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【セミナー報告】 11/19 大阪 環境NPOのための政策提言入門セミナー

2011.12.19
1. 実施概要  

(敬称略)

日時

20111119日(土)10:0012:00

場所

大阪市立自然史博物館

主催

NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会

参加者

20

講師

日本自然保護協会:道家哲平

CEPA-JAPAN:川廷昌弘

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会:藤本秀弘

共催

大阪市立自然史博物館

協力

公益財団法人日本自然保護協会、生物多様性かんさい、地球環境パートナーシッププラザ

当日スタッフ

シーズ:北澤・池本・奈良・木村・大庭

助成

三井物産環境基金

プログラム

1.はじめに 

環境政策提言の進め方解説(シーズ:北澤)など

2.講演① 

NACS-J 道家哲平

COP10決議など国レベルでの取り組みの現状、その実現のために地域のNPOに求められる役割

3.講演②

CEPA-JAPAN川廷昌弘

生物多様性に関する普及啓発活動の現況、地域のNPOに求められる役割

4.事例紹介

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会:藤本秀弘

活動紹介

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会の政策提言活動について

5.グループディスカッション

 

山門の事例をベースに、政策提言活動のポイントについて掘り下げていく

FGを使って、山門とシーズの主張を整理

6.おわりに

まとめ






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2. セミナー要旨
(1)はじめに


主催者(シーズ北澤)よりセミナー開催の挨拶、主旨説明を行った後、環境政策提言の基本的な進め方について、シーズ北澤より解説を行った。政策提言で重要なことは、政策を実現する為のプロセスであり、課題に関わる主体をどのように巻き込んでいくのかがポイントであると紹介した。

(2)講演①:日本自然保護協会 道家哲平氏

CDB-COP10の成果と課題を踏まえ、愛知ターゲットの内容と日本の政策やNGOの役割について発表された。

【発表のポイント】

  • COP10決議には拘束力はないが、日本も世界基準の政策を「やります」と宣言した点に意味がある。
  • 今後10年間に取り組むべき目標である愛知ターゲットとその戦略目標について解説。愛知ターゲットの戦略目標は、色々な現場で使えるツールになる。戦略目標を活動のチェックリストとしながらNPO活動を進める事を提言した。
  • 愛知ターゲットは、自然保護団体だけでは実現不可能であり、みんなが参加するプロジェクトが必要である。そこで、IUCN-Jで「にじゅうまるプロジェクト」を展開し、戦略から行動へつなげようとしている。
  • NACS-Jとしては、「生物多様性の道」プロジェクトとして、活動の見える化を行うと同時に、市民参加による戦略づくりを行っている。

(3)講演② CEPA-JAPAN 川廷昌弘氏

NGOと民間企業のノウハウを併せ持ちながら、生物多様性に関する普及啓発活動に取り組むCEPA-JAPANの目指す姿や、現在取り組んでいることなどを報告した。

【発表のポイント】

  • CEPAは、Communication Education Public Awarenessの略。生物多様性は地域固有の財産であり、人類存続の基盤である。こうした概念にもとづき、現代の継承者として皆さんの活動を発信する役割をもっている。
  • 昨年のCOP10では、NGOとして修正決議の発言の機会を得た。国連生物多様性の10年は、国際森林年、Rio+20、気候変動枠組み条約、ESD、ミレニアム開発目標最終年を迎える年でもあり、目指す姿は一つ。地域の自然資源に支えられた持続可能な地域づくりである。
  • これまで、広告代理店としてチームマイナス6%という国民運動を行ってきた。そこでは、ボトムアップのためのトップダウンを行ってきたが、同じかたちで生物多様性の国民運動である「にじゅうまるプロジェクト」も展開していきたい。
  • その他にCEPAが横浜を拠点に活動していることから、ヨコハマbデイとして、地域のさまざまな取り組みをフォーカスし、イベントと地域FM局が連動した取り組みや、マリンタワーのウィンドウから違う角度から生みを見つめ直すFOCUSプロジェクトを企画準備している。
  • 国際条約を人々の暮らしにつなぎ、人々の行動を変えるためには、まず、問題を「見える化」する事が必要である。また、日常的には環境保全活動を行っていない人々を巻き込む為には、環境にやさしいからという理由だけでなく、「ラク」「カッコイイ」といった共感のポイントが不可欠となる。

(4)事例紹介:山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会:藤本秀弘氏

滋賀県の山門水源を対象に、その多様で貴重な植生と湿原環境について説明しつつ、開発からの保全や生態環境の保全活動をどのように実践してきたのか報告した。

【発表のポイント】

  • 琵琶湖の北に位置する山門水源の森(63.5ha)には、ブナ、アカガシなどの植生に加え、様々なツバキの自然雑種などが自生し、固有性のある自然環境を維持している。また、山門湿原においても、貴重な動植物の生息環境を維持しているが、湿原の一部で灌木が侵入するなど、湿原縮小などの問題を抱えている。
  • 1990年代には、ゴルフ場開発計画が浮上するなど、対象地の自然環境の危機もあったが、1987年から実施していた「三門湿原研究グループ」が、県知事に要望書を提出するなどし、結果的には県の公有化に成功した。
  • その後は、「山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会」として、滋賀県、長浜市、ボランティア団体、住民、森林組合などと連携しながら、地域保全活動と生物多様性保全活動を進め、湿原の復元、間伐や草刈りによる植生の保全などで成果をあげている。

(5)ディスカッション

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ディスカッションでは、山門水源の活動を対象に、いかに行政を巻き込んだアドボカシー活動を進めて行くのかについて、質疑応答形式で議論を進めていった。

【議論のポイント】

  • 連絡協議会の設立については、コミュニケーションが不十分であった滋賀県と旧西浅井町の間を取り持つ事、住民の意向を政策に反映してもらう事を目的としていた。
  • 「行政をいかに巻き込んで、保全に向けて積極的にになってもらうか?」という課題については、まず、山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会の実績として、「担当部局や首長との直接交渉」、「継続的な情報提供」などの地道な方法が紹介された。また、町長が代わった時などが、それまで主張してきた提言が活かされる契機になったという経験についても紹介された。
  • 行政を巻き込むという課題に対し、講師陣からは、「賛同者を増やして外堀をかためる」「本音と建て前を見極めてNPOも使い分ける」「相手が求めている事にも絡めながら話を進める」といった技術も必要であるというアドバイスがあげられた。また、行政マンとしてではなく、個人としてNPOのメンバーとボランティア活動をして一緒に行動する機会をつくる事も、理解を深めてもらう方法であると述べられた。
  • 参加者の中には学生も多く、学生としてどんな事ができるのかにも議論となった。学生には、NPOの人たちも力強い戦力として、また将来の担い手として期待しているとのコメントが相次いだが、卒業により入れ替わっていく中で、継続性のある関係づくりを意識してほしいという要望もあった。

(6)まとめ


ディスカッションのまとめとして、講師より一言ずつコメントをいただいた。

  • COP10では、環境保全活動のツールができた。今後はそのツールをNPOが共有しながら活用していく事が重要である。(道家氏)
  • 多様な主体と関わりあい、自由な立場を活かして動いていく事が必要である。(川廷氏)
  • 現場で考える事が重要である。みなさんも山門水源に来て下さい。(藤本氏)