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NPOと自治体

2007年08月23日 17:27

パートナーシップ(1)特定非営利活動法人子どもの虐待防止ネットワークあいち(CAPNA)

コーナーのご紹介:

このコーナーでは、NPOが実際に取り組んでいる地域課題を通して、NPOと自治体のパートナーシップがどうあるべきかについて考えていきたいと思っています。

活動の現場で実際に起きていることを通じて、NPOの限界、行政の限界がどういう点にあるのか、またそれぞれが果たすべき役割は何かについて、浮き彫りにしていきます。


団体名:

 特定非営利活動法人子どもの虐待防止ネットワークあいち(CAPNA)

【団体概要】

子どもの虐待防止ネットワークあいち(CAPNA)は、子ども虐待の防止を目的として活動するNPOです。医師や弁護士などの専門家、子どもに関わる施設や機関の職員、主婦や学生など多様な立場の人々が参加しています。1995年、勉強会の開催と虐待防止ホットラインの活動から始まって、現在は子どもの利益を最優先に考え、現実的に子どもを救うための支援や虐待問題理解をすすめる啓発活動などの事業を行っています。

【協働事業の内容】

CAPNAは、愛知県と名古屋市の児童相談所との間で、協働のための協定書を取り交わしています。児童相談所とは、子どもの虐待が疑われる家庭への訪問や調査をする権限を持ち、虐待を受けている子どもの救出や保護の中心的役割を担う機関です。

結ばれた協定書には、まず行政とNPOとが連携する目的が記され、次に情報交換による協力とそのための秘密保持が確認されています。また、組織間の連携を進めることや、相談・援助技術の協力を推進することといった、行政と民間が共通の目的のもとにお互いの強みを活かして柔軟に協力する姿勢が明文化されています。

CAPNAが開設している虐待防止ホットラインには、時として虐待の通報が寄せられることがあります。協定書が取り交わされる前は、ホットラインに入った相談のうち緊急な支援が必要なケースを児童相談所に通報した後、そのケースがどのように扱われたのかを知ることができませんでした。医師や弁護士には職業上の守秘義務規定があるため、こうした専門職のメンバーがケースに関わることはできても、CAPNAが組織としてケースに関わることはできなかったのです。

協定を結んだことで、CAPNAと行政機関が対等に情報をやりとりすることができるようになり、「児童虐待の防止を目的とした連携」が具体的に進むようになってきました。

兼田さんの写真

専務理事の兼田智彦さん

【協働事業の背景】

「子どもの虐待」は、孤立した家庭の中に何かのきっかけで暴力が生まれ、その暴力に子どもがさらされてしまうことです。最近、社会に衝撃を与えるようなひどい虐待事件が報道されていますが、子どもの虐待の問題は昔からあります。しかし近年、社会が急速に多様化する中で家庭が孤立しやすくなり、子育て中の家庭に適切な支援が得られないことも増え、虐待を防ぐことはますます難しくなってきています。

このような社会の変化を受けて、子どもの虐待予防対策を進める必要性が高まり、従来の児童福祉法では子どもの虐待対策には不十分であると、2000年「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」が制定されました。この法律には、「虐待防止のために、関係機関は民間団体との連携を進めなければならない」という一文が書き込まれました。複雑でデリケートな家族の問題に柔軟に対応し、虐待の早期発見や予防するには、日常的に支援を得やすい環境づくりを整えることが重要です。その実現のためには、地域での見守りや子育てで苦しんだ経験を持った地域の多様な人や民間団体が、家族に関わることが有効であることが明文化されたのです。

この法律の制定により、各地で行政とNPOとの連携による虐待防止を進めようとする流れが起きました。愛知県でも、県下の各自治体とNPOとの協働の方法が具体的に検討されるようになりました。

同じ2000年、愛知県で児童虐待防止の専門家の全国会議である、日本虐待防止研究会(JASPCAN)の第6回大会が開催されました。CAPNAはこの大会の事務局をNPOとして初めて運営し、専門家3500名、一般市民2000名が参加する大規模な集会を成功させていました。集会の成功はCAPNAの知名度を高めるとともに、関係機関とのネットワークを深め、団体の信用も高まりました。

このような背景から、愛知県行政が子どもの虐待防止のために積極的に民間と連携しようという動きが起きたとき、パートナー団体として真っ先にCAPNAの名前が挙がったのです。

電話相談の写真

電話相談の様子

【協働事業の成果】

行政機関には、危機状態の家庭に強制力を持って介入し、子どもを救出する権限があります。しかしながら、緊急支援の後の時間のかかる家庭支援については、専門の担当者が少なく、また数年で担当者が変わっていくことも多い行政機関では十分な役割が果たせないこともあります。CAPNAとの協働により、家庭との信頼関係をゆっくりと築いていかなければならないような、きめ細かな家庭支援や継続的なケースの見守りをCAPNAに任せることができるようになりました。

