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2004年の報告

2007年08月29日 14:32

APPCマニラ会議報告

 2003年9月5日から7日まで、フィリピンのマニラでアジア太平洋フィランソロピー・コンソーシアムの総会が開催された。松原(シーズ事務局長)も参加した。この会議の概要について、このコンソーシアムの設立団体であり、日本側の窓口である(財)日本国際交流センターの伊藤聡子さんにレポートしていただいた。


アジア太平洋フィランソロピー・コンソーシウム(APPC)マニラ会議に参加して

(財)日本国際交流センター

チーフ・プログラムオフィサー

伊藤聡子

 2003年9月5日~7日にかけて、アジア太平洋フィランソロピー・コンソーシウム(APPC)の総会がフィリピンのマニラで開催された。

 APPCとは、アジア太平洋地域のフィランソロピー強化と非営利セクターの基盤整備のために、この地域の民間財団、企業財団、NGO・NPO、研究者などにより1994年に結成された協議会である。日本国際交流センターはAPPCの発足に深く関わり、以来、日本の非営利セクター関係者とAPPCとの連絡調整を行っている。

 さて、今年の総会のテーマは、コーポレートガバナンスならぬ「ノンプロフィット・ガバナンス」。公益法人やNPO・NGOなど非営利組織のガバナンスはどうあるべきか、どうすればガバナンスは向上するのか、組織のミッションを効果的に達成するために必要とされるガバナンスは何か、というポイントに焦点があてられた。

 アジア太平洋地域の17カ国から約120名の実務家・研究者が招待され、3日間にわたって熱心な議論が進められた。

 日本からは、公益法人協会理事長の太田達男さん、CSO連絡会事業開発オフィサーの今田克司さん、シーズ事務局長の松原明さん、東京経済大学教授で国際協力NGOセンターのアカウンタビリティ委員会座長の渡辺龍也さん、APPCに助成してくださっている財団のひとつ笹川平和財団から関晃典理事長、南里隆宏さん、小林香織さん、日本国際交流センターから理事長の山本正、常務理事の勝又英子、筆者が参加した。

左から、松原、山本正さん、勝又英子さん(会場の外で)

 今回、APPCがこのテーマを取り上げたのには、次のような背景がある。アジア太平洋地域の多くの国で、従来型の慈善的社会サービスを提供するだけでなく、その国の経済開発と社会変革に直接関わろうとする非営利組織が増え、また、その資金源が多様化するに伴い、非営利組織の正当性、透明性、アカウンタビリティを問う声が高まってきた。

 政府や企業セクターにおけるアカウンタビリティ重視の傾向が非営利セクターに影響している面もある。

 日本でも近年公益法人の不祥事がマスメディアに頻出し、社会の信頼を損なう原因のひとつとなっているが、程度の差はあるものの、同様の懸念はアジア太平洋の多くの国に共通している。不祥事をきっかけに政府規制が強化されるのを防ぐために、また多くの人々から支援を得て社会のニーズに効果的に応えるために、セクターの内部で、アカウンタブルで透明性のある事業展開を可能にする自律的なメカニズムを生み出すことが求められるようになってきている。

 そのために必要とされているのは、非営利組織の「組織ガバナンス」の向上であり、その方策を各国で共有することが急務である、という認識であった。

 このテーマがAPPCの2002~2003年の研究課題として採用されたのは、マニラ会議をさかのぼること1年前の2002年夏のことで、APPCでは早速このテーマに関して12カ国・地域の比較調査プロジェクトを開始した。

 2002年秋から2003年5月にかけて行われたこの調査は、オーストラリア、バングラデシュ、中国、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、パキスタン、フィリピン、台湾、タイの研究者と実務家が、それぞれの国・地域における非営利組織のガバナンスの制度慣行、ガバナンスに関する政府規制の動向、非営利セクターとしての対応や成功事例などをまとめマニラ会議に提出する、というものであった。

 日本国際交流センター理事長の山本がプロジェクト全体の主査となり、日本のカントリーペーパーは不肖ながら筆者が執筆することになった。民法34条による公益法人とNPO法人のふたつの法人類型をとりあげ、理事会と情報公開の制度と実態、JANICや公益法人協会が取り組んでいるセクター内部の自己規制のメカニズム構築の取り組みなどについて紹介した上で、日本のガバナンス向上の課題として次の3点を論じた。

 すなわち

  1. 理事の責任と権限を明確にし理事会の強化をはかることが必要である。ただし、米国型の理事会強化モデルは必ずしも有効ではないかもしれない。日本の実態にあった理事会強化の方策を検討することが必要。
  2. インターネットなどを使った業務・財務資料の情報公開が急務である。さらに、公開される財務情報を分かり易いものにするための基準づくりが必要である。一方、組織にとってネガティブな情報をどこまで電子的にあきらかにするか、情報公開に伴うコストの問題など課題も多い。
  3. 日本の非営利組織のガバナンスをめぐる最近の議論は、適正運営やマネジメントの側面のみに焦点があたっている。適正な会計処理がされているか、専横を防ぐ牽制機能があるか、業務財務資料を公開して外部の監視を受けているか等は重要なチェック事項ではあるが、それだけに注目しすぎると、本来民間非営利組織がもつパイオニアスピリットやダイナミズムを削ぐことになりかねない、というディレンマがある。

