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ファンドレイザー奮闘記-2-

2010年06月11日 15:28

認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金 菅波 完さん

ファンドレイザー奮闘記-2-

認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金 菅波 完さん

●高木仁三郎市民科学基金(高木基金)について

高木基金は、2000年10月に亡くなった高木仁三郎さんの遺志によって設立された助成基金です。高木仁三郎さんは、在野の立場から、核・原子力の問題に関する調査研究、政策提言等にとりくみ、文字通り、「市民科学者」として、脱原発の運動に生涯を捧げました。

高木基金は、高木仁三郎さんが残した遺産と、その理念に共鳴してくださった方からの会費・寄付を財源として、「市民科学」を志す市民グループの調査研究活動や、将来の「市民科学者」を目指す人の留学・研修等を助成しています。

具体的な助成対象は、原発の「安全性」の批判的検証、産廃処分場の環境や健康への影響調査、大型開発事業による自然破壊の問題にかかわる調査等で、学術的な研究予算や、企業系の助成金などからは資金を得にくいテーマを優先してきました。

設立からの9年間で、のべ154件の調査研究・研修に、合計8,326万円を助成してきましたが、多くの人たちからの会費や寄付により、助成金の原資だけでなく、選考や広報などに関わる事業費、法人の運営に関わる管理費などをまかなうことができましたので、現在でも、高木仁三郎さんの遺産と同額(約3,000万円)の基金を維持しています。

団体のホームページはこちら
http://www.takagifund.org/

【ファンドレイジングの具体的な事例紹介】
●故人の遺産をもとに、「後進の育成」を目指す基金を設立したこと

高木基金を設立したこと自体が、高木基金におけるファンドレイジングの最大の「成功事例」だといえると思います。

高木仁三郎さんは、がんを患い、闘病生活を続けていた2000年の7月に、「高木基金の構想と我が意向」という「遺書」を書きました。その中で、「私の葬儀等は、ごく身内のものだけにして、そのかわり、幅広い人たちの参加できる、少し大がかりな「偲ぶ会」を開き、参加者に呼びかけて高木基金の会員になってもらう」こと、そしてその基金によって、次の世代の「市民科学者」を支援、育成してほしいと述べ、高木基金の枠組みを示しました。

2000年12月に行われた「偲ぶ会」には、2,500名以上の方が参加しました。「偲ぶ会」当日や、その前後に寄せられたお香典、高木基金への会費、カンパなどは、約5,000万円に及びました。

これによって、高木基金は、高木さんの遺産(約3,000万円)と合わせた、約8,000万円の資金をもとに発足し、事業を開始しました。

社会的な業績を残した方などが、遺産をもとに、その方に続く、次の世代の育成のために基金を設立する、という構想は、高木基金に限らず、いろいろな分野であり得るのかと思いますが、高木基金の場合は、特に、高木仁三郎さんが、基本的なミッションを明確にし、また、運営に関わる理事や選考委員のメンバーについても、基本的な人選を示し、さらにその方々が熱心に運営に参加してくださったことなどが功を奏したのだと思います。

【ファンドレイジングの具体的な事例紹介】
●継続的な支援者に恵まれたこと

菅波自信は、設立後の2年目の途中から事務局を引き受けましたが、意識してこだわってきたことは、「偲ぶ会」からの2,500名もの支援者に、定期的に事業活動等の報告をして、継続的な支援を呼びかけることです。

注意したのは、支援のお願いなどを連発しすぎないこと。特に、一人一人の支援者の方について、前回の支援はいつで、今は、お願いをすべき時か、むしろお礼をすべき時か、といったことに注意し、できる限りきめの細かいフォローをしてきました。

そのために、支援者・協力者などのデータベースを(できるだけシンプルに)構築し、会費や寄付の入金履歴、発表会などへの参加や電話や手紙などでの接触の履歴を、データベースに記録するようにしてきました。

それらの効果として、高木基金では、多くの方からの継続的な支援がいただけていると思います。

<参考> 2009年度の支援者は、673名。そのうちの480名が「偲ぶ会」の頃からの支援者。
「偲ぶ会」に参加した2,500名が、500名以下に減少したともいえますが、例年の支援者数は、過去数年700名前後で推移しており、その中の480名は、支援者層のコアだといってよいと思います。中には、数年ブランクがあったあとに、また支援してくださる方もおり、今後とも、「偲ぶ会」の頃からの支援者層には、継続的にニュースレターを送るなどのフォローをしていくことが大切だと考えています。

