会を中心に行われており、2001年9月までに改正案を準備していた。

 しかしながら、9月11日のアメリカの同時多発テロの影響で、法案の検討が延期された。これにより、2002年1月からの通常国会で議論されることとなった。

 けれども、今年に入って、NPO議員連盟で中心的な立場にあった加藤紘一、辻元清美両氏が議員辞職したことで、議員連盟の立て直しが必要となった。

 5月より、新体制がスタートした。また、改正案についても、各党の党内手続きも終わっている。あとは、法案が国会に提案されて、委員会で通すだけのところまで来た。

 委員会にかけられれば、すぐにも成立すると見られている。

 しかし、NPO法改正が審議される予定の衆議院内閣委員会では、小泉内閣の重要法案とされる個人情報保護法案が審議されており、この法案がどうなるかが決まらないと、他の法案にかかれない状況だ。このような状況で、今国会でNPO法が審議されるかどうかは、現在のところ五分五分の情勢にある。

 今国会で成立すれば、都道府県の施行条例の改正を経て、2002年12月1日に施行となる予定だ。

 成立しない場合は、通例10月より開かれる臨時国会にて審議され、2003年4、5月に施行という可能性がある。

 いずれにしても、今後の国会情勢によって、NPO法の改正は先の読めないところだ。

 NPOをめぐる制度改革のもう1つの流れとして、NPO支援税制がある。NPO法の成立前から、税の優遇措置を求める声が強かったが、NPO法自体には支援税制は盛り込まれなかった。そこでNPO議員連盟を中心に、2000年に税制度が検討され、2000年末に与党の税制協議会で新税制の導入が決定された。

 これにより、国税庁長官の認定を受けたNPO法人(以下「認定NPO法人」)への寄付税制の優遇制度が2001年3月に成立、同年10月1日より施行された。

 しかし、この支援税制がスタートする前から分かっていたことだが、この制度には問題が多い。一番の問題は、認定NPO法人になるための要件のハードルが高いところだ。

 なぜこうした問題が起こったのか。

 この制度づくりをしていた時期は2000年11月、いわゆる加藤政局が起きた頃である。当時加藤氏はNPO議員連盟の会長であったため、この政局による混乱から、議員連盟と主務官庁のコミュニケーションが悪くなったということは否めない。その結果、NPOの実態を大蔵省がよく分からないまま制度設計をしてしまった。

 結局、税制がスタートして8ヶ月が経つが、申請団体が11法人で認定団体が5法人しかないという状況となった。NPO法人が全国で7000団体を超え、現在月に約300法人ずつ増えている中で、この割合は著しく低い。

 支援税制ができたはいいが、申請すらできないという使えない制度なのだ。制度改正のための運動を、シーズを含めNPOサイドから起こしていくことが重要である。

2.NPO法改正案の中身

 では、NPO法改正ならびに支援税制の中身はどのようになっているのか。

 まず、NPO法の改正のポイントは、以下の9つである。

 第1は、活動分野の追加である。これまでのNPO法では、法人化となる団体の対象を12の活動分野を主たる目的とすることと限定している。改正案では、この分野のうちの「文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」に「学術」の項目を挿入し、「学術、文化、芸術又は・・・」とする。

 そして、新たに以下の5つの分野を追加する。

  • 情報化社会の発展を図る活動
  • 科学技術の振興を図る活動
  • 経済活動の活性化を図る活動
  • 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  • 消費者の保護を図る活動

 現NPO法では、活動分野に1~12のナンバリングがされているが、これも変更する。1~11はこれまで通りだが、12の「1~11の活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動」を17に改める。また、新たに追加する分野を上記の順番通りに、12~16とする。これらの改正によって、NPOの活動をより明確化することで、NPOへの理解を一層深め、活動をバックアップしてもらうことを意図している。

 第2は、法文上の「収益事業」を「その他の事業」に書き換える。

 NPO法と法人税法の間に「収益事業」という言葉に関する混乱があった。NPO法では、団体の活動を「特定非営利活動に係る事業」と「収益事業」に区分けする。一方法人税法では、33の業種を「収益事業」とし、それ以外を「非収益事業」としている。同じ「収益事業」という用語であっても、意味がちがう。NPO法上では「特定非営利活動に係る事業」だが、法人税法上の「収益事業」となるということがしばしば起こる。こうした混乱を避けることが、改正により図られる。

 第3は、NPOを設立する際、または合併する際に提出する申請書類の簡素化である。1つの書類に統合するのは、「役員名簿」と、「役員のうち報酬を受ける者の氏名を記載した書面」、もう1つは「各役員の就任承諾書」と、「役員の欠格事由に該当しないこと及び役員の親族等の排除に関する規定に違反しないことを各役員が誓う旨の宣誓書の謄本」である。廃止する申請書類は、「設立者名簿」、「設立当初の財産目録」、「事業年度を設ける場合の設立当初の事業年度を記載した書面」である。一方で、事業年度を定款に記載することなどを新たに定める。

 第4は、暴力団の排除措置の強化である。NPO法の施行以後、暴力団が関係する事件が起きており、これに対する措置をとる。1つは、役員の欠格事由に「暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者」を条文に加え、警察が所轄庁に対して意見をすることができるものと規定する。

 第5は、役員の任期の伸長である。新役員の選任が、役員の任期を過ぎた後の社員総会で行われるとする団体の場合、任期終了後から最初の社員総会の終結まで任期を伸長できるとする。実際に問題になった事例を踏まえた措置である。

