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その他ニュース

2010年02月03日 10:00

その他 : 民主党、NPOと定期的な意見交換で政策形成

1月28日、民主党は「『新しい公共』をめざした市民と民主党の政策形成プロジェクト」の第1回意見交換会を開催した。国会議員約30人やNPO/NGO関係者ら100名超が参加。NPO関連制度・税制について、NPO側が説明・提案。今後は月1回程度開催する予定。

「『新しい公共』をめざした市民と民主党の政策形成プロジェクト」は、民主党がNPO/NGOと共に進めるプロジェクト。

社会の複雑化や多様化により、NPOや企業、市民が公共・公益についても重要な役割を担いつつあるが、制度や予算などは使いづらいものも多く、まだまだ改善が必要との問題意識の下、新たな制度や政策を構築することを目的としている。

民主党は昨年7月14日に「市民パワーと民主党の懇談会」を開催。その際に、NPOとの定期的な政策議論の場を持っていくことを表明していた。

参考イベント報告「NPOと政党の政策討論会『市民パワーと民主党の懇談会』」
/2009/09/npoと政党の政策討論会「市民パワーと民主党の懇/

28日の第1回意見交換会は民主党本部5階ホールにて開催。テーマは「NPOを巡る制度・税制のあり方について」だった。特定非営利活動法人(NPO法人)制度や公益法人制度、NPOバンク、中間支援組織について、NPO側の説明や提案が行われた。

民主党企業団体委員会委員長代理で参議院議員の谷博之氏が7月14日の懇談会に触れ、政権を担う立場にもなり、政策議論を具体的に実行するために、プロジェクトを立ち上げて会合を開いたと趣旨を説明した。

谷氏の司会進行の下、はじめに、民主党常任幹事会議長で参議院議員の前田武志氏が挨拶。


(当日の様子 挨拶する細野氏 1/28)

続いて、民主党企業団体委員会委員長で衆議院議員の細野豪志氏が「7月の会合以降、進め方についてNPOの方々と検討してきた。この会合をプラットフォームとして位置付け、NPOの皆さんとパートナーシップを築いていきたい。今後はテーマを決めて、月に1回程度開催していきたい。」と述べた。

また、自身の阪神淡路大震災でのボランティア経験をはじめ、NPOへの個人的な想いも語った。
「以前、NPOはどちらかというと権力と緊張関係にあったが、15年前の阪神淡路大震災以後、変わってきた。その一方で、行政の側に『道具』『下請け』としてNPOを使うということが残っているのではないか。」と指摘。「対立でもなく、下請けでもなく、パートナーシップで、『新しい公共』を一緒に育てていきましょう。」と呼びかけた。

次に、NPO側から4名が登壇。「NPOを巡る制度・税制のあり方について」説明・提案を行った。

●特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 事務局長松原明


(当日の様子 説明する松原 1/28)

特定非営利活動促進法(NPO法)の改正と認定NPO法人制度(NPO支援税制)の抜本的な改正、寄付税制の拡充の3点を指摘した。
特定非営利活動促進法(NPO法)の改正については、法律名・法人名称の変更や認証期間の短縮、インターネット公開の強化、個人情報保護、不適正な法人への対応強化などが必要と訴え、議員立法による改正を要望した。

認定NPO法人制度(NPO支援税制)については、パブリック・サポート・テストの抜本改正やみなし寄付金制度の拡充、数値目標の設定、一層の書類削減・手続き簡素化が必要と説明した。また、一般のNPO法人税制についても、小規模法人に過大な税務負担があると指摘。小規模法人向け法人税の免税店制度や簡易申告制度導入を提案した。

寄付税制については、拡充されつつあるもののまだ貧弱と指摘し、寄付金控除制度を拡充し、年末調整の対象化や繰り越し控除の導入、税額控除方式の導入などを提案した。

使用したスライド資料は下記を参照(PDFファイル)
https://www.npoweb.jp/pdf/20100128DPJ.pdf

●公益財団法人公益法人協会 理事長太田達男氏


(当日の様子 説明する太田氏 1/28)

太田氏は昨年、政府に提出した要望書の内容に基づき、以下の4点を要望した。
・不適切な審査・指導を改めること
・審査事務を抜本的に簡素化すること
・政府関連公益法人の見直しと新公益法人制度への移行を切り離すこと
・一般社団・財団法人法と公益認定法の改正

参考ニュース「公法協、新公益法人制度の運用改善を要望」(2009/12/21)
/2009/12/その他-公法協、新公益法人制度の運用改善を要/

説明の中で、太田氏は「旧公益法人(特例民法法人)も24000団体が存在する。一般のイメージとは異なり、職員は平均3名程度で、小規模な法人がほとんどだ。NPO法人だけでなく、公益法人も大変。」と公益法人の実態理解を求めた。

また、政府関連公益法人の見直しで問題になっている天下りについて、「省庁出身者の中にも必死に公益法人で活動している人もいる。」と語った。

法人格を超えたセクター全体の取り組みとして、日本サードセクター経営者協会(JACEVO)や、広く寄付文化を醸成していこうとしている日本ファンドレイジング協会の事例を紹介。

最後に「現在の非営利法人制度はバラバラで、180以上ある。バラバラな法律に基づく機関設計・役員の権限と責任・情報公開の範囲・会計基準などが問題。寄付税制を統一化していこうとすると同じような形が必要。」と述べた。

●特定非営利活動法人北海道NPOバンク・NPOバンク事業組合 理事北村美恵子氏


(当日の様子 説明する北村氏 1/28)