CAPNAには、CAPNA弁護団という虐待問題に明るい弁護士のグループが関わっており、法的な課題解決に専門的な経験やノウハウを持っています。また、CAPNAの活動には、児童福祉司や養護施設関係者、教育関係者などの多様な立場の人々が関わっています。このような人的ネットワーク、情報、経験といった問題解決に必要な資源の共有も、先に紹介した協定を結ぶことで徐々に可能となってきました。

この協定は、問題解決に必要な連携に実効性を持たせる最低限のラインを作りました。CAPNAは、この協定書により守秘義務規定が明確化され、児童相談所が行う虐待のケース検討会議や連絡調整会議に組織として出席できるようになりました。CAPNAに救援を求められたケースの情報がフィードバックされ、フォローアップが可能になるなど継続的なケースへの関わりへの道も開かれました。

また、こうした関係が足がかりとなり、厚生労働省の「子ども家庭支援員」養成事業や、文部科学省の学校関係者向け研修会など、国レベルでの協働事業に参画する土台も作られました。子ども家庭支援員養成事業は、虐待の疑いがあるなど支援が必要と判断された家庭に対して訓練を受けたボランティアが継続的に訪問する事業で、初年度(2002年)の名古屋市の養成者30名中13名がCAPNAのメンバーです。

田島さんの写真

事務局の田島淑子さん

【協働の課題】

虐待問題では、特に救援対象者のプライバシー保護など厳しい守秘義務が課せられるため、介入の権限を持つ児童相談所が問題へのすべての責任を引き受けるという状態が長く続きました。このことは児童相談所の負担を大きくしただけでなく、「子どもの虐待は役所が何とかするはずだ」という市民の無関心をも生みだしました。

さらに虐待問題では、病院や学校など子どもに関わる多様な機関が連携する必要がありますが、責任を引き受ける難しさから、機関それぞれが専門的な権限に閉じこもって問題解決に組織として動かないという現象も起こりがちです。医師や教師が個人の関わりの中で虐待問題に熱心ということはあっても、それがなかなか組織同士の関わりへとつながっていきにくいのです。

どこかの機関がすべての責任を担うのではなく、問題に気がついた人一人一人が行動を起こしていくことは、子どもを虐待から具体的に救い、虐待を予防していくためにもっとも必要なことです。多様な人を巻き込む力があるNPOと、権限を持った行政とが対等な立場で協働することは、このような意味からも重要な取り組みと言えます。

現在、地域のイベントや研修会を任されるなど、CAPNAの知名度や影響力・啓発力が高まる一方で、「多様な立場の市民が、地域にある身近な問題として虐待問題に取り組める場」であるはずのNPOが「地域の虐待の問題はCAPNAに任せればいい」という新たな無関心を生み出しかねないという問題が生まれています。

子どもに関わる地域のあらゆる資源をどのように巻き込めば、虐待という課題が市民一人一人のものになっていくのかという新たな課題が課され始めているのです。

【結び】

NPOと行政の協働は「相手のニーズに応えつつ、相手をうまく利用しながら自分たちの目的を達成できるかというせめぎあいだ」という言葉がインタビューの中にありました。

問題に対して権限で介入し、指導、助言を行う行政と、問題と対等に関わりながら、共に解決に向けて歩もうとするNPOの立場は、課題に対する視点もその解決方法のあり方も全く異なっています。異なる二者の協働事業で、目的達成へのせめぎ合いが生まれるのは当然のことでしょう。

双方のアプローチがどちらも必要であることをふまえ、立場の違いを超えてよりよい問題解決を目指すのが協働事業の意義であるとすれば、お互いの事情をすりあわせながら対象者の利益を最優先に考えた問題解決に導くための積極的なリーダーシップがNPO側に不可欠です。それは、行政との間に単なる衝突を起こすだけでなく、問題解決のための新たな方法を導き出すのだと思います。


■ 団体概要

設立:

1995年

事務局:

愛知県名古屋市

設立目的:

子どもの虐待防止のために、様々な分野の専門家、市民が集まって設立された民間市民活動団体。

主な事業:

  1. CAPNAホットライン(虐待防止のための電話相談)の運営
  2. 危機介入(虐待を受けている子どもの救援)
  3. 調査研究(虐待死事件の調査と出版、研究会議などでの発表など)
  4. 社会啓発(講演、セミナー、取材協力など)
  5. 予防・援助(子育ての悩みを持つ母親への援助やケア、保育支援など)

代表:

岩城正光(理事長)

スタッフ:

パートタイム2名、電話相談スタッフ(ボランティア)約100名

会員数:

約750名

直近の決算額:

約1400万円(2002年決算)

URL:

http://www2.ocn.ne.jp/~capna/

■ 取材関連情報

取材日:

2004年1月5日(月)14~16時

場所:

CAPNA事務所(愛知県名古屋市丸の内)

対応者:

兼田智彦(専務理事)、岩城正光(理事長・弁護士)、田島淑子(事務局・相談スタッフ)

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