 第6は、定款変更の認証を申請する際に提出する書類に、定款変更の日の事業年度と翌年度の「事業計画書」と「収支予算書」を追加する。

 第7は、予算準拠の規定の削除である。現NPO法では、会計の原則として「収入及び支出は、予算に基づいて行うこと」が定められている。しかし現実のNPOの活動では、助成金が取れるか不明な場合、あるいは紛争による難民の発生など突発的な出来事に対応する場合など、あらかじめ決められた予算にしばられていたら迅速に対応できないことが多々ある。そのため会計の予算準拠主義の規定を削除し、予算や会計に関する団体の自由を明確化することを目的とする。

 第8は、虚偽報告への罰則規定の新設である。現NPO法では、所轄庁がNPOを監督する際、書類の提出を求めた場合、NPOが虚偽報告をしたことへの罰則規定がなかった。この事例に対する罰則を新たに規定する。

 第9は、新しいNPO支援税制を、NPO法においても明確化する入念規定である。

 以上のような法改正が行われると、既に法人格を得たNPOは、法改正に合わせて定款変更をしなければならないと心配されるかもしれないが、現在のところその必要はないと考えられている。内閣府や衆議院法制局によれば、現NPO法で認証を受けている法人の場合、改正後も現在の規定をもとに定款などを判断していく予定である。

3.NPO支援税制の改革に向けて

 NPO支援税制は、第1に認定NPO法人へ寄附した個人・法人に対する所得控除・損金算入、第2に認定NPO法人に対して相続財産を寄附した場合の相続税の非課税が内容となっている。

 しかし先に述べたように、認定NPO法人になるための要件が非常に厳しい。中でも日本版パブリック・サポート・テストの要件をほとんどの団体がクリアできない。このテストは、受入寄付金総額を総収入金額で割ったとき、3分の1以上となるかどうかを計るもの。さらに分子の受入寄付金総額から匿名の寄附金、一者あたり年間3000円未満の寄付金、一者当たりの基準限度超過額、役員および社員からの寄附金を除く。一方、分母の総収入金額から、匿名の寄附金、一者あたり年間3000円未満の寄付金相続・遺贈の寄附のうち一者当たりの基準限度超過額、補助金、臨時的な収入、介護保険事業における国保連からの介護報酬の半分の金額を除く。

 このテストで3分の1以上となると、要件の満たしたことになる。

 2002年4月1日からは、NPO支援税制の認定要件の一部改正の施行により、役員および社員からの寄附金を受入寄付金総額に算入することが認められた。

 その他にも、広域性、運営組織・経理の適正性など8つの要件があり、認定のハードルを厳しくしている。

 こうした要件の緩和のためには、NPO法人の活動実態を主務官庁に理解してもらうことと、認定要件自体をNPO側が理解し、問題意識を強く持つことが重要だ。

 聞くところによると財務省は、個人商店のようなものが支援税制を悪用することを恐れている。認定要件は変えることはできなくはないが、どう変えていったらいいか分からないと言うことなのだろう。

 このような問題を解決していくためには、きちんとしたデータを示せるかが不可欠だ。

 NPO支援税制は十分変わる見込みがある。是非、シーズの活動に参加して、変えるための力を貸して欲しい。

 シーズでは、今年、まず、認定要件のどこが問題かを明らかにするアンケートを近々実施する予定だ。また、今年秋には全国的なキャンペーン活動も計画している。

 皆さんの協力をお願いしたい。


質疑応答

Q.予算の変更は団体のどの組織でしていけばいいか。

A.それぞれの団体には自治権がある。総会や理事会、理事長個人でも、どの機関が予算変更の承認をしても構わない。団体が自由に定款で定めることだ。多くの所轄庁のモデルでは総会で行うようにされているが、むしろ問題である。NPO法上、総会でやらなければならないことは、団体の解散、合併、定款変更、決算報告や事業報告の承認を決めることが法定されているだけだ。これ以外のことを総会で行うことは強制されない。ただし監事の選任は、理事会を監督するという役割上、総会で決めるのが望ましいだろう。予算の変更に関しては、総会ではなく理事会などで行うほうが、柔軟な対応ができるのではないか。

Q.NPO支援税制では、個人の寄附金が1万円まで所得控除の対象とならない。これでは多くの寄附者のインセンティブが働かない。

A.従来の寄附税制をベースにしてNPO支援税制がつくられているために、こうした状況が生まれている。シーズでは、NPO法もNPO支援税制も、ベースである民法、寄附税制を直接いじらずに、オリジナルのNPO法、NPO支援税制をつくることによって、ベースの問題点を知ってもらい、ベースを動かしていくという戦略を採っている。オリジナルの制度を使う人が増え、使い勝手の悪さを知れば、ベースの制度を変えていくことができる。オリジナルをつくることが第1段階であり、シーズのミッションだ。第2段階のベースの改革は別のものとして捉えている。所得控除の問題も、ベースの部分の問題である。

Q.政府の行政改革推進事務局が、非営利法人に基本法を制定するとの新聞報道があったが。

A.行革事務局での案は、まだ議論の段階だ。とんとん拍子でいったとしても、制度の成立まで3年はかかるだろう。ただ、それはまったく議論がなかった場合の話。それは考えられない。法人ごとに課税が異なることも議論になるだろう。いずれにせよ、すぐに期待できる話ではないと思っている。

報告 大塚謙輔

2002.06.12

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