北村氏は、主に事業型NPOを融資という形で支援しているNPOバンクの取り組みを進める上での課題を説明し、2点を提案した。

・貸金業法の第4段階施行で導入される指定信用情報機関制度において、NPOバンクを適用除外とすること
・NPOバンクを含めた市民活動を支える新たな非営利金融システムを、貸金業法に基づく貸金業者とは異なる新しい制度として構築すること

●特定非営利活動法人市民活動センター神戸 事務局長実吉威氏


(当日の様子 説明する実吉氏 1/28)

実吉氏は、NPOを支援する中間支援組織の現場での経験から、バウチャーを活用した「アドバイザー派遣」事業を提案した。

その後、会場の参加者との意見交換が行われた。

会場からは「定期的な開催は歓迎するが、テーマごとにより深い議論ができないか。」といった意見や、「提案も結構だが、どう実現するかが大事だ。それぞれの提案について、官僚・NPO・議員が
数名のプロジェクトチームをつくって、きちんと政策化していくプロセスを提案したい。」という提言もあった。

また、認定NPO法人制度について、現場の認定NPO法人関係者から「認定NPOは手間暇かかる割にメリットが少ない。ハードルも高い。NPOに新しい公共の一部を担わせようと思うのであれば、もう少し取りやすいように改善してほしい。」との要望も出された。

他にも、「まず必要なのは、『市民活動白書』のような統計や調査で、実態をきちんと把握することではないか。また、政府系の独立行政法人が実施する助成金では、無駄な書類を沢山書かなければならない。
改善を希望したい。」との指摘や「現場の活動に時間を取られ、資金に余裕もないため会計スタッフを雇えない。支援が欲しい。」との意見もあった。

最後に、今回のプロジェクトにおけるNPO側の世話人(一部)が紹介された。

●特定非営利活動法人日本NPOセンター 山岡氏
対話の機会を嬉しく思う。議員も多数参加され、議論できたことがよかった。様々なところで政策論議を展開していきたい。これから4~5回、テーマ別にやっていく。

●財団法人日本国際交流センター 勝又氏
市民活動の制度や環境を整えていかなければならない。多くの議員が参加されたことは重要だ。これからも、本当の意味での対話を、政治主導でお願いしたい。NPOで実践されている議員が多いので、何が「公共」であり、何が市民活動を本当に育てていくのか、一緒に考えてください。

●特定非営利活動法人市民福祉団体全国協議会 平野氏
この場だけでは全てを解決できない。ネットワークを広げていくことが必要だ。「新しい公共をつくる市民キャビネット」も設立する。議員とNPOとの政策合意を考える場を創っていきたい。

●特定非営利活動法人子どもNPO・子ども劇場全国センター 竹内氏
政治がNPOとパートナーシップをつくろうとしていることに大きな期待を持っている。

●特定非営利活動法人NPO事業サポートセンター 池本氏
7月の会合後、いよいよ実行するフェーズが来た。自分のような若い世代がNPOで働きながら、生活していける社会をつくることが必要だと思っている。

最後に、細野氏から、まとめの挨拶があった。
細野氏は「本日いただいたご提案については、一旦引き取らせていただき、しっかり検討したい。昨日、政府の方でも、昨日「新しい公共」円卓会議を立ち上げた。党の方は、受け皿として広くしておきたい。陳情については、いろいろとご批判もあるが、対話のなかで政策を創っていくことが、政治のあるべき姿だと思っている。今後もご参加いただきたい。ありがとうございました。」と述べ、今後の方向性を示した。

7月14日から時間は経ったが、政策形成をNPOと共に行っていこう動きが、民主党から生まれてきたことは歓迎したい。

政府でも1月27日に、「新しい公共」円卓会議が発足した。従来型の各省庁(官)が中心的に担い、価値規定してきた「公共」を、市民・NPO/NGO・企業など様々な社会の構成主体が参加しながら、創りあげていくという「新しい公共」実現は、共通理解として広がりつつあるようだ。

参考ニュース「政府の『新しい公共』円卓会議が発足」(2010/01/29)
/2010/01/その他-政府の「新しい公共」円卓会議が発足/

今回の会合でも触れられていたが、NPOが「行政の下請け」から脱却するには、政策形成段階での参画が不可欠である。与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら政策を提言し、市民や議員、行政職員と議論して創っていくのが「新しい公共」であろう。

今後、このプロジェクトがどれほど深い議論ができるのかは、まだ分からない。当面は試行錯誤が続くと予想されるが、今回の民主党の試みに、引き続き注目したい。

他に、意見交換会に参加した議員は以下の通り(確認できた方のみ・順不同)。

石毛えい子 衆議院議員
大河原雅子 参議院議員
山花郁夫 衆議院議員
阪口直人 衆議院議員
平智之 衆議院議員
松崎哲久 衆議院議員
山崎摩耶 衆議院議員
小原舞 衆議院議員
橋本博明 衆議院議員
向山好一 衆議院議員
江端貴子 衆議院議員
室井秀子 衆議院議員
初鹿明博 衆議院議員
今井雅人 衆議院議員
若井康彦 衆議院議員
皆吉稲生 衆議院議員
石田三示 衆議院議員
熊谷貞俊 衆議院議員
小室寿明 衆議院議員
藤田大助 衆議院議員
金森正 衆議院議員
岡田康裕 衆議院議員
柿沼正明 衆議院議員
仁木博文 衆議院議員
中林美恵子 衆議院議員

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