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NPOの信頼性に関する意見

2007年08月23日 17:33

12人の意見(3)伊藤一秀さん((独)環境再生保全機構監事)

<この特集について>

NPOという文字が新聞に出ない日はないくらい、NPOは私たちの生活に身近な存在となってきました。ユニークな活動をしているNPOが、地域にどんどん増えています。

平成17年の内閣府大臣官房政府広報室の「NPO(民間非営利組織)に関する世論調査」でも、NPOという言葉を「知っている(意味もわかる)」あるいは「意味は分からないが見たり聞いたりしたことがある」という人は、85.2%にものぼります。

しかし、同じ調査で、NPOを「信頼できる」と答えた人はたった6.5%。「おおむね信頼できる」の24%を加えても30.5%に留まります。

確かに、新聞やニュースをよく見ていると、NPOのすばらしい活動が紹介されている記事も多い反面、なかにはNPOによる不祥事、時には詐欺事件なども目にします。もちろん、これらはほんの一部のNPOの事例ではありますが、社会のために役立つはずのNPOが、社会を困らせる存在になっているという事実が、全体のNPOのイメージをダウンさせている結果となっています。

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会では、NPOの信頼性を高め、情報を流通させ、そのうえで寄付や会員などの形で支援が得られるようにするにはどうしたらよいか、この2年あまりをかけて研究してきています。

その一環として、12人のNPOに詳しい方々に、NPOの信頼性を確保するために何が必要か、というテーマで寄稿をお願いしました。寄稿してくださったのは、NPO関係者、NPOに助成をする立場の方々、企業関係者などさまざまです。この12人の方々のご意見を、このコーナーでは順次ご紹介していきます。

お読みいただき、皆さんもいっしょに考えていただければ幸いです。

(この特集は(独)福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金)より助成を受けて発行した報告書「NPOの信頼性を確保し寄付を集まるためには何が必要か」より転載しています)


第三回 伊藤一秀さん ((独)環境再生保全機構監事)

NPOの信頼性確保に重要な3つのポイント(視点)

伊藤一秀 (独)環境再生保全機構監事

NPOの信頼性を考える場合には、社会における信頼性、支援や協働を行うパートナーとしての信頼、そして、個人的にサポートする際の信頼感にわけて考え、各レベルでの対応や異なるアプローチが必要だと思います。

● ミッションに基づくNPO活動と見る尺度の構築・充実

まず、社会における信頼性確保は、2重の意味で大変です。

第1は、大きく変化する社会の中にあって、老舗といわれる企業や既存の組織・機関そのものの信頼性が失われてきている社会情勢です。企業は、企業行動憲章の策定やCSR活動の推進、環境・社会活動報告書の発行等で社会とのコミュニケーションを図り、社会との信頼関係の構築に努めています。

しかし、経済界の考えを発信する経済広報センターの第9回「生活者の企業観アンケート」調査結果(2005年実施)でも、依然として企業に対する信頼感は低下傾向にあり、信頼を維持・向上させるためには、本業(優れた商品・サービス・技術などをより安く提供、安全・安心の確保)に徹すべしとの回答が78%となっています(経済広報3月号)。第2位が企業倫理の確立・順守50%、第3位が経営の透明性と情報公開37%です。また、環境報告書、CSR報告書など各種報告書の存在も知らないとの回答も26%に上っています。

勿論、企業は社会と様々なコミュニケーションを図ることは重要ですが、まず、社会の変化とニーズを捉えて、本業に徹するのが日本社会からの信頼性確保の第一歩といえるようで、これは、NPO活動についても同じだと思います。

信頼性が問われている社会情勢で、まだ、社会がNPOの活動に期待する部分が大きい一方、少数でもNPO法人を名乗る団体の不祥事は、NPO全体の信頼性を大きく損なう虞があります。そして、多様な活動を行うNPOには、比較・評価する一般的基準や共通の定着したイメージがないことにより、その虞は増幅されます。

その意味で、国際協力NGOセンターの「NGOアカウンタビリティ基準(案)」やシーズ・NPOアカウンタビリティ研究会の「NPO法人の会計・事業報告・税務会計作成基準への提言」等の活動をさらに精力的に推し進め、NPOの事業評価や情報公開の基準を早急に普及させることなどにより、社会のNPOを見る尺度を充実させる必要があります。

つまり、社会での信頼性確保のために、それぞれのNPOが理念やミッションに基づく活動を社会の期待に応え着実に行うとともに、活動を評価し比較できる尺度をNPOセクターとして作り、その情報を発信していくことが重要だと思います。

● 組織としてのあたりまえのことを行う

次に支援や協働を行うパートナーとしての信頼です。

日本経団連の行った2002年度社会貢献活動実績調査(意識調査は毎年実施しない)によると、企業がNPO・NGOを支援・連携する際に重視する点として、第1位は「運営の透明性」、第2位は「自社の基本方針・分野との一致」、第3位は「プログラム企画・提案力」で、次に「活動実績」や「専門性」「代表者のリーダーシップ」となっています。意外と専門性やリーダーの魅力だけでは、企業との関係作りは難しいように思います。

