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代表権、監事の責任について 投稿者:斎藤@ひびきの村 投稿日:2001/02/16(Fri) 00:23:00 No.279
 こんにちは。ただいま定款を作成しているところなのですが、どうしても分からない
ことがあるのでお願いします!

代表権の制限について… 理事の中に代表者を設ける予定なのですが、代表者の
 権限について「代表者の行為は、理事会の意見を反映していなければならない」
 つまり、理事会で決定されていない行為を代表者が執り行った場合、その行為は
 無効である(第三者に対抗できる)ようにする事は可能ですか?

監事の責任について… 監事がずさんな監査業務を行ったり、理事会と癒着(?)
 した場合には、その責任を追及し、取り締まる法律なり規則なりはありますか?

文章が硬くてすいませんが、以上よろしくお願いします。
Re: 代表権、監事の責任について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/02/16(Fri) 20:22:00 No.280
斎藤さん

 代表者の行った行為は、第三者から見ると当然その法人の意思と
みなされます。その第三者が、代表者の行為が法人の意思に反して
いることを承知(共謀など)していない限り、第三者に対抗するこ
とはできません。
 なお、法的にはNPO法人の理事は全員が代表権を持っています
ので、仮に定款で代表権を制限しても、それを知り得る立場にない
(法人登記には理事長の記載はありません)第三者が代表権のない
理事の行為を法人の意思と錯覚しても、そう思うに足る相当の理由
がある場合は対抗できません。
 監事の責任については、特定非営利活動促進法の中にはその責任
を具体的に追及できるような規定はありません。民法の不法行為責
任や、善管注意義務違反の問題だと思いますが、私は法律の専門家
ではないので、これ以上のことはわかりません。
 轟木さん、弁護士さんの見解を照会していただけませんか?

               公認会計士・赤塚和俊
Re: 代表権、監事の責任について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2001/02/20(Tue) 12:04:00 No.281
斎藤さん、ご投稿ありがとうございます。定款作り、ご苦労さまです。
赤塚さん、いつも的確なご回答、感謝いたします。

さて、理事の代表権の制限についてですが、NPO法の16条は次の
ように述べています。

「理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、特定非営利活
動法人を代表する。ただし、定款をもって、その代表権を制限するこ
とができる。」

この16条にある「代表する」という意味は、「NPO法コンメンタ
ール」(日本評論社)によれば、「法人の機関である理事が、法人の
ために行為をするとき、その行為は法人自体の行為とされ、その法律
効果はすべて法人について発生する」ということです。

また、「制限」というのは、例えばNPO法人内部において、理事が
ある行為をするときに、理事会や総会の議決を必要とする、などを定
款で定めることができる、という意味で、理事が善意の第三者に対し
てとった行為について、NPO法人が責任を免れることができるとい
う意味ではありません。

NPO法30条には、民法54条の規定が準用されると書いてありま
すが、この民法54条は次のようなものです。

「理事の代理権に加えたる制限は之を以て善意の第三者に対抗するこ
とを得ず」

これらから、斎藤さんの「理事会で決定されていない行為を代表者が
執り行った場合、その行為は無効である(第三者に対抗できる)よう
にする事は可能ですか?」というお尋ねには、赤塚さんのお答えと同
じく「NO」ということになります。

次に監事ですが、同じ「NPO法コンメンタール」(日本評論社)に、
弁護士の浅野晋さんが次のように書いていらっしゃいます。

「監事は、受任者として善良な管理者の注意をもって職務を遂行する
義務がある(民法644条)。したがって、上記に記載した職務を怠
った場合は、法人に対して損害賠償責任が生ずることもありうる。
 しかし、監事が職務を怠った場合に関して罰則の定めはない。なお、
本法(筆者注:NPO法)では株式会社の場合の株主代表訴訟(商法
267条・280条)のような定めをおいていないから、社員自ら職
務を怠った監事の責任を追及する訴えを提起することはできない。」

つまり、監事が善良な管理者の注意をもって職務を遂行しなかったら、
法人に対して損害賠償をしなければならないことがあるけれど、NP
O法自体には、社員(正会員)が監事の責任を追及できる規定を含ん
でいないということです。

また、赤塚さんが書いておられるように、善管注意義務、つまり「善
良な管理者の注意」をもって職務を遂行しなければなりません。
「法律学小辞典」(有斐閣)によれば、善管注意義務とは次のような
ものです。

「過失の前提となる注意義務には、行為者の具体的な注意能力に関係
なく、一般に、行為者の属する職業や社会的地位に応じて通常期待さ
れている程度の抽象的・一般的な注意義務と、当該行為者の注意能力
に応じた具体的・個別的な注意義務とがある。前者を『善良な管理者
の注意』またはこれを略して『善管注意』といい(民400・644
等)、後者を『自己の財産におけると同一の注意』という(民659
等)。通常は善良な管理者の注意が要求されており、これを欠くと、
過失(抽象的軽過失)があるものとして、債務不履行または不法行為
などの効果が生じる。」

これによると、監事が善良な管理者の注意を欠くと、過失があったと
して不法行為となることもあるようです。

加えて、NPO法49条では、理事や監事が、例えば、法に定められた書
類に記載すべき事項を記載しなかったり、不実の記載をした場合などは、
20万円以下の過料に処すると定めています。よって、法人がいかなる定
款を作ろうとも、この法に違反する場合には過料という罰則規定が適用さ
れることになります。

斎藤さん、またさらにご質問がありましたらお尋ねください。

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 代表権、監事の責任について 投稿者:斎藤@ひびきの村 投稿日:2001/02/20(Tue) 14:41:00 No.282
赤塚様、シーズの轟木様、ご返答いただきありがとうございました。
特に、NPO法16条にある「代表する」という言葉の解釈を引用して
下さったので、よく分かりました。
「善管注意義務違反」という言葉も初めてだったので、たいへん
参考になりました。また何かありましたらよろしくお願いします。

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