     税収をもとにし、公平性を求められる政府セクターと違い、民間非営利組織の本領は、時にはリスクを覚悟で先進的な仕事をすることにある。監視するのであれば、マネジメントばかりでなく、ミッションや成果も対象にすべきだろう。「非のうちどころがないほど正しく運営されているが、成果があまりあがっていない」組織と、「際立った成果をあげているが、運営が若干ルーズな」組織のどちらがよいかは、一概には言えない。

     組織運営の適正さだけに焦点をあてたガバナンスの論議では、後者のようなタイプの組織を発展させる土壌が育たない。ガバナンスの指標のひとつに、理事会の機能、アカウンタビリティ、透明性、牽制機能などと並んで、組織のミッションを達成する能力というような項目も加えるべきではないだろうか、

というような考えを述べた。

 他国の調査では、それぞれの国の事情を反映して多種多様な論議が展開されたが、いくつかの共通する点も浮上してきた。非営利組織の組織ガバナンスとは、財務や事業報告の公開義務を果たすという自己防衛的なアプローチだけではなく、ミッションを説明する能力を強化する等のプロアクティブなアプローチが求められているのではないか、という点は多くの論文で論じられていた。

 また、理事会の機能強化はガバナンス向上の方策として多くの国で課題として取り上げられたが、同時に欧米からの「輸入」理事会モデルが果たしてどれほど機能するのかという危惧も多くの国に共通のものであった。

 マニラ会議では、このような議論がさらに拡大された。

 上記共同研究の成果報告(山本正)に続き、フィリピンのNGO税制優遇資格審査協議会(PCNC)による認証制度の実績(同協議会Fely Solidad氏)、日米の国際開発NGOの事例をもとにNGOが組織のアカウンタビリティを考える際に参考となるフレームワークを提示した研究の報告(ハーバード大学ハウザーセンター、デービッド・ブラウン教授)、非営利組織のアカウンタビリティ報告書”ACCESS Reporting”の試み(アガカーン財団のデービッド・ボンブライト氏)など、各国で実際に行われているノンプロフィット・ガバナンス関連の議論や取り組みが紹介され活発な意見交換が行われた。

 分科会でも理事会や事務局強化のための取り組み、情報公開などについて議論が行われた。政府の規制によるのではなく、セクターとして自己規制のメカニズムを整えることが重要であり、そのための行動指針や倫理基準、評価や認証システムの開発に注目が集まり、その促進力として各国のアンブレラ組織の重要性が確認された。詳細は、マニラのAPPC事務局から会議報告書が公開されているのでご覧いただきたい。

 新しいテーマであっただけに、「組織ガバナンス」の定義が必ずしも明確ではなく、分科会などでは議論がすれ違いになりがちなもどかしさを感じたこともあったが、APPCにとどまらず、さらに多くの会議でこうした議論が重ねられて、次第に明確な概念が形成されていくことを期待したい。

 欧米のシビルソサエティの情報には接することが多いが、アジアのNGOや財団に関しては勉強不足であった筆者にとって、同じセクターで仕事をするアジアの仲間の知己を得たことは大きな収穫だった。そして、日本のNPO法と公益法人改革の行方を、アジアの関係者は注目していることも痛切に感じた。情報発信に務めなければならない、と気を引き締めた3日間だった。

  • APPCに関する詳しい説明は日本国際交流センターのAPPCページへ

    http://www.jcie.or.jp/japan/cn_appc/

  • マニラ会議の詳細はAPPCサイト(英文)のAPPC Conference.2003へ

    http://www.asianphilanthropy.org/ndev/index.cfm

会議終了後フィリピンの観光大臣(中央)が歴史記念館を案内してくれた

●伊藤聡子(いとう・さとこ)

 財団法人 日本国際交流センター チーフ・プログラム・オフィサー。

 慶応義塾大学卒、ロンドン大学東洋アフリカ学院修士課程修了。民間企業勤務を経て1988年より日本国際交流センター勤務。リーバイ・ストラウス財団など米国の財団との協働による社会貢献プログラムの運営のほか、アジア太平洋フィランソロピーコンソーシウム(APPC)への協力活動、英文ニューズレター『シビルソサエティ・モニター』の執筆編集などに従事する。リーバイスの助成プログラムでは特にHIVエイズ、移民難民問題等の分野のNPOを専門分野とする。執筆論文に「地域社会の多文化化と市民活動」(山岡他編『協働社会のスケッチ』2001年)、「NPOと外国籍住民」(毛受他編『草の根の国際交流と国際協力』2003年)、”Japan” country report, submitted to APPC Conference on Governance, Organizational Effectiveness and the Nonprofit Sector(Manila, 2003)など。

2004.02.24

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