また、(独)環境再生保全機構にある地球環境基金は、内外の環境NGO・NPOへ資金助成を行うとともに、環境NGO・NPOを担う人材育成・基盤強化支援のために、日本各地で地球環境市民大学校を開催しています(詳細はHP参照、http://www.erca.go.jp/)。

同市民大学校の環境NGOのための組織マメジメント講座の1つに参加した際、企業と連携するための留意点として、実際に企業と連携しているNPOの講師は、「報告、連絡、相談はコマメに、迅速に。最低限の社会常識は持とう。企業も年度予算で動いている等の当たり前のことを、当たり前にやること」の重要性を強調するとともに、個人事業・個人商店から組織運営へということで「組織の設計図」を持つ必要性を指摘されていました。

つまり、企業が組織であるとともに、NPOも組織であって、信頼関係は企業の担当者とNPOとの人間関係をベースにするにしても、そこだけに頼るわけには行かないということです。社会貢献やCSRなど企業窓口の担当者は、自分のNPOへの信頼感だけでは動けないのです。そのため、NPO活動のわかり易い資料、運営体制・会計の情報提供を求め、企業内で当然質問されるメリットや自社の基本方針・分野との一致などでパートナー探しをすることになります。

● まず実感できる仕掛けや工夫を

個人的にサポートする際の信頼感については、自分自身の場合で考えてみます。

きっかけは仕事の関係でしたが、何故、そのNPOを継続してサポートしているかというと、第1には、やはり活動の実績と取組みや仕掛けのオリジナリティにあります。

障害者の自立支援やエイブルアート活動を展開する(財)「たんぽぽの家」。「地雷でなく花をください」の絵本のメインキャラクター、うさぎのサニーちゃんの認定NPO法人「難民を助ける会」。知的障害者の社会参加をおかし屋ぱれっとなどの活動で支援するNPO法人「ぱれっと」。すべて工夫しオリジナルな取組みです。

第2には、その活動を実感できる仕掛けやコミュニケーションがきちんと採られていることです。「たんぽぽの家」の「ケアする人のケア」セミナー等は参加することで固定観念が揺すぶられます。「難民を助ける会」はAARニュースでマスメディアが伝えない過酷なアフリカ等の現状と支援活動を伝え、払込取扱票も同封されています。「ぱれっと」は夏、年末、ホワイトデーに美味しいケーキとクッキーの注文票を送付してくれ、時には恵比寿の「Restaurant & Bar Palette」でスリランカ・カレーに舌鼓をうつことが出来ます。

第3は、そのNPOのリーダーやスタッフの話を聞いたり、行事等に参加して知っているから、信頼感が持続するように思います。

最後に、以上は筆者個人の意見であることを申し添えます。


● 執筆者プロフィール:

伊藤一秀氏

1949年、愛知県生まれ。1977年、国際基督教大学大学院行政学研究科修了。同年、社団法人経済団体連合会(現・日本経団連)事務局入局。1986年4月~9月、韓国全国経済人連合会へ研修出向。2000年4月から経団連(現・日本経団連)社会本部次長・企業・社会グループ長及び1%クラブ事務局長、2002年11月~2003年3月企業倫理グループ長も兼務。2004年4月より独立行政法人環境再生保全機構・監事。
主な論文として、「企業の社会貢献活動からみたNPOとの協働の可能性」(「市民セクター経済圏の形成」市民立法機構編、日本評論社、2003年)、「企業の社会貢献活動の現状」(「公益法人」2001年3月号)、「企業行動憲章の改定と実効性のある不祥事防止強化策」(「経理情報」2002年No.1003)


● 所属団体の紹介:

独立行政法人環境再生保全機構

旧公害健康被害補償予防協会の業務と旧環境事業団の地球環境基金事業、ポリ塩化ビフェニール廃棄物処理基金事業等を承継して、独立行政法人環境再生保全機構法により平成16年4月1日に設立された独立行政法人。主務大臣は環境大臣等。同機構にある地球環境基金は、地球サミットの翌年、1993年に国からの出資と国民、企業等からの寄付金を財源に創設され、内外の民間団体(NGO/NPO)による環境保全活動への資金助成や人材育成等の振興事業を実施。平成16年度末までの助成実績は、延べ2385件、85億3000万円で、平均して毎年度約200団体に7億円強を助成。他にNGO/NPOを担う人材育成・基盤強化支援のために「地球環境市民大学校」の開催やインターンシップ研修、短期海外派遣研修を実施。また、国内の環境保全活動に取組む民間団体を都道府県別、分野別に取りまとめた「環境NGO総覧」(平成16年版は約4000団体)を発行。機構のホームページからも検索可能。

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