【ファンドレイジングの具体的な事例紹介】
●認定NPOとして承認されたこと

高木基金は、2006年に認定NPOに承認されました。高木基金の収入は、ほぼ100%が会費と寄付ですし、きちんとした会計処理には心がけてきましたので、認定NPOの条件は、十分にクリアしていると思っていましたが、高木基金は、国策に対する批判的な研究にも助成する団体ですから、そのような点から、本当に承認されるかどうかには、不安がありました。実際には、原発に関連する調査への助成が、「特定のものの意に反する活動」に分類されることもなく、スムーズに承認されました。

認定NPOになったことは、以前からの支援者の方からも好評でした。また、新規の支援者の方に、どこで高木基金を知ったのですかと尋ねたら、「国税庁のホームページで寄付する先を探していたら、高木仁三郎さんの基金を見つけたので、寄付することにしました。」ということもありました。

認定NPOになることで、信頼性が高まり、寄付を受けやすくなったと思います。寄付の集まり具合の要因分析をすることは、なかなか難しいですが、実際に、認定NPOに承認された、2006年度以降は、ほぼ、収支が均衡するようになりました。(それ以前は、赤字を計上しながらも、一定の助成規模を維持しながら、理解者、支援者の開拓に努めてきました。)

【組織としての取り組みの成功例】
●正確で効率的な事務体制の構築

ファンドレイジングというのは、突き詰めれば、「費用対効果」だと思います。広報にしろ、支援者へのフォローにしろ、お金と人材が潤沢であれば、様々なことができますが、NPO等では、限られた時間と人手で、いかに効率よく支援を呼びかけるか、ということにつきると思います。

その点では、支援者のみなさんから、会費や寄付が振り込まれた際の、入金確認から領収書の発送などを、いかにスムーズかつ正確にこなすか、ということには注意してきました。事務が正確であるということは、支援者のみなさんに信頼してもらうための大きなポイントだと思っています。

その上で、前にも述べたとおり、支援者のデータベースを構築し、支援の履歴等をきちんと記録し、その方には、どれだけ支援して頂いているのか、前回の支援はいつか、次はいつ頃お願いすべきかといったことを、なるべくきめ細かくフォローするようにしています。(事務的には、かなり煩雑になる面もありますが、そこは意識して手間をかけています。)

また、大口の支援を頂いたときは、すぐに事務局長、代表理事に報告して、事務局長からのお礼状を送るようにしています。それによって、事務局側では、定型的な領収書発送に専念することができています。

【残された組織的な課題】
●ミッションの理解者、新規支援者の獲得

おかげさまで、高木基金には、毎年700名くらいの方が支援をしてくださいます。一人あたりの支援金額は、1万円強で、これによって高木基金の収入の基盤が支えられています。

これを大切にし、継続して支援が頂けるようにすることについては、これまでに述べたような地道な取り組みで、ある程度成果が上がっていると思いますが、課題は新しい支援者を増やすことです。その点では、今でも手探りの状態で、あまり成功しているとはいえません。

もともと高木基金は、非常に独自性の強い活動をしています。助成金を支給する財団や基金は数多くありますが、高木基金の目指す「市民科学」というテーマは、一般的な科学技術やアカデミズムに対するオルタナティブであり、その軸はぶれていないと思います。そこをきちんとアピールする中で、理解者、支援者を広げていきたいと思っていますが、もう少し、工夫をしなければ、とも思っています。

【教訓!】
●教訓ではなく、担当者(菅波)の私見(仮説)ですが・・・

1) 新規開拓のファンドレイジングと、継続維持のファンドレイジングは別々の方法論が必要。

2) 新規開拓には、「成功しそう、役に立ちそう」と思われるだけの活動計画(ビジネスモデル?)をうまく示すことが必要。
(大風呂敷を広げること、タイミングを見逃さないことも大切な能力。高木基金の設立は、まさにそのような事例だと思います。)

3) 継続維持は、地道な情報発信に努め、参加意識を持ってもらうようにする努力と、それをできるだけ効率的にやるような工夫につきる。
(誰でも思いつくようなことを、コツコツていねいにやり続けられるかどうか。)

4) たくさんの人の寄付に支えられて活動ができるということは、本当にありがたく、うれしく、誇らしいこと。そのためのファンドレイジングは、きついけど楽しいし、やりがいのある仕事だと本音で思えることが、大切なのではないでしょうか。

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