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2005年の報告

2007年08月29日 15:49

シーズ学習会「公益法人改革、税調「基本的考え方」を読む」

 2005年6月21日、都内中野サンプラザにて、政府税制調査会(以下、政府税調)の特別委員である出口正之氏(国立民族学博物館教授)を迎え、学習会『緊急企画 公益法人改革、税調「基本的考え方」を読む~NPO法人と公益法人の税制はどうなるのか?』が行われた。

 緊急の企画であったにもかかわらず、会場には80人を超える参加者が集まり、政府税調の発表した基本的考え方の最新の内容について、熱心に聞き入った。

 政府は、昨年末、閣議決定で、公益法人(社団法人と財団法人)と中間法人をまとめて、新しく「非営利法人制度(仮称)」とすることを決定した。

 この決定を受けて、政府税調は、この新しくできる非営利法人の税制についての検討を行ってきた。

 今年4月15日より、基礎問題小委員会と非営利法人課税ワーキンググループの合同会議を設置、月2回ほどのペースで会議を開き、6月17日、中間整理的な報告として、「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」を発表した。

 学習会では、まず、この「基本的考え方」の内容と、政府税調でどのような議論がされてきたのか、また発表された基本的考え方の文書をどう読めばいいのかについて、非営利法人税制の議論をリードしてきた出口氏から報告を聞いた。

 出口氏より説明されたポイントには以下のとおり。

  • 政府税調では、内閣総理大臣の諮問機関で、会長は石弘光氏が務める。政府税調では、公益法人制度改革の税制度の部分について議論を続けてきた。この基本的考え方の検討をしていたのは、政府税調の総会の下におかれた、基礎問題小委員会とその下の非営利法人課税ワーキンググループの合同会議。なお、法人制度部分の検討は内閣官房の行革推進事務局が担当している。

  • 公益法人制度改革では、民法34条の公益法人と中間法人を整理して、1つの法人体系(非営利法人)にする。今回の「基本的考え方」の視点からは、新たな非営利法人は、「公益性のある非営利法人」、「専ら共益的な事業を行う非営利法人」、「その他非営利法人」の3類型に分けられる。私は、家に喩えるならば、「3LDK」とでも言うべきプランだと考えている。しかし、実際の家になるのかは、まだ整地もすんでいない状態といえ、まだ不明確。

  • この「基本的考え方」は、課税の部分と寄付税制の部分からなっている。今回、報告書冒頭の部分に「民間が担う公益」という表現があることは画期的で、財務省の「あるべき税制」の方針を受け継いだもの。石税調の金字塔とでもいえる内容となっていると思う。ただ、一方で、さまざまな納税主体についての議論を広めており、課税強化の動きも読み取れる。

  • 判断機関が公益性があると認めた法人は、すべて非課税となるが、収益事業は課税される。専ら共益的な事業を行う法人は会費は非課税だが、その他は課税。その他非営利法人はすべて課税となる。公益性のある法人はすべて寄附優遇法人となる。

  • 認定法人制度はNPO法人の実態に即したように改正される予定。

  • 適用期間は現行の2年より長めにしたいとなっているが、その期間はまだ未定。5年ぐらいか。

  • 地方税の寄付税制ができるかはまだ不明。地方分権の趣旨から、自治体毎の条例で、ということになるかもしれない。ここは、忸怩たる思いである。

  • 今回の公益法人制度改革では、NPO法人は切り離すことが大前提だが、政府税調のメンバーの中にはNPO法人も一緒にしていいのではないかという意見を持っている人もまだいる。しかし、制度設計は現場の声を受けて設計することが大事であり、今後ますますNPO法人が意見を言っていく必要がある。

  • 今後のスケジュールは、来年度税制改正に向けて、議論はまだ続く予定。

 出口氏の説明を受けて、シーズ事務局長の松原は、「NPO法人が認定NPO法人になるにはパブリックサポートテストなどの明確な基準があるが、今の非営利法人の議論には具体的な要件の検討が欠けており、懸念される。人格なき社団への課税をも視野に入れているようであるが、NPO活動の社会的基盤である部分に課税されるのは大きな問題」とコメントした。

 最後に出口氏は、今回の基本的考え方は、政府税調から4つの「ボール」が投げられたことを意味すると解説した。

 1つ目は行革事務局に対して投げられたボールで、判断機関の制度をきちんと機能するものとして設計するようにとの要請だ。

 2つ目は、地方自治体に対してで、地方住民税の寄付金優遇税制については「民間が担う公共」の役割を認識し、条例等で対応するようにというもの。

 3つ目は、非営利法人に対してで、情報公開や寄付金運用が有効かつ適切に行われる工夫が求められるというもの。

 4つ目は、納税者に投げられたボールで、制度が活用されるには実際に寄付をしていくことが大切であるということだ。

 出口氏によれば、政府税調には、民間からたくさんの意見書が寄せられ、それらは確実に議論に影響を与えているという。出口氏のホームページやブログでは議論の過程を積極的に公表、解説している。基本的考え方の英語版もつくって掲載の予定とのこと。出口氏は「多くの人の意見表明を」とブログへの参加を呼びかけた。

 ホームページは以下のURL。

 http://www.k2.dion.ne.jp/~deguchim/

 松原は、最後に、以下のように指摘した。

「出口氏の説明にもあったように、公益法人制度改革の成否は国民的議論が鍵となる。今回の基本的考え方の発表は、我々市民に投げられたボールでもあるから、国民的議論を盛り上げていく必要がある。シーズでは、今後もホームページやメルマガを通して情報を提供していくので、ぜひ引き続きご注目いただきたい。またイベントの開催も企画していきたいので、今後もぜひご参加いただきたい。」

 なお、出口氏には、今回のイベントにボランティアでご報告いただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。

2005.08.11
鈴木 歩

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